ずるいヤツら~新生児殺しを誘発する人々①~




まえがき

妊娠は、本来誰からも祝福されるものだ。新しい命が宿り、十月十日を一緒に過ごし、ともに親子へと成長するその過程は、母親となる女性にとっても素晴らしいことである「はず」。

しかしその妊娠が、自分の人生をより困難に、時にはぶち壊す存在にしか思えなかったとしたら。
その存在が、自分や今いる家族のなかでまったくの「不要」なのだとしたら。

虐待とは少し違う、最初から要らなかった、生まれてもらっては困る命をその手で葬る母親がいる。当然彼女らは責められ、社会的、法的に責任を取らされ、世間からは鬼母、異常者、馬鹿者と罵られる羽目になる。
ただそれまでの過程を見てみれば、母親が一貫して「いらない」と思っていたというわけでもないケースが多々見受けられる。むしろ、そう思えなかったが故の、というものもある。それはひとえに、新生児殺しが母親「以外」の要因があってこそ、起こるものであるからだ。

自身の命を懸けて出産したわが子を手にかけざるを得なかった母親たちの陰で、神妙な表情をしながら目を泳がせている人々の存在に焦点を当ててみたい。

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「うじ虫」と呼ばれた妻が遂げられなかった本懐~伊丹市・夫殺害未遂事件~




平成13年8月15日

「うじ虫。出ていけばええやん。」

夫の暴言は今に始まったことではなかった。これまでに何度、どれほどの暴言を吐かれてきたか。
いつものように、言い返すこともできた。いつものように、とりあえず外へ逃げて気分を落ち着かせることもできた。

けれどこの日、妻は逃げなかった。
妻は台所で文化包丁を手に取ると、茶の間で寝そべってテレビを見ながら馬鹿笑いを続ける夫の背後に、静かに正座した。

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まばゆすぎた隣の芝生~浦和市・社宅乳児殺害事件①~




平成12年8月19日午前11時15分

「あら、この傷どうしたのかしら……

母親は、生後半年の娘の手と足に、爪痕と痣があることに気が付いた。
酷くはなかったが、今朝着替えをさせた際にこんな傷あとは気づかなかった、というよりも、なかった。
「爪が伸びてたのかな、何か気付かなかった?」
母親は、たまたま遊びに来ていた同じ社宅に住むママ友に何気なく訊ねた。
「このくらいのときは、よくあることよ」
ママ友は事も無げにそう言って笑った。
そうよね、気にしすぎね。母親は腕の中の娘に微笑んだ。 続きを読む まばゆすぎた隣の芝生~浦和市・社宅乳児殺害事件①~

まばゆすぎた隣の芝生~浦和市・社宅乳児殺害事件②~




嫉妬

検察は、恵子を殺人未遂で起訴した。
当初、「死んでもいいと思って落とした」と話していた恵子だったが、ここへきて「傷害目的で、殺意はなかった」と殺意については否認していた。

検察官の取り調べに対し、恵子は美保ちゃんに行った加害行為について、
①右腕をひっ掻き、両太ももを数回つねった
②サッシ窓のアルミ枠に、美保ちゃんの左側側頭部をうちつけた
③真理子さんからミルクを手渡され、美保ちゃんにミルクを飲ませようとしたが飲まなかったため、哺乳瓶の乳首を無理やり美保ちゃんの口に押し込み、口の中に傷を負わせた
④恵子宅に真理子さん母娘を呼んだ際、真理子さんが席を立った隙に、高い高いをする要領で美保ちゃんを頭上にかかげ、そのまま回転するように170センチほどの高さから厚さ4センチのベビーマットに放り投げた
このように供述した。 続きを読む まばゆすぎた隣の芝生~浦和市・社宅乳児殺害事件②~

おもいあがり~愛媛・高知同居男性傷害致死死体遺棄事件⑥




ふたりの証人

検察は、野田さんと光洋の関係を知る証人を男女二人用意していた。
ひとりは、Tさん宅での様子をよく知る久保田さん(仮名/60歳くらい)。建設関係の仕事をしており、その関係でTさんとはかねてよりの知り合いだという。もうひとりは、野田さん宅の近くにあるローソンの店員で、野田さんと光洋を知る岡村さん(仮名/40歳くらい)という女性である。 続きを読む おもいあがり~愛媛・高知同居男性傷害致死死体遺棄事件⑥