難病の息子に手をかけた老母の「限界」~塩釜市・息子殺害事件①~

平成14年5月22日午後10時30分

「もうこんな時間……」
時計を見た母親は、いつものように息子の様子を見に部屋へと向かった。
狭い市営住宅の一室。それでも痛む足を庇いながらの歩行は、老齢の身に堪えた。

部屋を覗くと、息子はベッドの上にあおむけになっていた。
テレビはついていたが、息子はどうやら眠っているようだった。
「もう、今しかない」
母は決断した。

続きを読む 難病の息子に手をかけた老母の「限界」~塩釜市・息子殺害事件①~

難病の息子に手をかけた老母の「限界」~塩釜市・息子殺害事件②~

その夜

遺書をしたためて以降、なるべく早いうちに決行しなければと思いはしたものの、それでも富久男さんの顔を見るとその決意は揺らいだ。
そして5月22日の夜、様子を見に行った際に富久男さんが寝入っていることを確認したとき、母の心は決まった。

「眠っている時ならば、苦しまずに死ねるのではないか」

続きを読む 難病の息子に手をかけた老母の「限界」~塩釜市・息子殺害事件②~

本当に辛かったのは、誰か~深谷市・利根川心中未遂事件~

平成27年11月21日

埼玉県熊谷市と深谷市を流れる利根川。
そこに一台の軽乗用車が浅瀬で立ち往生していた。
川岸には、ずぶ濡れで膝を抱えてうずくまる女性。

好きな歌を口ずさみ、空を見上げていると、夜が白々と明けてきた。体は冷え切り、それでも睡魔が襲ってくる。

午前八時。
その頃警察には110番通報が相次いでいた。
「川に不自然な形で車が突っ込んでいる」
「利根川に人のようなものが浮いている」
警察が駆け付けたところ、高齢女性の遺体が川に浮いていた。さらに、上流で高齢男性の遺体も発見された。
川岸でうずくまっていた女性も保護され、調べで3人は親子であることが判明。
軽自動車は女性の所有で、女性の供述から親子で心中を図ったことが分かった。

続きを読む 本当に辛かったのは、誰か~深谷市・利根川心中未遂事件~

本当に辛かったのは、誰か~深谷市・利根川心中未遂事件②~

批判の矛先と雨宮処凛

生活保護を申請しながら、しかもほぼ生活保護受給が決定するであろう状態で一家心中の道を選んだこの事件は、それまでの心中事件とは異なっていた。
このサイトでも取り上げている京都伏見の母子心中未遂事件では、生活保護の受給が出来なかったことも大きな要因と認定されているし、それ以外の介護や貧困が根底にある心中や自殺などでも、役所の怠慢や故意に受理しないと言った現状も問題視されてきた。 続きを読む 本当に辛かったのは、誰か~深谷市・利根川心中未遂事件②~

京都・伏見認知症母親心中未遂事件その顛末①

スポンサードリンク

2006年、2月。

その日は冷たい雨が降っていた。54歳になる息子は、86歳の母親の車いすを押しながら、思い出深い京都・伏見の桂川遊歩道を歩いていた。
まだ人影もない、真冬の早朝。ふたりは前日の夜中から、あてもなく極寒の冬空の下を彷徨っていた。

「もう生きられへん、ここで終わりやで」
そういう息子に、母は動揺もせずに答えた。

「そうか、あかんか。」

母との最期の言葉をかわし、息子はその母の首に手をかけた。

数時間後、自身も首を切って自殺を図った息子と、息子のそばで息絶えた母親が発見された。息子は死にきれなかった。

京都・伏見で起きたこの事件は、認知症の年老いた母親をたったひとりで抱える息子の苦悩と、福祉サービスの限界などもクローズアップされ、他人事ではないと感じる多くの人から同情が寄せられた。

判決は、懲役2年6か月、執行猶予3年という入れとも言える温情判決であった。
続きを読む 京都・伏見認知症母親心中未遂事件その顛末①