難病の息子に手をかけた老母の「限界」~塩釜市・息子殺害事件①~

平成14年5月22日午後10時30分

「もうこんな時間……」
時計を見た母親は、いつものように息子の様子を見に部屋へと向かった。
狭い市営住宅の一室。それでも痛む足を庇いながらの歩行は、老齢の身に堪えた。

部屋を覗くと、息子はベッドの上にあおむけになっていた。
テレビはついていたが、息子はどうやら眠っているようだった。
「もう、今しかない」
母は決断した。

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難病の息子に手をかけた老母の「限界」~塩釜市・息子殺害事件②~

その夜

遺書をしたためて以降、なるべく早いうちに決行しなければと思いはしたものの、それでも富久男さんの顔を見るとその決意は揺らいだ。
そして5月22日の夜、様子を見に行った際に富久男さんが寝入っていることを確認したとき、母の心は決まった。

「眠っている時ならば、苦しまずに死ねるのではないか」

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おもいあがり~愛媛・高知同居男性傷害致死死体遺棄事件①~

平成32年1月27日

「被告と被害者は、一心同体だったのです」

高知地裁204号法廷。
その裁判は、こんな弁護人の冒頭陳述から始まった。
被告人席に座るのは、長身で面長、銀縁の眼鏡をかけてうつむく男。長身のわりに、どこか自信のなさそうな、気の弱そうな印象を受ける。
男は2年前の冬、愛媛県西条市で同居していた60歳の男性に暴力を振るい、そのあげくに死亡させ、さらには遺体を高知県いの町まで運んで焼き棄てた疑いで起訴されていた。

罪状は、傷害致死および死体損壊、遺棄。先に起訴、審理された死体損壊と遺棄については男も認めている。

しかし男は、傷害致死を否認していた。

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おもいあがり~愛媛・高知同居男性傷害致死死体遺棄事件②~

「ほどいて」

8月18日午後5時半ころ、野田さん宅の近くにある石岡(いわおか)神社の宮司は、社務所のインターフォンを鳴らした野田さんを見て仰天する。
野田さんは全裸で、両手をナイロン製の細いロープで後ろ手に縛られ、両肩をたすき掛けのような状態でロープを通された上、首は輪にしたロープでくくられていた。 続きを読む おもいあがり~愛媛・高知同居男性傷害致死死体遺棄事件②~

おもいあがり~愛媛・高知同居男性傷害致死死体遺棄事件③~

死因

弁護側が傷害致死を認めないのには理由があった。
野田さんの死因は、「多発外傷性ショック死」とされており、たとえば首を絞められたとか、刃物で刺されたとか、そういったはっきりとしたものが死因ではなかったのだ。
遺体を解剖した高知大学の古宮医師によると、野田さんの遺体には、外傷性硬膜下血種、多発ろっ骨骨折、広範囲に及ぶ皮下軟部組織損傷が認められ、それらが合わさったことによる多発外傷性ショック死が死因であった。
それらは野田さんの死の直前(数時間前から半日以内)にできたものが大半であり、これ以外にも多数の外傷が野田さんの体には残されていた。
実際、光洋も野田さんが死の直前に、椅子からずり落ちて側頭部を強打したことを供述している。 続きを読む おもいあがり~愛媛・高知同居男性傷害致死死体遺棄事件③~