痛々しい、愛~広島・実母無理心中事件~

平成16年2月25日

冬の空に日差しが戻ったその日、1台の車が瀬戸内の橋を渡っていた。
昨日よりも5度ほど気温も高く、海風は冷たいながらも心地よいものだった。
助手席にいる母の横顔を、男はなんどもなんども確認した。
皺が刻まれた母の顔。女手ひとつで自分たちを育ててくれた、母。

どうしてこうなってしまったのか。

使われていないフェリー用の桟橋に車を乗り入れると、男はそのまま海へとアクセルを踏んだ。 続きを読む 痛々しい、愛~広島・実母無理心中事件~

「うじ虫」と呼ばれた妻が遂げられなかった本懐~伊丹市・夫殺害未遂事件~

平成13年8月15日

「うじ虫。出ていけばええやん。」

夫の暴言は今に始まったことではなかった。これまでに何度、どれほどの暴言を吐かれてきたか。
いつものように、言い返すこともできた。いつものように、とりあえず外へ逃げて気分を落ち着かせることもできた。

けれどこの日、妻は逃げなかった。
妻は台所で文化包丁を手に取ると、茶の間で寝そべってテレビを見ながら馬鹿笑いを続ける夫の背後に、静かに正座した。

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家と家族を焼かなければ手に入らなかったもの~熊谷・一家3人放火殺人事件①

平成18年12月下旬

「誰がやったんだろう、怖いね……
埼玉県熊谷市のとある民家で、軒先の鉢植えに火がつけられる「事件」が起こった。
火の気がないのは明らかで、大事には至らなかったものの、誰が、なぜこのようなことをしたのか、その民家の住民のみならず、近隣では回覧板を回すなどして注意を呼び掛けた。

年の瀬でもあり、季節がら火を使う家も少なくないため、いくつかの家では煙探知機などの警報器をつけたという。

しかし、その「事件」からおよそ一か月、その民家から1.5kmほど離れた別の家が燃えた。 続きを読む 家と家族を焼かなければ手に入らなかったもの~熊谷・一家3人放火殺人事件①

家と家族を焼かなければ手に入らなかったもの~熊谷・一家3人放火殺人事件②~

見えない動機

綾は逮捕当時、「灯油をまいてライターで火をつけた。3人を巻き添えにして自分も死のうと思っていた」と話していた。
精神的に不安定だった綾が、突発的に無理心中を図ったかにも思えたが、捜査が進むにつれ、綾の不審な行動が露呈し始めた。 続きを読む 家と家族を焼かなければ手に入らなかったもの~熊谷・一家3人放火殺人事件②~

難病の息子に手をかけた老母の「限界」~塩釜市・息子殺害事件①~

平成14年5月22日午後10時30分

「もうこんな時間……」
時計を見た母親は、いつものように息子の様子を見に部屋へと向かった。
狭い市営住宅の一室。それでも痛む足を庇いながらの歩行は、老齢の身に堪えた。

部屋を覗くと、息子はベッドの上にあおむけになっていた。
テレビはついていたが、息子はどうやら眠っているようだった。
「もう、今しかない」
母は決断した。

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