だってあの子が悪いのに~鹿嶋市・女性リンチ生き埋め事件②~

狂乱

由香里さんの両親に門前払いを食らった雅美らは、その怒りを由香里さんに向けることになる。
弘子の自宅へ由香里さんを連れて行き、男らも含めて由香里さんを問い詰めた。問い詰めるだけでは飽き足らず、熱湯をかけたり、ゴキブリを食べさせたり、それは常軌を逸していく一方だった。
この日から由香里さんは雅美らによって監禁状態に置かれる。
10月26日、雅美らは車2台に分乗して由香里さんを波崎町の日川浜へ連れていく。
そこで、伊藤や清水が中心となって、由香里さんに殴る蹴るの暴行を働いた。
砂浜に穴を掘って由香里さんの首から下を地中に埋め、その頭部を棒で殴ったり、足で蹴るなどし、由香里さんの顔や頭から出血すると、海水で洗ってさらに痛みを与えた。


28日には鹿嶋市平井の海岸で、君和田を除く5人で暴行を加えたのち平井漁港へ連行すると、岸壁から由香里さんを海に何度も突き落としておぼれる様子を楽しんだ。
その深夜、今度は展望台へと由香里さんを連れて行き、さらに激しく顔面や腹部を殴る暴行を加える。
由香里さんは目の周りにあざができ、顔が原型をとどめないほど腫れあがり、口からも出血していた。
何度も海に突き落とされていた由香里さんは激しく衰弱し、もはや自力で歩行することも困難な状態になっていく。

ここでようやく5人は「ヤバくね?」と気付く。
しかし、彼らがその足りない頭で必死に考えて出した解決策は、由香里さんを消すことだった。

生き埋め

5人の中で一番ビビっていたのは、伊藤と清水だった。
伊藤は平成11年に道交法違反、有印私文書偽造、同行使の罪で弁当持ちの状態、清水も平成12年に建造物侵入や窃盗、暴行などの罪でこれまた弁当持ちの状態だった。
由香里さんへの暴行が発覚すれば即刑務所となるため、なにがなんでもそれは避けたかった。
5人は相談し、伊藤が最近見た映画を思い出し、「暴力団は生き埋めにして始末する」と言い出し、5人は由香里さんを生き埋めにして殺害と遺棄と隠ぺいを一度で終わらせようと企んだ。

5人は地べたに正座させた由香里さんを取り囲むようにして座り、由香里さんついて話し合った。そして5人全員が「そうするしかない」と決めた。
由香里さんを殺害するために埋めることに5人が躊躇しなかったには理由があった。由香里さんは何年も前から実家とは疎遠だったとみられ、また、由香里さんの借金を親が肩代わりしてくれなかったことを、この5人は
「親にも見捨てられた女」
と、勝手に決めつけていたのだ。もちろん実際はそうではない。
だから、由香里さんの行方が分からなくなっても、今更捜索願なども出されない、由香里さんがいなくなっても誰も困らない、そう考えていた節がある。

伊藤が所用でいったん離れたのち、4人は君和田宅へ向かう。
弘子は当時同棲していた君和田に、「埋めるのにどこかいい場所はないか」と相談した。君和田は、自分がそれにかかわっていないから安心していたのか、実家の近くの無耕作地なら発見されないのではと考えた。
地図を書いて弘子に渡し、君和田以外の5人は由香里さんを車のトランクに押し込めると、スコップなどを調達して現場へと車を走らせた。

由香里さんはすでにひどい暴行を受けており、一人で立っていられない状態だったが、5人は由香里さんに「これからお前を埋める」と宣言したうえで、由香里さんをトランクから引きずり出した。
恐怖に泣き叫ぶ由香里さんをさらに殴り、体力を消耗させるために足踏みや腕立て伏せなどを強制してやらせた。
そして、由香里さんに自分を埋めるための穴を掘らせたのだ。

由香里さんは穴を掘らされ、その中に無理やり押し込められても激しく抵抗した。それを、スコップの先で脅し、さらには倒れこんだ由香里さんの上に清水が馬乗りになって動きを封じ、他の者がどんどんと土をかけていった。
ほぼほぼ土で覆われた状態になっても、土中からは由香里さんのうめき声が聞こえていたという。
それを聞くや、5人はかわるがわるその土を上から踏み固めて行った。
土中の声は、やがて聞こえなくなった。そして、発見される9か月の間に、由香里さんは骨になった。

女たち

裁判では5人とも罪を認めた。雅美は、由香里さんの事件以外に平成16年、覚せい剤を自宅で使用した罪でも裁かれた。
6人のうち、由香里さん殺害を主導したのは伊藤とされたが、そもそもの発端は雅美が財布を由香里さんに盗られたという思い込み(由香里さんは認めたが、事実かどうかは不明)であり、雅美と伊藤、そして清水は1年程度の差はあるものの、それぞれが13年から16年の懲役が求刑された。

また、弘子も「積極的に加担した」として懲役13年、千秋に至っては「主導的な立場にいた」として懲役15年が求刑された。

千秋はそもそも、交際相手の清水の名前を由香里さんが出したことで、たまたま話に加わっただけ、の存在だったはずだ。それがなぜ、由香里さんを殺害するのに主導的な立場になったのか。

実は千秋には、由香里さんに対して私怨があった。

清水と千秋は元夫婦であるが、その際、いわゆる美人局を働いていたことがあった。それを、由香里さんが他人に話していたことを恨んでいた。
さらに、由香里さんと清水が肉体関係を持っていたことも、千秋にとっては許せないことだった。千秋は、雅美らが持ち込んだ由香里さんのトラブルを、自分の恨みを晴らすために利用したのだった。

他方の雅美にも、実は由香里さんに対して恨みがあった。
電話ボックスに財布を置き忘れたあの日、先にも述べたように雅美は携帯電話の料金を支払うための金を用意していた。
それが、財布をなくしたために支払うことができないでいた。焦った雅美は、売春して金を作ろうと考え、当時個人的に売春を行っていた由香里さんに連絡したのだ。
そして、由香里さんから紹介された客に対し売春を行ったのだが、その後、雅美は著しく体調を崩したという。
雅美は親友の弘子に事の次第を説明し、弘子は由香里さんに「客が何かしたのではないか」と詰め寄った。
すると由香里さんは、雅美に客を紹介するにあたって、客の男に「金さえ払えば何をしてもいいから」という条件を勝手につけて、雅美に紹介していたと話した。
一部の情報によれば、雅美はそれほど外見が良いわけではなかったらしく、由香里さんにしてみれば客を回すうえでのアピールポイントとして、そのようなことを言ったと思われる。
何をしてもいいから、そういわれて雅美の元へ行った客は、覚せい剤の売人だった。
雅美はその時、覚せい剤かどうかはわからないが、なにか薬物を盛られていたというわけだ。

そして、雅美の財布を盗んだのも、実は由香里さんだったとここで雅美は知ることになったのだ。

財布を盗まれただけでここまでリンチに発展するのか、と思っていたが、実はそれ以外にも、女たちには理由があったのだ。

だってあの子が悪いのに

由香里さんに対しては、事件の詳細が分かるにつれてバッシング的なものも一部あった。叩きはしないにしても、ド底辺の人間による特殊な事件として、由香里さんに対しても侮蔑的な見方が多かったのも事実だ。
たしかに、由香里さんは奔放な生活を送っていたし、雅美の財布の件の真偽は別として、由香里さんの不用意な言葉が雅美を傷つけたのは事実である。まかり間違っていれば、雅美は死亡していた可能性もある。

しかしそれ以外は、雅美以外の5人が由香里さんにどれほどの確執があったかと言えば、正直しょうもないことばかりだ。
弘子は親友の雅美への思いがエスカレートした可能性はあるが、男たちがなぜここまで由香里さんに暴行を加えたのか。
伊藤にせよ清水にせよ、一度は関係をも持った由香里さんを、他人のトラブルで加勢する必要など本来どこにもない。
そもそも、弁当持ちの清水と伊藤は、加勢を依頼された時点で「いや無理やし」と、なぜならなかったのか。

清水はおそらく、千秋の手前もあったのだろう。裁判でも、千秋は積極的に由香里さんへの暴行を煽ったと認定されている。ここぞとばかりに、雅美のトラブルを口実に、自分の男を使って由香里さんへの恨みを晴らそうとしたのだ。

そんな千秋と、清水は再婚したいと法廷で述べた。傍聴していた遺族の心中を思うといたたまれない。
しかもそれが、なぜか情状酌量となっている。
由香里さんは、決して両親から見放されていたわけではなかった。由香里さんの身を案じ続けた父親は、白骨遺体が由香里さんであると、雅美らが逮捕されるより何か月も前に知らされていた。
裁判では、「鬼としか思えない」と、遺族としての心情を述べている。
また、由香里さんには子供がいた。その幼い男の子を育てていたのは、おそらく由香里さんの両親だったのではないか。
これは私が個人的に知り得た話で、信ぴょう性でいうと心もとないのだが、由香里さんが埋められた場所の畑の持ち主の枕元に、見知らぬ女性が立ったという。もちろん、それは何の関係もない話かもしれないが、実際に6人のうちの一人も同じことを話していた。

雅美には懲役15年、伊藤と千秋に懲役14年、清水に懲役13年、弘子には懲役12年、そして殺害にこそ加わらなかったものの、遺棄現場を教えるなどして殺人ほう助の罪に問われた君和田には懲役5年が言い渡され、のちにそれぞれ確定した。

6人と由香里さんは、地方都市の片隅でそれぞれがそれなりに生きてきた。
女たちは売春に風俗、時に美人局など犯罪との境目を綱渡りしながら生きていた。男たちも、それぞれ学歴も何もいらない世界の、その中でも自分たちを受け入れてくれるところだけを選んで生きてきた。
顔見知りの関係がいつしか体の関係となり、また別の人間と関係してはその友達の友達ともつながっていく…

その生活はどんなものなのだろうか。
裁判では、清水の母親は証言をしたというが、ほかの5人は家族による情状証言はなかったのだろうか。
まるで子供の、おもちゃを盗った盗られたレベルの話が、数日の間に人を生き埋めにするという事態に発展したのは、この6人のそれまでの人生に守られるものや守りたいものが全くなかったことの表れに思える。ただただ、その日をしのぐことで精いっぱいの、なんの楽しみも夢もない目の前のものを消費するだけの人生。
そこにふと降ってわいた「悪い子」の存在。それは、6人にとって最高のうっぷん晴らし、生贄だった。


だってあの子が悪いんだから。

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「だってあの子が悪いのに~鹿嶋市・女性リンチ生き埋め事件②~」への4件のフィードバック

  1. 財布を盗った事を認めたとの事ですが詰め寄られて怖くて盗っていないのに盗ったと言ってしまったという事はないのでしょうか?
    そこが気になりました。

    1. まさゆき さま
      コメントありがとうございます。
      その可能性はありますし、裁判でも被害者が財布を盗ったとは認定されてません。
      あくまでも加害者の話を総合しているだけですね。
      他の事件でもあるのですが、やってもいないことをその場を「終わらせる」ためにやったと嘘の自白をする人は沢山います。だから冤罪が起こるわけですが、自分で物事を考えることが苦手だったり、先を見通す力が弱いと、その場しのぎの嘘で誤魔化してしまう。
      おそらく、この被害者もそうだったのではないかと思います。

  2. オモチャを盗った、盗られた?
    殺されたユカリは雅美の財布を盗んで、他人のお金を使い、更に証拠隠滅する為に下水にその財布を投げ込んだ。
    その時点で『窃盗罪』や『専有物離脱横領罪』の罪に問われる。
    相変わらず、アンタの表現方法は奇妙でおかしい。
    まぁこのコメントもアンタは公開せんし、返信もせずに逃げるんやろうけどw
    もっと勉強しな。

    1. 財布を盗ったことは事実認定されていません。ちゃんとその旨記事中にも書いてありますので、熱くならず冷静に読んでいただければわかることなのですが…笑
      裁判記録では、雅美の思い込みの可能性が示されています。
      それから、おもちゃを盗った盗られたというのは、財布の話を例えたのではありません。
      いつもハラワタ煮えくりかえりながら読んでくださってお疲れ様です笑

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