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津島市の女性教師殺害事件
平成13年3月。高校の卒業式に入試の合否発表、別れの寂しさと新しい生活への希望が混ざり合っていたその日、朝日新聞の投稿欄にひとりの高校教師からの声が掲載された。
変わりゆく受験の世界について、自身の経験や教師という立場から現代の受験についてそれは書かれていた。
日々教師として子供たちの行く末に期待していた彼女は、その2年後に殺害された。
顔を焼かれた遺体
平成15年3月11日、愛知県津島市の民家で女性の遺体が発見された。
殺害されていたのは大嵜佳代子さん(当時54歳)。彼女は県立津島高校で英語を教える現役の教師で、その日は受験の面接官を務めることになっていた。
ところが出勤時間を過ぎても佳代子さんは出勤してこなかった。教師歴30年のベテラン。いつもきちんとしていて、責任感も強く、勤務校の受験日という大切な日に欠勤、ましてや無断でということは有り得なかった。
佳代子さんは夫と死別しており、3人の子どもたちもみな大学で東京にいて当時は一人で暮らしていたという。
津島高校の教諭ら二人が佳代子さん宅に向かったものの、応答がないことで近くに暮らす佳代子さんの実母に連絡を入れた。
そして昼頃、実母が合い鍵で佳代子さん宅に入ると、風呂場に隣接する脱衣所で倒れている佳代子さんを発見したのだった。佳代子さんはセーターにズボン姿で、特にその着衣に乱れはなかった。が、首にはファンヒーターのコードが巻き付いていて、さらに頭部から首にかけてが焼け焦げていた。
室内が荒らされた形跡はなく、台所にはきれいに切りそろえられたキウイが手つかずの状態で残されていたという。
警察は、遺体の状況と、ガレージから佳代子さんが普段使用していた車(トヨタ・プレミオ)がなくなっていたことから事件に巻き込まれたと断定。
司法解剖の結果、佳代子さんは窒息死で、死亡した後で灯油をかけられ火をつけられたと判明した。ただ、脱衣所の扉が閉められていたことで酸欠状態となり、火は広がらずに消えたとみられた。
その後の捜査で、14日朝になって自宅から10キロ東の名古屋市西区の路上で佳代子さんのプレミオが発見された。車は10日の夜9時ころにはそこに放置されていたといい、ハザードランプが点滅していたものの、エンジンは切られてドアロックされていたという。
12日、近隣住民からの苦情で駐車違反としてのステッカーが貼られていたが、14日になって佳代子さんの車の詳細が公開されたことにより、その車が佳代子さんのものと判明したということだった。
佳代子さんは10日の午後6時半ころに帰宅したとみられており、その後深夜までの間に殺害されたとみられた。
しかし捜査は思いのほか難航した。もともと几帳面できれい好きだった佳代子さんの自宅は整然としており、殺害現場となった脱衣所こそ、石油ファンヒーターのカートリッジが抜かれて倒れていたものの、リビングやダイニングはほぼいつものままだった。当然、押し入られた形跡もなかった。
ということは、佳代子さんが招き入れたということ?
警察は佳代子さんの知人ら友人関係も慎重に捜査したものの、仕事一筋だった佳代子さんに不審な交友関係は一切なかった。
事件から10日経っても、有力な証拠は出ていなかった。
【有料部分 目次】
まさかの犯人
杜撰すぎる犯行
遺産相続
怒り
彼女と私
松阪市主婦殺害事件
凄惨な現場
不審者と無言電話
怪しかった女
「あの女さえいなければ」
DNA鑑定
次元の低すぎる人間
取り戻せない日々