男として、父として、主として~山形・一家4人殺傷事件~

病院で男は眠る妻の前にいた。

医者からはもう意識が回復する見込みはないと告げられていた。
明るく、優しく、面倒見の良い素晴らしい妻。その妻が、左手をベッドにくくりつけられ、時に下半身をあらわにして寝かされている。
妻はもう、変わり果てていた。

男は妻がすべてだった。この妻なくして、自分は何一つできない、それを実感していた。
娘たちも母親がいなくてはおそらくどうにもなるまい。特に、下の娘は母親がこうなって以降、精神的に大きなダメージを受けてもはや男の手には負えなかった。
上の娘も他人とのかかわりが持てない性格。それも、自分の血を引いているせいだ。

なにもかも、妻がいたからこそ、こんな出来損ないの自分とその血を引いた娘たちも生きてこられたのだ。

もう、それも無理だ。

孫たちがいなくなればお義父さんもお義母さんも悲しみに暮れて生きていけないだろう。

みんな、連れて行こう。 続きを読む 男として、父として、主として~山形・一家4人殺傷事件~

🔓あなたが私を無視したから〜北海道・4歳長男殺害事件〜

母親は4歳の我が子に、「ママとぎゅーってしよう」と言って呼び寄せた。無邪気に母親の腕の中に飛び込む息子。
その息子の首に、母はタオルを巻きつけた。そして力いっぱい、絞めあげた。

ぐったりした息子を床に寝かせ、母は自分の命を絶つために椅子を取りに向かった。すると、息をしていないはずの息子が、ふぅっと息を吐いたような気がした。
生きている!そう思った母は、息子の背中を叩き、人工呼吸も施した。が、息子がそれ以上反応することはなかった。

やっぱり死んじゃった。次は私の番だ、早く死ななきゃ。

そこへ、仕事に行ったはずの夫が突然帰宅した。

「……なにしてる?」

様子がおかしいことに気づいた夫は、虚ろな妻に詰め寄った。

「猛瑠、殺しちゃった。」

驚いた夫がさらに問い詰めると、妻はこういった。

「だってあんたが猛瑠をちゃんとみてくれないから!」

夫は息子の様子を確認した後、通報した。

平成23年7月14日

北海道清水町南の住宅から、「妻が子供に手をかけた」とその家に暮らすトラック運転手の男性から近くの交番に通報があった。
警察が駆け付けると、男性の長男で保育園児の猛瑠(たける)ちゃん(当時4歳)がぐったりしていて、その後救急搬送されたが死亡が確認された。

警察の調べに対し、家にいた猛瑠ちゃんの母親が首を絞めたと認めたことで、殺人容疑で母親を逮捕した。

逮捕されたのは佐々木尚美(仮名/当時32歳)。

部屋の中には遺書とみられるものがあったことなどから、警察では尚美が猛瑠ちゃんを殺害して自分も死のうとした無理心中とみて取り調べを続けた。部屋の鴨居には首を吊ろうとしたのか、ひもが掛けられていた。
後に尚美は家族について悩みがあったと供述した。

猛瑠ちゃんの首には絞められた痕跡があり、旭川医大で司法解剖された結果、窒息死と判明した。

幼い子供が母親によって殺害されるという腹立たしくも悲しい事件だったが、無理心中を図ろうとしたことが報道された後、その詳細についてはほとんど情報がなかった。
その後、尚美には懲役8年の実刑が言い渡されたが、公判で明かされた無理心中に至った経緯はあまりにも理解に苦しむものだった。

【有料部分 目次】
母のそれまで
子供の発育
破壊的な経済観念
本当の動機
この子誰の子
私が悪いんだろうけど

ある家族の崩壊への軌跡~世田谷・長男殺害事件~

母は茫然としていた。
今何が起きたのか。床にはティッシュの箱が転がっている。今しがた、自身の顔面に投げつけられたティッシュの箱だった。

次の瞬間、体に衝撃が走る。ハッとしてみれば、中学生の息子が渾身の力で殴りつけていた。
「やめて!どうしてこんなことをするの?」
身を庇いながら訴えた母に、息子はこう言い放った。

「このくらい友達からやられているんだ、母さんにやらなければ誰にやるんだ!僕より弱いもので、女の人にやるんだ!」

母は言葉を失い、ただひたすら、殴りつける息子を受け止めるしかできなかった。 続きを読む ある家族の崩壊への軌跡~世田谷・長男殺害事件~

🔓怒りの控訴趣意書~福山・母子4人殺害事件~

「ちゃんと仕事にいくけぇ、な、ええやろ?」

そういう夫に、妻は到底そんな気持ちなれないものの、気が済んで仕事へ行ってくれるならとその身を布団に横たえた。
妻はむなしい思いを抱きつつも、これで少しでも夫が仕事に精を出してくれれば、そう思っていた。この人をこれまで支えてきたけれど、もうこれでダメなら愛媛に帰るしかない。

しかし夫は仕事に行くことはなかった。
無防備な妻に馬乗りになると、そのまま両手で首を絞めたのだ。
夫が行こうとしていたのは仕事ではなく、地獄だった。

【有料部分目次】
皆殺しの果て
ゲーム喫茶
清算からの裏切り
妻の決断
まさかの判決
控訴趣意書
妻子の人権

あの事件のその後~札幌歯科医師妻殺害事件の保険金~

平成19年3月26日、札幌地方裁判所はとある民事裁判において原告の請求を棄却する判決を言い渡した。
それは保険金請求事件。妻を亡くした夫が請求した保険金の支払いを、生命保険会社が「消滅時効期間」がすでに経過していることによって支払いを拒否してきたため、起こした訴訟だった。

ざっと見れば、揉める要素などなさそうな事件に思えるが、実はこの裁判には複雑な事情があるにはあった。

原告の男性は、過去に保護責任者遺棄罪で有罪が確定していた。そして、その被害者が、今回請求された生命保険の被保険者だったのだ。

平成14年7月、北海道札幌市で起きた歯科医師妻が殺害された事件。
原告の男性は、その事件で逮捕された老女の息子で、被害者の夫だった。 続きを読む あの事件のその後~札幌歯科医師妻殺害事件の保険金~