彼は本当にやっていないか~愛知・男児連れ去り殺害事件①~

2002年7月28日深夜

愛知県豊川市白鳥町の複合型施設駐車場の駐車場で、「子供がいなくなった」と探す男性の姿が見られた。
友人やその子らとゲームセンターに遊びに来ていたというその男性によれば、一緒に連れて来ていた子供の姿が見えなくなったのだという。
施錠された車の中で寝ていたはずの乳児が忽然と姿を消したということだったが、大勢の人で賑わっていたその駐車場において、不審者や連れ去りを目撃した人間はいなかった。

翌朝午前5時50分。
駐車場から4キロ離れた三河湾に、幼い子どもの遺体が浮いた。
村瀬翔ちゃん、当時1歳10か月。
その日着ていたミッキーマウスの甚平を身に着けたまま、擦り傷以外目立つ外傷は見当たらなかった。

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彼は本当にやっていないか~愛知・男児連れ去り殺害事件②~

全面自供からの一転否認

河瀬は警察に対し、全面的な自供をしているが、なぜそのような自供をしたのか。
4月13日午前4時20分、警察は河瀬が寝泊まりしていた駐車場へ行き、寝ていた河瀬を起こして豊川警察署への任意同行を求めた。
この際、河瀬はまた嘘をついた。「今日は仕事があるから」と。
しかしその日休みであることはわかっており、警察はその河瀬の嘘からさらに疑いを深めたと思われる。

早朝たたき起こされた河瀬は任意同行に応じ、そのまま担当刑事から普段の生活の状況や車中泊をする理由などを聞かれた。午前6時ころからはポリグラフ検査が実施され、朝食を食べたのちまた取り調べが始まった。
取り調べの際、現場駐車場へ行った理由として、友達と待ち合わせていたとまた河瀬は嘘をついた。すかさず担当刑事が「それは嘘だろう!」と強く問い詰めたところ、同日8時半頃に寝場所を求めて現場駐車場へ行ったと話した。
そして、午前九時ごろに一旦は誘拐と海へ落したなどといったことを自供したものの、10時半ころには再び供述が変わり、連れ出したものの公園に置き去りにしたなどと言った。
その日の午後10時ころまで取り調べは続いたが、河瀬はその間否定を続けていた。
翌日、供述の基づいて現場へ河瀬を連れて行き、置き去りにしたという公園で、担当刑事が「何かまだ話してないことがあるんじゃないのか、このまま連れ去りの罪だけを償っても、一生後悔するよ」などといったところ、河瀬は泣きながら「ごめんなさい、本当は海に捨てました」と自白した。
それに基づき、捨てた場所へ案内させ、図面を作成させるなどしたうえ、4月15日、逮捕となった。
逮捕後、検察官の取り調べ、および担当弁護士らにも犯行を認める旨を話している。 続きを読む 彼は本当にやっていないか~愛知・男児連れ去り殺害事件②~

彼は本当にやっていないか~愛知・男児連れ去り殺害事件③~

まさかの逆転有罪

晴れて無罪となった河瀬は、2年9か月ぶりに自由の身となった。
記者会見に臨んだ河瀬は、いつもの気弱で自信なさげな印象はあるものの、少し笑顔も見られた。
一方、父親の純さんの心は複雑だった。警察からは「確実な証拠がある」と聞かされていたのに、裁判の過程で「これは!」といった証拠は一切出なかった。
純さんは、判決が出る2週間前に受けた雑誌の取材で、「秘密の暴露もなかった。真犯人はほかにいるのかな、という思いもある」と答えている。それほどまでに、矛盾だらけの裁判であった。
無罪判決の後、純さんは、「真犯人を見つけてほしい」と話した。

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「疑わしきは、罰せず」を貫いた法廷~広島・家族3人放火殺人事件~

2001年1月17日未明

広島市西区己斐大迫1丁目の住宅街に、火の手が上がっていた。
二階建てのさほど大きくはないその家は炎に包まれ、二階部分も赤く火の手が迫っていた。
驚いて飛び起きた近隣住民の耳に、ふと子供の声が聞こえた。
「おねーちゃーん!おねーちゃーん!」
この住宅には、中村小夜子さん(当時53歳)と長女が暮らし、そして小夜子さんの孫である彩華ちゃん(当時8歳)と、妹のありすちゃん(当時6歳)の姉妹が良く泊まりに来ていた。

住民らの脳裏に幼い姉妹の姿がよぎった。

間一髪逃げ出せた長女は助かったものの、焼け跡から小夜子さんと幼い姉妹の遺体が見つかった。

検視解剖の結果、彩華ちゃんとありすちゃんは焼死と断定されるも、小夜子さんは首を絞められるなどして火にまかれる以前に死亡していたことが判明、事態は放火殺人の様相を呈してきた。
しかし、犯人の手掛かりはなく、5年経ってもその事件は解決を見ていなかった。

2006年、詐欺容疑で逮捕起訴されていた男性が、その取り調べの過程でこの2001年の事件への関与を認めているとして、広島県警は殺人と現住建造物等放火の疑いでその男性を逮捕した。
男性は、亡くなった小夜子さんの息子で、同じく亡くなった姉妹の父親であった。

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「疑わしきは、罰せず」を貫いた法廷~広島・家族3人放火殺人事件②~

事件が男性にもたらした「利益」

そもそも男性がここまで疑われたのは理由があった。
男性は先にも述べたとおり、経済的に非常に困窮する人生を送っていた。職に関する面もあったと思われるが、証言台に立った妹によれば、以前から「だらしなさと狡猾」な一面を持っていたという。
妹は自分の名前で借金を作られていた。そればかりか、兄である男性の借金の尻拭いのために、実家の喫茶店で働いて得るはずの給料が全額貰えないこともあったという。
さらに、男性は事故も何度か起こしており、そのたびに母親にその後始末を押し付けたり、金をせびりに来ることもあったという。
A子さんと離婚して児童扶養手当をもらうという話が母親の小夜子さんの耳に入ったときは、小夜子さんはうんざりしたような顔をしていた。
夜も眠れず、ハルシオンを服用することもあったそうだ。

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