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ネギ畑とナシ園が広がるのどかな郊外。
神社の周辺には公園があり、散歩する高齢者や畑仕事に精を出す人々の平和な日常があった。
その一帯の中で、異様な一角があった。
ぱっと見でも、大きく立派な家屋がそこにはあったことがわかる。しかし今、その家屋は焼け落ち、かつてここで暮らした人々も、たった一人を除いてこの世に存在していない。
ここには、つい先日まで一家5人が仲良く暮らしていた、と思われていた。
互いの名を呼ばずとも通じ合える老夫婦、中学教師と看護師という、申し分のない長男夫婦。そして、おじいちゃんのことが大好きな幼稚園に通うかわいらしい娘……
平成20年6月24日朝、家族の幸せな日常は突然終わりを告げる。
その一家を葬ったのは、家族の中の一人だった。
その朝
いつもと変わらない朝だった。台所では妻が朝餉の支度をし、離れの2階ではそろそろ息子夫婦が起きだしてくるころだ。
台所を通り過ぎようとした時、妻が気配に気づいたのか、したくする手をいったん止めた。「おはよう」の声を期待した男だったが、妻は男の気配を認めると、そのまま何も言わずに朝餉の支度を再開した。
男はいったん台所を通り過ぎ、家の外の物置に入って再び戻ってきた。
その手には、全長80センチ、重さ3キロの大ハンマーが握られていた。
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「おい、起きろ、ばあさんが倒れた。」
寝ぼけ眼の長男夫婦は、父の言葉で起きだした。
「なに、どういうこと、母さん大丈夫なの?」
慌てて長男が階段を降り、母親のいる台所へと向かう。たしかにそこには、母親が倒れている姿があった。
駆け寄る長男の背後に、男は静かに立った。
「お義父さん、どうしたの?パパは?」
長男に続いて、心配した長男の妻も二階から降りてきた。
「パパの様子が変なんだ」
「何か大きな音しなかった?」
訝る長男の妻は、視線の先に倒れている「誰か」を認めた。
そこでどんな会話があったのか。
そして長男の妻は崩れ落ちるように、夫の足元に倒れこんだ。
男は最後の仕上げに取り掛からなくてはならなかった。
幼稚園に通うかわいい孫娘。その孫娘の成長を楽しみにもしていた。
しかし、この「殺人の家」で孫娘を一人残すわけには、いかなかった。
愛くるしい顔ですやすやと眠る孫娘に、男は躊躇った。
ゴツッという手ごたえはあったが、躊躇いからなかなか成し遂げられなかった。
男はその後、妻と長男夫婦の元へ戻り、とどめを刺した。
家族の顔は、もう原形をとどめてはいなかった。
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【有料部分目次】
事件
家族のそれまでと実情
家族
ブチギレた老人
精神鑑定
無期懲役
境目