男の罪を見つめた火の玉~宮崎・独居2女性連続強盗殺人事件③~

知的、精神遅滞への判断

松田は裁判で精神鑑定が行われた。
弁護側は、複雑な家庭の中において十分なしつけや愛情を受けずに育ったことでいわゆる社会規範を身に着ける機会を失い、くわえて養育環境や親からの遺伝的な要素によって知能検査は軽度の精神遅滞にあたる低さになっていたことを訴えた。
また、松田は4度の窃盗での服役の過去があるが、実は幼少の頃より盗癖があったのだという。それが理由で、小学5年生から中学までを養護施設で過ごすことになったのだ。
クレプトマニアという言葉が聞かれるようになり、罰よりも治療を受けさせることが優先されるとも言われているが、松田の盗癖はこのクレプトマニアとは違うようであった。
クレプトマニアは、成育歴なども大きく関係する病気であり、摂食障害との関連性も大きいもので、利益のために盗むのではなく、盗むために盗むといわれているが、松田の場合は完全に自己の利益のためである。

そして、盗むために、自己の利益のために殺人を犯しているので、全く別物だろう。
裁判でもこの盗癖についてはさほど重要視されていないように見受けられた。

さらに、知的な問題についても審理された。
というのも、松田は家に押し入った際、たくさんの遺留品を残していた。通常、殺人を犯した場合はそれが突発的なものであっても出来る限り自身の痕跡を消し去ろうとするものである。
ましてや、計画的な殺人などであれば、指紋の一つも残したくないだろうし、DNAの類は絶対に残せないはずだった。しかも松田には前科がある。
にもかかわらず、押し入った家では数時間にわたって滞在し、盗みをしただけの家でもそこでタバコを吸い、食事をし、橋田さん方ではマスターベーションまでしている。そしてそれらのゴミをその場に残したまま立ち去っていたのだ。
そういった点を、弁護側は異常と表現した。そう、普通ではないのだ。これについては後に死刑に抗議する団体なども同様の主張をしていた。
このような、通常考えられないような行動を平気でしている点で、知的水準の問題があった、精神的にも未成熟な部分があったと言いたいのだろう。

裁判所はこの点について、鑑定結果やそれに導き出される可能性については認めつつも、松田本人の資質の問題であって異常とまでは言えないと退けた。

揺れる火の玉

松田は奇妙な供述をしていた。
橋田さんを殺害した後の数日間、先にも述べたように盗みに入る家を物色しながら、夜はビニールハウスや資材置き場などで寒さをしのいでいた。
12月5日の夜のことだ。西都市内の工事現場事務所に侵入して夜を明かしたのだが、その夜、松田は現場事務所の周辺であるものを眺めていたという。

それは、火の玉だった。

ゆらゆらと、松田を取り巻くように揺れる火の玉を、夜通し眺めていたというのだ。

裁判でも弁護側はこれを取り上げ、空腹と寒さと切迫した状況下にあり、幻覚を見るほどの状態だったと主張したが、裁判所は取り合わなかった。
たしかに、松田は満足な食事はとっていなかった。しかしその日は盗みに入った家でラーメンを食べ、ミカンや菓子も食べている。空腹とはいえ、幻覚を見るほどの状態ではなかったはずだ。
また、松田が虚偽の証言をしていることも考えにくい。火の玉を見ながら過ごしたといったところで罪が軽くなるわけでもなければ、何の関係もないからだ。

松田が見たのはなんだったのだろう。
ありえないと一蹴するのもいい。幻覚だったのかもしれない。
たとえ幻覚だったとして、なにが松田にそれを見させたのだろうか。
罪の意識か。それとも、橋田さんだろうか。

松田は死刑確定後、2009年に再審請求(なんの??)をしたが棄却。その後も支援する弁護人がついていたといい、なぜかその弁護人が第二次再審請求を出していると思い込んでいたという。
2012年3月29日。下関通り魔の上部康明、元妻家族3人殺害の古沢友幸両死刑囚とともに死刑執行となった。

その日、橋田さんの母と、宮崎地裁で死刑判決を出した小松元判事にその知らせが届いた。
「もう思い出したくない。死刑執行されたなら、もう言うことはないです」
橋田さんの母親はそうつぶやいたという。
小松元判事も、死刑判決を出したものとして重く受け止めると話した。

 

 

「男の罪を見つめた火の玉~宮崎・独居2女性連続強盗殺人事件③~」への2件のフィードバック

  1. こんにちは、初めてコメントさせていただきます。
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    1. 気まぐれ書店員さま
      コメントありがとうございます!
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