満期出所しても許せない、被害者遺族の慟哭~恵庭OL殺害事件②~

一貫否認と不可解な言動

大越元受刑者は取り調べの段階から出所にいたるまで、一貫して否認し続けている。
確かに、殺害と死体損壊についてたとえば凶器が出たとか、防犯カメラに写っているとか、香さんの遺体から大越元受刑者の関与を確定させる証拠が出たわけではない。
この点は警察が批判されても仕方ないと言え、大越元受刑者の無罪を支持する人の言い分もわかる。
疑わしきは罰せず、その精神に照らせば、いささか物足りないのではないかと思うのもわからなくはない。

ただ、物証がない代わりに、大越元受刑者には犯人としか思えないような不可解な言動が数多くある、いや、あり過ぎる。

元交際相手が香さんと付き合っていたとか、職場が同じとか、一緒に退社したとか、灯油を買っていたとか、そんなことだけで犯人にされたというならそれは気の毒だし、そもそも公判を維持できないと思われる。
しかし、大越元受刑者の言動はそのさらに斜め上をいくものが多数あったのだ。


①灯油購入にまつわる不可解

香さんを焼いたのは灯油であったため、大越が灯油を買っていないか警察が調べた話は先に述べた通りだ。
そして、4月14日の任意聴取の際に、大越元受刑者の口から「ふくみやで灯油を買い、父の社宅に持ち込んだ」という証言が出た。
事実、ふくみやのレシートも押収されたため、その社宅にある灯油の成分と香さん殺害のあと使用された灯油の成分が合致すれば、大越元受刑者の疑いは確実に強まっただろう。
しかし、成分は合致しなかった。ということは、大越元受刑者の関与はなかったのではないか?
そこで警察は、ふくみやが仕入れているガソリンの成分と、社宅にあった灯油の成分を比較してみたところ、なんとこちらも合致しなかった。
ということは、大越元受刑者がふくみやで購入した灯油の所在が分からないということになる。イコール、香さんの遺体を焼いた際に灯油を使用したのではないか。だから、ふくみやで購入した灯油が出てこないのではないか。

これについての大越元受刑者の言い分がこれだ。
「ふくみやで購入した灯油は、自分が疑われていることを知ったので千歳市内の道路わきの草むらに捨てた」
そして、なぜかまた再び灯油を購入し、父親の社宅へ持ち込んだというのだ。ちなみに大越元受刑者が捨てた灯油は発見に至っていない。さらに、買いなおしたという灯油の購入場所も「覚えていない」そうだ。
大越元受刑者は普段灯油をガソリンスタンドで購入しており、ふくみやなどのコンビニで購入する習慣はなかった。にもかかわらず、香さんが亡くなる前日に限って、いつもと違う行動をしたという。
裁判でもこの灯油の所在についてはかなり突っ込まれていた(大切なことなのに直前まで聞かされていなかったので弁護側も突っ込んでいた)が、大越元受刑者は記憶にないのか、はっきりとした証言は出来ていなかった。

②唐突に止めたいたずら電話の不可解

2月の終わりから3月の初旬、大越元受刑者は交際していたI氏が自分と別れた後、どうやら香さんと交際しているのではないかと疑うようになる。
ドライブが趣味だったようで、頻繁にひとりでふらりと千歳市内や苫小牧方面を走っているが、その際にI氏の車を発見、尾行したところ香さんの実家である橋向牧場へ入っていたったことを確認、香さんらしき人影とI氏が話しているのを見ている。
また別の日にも、車を走行中にJR長都駅の駐車場にて、I氏と香さんの車が並んで止まっているのを目撃、激しく動揺した大越元受刑者は翌日知人に泣きながら電話をしている。
そして、3月12日から16日にかけて、230回におよぶいたずら電話(すぐ切る、無言など)を、早来町ローソンの公衆電話より香さんの携帯や自宅にかけまくっていた。
それが、香さんが殺害された16日の午前7時過ぎ以降、ピタッと止むのである。
そして、不可解な行動はまだ続く。
香さんの電話番号を、なぜかこの16日の朝(この時点で事件は発覚していない)に突然消去している。さらに、事件発覚後の18日には自身の携帯電話も紛失している。

このいたずら電話については、早い段階で警察は把握していた。しかし、大越元受刑者は弁護人にこの事実を告げていなかったどころか、「電話番号も知らなかったのにいたずら電話なんてできるはずがない」とまで言っていた。弁護人がいたずら電話が事実であると大越元受刑者から聞いたのは公判が始まる直前の9月26日のことであった。弁護人が仰天はしたのも想像に難くない。
大越元受刑者はいたずら電話は認めた(そもそも履歴があるため言い訳のしようがない)が、突然それを止めたことに関しては、「ロッカーで着替えの際、香さんとの会話で彼女の冷たい一面を知り、大した人ではないと思うようなった、それでいたずら電話もやめた」と裁判で供述している。

③携帯電話とロッカーキー

3月17日、警察が香さんのロッカーを調べる際、大越元受刑者は当初ロッカーに触れたことはないと証言していたが、警察が指紋を採取すると知り、突然「朝、制服があるかどうかの確認で(香さんの)ロッカーを開けた」と言い出した。カギは開いていたと。
さらに、香さんの携帯電話がロッカー内の作業着胸ポケットから見つかっているが、香さんの死後もI氏の携帯電話(紛失中)や会社の代表電話や管理室などへ複数回、およそ3時間にわたり発信された履歴が残っている。
ということは、何者かが殺害後から捜索がされた17日の朝までに会社の女子休憩室の香さんのロッカー内の作業着に滑り込ませたということになる。

4月14日の捜索の際、そのロッカーのカギがこともあろうか大越元受刑者の車のグローブボックスから発見されてしまった。
これらについても大越元受刑者はわからない、自分ではないと主張しているが、合理的な釈明には至っていない。

ちなみに、この香さん殺害に発信された携帯電話の電波は、当初千歳市内のセクターを経由していたが、ある時点から以降は早来町のセクターを経由している。
そのある時点と言うのが、大越元受刑者が早来町のローソンで買い物をした時点以降であった。

④携帯基地局の移動と大越元受刑者の移動の「偶然」

事件当日の夜、大越元受刑者は恵庭市住吉にあるガソリンキングで23時30分ごろ給油しているのが防犯カメラ等で確認されている。
香さんが殺害されたとみられる時刻は23時5分頃で、そこから20分程度ではガソリンキングまで移動できないというのが弁護団の主張であった。たしか、当時のワイドショーでも無理だと言っていた記憶。
しかし、皆さんお分かりのように測定する前提として、「制限速度で走ったとして」というのは暗黙の了解である。
大越元受刑者は、ドライブが趣味であり、さらには追尾していた警察車両を「巻いた」実力の持ち主である。
雪道であったことを考慮したとしても、20分で北島から住吉まで移動することは不可能とは言い切れない。

また、香さんの携帯を大越元受刑者が持って移動したと仮定した場合、発信された基地局付近に合わせて移動できていたかどうかも重要である。
香さんの殺害推定時刻が23時過ぎで、その1時間後に千歳セクターで発信、さらにその1時間30分後に発信された際は、早来町セクターに移動している。
ガソリンキングから千歳市はすぐで、10分もあれば移動できる。また、千歳から早来町は少し離れるものの、45分から1時間もあれば移動可能である。
したがって、時間を追ってみても大越元受刑者がその時間で移動できなかったという根拠にはなり得ない。
実際、23時半にガソリンキングで給油したのち、午前1時半、ローソン早来栄町店にて買い物していることも確認されており、携帯基地局が移動するのと同じくして、大越被告の移動経路も同じ場所であることが確認されている。
もちろん、だからといって大越元受刑者以外にもそういう人はいる可能性はあるし、この事実だけで断定はできない(たとえ発信先がI氏や勤務先であっても、発信履歴などから適当にかけたとも言える)が、その後携帯電話が勤務先であるキリンビール千歳工場内にある香さんのロッカー内にあったことを考えれば、行きずりのレイプ犯とか、通り魔的犯行などというのは考えにくい。
少なくとも、香さんの勤務先を知り得、I氏と親密であることも知り得(個人としてはI氏の携帯にのみ架電している)、事件後勤務先に怪しまれず出入りできるということであり、該当する人間はぐっと少なくなるのは間違いない。
もちろん、これらについても弁護側、大越元受刑者から納得のいく説明はない。

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