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平成13年7月21日午後3時半
大分市横田の県道沿いの緑地帯駐車場で、タクシー運転手はいつものように休憩をとっていた。
ふと、同じ駐車場内に停めてある車に目をやった。
「そう言えばあの車、もう何日もここに停まっちょるけど……。」
そこは、県道22号線沿いに広がる緑地帯に設けられたスペースで、トラックやタクシーの運転手が時折休憩のために車を停めることはあっても、周辺には家も店もないため長期間車が停められているのは不自然だった。
気になった運転手が、乗用車の中を覗いたところ、人が乗っている気配はなかったが、女性の持ち物らしきハンカチやブラシが落ちていた。
気になりながらも引き返そうとした時、後部座席にあった粘着テープが目に入った。
ふっ、と、運転手の心がざわついた。運転手が見たのは粘着テープだけではなかった。車内には、無数のハエが飛んでいたのだ。
遺体発見
運転手の通報で駆け付けた大分東署員は、乗用車の後部に回ってため息をついた。臭う。明らかな異臭がトランクから漂っていた。
時期は7月下旬、タクシー運転手によればすでに10日ほどここに停まっていたというから、事態の見当はついていた。
乗用車は施錠されていたため、とりあえず大分東署にレッカー移動させ、同時にナンバー照会で得た情報をもとに、所有者の家族に連絡を取った。
車の所有者は、大分県臼杵市の29歳の女性会社員だったが、家族によれば7月2日の午後2時ころに勤務先を車で出て以降、連絡が取れない状態だったという。
家族が持参した車のスペアキーでトランクを開けると、そこにはビニールシートにくるまれた遺体があった。
真夏のトランク内に放置された遺体は損傷が激しかったが、身に着けていたサマーセーター、車内に残されていた靴などから、行方不明の女性の可能性が高かった。
行方不明の女性は、臼杵市在住の河野由香さん(当時29歳)で、その後の司法解剖の結果、歯型から遺体が本人であることが確認された。家族からは7月4日に捜索願も出されていた。
遺体発見の状況から、何らかの事情で死亡した由香さんをなにものかがトランクに遺棄したものと考えられた。
遺体の損傷が激しかったため、死因の特定には至らなかったものの、着衣に乱れもなく、また骨などにも損傷はなかった。
気になったのは、由香さんが失踪した経緯だった。
その日、普段通りに勤務していた由香さんは、午後2時ごろに慌てた様子で会社を出ていた。
さらに、由香さんにはあるトラブルが持ち上がっていたのだ。
犯人逮捕
由香さんは、勤務先の建設会社で経理上の「不正」を働いたとして会社関係者から事情を聞かれていた事実があった。
ただ、由香さんと家族ぐるみの関係だった経営者らが、今後由香さんを監督していくという条件で当初は刑事告発はおろか、由香さんの両親にすら事態をあえて伝えていなかった。
しかし、由香さんはすべてを話しておらず、その後も隠されていた不正が発覚したことで両親らの知るところとなり、事件直前は両親らの厳しい監督下にあったという。
携帯も母親が管理し、外出には友人が付き添うなど、事態は相当深刻なものとなっていた。
由香さんが行った不正は、勤務する会社の約束手形を勝手に振り出すというもので、すでに複数回手形は決済されていた。
発覚していた不正は400~500万円ほどあったが、経理事務を由香さんが一手に引き受けていたことから、由香さんの様子がおかしいことに気付いた経営者の妻が聞きだすまで、その不正は誰にも気づかれていなかったようだ。
なぜ由香さんはこんな大金が必要だったのか。
実はこの不正には、指南役というか黒幕がいたのだ。そして、由香さんは自身の欲のためではなく、その黒幕に言われるがまま、従っていたにすぎなかったのだ。
お察しの通り、その黒幕と由香さんは深い関係にあった。
7月23日、警察は由香さんと同じ日に行方が分からなくなっていたその黒幕の男を宮崎県内で発見、事情を聞いたところ由香さんの遺体をトランクに放置したことを認めた。
加えて、「大分市の山で由香さんを殺した」とも話したため、8月1日には殺人容疑でも再逮捕となった。
男は臼杵市在住の冨田為芳(当時43歳)で、リース会社を経営する会社社長だった。
由香さんとは6年に及ぶ関係があり、不倫でもあった。
由香さんが行った不正は、すべてこの冨田が自己のために画策し、不倫関係という立場を利用して由香さんにやらせたことだったのだ。
ふたりのそれまで
冨田は昭和33年、宮崎県に生まれ、宮崎県立水産高等学校(現・宮崎県立宮崎海洋高等学校)を卒業後、大分県内の水産会社に就職した。
ただここは早い段階で退職し、昭和57年、24歳の時に津久見市にある有限会社Aに営業職として入社。その年の秋に結婚している。
平成元年には同社の臼杵営業所営業部長の肩書を持つまでになったが、集金した金を横領するなどしたため、9年勤めたAを退職、臼杵市内の建設機械リース会社で働いたのち、平成7年、臼杵市内で建設機械リース会社を自ら立ち上げた。
一方の被害者由香さんは、昭和46年(早生まれの場合は47年の可能性あり)に生まれ、平成3年に大分県内の商業高校を卒業した後、富田が勤務していた有限会社Aに新卒採用された。
しかし平成8年には有限会社Aを退職し、由香さんの実父が勤務する臼杵市内の土木建築会社に就職した。
この会社は、由香さんの父の異父兄弟が社長で、状況から見ても親戚関係としてうまく付き合っていたことが窺われる。
由香さんと冨田は、由香さんが入社したことがきっかけで知り合い、その後平成6年ごろに不倫関係となった。
不倫関係となったとされる平成6年には、冨田はすでにA社を退職して数年経っているため、なんらかのきっかけで再会したのであろう。
また、冨田の退職理由にしても、入社して間もない由香さんには詳しい事情を知らされていなかったのかもしれない。
ともあれふたりはそれ以降事件までの間、不倫関係が続くことになる。
冨田は経営者としては優秀とは言えず、過剰な設備投資が仇となって資金繰りに窮していた。
時には他人名義で借金をしたり、由香さんの給与をあてしたり、それでも足りないときには由香さんにもサラ金で借金させていた。
平成12年の夏には、冨田が抱える負債は1億5千万に達していたという。
さらに悪いことに、冨田の会社の取引先の一つが経営悪化となり、その取引先から振り出される手形の割引が拒否される事態が続いた。
約束手形はざっくり言うと、通常、支払期日(満期日)に入金となるが、自営業者などが資金繰りのために手形を裏書譲渡し、その満期日より前に現金化してもらうことを手形割引という。譲渡された手形はのちに、譲渡された金融機関が本来の振出人より支払いを受ける、という仕組みだ。
約束手形自体、本来銀行が取引会社を信用して発行するものであるが、経営が悪化した場合でも手形の振出自体は出来る、というか、出来ないと困る。
振出し人が信用のおける会社であればどこでも手形割引は受け付けてくれるが、経営が悪化している場合はとりっぱぐれる可能性が出るため、割引を受け付けてくれないということもあり、冨田の取引先もその状態だった。
実はこの取引先は、冨田の会社の取引のうちの8割を担っていた。そのため、取引先の経営悪化は冨田の会社をさらに追い込むことになる。
平成12年夏ごろ、冨田はある業者からキツイ取り立てにあった。とはいえ、資金繰りに全く目途が立っていなかった冨田は、由香さんが経理を一手に引き受けていることを思い出した。
商業高校卒の由香さんは、経理の知識もあったことに加え、ほとんど身内といった会社で勤務していることから、会社の実印や約束手形などの保管も任されていた。
冨田の会社が資金繰りに窮していることは由香さんも知っており、冨田はそれを利用することを企んだ。
しかし、経理の知識に長けている由香さんに、真正面から「偽造手形振出してくれ!」とも言えなかった。
そこで冨田は、作り話でとりあえず由香さんを信用させることにした。
「ちゃんとした会社(由香さんが勤務する会社)から振り出された手形を取引先に見せれば、うちの会社の資金力と信用の証明にできる。それで融資をしてもらうから、そのために見せ手形として作って欲しい」
由香さんは当然、難色を示したものの、冨田はあらゆる虚言を使って由香さんを信じ込ませた。当然、色恋の力も惜しみなく使ったうえでである。
悩んだあげく、由香さんは冨田を信用し、「絶対に銀行に渡るようなことのないように」と念押しし、平成12年12月11日、2通の約束手形(合計500万円)を偽造して冨田に渡してしまった。
冨田は、由香さんに礼を言い、ここでもありとあらゆる方法で由香さんを褒め、喜ばせた。
由香さんも、この時点では大それたことをしでかした意識は薄かったのだろう。それはひとえに、この冨田という男を信頼していたからである。振り出した手形の満了日はまだ3~4か月先、というのも、この犯罪行為の重みを薄れさせていた。
しかしそれは、1年にわたる由香さんの地獄とも呼べる苦悩の始まりであり、その道の先にも地獄しかなかった。
ダメすぎて悲しい女の人居ますよね。
周りみんな大反対だという。
私は父がろくでなしで借金したりなんだりで母と離婚してるので、尚更お金にだらしない男に拒否反応があって冷たいんだと思います。
もし優しい父親に愛されて育ってたら、性善説で貸しちゃうのかも‥。
続き、さらにはぁ?なんですね。
お待ちしてます!
あーよくある事件だけど本当に嫌な事件ですね。
不倫相手にお金要求されて時点で即別れるんだけど、私なら。
いくら好きでも冷めるし怖いですよね。
サラ金で借金なんて絶対嫌だしさらに手形なんて。
被害者の方も失礼ながらあまり頭がいい人では無く、つけ込まれたんですね。
ちい さま
コメントありがとうございます。
そうです、よくある話ですよね。
でも、だからって人の会社の手形偽造は、しないというか出来ない。普通は。
私はどちらかと言うとこの被害女性と似たタイプの人間だと自覚してるんですが、それでも手形偽造頼まれたらちょっとひく、し、やらないです。
でも、金は貸すしサラ金も行くと思うし、なんなら風俗も行くと思います。そういう、いわゆるダメな女の話ではあるんですが、ダメすぎて悲しくなってきました。
あまり情報のない事件ではありますが、この後もさらにはぁ?!な話が続くので、ご期待ください