早くアタシを迎えに来てちょうだい~亀岡・妻子不倫殺害事件~

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亀岡のマンションにて

12月に入ったある日の夕方、そのマンションの住人は、訪ねてきた別の階に住む知人の男性の様子がおかしいことに気づいた。
真冬だというのに裸足で、慌てふためいている風でいて、放心状態にも見え、明らかに普段の知人とは様子が違っていた。

「あの……帰ってきたら、妻と子供が死んでるんです……」

知人男性の言葉が、すぐに理解できなかった。なにを言ってるんだろう。
しかし知人男性がそれだけ言うと泣き崩れたのを見て、とにかくその知人男性の部屋へと向かった。

部屋の中はひんやりとしていて、そこにはその部屋よりも冷たくなった母子の姿があった。 続きを読む 早くアタシを迎えに来てちょうだい~亀岡・妻子不倫殺害事件~

いいわけ〜祖父母による孫殺害無理心中事件〜

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親が子を道連れにして自殺を図るというケースを、日本では無理心中、と表現する。
この言葉の適切さはさておき、一般的なイメージや言葉が社会に浸透しているは間違いない。

この言葉には、親の身勝手な考えの犠牲になった、という印象があり、子は親を選べないという、今時の言葉で言えば「親ガチャ失敗」の最悪のケースである。
母親主導の場合は母子心中が多く、父親主導の場合は一家心中になるケースが統計的にも多い。
また特殊な統計として、虐待死は内縁の妻、夫によるケースが多く見られるのに対し、無理心中においてはむしろ血の繋がりのない子どもが犠牲になるのは少ないという。

一方で、その無理心中、一家心中を画策したのが他の家族だったら。

基本的に両親以外の家族が加害者になる場合は、一家心中、一家皆殺し的なことに発展することが多い(中津川の無理心中、柏の無理心中など)こと、結果として被害者数が多くなり死刑求刑もあり得るためセンセーショナルな扱いをされてしまうことで記憶には残るが、件数としては多くない。

この、親以外による無理心中事件の中で、祖父母による無理心中について取り上げてみたい。
加東市にて、娘の長男を預かっていた60代の祖母が2歳の孫を池に沈めて殺害した事件があったが、このケースも無理心中(未遂)とされている。
親が主導して子を巻き添えに無理心中することと、祖父母が孫を巻き添えにそれを企てるのと、その動機や背景に違いはあるのだろうか。 続きを読む いいわけ〜祖父母による孫殺害無理心中事件〜

おとうさん、ごめんなさい~取手市・5歳児暴行死事件~

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その家

「なんでそんなことしたんや!なんでいうこと聞かんのや!」

取手市内のマンションの一室からは、男の怒声が響き渡っていた。
台所には、引きちぎられたレトルトのカレーの空き袋が落ちている。そして、男を怯えた顔で見上げる、痩せ衰えた男の子の姿。

男の子は5歳。しかし肋骨が浮き出たその体は、とても育ち盛りの5歳児には見えなかった。

「おとうさん、ごめんなさい」

泣きながら謝る男の子の顔面を、男は何度も殴りつけ、そのはずみで男の子が転倒して後頭部を強打しても、さらに腹部を蹴りあげた。
涙でぐしゃぐしゃの男の子を風呂場へと追い立てた男は、おもむろにその体を持ち上げ、湯の入っていない空の浴槽に男の子を投げ落とした。男の子は頭部を浴槽で強打、しかし男は浴槽の中に正座させた後も、男の子の顔面を殴り続けた。

殴り疲れた男は、裸で浴槽に正座させられている男の子めがけ、シャワーで冷水を浴びせかけた。4月と言えばまだまだ寒い。
泣き叫ぶ男の子を無視して、そのまま肩のあたりまで水を張り、そのまま水風呂に放置した。 続きを読む おとうさん、ごめんなさい~取手市・5歳児暴行死事件~

FUNNY MONEY~あるふたつの家族の結末~

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家庭の悩み事のほとんどは現預金が解決してくれる、とは真理で、多くの問題は解決されると私は思っている。
すべてではないにしろ、とにかく一家心中みたいなことは避けられるんじゃないかと思うのだ。
現預金さえあれば生まれなかった悲劇は山のようにあって、格差社会や貧困問題が事件につながることは少なくない。

が、同じ金がない、でも、登場人物に問題があって、さらにはそれを解決する手段を講じない、現実を見ないという場合もある。

ある二つの家族がたどった破滅への軌跡。 続きを読む FUNNY MONEY~あるふたつの家族の結末~

私のことを、恨みますか〜米子・税理士ら2人殺害事件〜

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平成22年2月26日。鳥取地方裁判所米子支部では、ある男への論告求刑が行われていた。
男の罪状は、強盗殺人。それ以外に死体遺棄など6つの罪状が男にはあった。被害者は高齢の男女二人、ともに殺害されていた。

殺害された女性の遺族は極刑を求めており、裁判員裁判で初の死刑求刑になる可能性も高かった。
被害者参加制度を利用して、公判には被害女性の息子が検察官の隣に座った。その遺族男性の隣で、北佳子次席検事は男に対し、求刑した。

「被告に無期懲役を求刑する」

隣の遺族男性が、目頭を押さえて俯いた。
論告求刑の前、この遺族男性はある証人に対し、静かに語りかけていた。

「私は死刑を望んでいる。死刑になったら、私を恨みますか。」

証人は涙でぐしゃぐしゃの顔のまま、「(極刑を望むのは)当然だと思います」と絞り出した。
その様子を見ていた裁判員の多くが、泣いていた。

次席検事の論告求刑の後、遺族の男性が意見陳述を行った。
「極刑以外の判決ならば、恐ろしい判例を作り出すことになる。道場の余地があれば、死刑にならない。そんなことでは犯罪の抑止力が低下する。」
検察の無期求刑に対する心の叫びに思えた。

被告の男は、午前中の情状証人への質問の時は感情の昂りを抑えられない場面もあったが、その後は落ち着きを取り戻し、
「被害者の無念さや思いをしっかり受け止め、生涯ずっと背負っていきたい」
と頭を下げた。 続きを読む 私のことを、恨みますか〜米子・税理士ら2人殺害事件〜