思いつきで押した死刑判決へのピタゴラスイッチ~帯広市広尾町・幼児3人殺傷事件~

平成13年8月8日午後二時半

「警察に電話する!」
幼い少女は、泣きながら震える声でその男に精いっぱいの抵抗を見せた。
目の前には見上げるような巨体の男が、カッターナイフを手に立ちはだかっていた。
「電話するな!」
男の大声にそれまで固まっていた体が反応した。少女は一目散に玄関へと走ったが、男に左肩を掴まれた。
ものすごい力でリビングの床にあおむけに倒された少女は、男がカッターナイフを振り上げるのを見た。

取っ組み合いのさなか、男が手にしたカッターの刃が折れた。男は思い立ったように台所へと消えた。少女はその隙に、玄関を出ていった。胸が焼けるように痛い。家にはまだ弟と妹がいる…

家の中では、二階から降りてきた弟と妹が、包丁を手にしたその男と向き合っていた。
隣の家の、ボンズ頭の大きい兄ちゃん…その兄ちゃんが、5歳と2歳の姉弟の命を奪った。

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思いつきで押した死刑判決へのピタゴラスイッチ~帯広市広尾町・幼児3人殺傷事件②~

死刑判決

裁判では、金銭目的での侵入のうえ、幼い姉弟3名を殺傷したとして、住居侵入,殺人,殺人未遂が認定された(事後強盗は否定)。

及川は犯行後、ふらふらと道路を歩いていた。
逃げきれないと思い、午後3時30分に自首しているが、積極的な自首とは言えないとされた。
というのも、あれだけ探して見つからなかった母親と、道で遭遇していた。おそらく母親は自宅に戻っていて、事件を知ったと思われる。その際に、母親は及川に対し「お前がやったんじゃいか?」と問い詰めており、その母親に説得されての自首であったからだ。
その上で、事件以前に犯歴がないことや、現在では被害者に謝罪する気持ちを持っていること、年齢的に若いこと、及川の両親が100万円をすでに慰謝料の一部として支払っていることなど、及川に有利な点を考えたとしても、極刑はやむを得ないとした。

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妻だけを生かした一家皆殺し男の「本音」~中津川・一家6人殺傷事件①~

2005年2月27日

すぐ目の前に山が迫る岐阜県中津川市・坂下町の「住宅」。
その男性は、なにか心のざわつきを感じながら、勝手知ったる「その住宅」の玄関を開けた。
昼間ではあったが、家の向きの関係で家の中は薄暗く、いつもならば昼間でも電気がついているはずなのに、その日はついていなかった。
この日、男性はインフルエンザで体調がすぐれず在宅しており、実家である「その住宅」に子どもたちを連れて遊びに行った妻の帰りを待っていた。
そこへ、ひょっこり妻の父親が顔を出した。
「下(実家)でみんな待っとるから、行こうか」
小柄でにこやかな義理の父は、いつもと変わらない表情でそう告げ、男性と共に軽自動車で「その住宅」へと向かった。
子どもたちもいるはずの家の中は静まり返り、男性は不安を覚える。背後にいる義理の父に、みんなは?と聞くと、「ばあちゃんの部屋におる」と言うので、その部屋へ向かうが、その部屋は真っ暗で人などいる気配もしなかった。

「Tさん、死んでくれ」

気がつくと、男性は腹部に包丁が刺さっていた。

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妻だけを生かした一家皆殺し男の「本音」~中津川・一家6人殺傷事件②~

束の間の平穏

同居してすぐ、またもチヨコさんは物がなくなったといっては家族を泥棒呼ばわりし始めた。
ただ、その程度であればまだ耳をふさいでさえいればやり過ごすこともできた。
父親が生きていたころは、父親がチヨコさんを諫めたり、原や妻を庇うなどしてくれていたため、同居した当初は一緒に食事もし、家族の体をなしていた。

しかし、父親が他界したのち、その言動は次第に常軌を逸していく。

言葉だけだったチヨコさんの妻に対するいびりは激しさを増した。時には、突然妻の頬を平手打ちするなど、暴力行為にも及び始めた。
通帳がなくなった、服がなくなった、とにかくありとあらゆることで妻を罵倒した。
原が仕事から帰宅すると、妻は部屋で泣いていることが増えた。
子どもたちの教育にも良くない、これでは家庭が壊れてしまうと思った原は、昭和59年頃に神奈川県小田原に住んでいた弟にチヨコさんを託す。
弟は原に比べてチヨコさんの扱いがうまかったこともあり、また、チヨコさんの性格もわかっているためにこれを承諾、月に1~2回は中津川の原宅へ戻るという生活を始めた。

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忌まわしき過去の清算と代償~山形・一家3人殺傷事件~

2006年5月7日

まだ夜も明けきらぬ午前3時55分。
山形県西置賜郡飯豊町の役場近くの民家から、女性の声で119番通報が入った。
「助けて!お父さんが殺される!」
尋常ではないその声に、すぐさま消防と警察が駆け付けた。
現場には、その家の主人であるカメラ店経営・信吉さん(当時60歳)と、その妻で看護師の秀子さん(当時55歳)、そして、夫婦の長男である覚さん(当時27歳)が血まみれで倒れていた。
秀子さんはかろうじて意識があったものの、信吉さんと覚さんは死亡していた。
襲われる理由が見当たらないとする中、約6時間後、近くの山中にある神社で血まみれで座り込む男が発見された。
男は、伊藤嘉信(当時24歳)。殺害された被害者家族とは親戚関係にあり、自宅も同じ組内に存在するほどの古くからの知り合いであった。

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