花嫁は嬰児遺体を連れて〜横浜・YCATゴミ箱嬰児遺体遺棄事件〜

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昭和562月、横浜の伊勢山皇大神宮の結婚式場では若々しいカップルの結婚披露宴が執り行われていた。
花嫁は色打掛から爽やかなブルーの振袖へとお色直しをし、恰幅の良い新郎も紋付袴がよく似合っている。
招待客は80名ほど。新郎新婦の父親が勤務するのはいずれも東京電力、新郎自身も川崎の電動機器メーカーの営業、新婦も大手銀行に勤務していたことで、招待された人々も皆、社会的立場のしっかりした人々だった。

専修大学を卒業した花嫁は、長身で目元の涼し気な、今で言うと女優の木村多江似の美人。二人は披露宴の後横浜のホテルに宿泊し、アメリカへ新婚旅行へ行く予定だという。

式場スタッフもそんな晴れやかなカップルを目を細めて見守っていたが、気になることがあった。

着付けを手伝う女性スタッフの間で、妙な噂が流れていたのだ。
1月に行われた結納の着付の際、確かに花嫁様は妊娠してらっしゃいました。お腹の膨らみがわかるほどになっていましたから。ところが、2月の披露宴の時はそのお腹がぺっちゃんこになっていた。なのに、二人の間に赤ちゃんが生まれたという話もない。事情を知るスタッフの間では、どういうこと??と噂になっていました。」

新郎新婦に変わった様子もなく、披露宴で花嫁はとにかく明るかったという。

しかしその2ヶ月後、式場のスタッフは警察の聞き込みを受けることになる。 続きを読む 花嫁は嬰児遺体を連れて〜横浜・YCATゴミ箱嬰児遺体遺棄事件〜

🔓人間失格~伊仙町・一家3人逆恨み殺傷事件~

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平成20年2月1日、福岡拘置所において死刑が執行された。
男は平成14年に鹿児島県で実兄の妻、その娘と息子を襲って死傷させた罪で、平成16年に鹿児島地裁で死刑判決を受けていた。
その後いったんは控訴したが、その二か月後に控訴を取り下げ、刑が確定していた。
取り下げの理由は、記されていなかったという。

確定から4年、人間失格と言われた男は、犯行の動機や詳細について多くを語らないまま、永遠の贖罪の旅に出た。

事件

平成14年8月16日、夏休みのこの日、サトウキビ畑の広がる鹿児島県徳之島のとある民家に、突然少年が駆け込んできた。
「電話して!電話!」
そう叫んだ少年は血まみれで、その場に倒れ込んだ。
驚いた家人が少年を介抱しつつ、まずその少年の父親に連絡した。少年はこの家の近所で暮らしていて、両親らとも顔なじみだった。

その頃、職場にいた少年の父親は電話で息子のケガを知らされた。何事かと、要領を得ない父親に対し、電話をかけてきた近所の人がこう告げた。
「弟さんにやられたと言ってる……家族みんなが刺されたみたい」
事情が呑み込めないまま、父親は110番通報、駆け付けた警察官らが見たのは、自宅で血まみれで倒れている母と娘の姿だった。

病院へ救急搬送されたが、母親も10代の娘も、すでに死亡。同時に、助けを求めた少年はこの家の次男(当時13歳)で、こちらも重体であった。

死亡したのは、鹿児島県大島郡伊仙町の保険外交員・名古和美さん(当時40歳)、その娘で徳之島高校3年の千尋さん(当時17歳)。
和美さんは左胸を刃物で刺されており、その場でほぼ即死状態だった。千尋さんも、刃物による複数の傷があり、その数は10数か所にのぼった。二人の死因は失血死。
重体の次男の傷も、生きているのが不思議なほど深かった。
傷は左胸一ヶ所だったが、大動脈切創、膵断裂、肝・胃切創、外傷性仮性大動脈瘤、外傷性仮性膵嚢胞、そして出血性ショックと重篤な状態だった。
ここまでの深手を負いながらも、次男は必死で100m走り、近所の家に助けを求めたのだ。

次男の証言で、家族を殺傷した人物は特定されていた。

そして、同じ日の11時40分ころ、一人の男が凶器の刺身包丁をたずさえ警察署に出頭してきた。

「自分がやりました」

鹿児島県警徳之島署は、男を殺人未遂の容疑で緊急逮捕。その後、殺人と銃刀法違反で再逮捕となった。

男は、名古圭志(当時32歳)。
殺害された和美さんの夫の、実弟だった。

【有料部分目次】
動機
生い立ち
憤怒
お前の父さんを恨め
最後通牒
報復
死刑判決
回避性人格障害
人間失格

🔓Folie à deux~ふたり狂い~・敷島町・保険放火殺人事件~

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アパートの火災

平成10年9月17日午後11時半、山梨県中巨摩(なかこま)郡敷島町の木造モルタル二階建てアパートの二階の部屋から出火。
火はその部屋を全焼して消し止められたが、焼け跡からは成人の焼死体が発見された。
その部屋に一人で暮らしていた男性と連絡が取れないこと、部屋はドアも雨戸もカギがかけられていたことから、この焼死体は住人の男性の可能性が高かった。

現場は町立敷島南小学校近くの住宅街で、近隣住民らは不安な夜を過ごしていた。

この男性は、約一か月ほど前に単身この部屋に入居したというが、21日になって、燃えた部屋の中から灯油の成分が検出された。季節は9月、灯油の暖房器具を使うには早かった。
鑑識の調べによると、特に今に敷いてあった布団の付近に灯油の成分が強く残っていたといい、死亡した男性はその布団から数m離れた窓際でうつぶせに倒れていた。
司法解剖の結果は一酸化炭素中毒。それ以外に、遺体に外傷はなかった。

ただ、実はこの男性、入居した直後の9月5日にも布団が焦げるボヤ騒ぎを起こしており、今回の火事との関連も考えないわけにはいかなかった。

警察は男性の親族や会社の関係者、知人などからトラブルがなかったかどうかを聞き、失火、自殺、あるいは放火による他殺の可能性も視野に捜査を進めていた。
男性は、会社員の米村文男さん(当時49歳)。

そんな中、火災から二日後の19日、火災で死亡した米村さんの元妻が自宅で服毒自殺を図った。

元妻の自殺未遂

幸いにも未遂に終わった元妻の自殺。当初は、別れた夫との関係に悩み、また、夫が死亡したことを知って後を追ったのか、そういう見方もあったが、入院中の元妻に任意で事情を聴いていくうち、この元妻が元夫の米村さんを殺害したことをほのめかしたため、さらに事情を聴いた。

元妻は「食べ物に睡眠薬を混ぜた。眠らせてから灯油をまいて火をつけた」と話したというが、捜査関係者らはどことなくその元妻の供述にあいまいな点があるのが気になっていた。

が、灯油を持ち込むのに使用したという複数のペットボトルが元妻の供述通りの場所から発見されたこともあり、24日、この元妻を殺人と現住建造物放火の容疑で逮捕した。
逮捕されたのは米村さんの元妻で、元旅館従業員の阿部佳寿乃(仮名/当時50歳)。佳寿乃は何らかの理由をつけて17日の午後10時20分ころ、米村さん宅を訪れた。そして、睡眠薬を仕込んだ葛餅を食べさせて眠らせた後、用意していた灯油をまき、火をつけて米村さんを一酸化炭素中毒で死なせたとされた。

司法解剖の結果、米村さんの胃の内容物から睡眠薬の成分も検出されていて、佳寿乃の供述はおおむね信用できた。

が、警察は佳寿乃がどうやら何かを隠している、誰かを庇っているような印象を持っていて、周囲の人々らに聞き込むなど身辺調査をした結果、この事件にはもう一人深く関与していると思われる人間がいることが判明。

佳寿乃は常々、その人物のことを「神様のような人。全幅の信頼を寄せている」と周囲に話していただけでなく、米村さんとの間にできた子供をその人物の養子にしていた。
さらに、警察は昨年の夏に米村さんと佳寿乃の離婚が成立した直後、米村さんに掛けられていた死亡時約4000万円の生命保険の受取人が、実弟に変更されていたことも掴んでいた。

佳寿乃が心酔していたというその人物は、米村さんの実弟の妻だった。

【有料部分目次】
義理の妹
東山梨の旅館
津久井の詐欺女
不協和音
弁護士との面会
父の声色と「神の子」
ふたり狂い

私のことを、恨みますか〜米子・税理士ら2人殺害事件〜

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平成22年2月26日。鳥取地方裁判所米子支部では、ある男への論告求刑が行われていた。
男の罪状は、強盗殺人。それ以外に死体遺棄など6つの罪状が男にはあった。被害者は高齢の男女二人、ともに殺害されていた。

殺害された女性の遺族は極刑を求めており、裁判員裁判で初の死刑求刑になる可能性も高かった。
被害者参加制度を利用して、公判には被害女性の息子が検察官の隣に座った。その遺族男性の隣で、北佳子次席検事は男に対し、求刑した。

「被告に無期懲役を求刑する」

隣の遺族男性が、目頭を押さえて俯いた。
論告求刑の前、この遺族男性はある証人に対し、静かに語りかけていた。

「私は死刑を望んでいる。死刑になったら、私を恨みますか。」

証人は涙でぐしゃぐしゃの顔のまま、「(極刑を望むのは)当然だと思います」と絞り出した。
その様子を見ていた裁判員の多くが、泣いていた。

次席検事の論告求刑の後、遺族の男性が意見陳述を行った。
「極刑以外の判決ならば、恐ろしい判例を作り出すことになる。道場の余地があれば、死刑にならない。そんなことでは犯罪の抑止力が低下する。」
検察の無期求刑に対する心の叫びに思えた。

被告の男は、午前中の情状証人への質問の時は感情の昂りを抑えられない場面もあったが、その後は落ち着きを取り戻し、
「被害者の無念さや思いをしっかり受け止め、生涯ずっと背負っていきたい」
と頭を下げた。 続きを読む 私のことを、恨みますか〜米子・税理士ら2人殺害事件〜

🔓わがままシンデレラ~大垂水峠・美人ピアノ教師殺害死体遺棄事件~

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「あの先生、確かにものすごい美人でした。けど、子供たちにも優しいしとにかく熱心でしたから……。32歳?いやいや、24,5歳にしか見えませんでしたけどねぇ」

事件後、被害者を知る人々から語られたのは、とにかく美しい人だったということだった。それだけではなく、甘く、舌ったらずな話し方は独特で、その声に魅力を感じる人々もいた。

当時(昭和62年)、愛好家が多く存在したアマチュア無線。
資格を持った人々が、無線を通じで見ず知らずの人とつながることができる、そういう楽しみ方をする人々がいた。
この事件の被害者も、アマチュア無線の愛好家だった。
深夜、電波に乗って聞こえてくる甘い彼女の声に、何人もの男たちが虜になったという。

そしていつしか彼女を頂点とする構図がその愛好家の中に出来上がっていく。
それはまるで、女王と家来、そんな風に見えた。

大垂水峠の遺体

昭和62年12月28日午前7時40分、八王子の甲州街道沿いの大垂水峠の沢で、毛布にくるまれた遺体が発見された。
ピンク色の毛布にくるまれた遺体は、白いパジャマ姿。セミロングの髪に、ゴールドで統一されたアクセサリーを身に着けていた。そのアクセサリーが輝く両腕は、細いビニールひもで縛られていたという。
季節柄、さほど腐敗は進んでいなかったが、死後3~4日とみられた。

被害者は女性、その左足には大きな特徴があった。つま先の部分がなかったのだ。
といってもかなり昔に手術によって切断されたような状態だったため、幼いころに事故か病気でつま先部分を失ったとみられた。

警察は大きな特徴であるとして身元を調べるためにその特徴を公開。すると、28日になって「大垂水峠の遺体は姉ではないか」という連絡が入った。
12月23日から行方が分からなくなっていたのは、遺体遺棄現場からは遠く離れた名古屋市在住のピアノ教師の女性だった。
通報者は実弟で、23日の夕方に姉が弟宅で近所の子供らにピアノを教えた後、行方が分からなくなっているというのだ。愛車のフェアレディZも、なくなっていた。

その後、弟によって遺体は姉であると確認された。

【有料部分目次】

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