🔓洗脳と恋慕、そして怒れる裁判員~宮崎・同居女性バラバラ殺人事件~

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これで何度目だろうか。
ここのところ、娘と会う約束をしても直前でキャンセルになることが続いていた。
『大丈夫?』
メールを送ると、返事はあった。心配かけてごめん、大丈夫だよ……
けれど6月以降、顔を見ていないし声も聞いていない。

気になることはほかにもあった。9月中旬、突然「メールアドレスを変えた」という連絡が入っていた。メールアドレスを変えるというのはトラブルがあったからではないのだろうか。

女友達の家で一緒に暮らしていると言っていたあの彼氏とはうまくいっているのだろうか。あの彼氏と交際し始めてから、消費者金融で借金もしているようだし、とにかく会って顔を見ない事には心配でたまらない……

平成25年9月30日、この女性は警察に娘の捜索願を出した。

変わり果てた娘

宮崎北署は母親からの捜索願を受け、連絡が取れなくなっている女性と同居している女友達と、交際相手の行方を追った。
平成23年10月1日、宮崎市内でその女友達と交際相手を発見。
同居していたとされる女友達名義のマンションを捜索すると複数の血痕が検出された。
それを受けて女友達を追及したところ、翌2日になって、
「彼女の遺体を切断して知人の家に置いている」
という驚愕の事実が判明。
別の女友達が暮らすマンションの一室を捜索したところ、部屋の中のクローゼットの衣装ケースの中から、圧縮袋に詰め込まれた「体の一部」が発見されたのだ。

県警は死体遺棄の容疑で宮崎市在住の無職・金丸真菜実(当時23歳)と、行方不明の女性の交際相手だった元飲食店従業員で無職の東竜二(当時28歳)を逮捕、後に遺体が置かれていた部屋に住んでいた無職の阿部麻里絵(仮名/当時22歳)も逮捕した。
遺体はこの時点で身元の断定はできなかったが、3人の話から連絡が取れなくなっているあの女性で間違いないとみられた。

女性は、宮崎市の澤木友美さん(当時27歳)。
その後の司法解剖などで本人であると断定された。警察は友美さんが殺害された可能性が高いとみて捜査を続けたが、3人とも遺棄容疑は認めていたものの、殺害については否認していたという。
「気づいたら冷たくなっていた」
これが、3人の主張だった。
友美さんの死因は、切断され腐敗が激しかったものの、複数の内出血の痕跡があり、当初外傷性ショック死とみられていた。

友美さんの死に、この3人は関与しているのか。そもそも、友美さんとこの3人はどういった関係なのか。
捜査が進むにつれ、そのおぞましい「四角関係」と「共同生活」があらわとなっていった。

【有料部分目次】
体脂肪率6パーセントの男
東ルール
3号と別格の4号
監禁と暴力
操る男
畑の出来事と、カレールゥ
女たち
量刑の差
往生際が悪いのか、頭がおかしいのか
恥知らず
怒れる裁判員
行為責任の枠

パラフィリア~関市・高齢夫婦殺害事件~

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「包丁で脅されて怖い思いをした。祖父母ともう話せないと思うと悲しいです。(被告人には)二度と私の前に現れないでほしいし、できるだけ長く刑務所にいてもらいたい。」

平成28年11月29日、岐阜地方裁判所。
この日、ある殺人事件の初公判が開かれた。事件は2年前の11月11日に起き、その後、犯行の残虐さ、逮捕された男の言動に不審な点があることなどから精神鑑定が行われるなど、初公判までには時間を要した。

結果を受けて検察は責任能力を問えると判断、この日ようやく初公判を迎えた。

検察は冒頭陳述のあと被害者の家族の調書を読み上げ、犯行の悪質さや被害者遺族の処罰感情が厳しいことなどにも触れた。

男は若干二十歳。
男の罪は、面識のない高齢夫婦をいきなり襲い、ふたりとも刃物で殺害するという残虐極まりないものだった。しかも、その動機は自己の欲求を満たしたいがために邪魔な存在を殺したという、被害者に一点の落ち度もないものだった。

しかも、その現場にはもうひとりいた。
この被害者夫婦の中学生の孫である。犯行はその孫娘の在宅中に行われた。

殺害は、単に通過点、目的を果たすための障害物除去だった。
男の本当の目的は、この孫娘との”太ももプレイ”だったのだ。 続きを読む パラフィリア~関市・高齢夫婦殺害事件~

🔓Folie à deux~ふたり狂い~・敷島町・保険放火殺人事件~

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アパートの火災

平成10年9月17日午後11時半、山梨県中巨摩(なかこま)郡敷島町の木造モルタル二階建てアパートの二階の部屋から出火。
火はその部屋を全焼して消し止められたが、焼け跡からは成人の焼死体が発見された。
その部屋に一人で暮らしていた男性と連絡が取れないこと、部屋はドアも雨戸もカギがかけられていたことから、この焼死体は住人の男性の可能性が高かった。

現場は町立敷島南小学校近くの住宅街で、近隣住民らは不安な夜を過ごしていた。

この男性は、約一か月ほど前に単身この部屋に入居したというが、21日になって、燃えた部屋の中から灯油の成分が検出された。季節は9月、灯油の暖房器具を使うには早かった。
鑑識の調べによると、特に今に敷いてあった布団の付近に灯油の成分が強く残っていたといい、死亡した男性はその布団から数m離れた窓際でうつぶせに倒れていた。
司法解剖の結果は一酸化炭素中毒。それ以外に、遺体に外傷はなかった。

ただ、実はこの男性、入居した直後の9月5日にも布団が焦げるボヤ騒ぎを起こしており、今回の火事との関連も考えないわけにはいかなかった。

警察は男性の親族や会社の関係者、知人などからトラブルがなかったかどうかを聞き、失火、自殺、あるいは放火による他殺の可能性も視野に捜査を進めていた。
男性は、会社員の米村文男さん(当時49歳)。

そんな中、火災から二日後の19日、火災で死亡した米村さんの元妻が自宅で服毒自殺を図った。

元妻の自殺未遂

幸いにも未遂に終わった元妻の自殺。当初は、別れた夫との関係に悩み、また、夫が死亡したことを知って後を追ったのか、そういう見方もあったが、入院中の元妻に任意で事情を聴いていくうち、この元妻が元夫の米村さんを殺害したことをほのめかしたため、さらに事情を聴いた。

元妻は「食べ物に睡眠薬を混ぜた。眠らせてから灯油をまいて火をつけた」と話したというが、捜査関係者らはどことなくその元妻の供述にあいまいな点があるのが気になっていた。

が、灯油を持ち込むのに使用したという複数のペットボトルが元妻の供述通りの場所から発見されたこともあり、24日、この元妻を殺人と現住建造物放火の容疑で逮捕した。
逮捕されたのは米村さんの元妻で、元旅館従業員の阿部佳寿乃(仮名/当時50歳)。佳寿乃は何らかの理由をつけて17日の午後10時20分ころ、米村さん宅を訪れた。そして、睡眠薬を仕込んだ葛餅を食べさせて眠らせた後、用意していた灯油をまき、火をつけて米村さんを一酸化炭素中毒で死なせたとされた。

司法解剖の結果、米村さんの胃の内容物から睡眠薬の成分も検出されていて、佳寿乃の供述はおおむね信用できた。

が、警察は佳寿乃がどうやら何かを隠している、誰かを庇っているような印象を持っていて、周囲の人々らに聞き込むなど身辺調査をした結果、この事件にはもう一人深く関与していると思われる人間がいることが判明。

佳寿乃は常々、その人物のことを「神様のような人。全幅の信頼を寄せている」と周囲に話していただけでなく、米村さんとの間にできた子供をその人物の養子にしていた。
さらに、警察は昨年の夏に米村さんと佳寿乃の離婚が成立した直後、米村さんに掛けられていた死亡時約4000万円の生命保険の受取人が、実弟に変更されていたことも掴んでいた。

佳寿乃が心酔していたというその人物は、米村さんの実弟の妻だった。

【有料部分目次】
義理の妹
東山梨の旅館
津久井の詐欺女
不協和音
弁護士との面会
父の声色と「神の子」
ふたり狂い

🔓逃げる女、追いかける男~3つのDVにまつわる事件~

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一度は愛した相手が肉体的、精神的、経済的、性的に暴力を振るうようになったら?
結婚前にはわからなかった、相手の本性はなぜか、そう簡単に別れることが難しいような状況になって初めて明かされることが多い。

たとえば結婚して、子供が出来るまでは、妻が仕事を辞めるまでは、家を妻の実家近くに建てるまでは……
男女問わず、相手の本性を知ったときにはすでに身動き取れない状況になってしまうこともある。

しかも厄介なことに、それらDVについて世間と被害者の受け止め方に大きなズレがいまだに存在するのだ。
束縛されるのは愛されているから、別れるなんて子供がかわいそう、専業主婦させてもらえるなんて羨ましい、女性からの暴力なんて可愛いもんだろう、そういうあなたにも悪い部分があるんじゃないの……

多くのDV加害者は非常に外面がよく、他人には良い夫、良い妻に見られがちである(人前でもやる奴はただのアホである)。だから被害者は相談しても周囲に理解してもらえず、そのうち相談すらできなくなり、自分が死ぬか相手を殺すかはたまた全員で死ぬかみたいな話に発展することもあるのだ。

配偶者ならば無理矢理SEXしたっていい、配偶者ならば子供の面前で罵倒したって良い、そんな勘違いをしている人は令和になっても山ほどいる。

配偶者であってもやっていいことと悪いことがあるという基本の事件、接近禁止命令下での凶行そして、邪魔した人を殺害した事件。
(以下の文章について無料部分有料部分にかかわらず、YouTubeその他への無断使用はお断りします) 続きを読む 🔓逃げる女、追いかける男~3つのDVにまつわる事件~

🔓イッシーの日記〜越谷・高校教諭監禁殺害事件〜

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「このメモが事件を解決する唯一の手がかりとなりました。息子がこれを書いていてくれて、本当に良かった……」

被害者の父親は、週刊誌の記者に対して絞り出すように話した。
息子が行方をくらましてすでに4ヶ月が経過していたが、警察の捜査の結果、静岡県の山中に埋められていたことが判明した。
発見された時、男性は両足が手錠に繋がれ、その体のほとんどは白骨化し、頭蓋骨には髪の毛すら残っていなかった。

事件自体は、金銭トラブルの解決のために被害届を出した男性を逆恨みした加害者グループが、犯行の発覚を恐れて男性を殺害して遺棄したというものだったが、実はこの事件は男性が失踪した直後から、いや正確にはその前から、ネットの世界で注目を集めていた。

被害男性はネット上に失踪直前まで「日記」をつづっていたのだ。それには事件をうかがわせる記述もあったことから、多くの人々が男性の安否を気遣っていたのだ。
公開捜査となってネット上の某掲示板には彼を心配するスレッドが立っており、そんな中での遺体発見だった。

出会い系サイトが乱立していたあの時代の特徴的とも言える事件だったが、それに加えて彼の遺した「日記」から見えるあまりの危機意識の薄さと事態の深刻さとかけ離れたその文面が色々な意味で注目されいまだに語られる事件である。

詳細は判決文も公開されており、多くの人がすでに知っているものではあるが、彼の日記と時系列とをリンクさせる形で振り返ってみたい。

【有料部分目次】
ある男性の失踪
嫌な予感
毟り取られる男
もう一人の女
夢見る男
事件前
悪い奴ら
それぞれの裏切り
静岡の山の中へ
「俺、殺されるかもしれない」
痛々しくも、憎めない人