ある少年の死~明石市・日本刀重過失致死事件~

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ある夜の夫婦喧嘩

明石市内の団地のとある一室。そこで暮らす夫婦が囲んでいた夕餉は、冷え切っていた。
妻は前々日に夫が出かけたゴルフに、女性が参加していたことを知って不機嫌だった。夫も、酒を飲んでいい気分で帰宅したのに、妻はふくれっ面のうえ、食べている途中でしょうが状態のおかずを下げられたことでイラついていた。

「言いたいことでもあるんなら言えや」

二人は口論となり、酔いも手伝ってか夫は「ぶっ殺してやる!」と椅子を蹴った。妻も怯まず、台所から文化包丁を持ち出し、その刃先を夫に向けた。 続きを読む ある少年の死~明石市・日本刀重過失致死事件~

背後に地獄を従えて~納涼・怖い事件事故特集~

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“And I heard as it were the noise of thunder
One of the four beasts saying come and see
And I saw
And behold a white horse”

人を殺した人の枕元に、被害者が立つという話は昔から聞かれる話だ。
もちろん、自責の念や良心の呵責にさいなまれた挙句の幻だったり、本気の妄想の可能性もある。

また、殺人現場や遺体遺棄の現場となった場所に心霊現象が起こる、幽霊が出るという話もよくある。
有名どころでいえば、秋田の連続児童殺傷事件現場において、誰もいるはずのない屋内の窓のところに人影が写った写真があるとか、秩父にある貯水槽付近で奇怪な現象が起きていたところ、実はその貯水槽から殺害され遺棄された妊婦が発見されたという話。
いずれも真偽のほどは私にはわからないが、実際にあったとする事件を絡めた怪談というものは掃いて捨てるほどある。ただその多くは、裏取りしてもそもそも該当する事件がない、という結末である。 続きを読む 背後に地獄を従えて~納涼・怖い事件事故特集~

🔓ボクは知らない〜巣鴨・子供置き去り事件〜

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令和3年8月、滋賀県内で6歳の女児がジャングルジムから落ちて死亡するという痛ましい事故が起きた。
しかしその後、女児の体に100箇所に及ぶ殴打痕があったこと、事故直前の未明にその女児が少年に連れられてコンビニにいたことで通報されていた事実が判明。
調べた結果、女児は事故死ではなく、その少年に暴行されたことで死亡したと判明した。

その少年は、女児の17歳になる兄だった。

この事件が報じられると、その生育歴や母親の状況などから、今から30年ほど前に起きたとある事件と重なる、そんな声も聞かれた。

その事件は、昭和63年に発覚した。

西巣鴨のマンション

昭和63年7月18日。豊島区西巣鴨のマンションの大家から、「部屋を貸している女性が子供を置いたまま行方不明になっている」という届けが巣鴨署に入った。
女性は昭和62年9月からこのマンションの2階の一部屋を借りていて、その際、一人息子を連れていたという。
「この子は立教中学に通っています。私はデパートに勤めてますのでよろしくお願いします」
そう言って挨拶したという女性は、入居した翌10月からこのマンションでは見かけられていなかった。

息子と二人暮らしだというその家は、昭和63年2月以降月額9万円の家賃が支払われておらず、催促しても女性が姿を見せないことから痺れを切らした大家が直接訪問。その際、どうやら母親が長期間不在であると分かったことから通報したのだった。

通報で駆けつけた巣鴨署員は、その部屋の玄関を開けて絶句した。

玄関からすでに家の中はゴミだらけの状態だった。
一方で台所では電気炊飯器でご飯が炊き上がり、女性の息子と思われる中学生くらいの少年が味噌汁を作っていたという。フライパンには野菜炒めと思しきおかずもあった。
温かな夕餉の香りと、糞尿と生ゴミ、カビの入り混じった凄まじい混沌の香りが充満するその家の中には、少年以外に二人の女児の姿もあった。

「・・・この子はどこの子??」

大家は混乱を隠しきれずにいた。この家には先にも述べたとおり、借主の女性とその息子の二人しかいないはずだったのだ。

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【有料部分目次】
のりちゃん
利恵(母親)
ユキ
コウヘイ(押入れの遺体)
タカシ
ふたたび、のりちゃん
サトシとワタル、そしてタカシ
ふたたび、利恵
兄妹

🔓幻愛〜〜広島・小6教え子殺害事件〜

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平成3年7月。
広島県豊田郡安浦町では、町内の小学校の教諭らが平成2年の春に卒業した元6年生の家々を回っていた。
その手には、卒業アルバム。しかし、教諭らの誰もが、厳しい表情を崩すことができなかった。

「現実を隠すわけにはいきませんから」

同じく厳しい表情の保護者らを前に、教諭らはそう言って卒業アルバムを手渡した。
修学旅行、音楽発表会、運動会、そして卒業式。楽しい思い出が詰まったはずの卒業アルバム。しかし、多くの元6年生とその家族は、アルバムを直視できずにいた。そのアルバムには、もう二度と会うことの出来なくなった友達と、その友達を殺した「先生」の写真があったからだ。

母の涙が問うもの~宇和島・6歳双子金網監禁事件~

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法廷にて

「私、前に自分一人で解決しないといけないと思い込んでしまって、失敗したことがあるんです。だから今度は、ちゃんと相談しようと思っていました。」

松山地方裁判所宇和島支部第一号法廷。
証言台に座る女の無造作に束ねた髪には、その年齢にそぐわない白髪がのぞいていた。
被告人席には、夫の姿。両脇を屈強な刑務官が固める。その傍らに、女性職員の姿。
この事件の被告は、夫婦だった。

女は時折涙をぬぐい、自己の罪をかみしめるように、言葉を紡いだ。
「最後に何か言いたいことはありますか。」
促された夫は、
「そうですね、こんな事件起こしてしまって、Aくん、Bくんはじめ上の子3人、会社や周囲に大変な迷惑をかけてしまって申し訳ありませんでした。」
と少し早口に証言を終えた。
続いて、妻の番。しかし、妻は顔を上げ前を向いてこう言った。

「特に、ないです。」 続きを読む 母の涙が問うもの~宇和島・6歳双子金網監禁事件~