「うじ虫」と呼ばれた妻が遂げられなかった本懐~伊丹市・夫殺害未遂事件~

平成13年8月15日

「うじ虫。出ていけばええやん。」

夫の暴言は今に始まったことではなかった。これまでに何度、どれほどの暴言を吐かれてきたか。
いつものように、言い返すこともできた。いつものように、とりあえず外へ逃げて気分を落ち着かせることもできた。

けれどこの日、妻は逃げなかった。
妻は台所で文化包丁を手に取ると、茶の間で寝そべってテレビを見ながら馬鹿笑いを続ける夫の背後に、静かに正座した。

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嗤う男の化けの皮~藤沢市・OL放火殺人事件①~

平成15年6月2日

「被告人は、無罪。」

この日、横浜地裁で行われたとある放火殺人事件の判決公判の主文が読み上げられると、法廷内はどよめいた。
傍聴席の最前列で固唾をのんでこの時を待っていた初老の夫婦は、手をぐっと握りしめたまま目を閉じた。
「美穂ちゃん…」
心の中で愛しい娘への思いが溢れる。あの日、「これでやっと自由になれる!」と大の字になって寝ころび、微笑んだ娘。
夫婦の最愛の娘は翌日、自宅アパートで焼死体となって発見された。
しかし、その時娘は一人ではなかった。別れると決めていた交際相手の男性がその部屋にいたのだ。しかも、男性は娘が無理心中を図ったと言った。

「そんなことがあるはずがない。自殺など、ましてやあの男と無理心中を図るなど、断じてあり得ない!」

両親には確信があった。さらに、事件の3年後に両親が起こした民事裁判では、一審から一貫して男性が殺害したと認定され、すでに最高裁で確定していたのだ。
にもかかわらず、この日の刑事裁判で男性は無罪とされた。 続きを読む 嗤う男の化けの皮~藤沢市・OL放火殺人事件①~

母に諦められた幼い命~広島・二児虐待死体遺棄事件~

平成12年10月末

広島東署。
その日、一人の女が知人に付き添われて警察署へ被害届を出しに来た。
知人の説明によると、女の交際相手であった男から、金品を脅し取られているということだった。
署員が調書をまとめていると、その知人は続けて驚くべき話をし始めた。
「この人の二人の子供の姿が見えない。もしかしたらその男に殺されてどこかに捨てられているのかもしれない」
突飛な話に驚く署員をよそに、母親であるその女はあまり口を開かなかった。
警察は、まず被害届を受理した恐喝の容疑で、広島市中区在住の男を11月28日に逮捕、その後の取り調べで男が
「1年前、(被害届を出した)女性の長女と長男を虐待したら死んだので、山に捨てた」
と供述したことから、呉市内と安芸区内の山中を捜索。
12月1日、それぞれの場所から二人の遺体と思われる頭骨やその他の骨片などが発見されたのだった。 続きを読む 母に諦められた幼い命~広島・二児虐待死体遺棄事件~

母に諦められた幼い命~広島・二児虐待死体遺棄事件②~

6歳児の命乞い

9月26日、午前零時。
この日、慶樹くんは夕食を食べることが出来ていた。しかし、それが鷹尾は気に入らなかった。
「腹が膨れとるじゃないか!」
そういって約30分にわたって殴る蹴るの暴行を加えた。慶樹くんは何度も何度も、「ごめんなさい」と口にしていた。
大の字に倒れこんだ慶樹くんに、なおも「はよ立て!」と命令し、慶樹くんが何とか手で体を支えながら立ち上がると、鷹尾は大型のスポーツバッグ(底の幅33センチ、高さ33センチ、横幅73センチ)と、黒色のゴミ袋を持ってきた。
そしてゴミ袋をスポーツバッグの中に広げて入れた上で、「汚いけぇ、よういらわん(触れない)」と言って、慶樹くんに自らその中に入るよう命じた。
よろよろしながらも、言われるがままに慶樹くんがゴミ袋の中で正座すると、鷹尾はファスナーを閉じ、自分らが寝る布団の脇に置いた。
その後、横になっていると、バッグの中から何の音もしないことから、ファスナーを開けて「死んだふりか!」といったところ、慶樹くんが指を出してきたことに気付いた。 続きを読む 母に諦められた幼い命~広島・二児虐待死体遺棄事件②~

母に諦められた幼い命~広島・二児虐待死体遺棄事件③~

量刑不当

判決が言い渡されたその日、傍聴席には何とも言えない空気が覆いかぶさっていた。
広島地裁の田辺直樹裁判長が、慶樹くんと祥子ちゃんの味わったこの世の地獄、そして離れ離れの山中で白骨化したことへの思いを述べる一方で、殺意を認定せず傷害致死として求刑をはるかに下回る判決を出したことへの違和感も漂っていた。 続きを読む 母に諦められた幼い命~広島・二児虐待死体遺棄事件③~