母に諦められた幼い命~広島・二児虐待死体遺棄事件~

平成12年10月末

広島東署。
その日、一人の女が知人に付き添われて警察署へ被害届を出しに来た。
知人の説明によると、女の交際相手であった男から、金品を脅し取られているということだった。
署員が調書をまとめていると、その知人は続けて驚くべき話をし始めた。
「この人の二人の子供の姿が見えない。もしかしたらその男に殺されてどこかに捨てられているのかもしれない」
突飛な話に驚く署員をよそに、母親であるその女はあまり口を開かなかった。
警察は、まず被害届を受理した恐喝の容疑で、広島市中区在住の男を11月28日に逮捕、その後の取り調べで男が
「1年前、(被害届を出した)女性の長女と長男を虐待したら死んだので、山に捨てた」
と供述したことから、呉市内と安芸区内の山中を捜索。
12月1日、それぞれの場所から二人の遺体と思われる頭骨やその他の骨片などが発見されたのだった。 続きを読む 母に諦められた幼い命~広島・二児虐待死体遺棄事件~

母に諦められた幼い命~広島・二児虐待死体遺棄事件②~

6歳児の命乞い

9月26日、午前零時。
この日、慶樹くんは夕食を食べることが出来ていた。しかし、それが鷹尾は気に入らなかった。
「腹が膨れとるじゃないか!」
そういって約30分にわたって殴る蹴るの暴行を加えた。慶樹くんは何度も何度も、「ごめんなさい」と口にしていた。
大の字に倒れこんだ慶樹くんに、なおも「はよ立て!」と命令し、慶樹くんが何とか手で体を支えながら立ち上がると、鷹尾は大型のスポーツバッグ(底の幅33センチ、高さ33センチ、横幅73センチ)と、黒色のゴミ袋を持ってきた。
そしてゴミ袋をスポーツバッグの中に広げて入れた上で、「汚いけぇ、よういらわん(触れない)」と言って、慶樹くんに自らその中に入るよう命じた。
よろよろしながらも、言われるがままに慶樹くんがゴミ袋の中で正座すると、鷹尾はファスナーを閉じ、自分らが寝る布団の脇に置いた。
その後、横になっていると、バッグの中から何の音もしないことから、ファスナーを開けて「死んだふりか!」といったところ、慶樹くんが指を出してきたことに気付いた。 続きを読む 母に諦められた幼い命~広島・二児虐待死体遺棄事件②~

母に諦められた幼い命~広島・二児虐待死体遺棄事件③~

量刑不当

判決が言い渡されたその日、傍聴席には何とも言えない空気が覆いかぶさっていた。
広島地裁の田辺直樹裁判長が、慶樹くんと祥子ちゃんの味わったこの世の地獄、そして離れ離れの山中で白骨化したことへの思いを述べる一方で、殺意を認定せず傷害致死として求刑をはるかに下回る判決を出したことへの違和感も漂っていた。 続きを読む 母に諦められた幼い命~広島・二児虐待死体遺棄事件③~

我が子を失いたくなかった母親が負うべき罪は何か~長崎・新生児遺棄事件~

平成25年4月24日

とうとうこの日がやってきてしまった。
先延ばしにする間に、なんとか方法を考えるはずだった。しかし、あっという間に十月十日(とつきとおか)は過ぎ去っていった。
鈍痛は次第に強烈な痛みへと変わったが、もう後戻りはできない。

疲労困憊ではあったが、女にはまだやるべきことが残されていた。
足元には血まみれのバスタオル。それをそっと、手に取った。

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ならばどうすればよかったのか~出雲・1歳児殺害事件~

平成26年9月9日

島根県出雲市。
初秋の日差しが降り注ぐ山間の集落。平田船川に流れ込む小さな川沿いの道路を進むと、田畑の広がる中に小さな神社が点在する非常にのどかな風景が広がっている。
この日、いつものように1歳の孫娘が母屋にやってくるのを待っていた祖父母は、午前8時を過ぎても一向にやってこないことに気が付いた。
祖母が、息子家族が暮らす離れに行こうと表に出ると、そこには嫁が立ち竦んでおり、顔を見ると、泣き腫らしたのか頬を紅潮させていた。
「どうしたの?」
気遣う祖母の横をすり抜けるように祖父が離れへと走る。
離れでは、1歳の孫が意識を失った状態で倒れていた。 続きを読む ならばどうすればよかったのか~出雲・1歳児殺害事件~