🔓無念part2〜ふたつのやるせない結末〜

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事件は日常にある。
なんの変哲もない1日の始まりであっても、どんなに素晴らしい人生を送っていても、どんな善人のそばにも、事件はある。

不幸にも事件に巻き込まれてしまった人々や家族は、その犯人が逮捕され、その罪に見合った罰を受けることを最低ラインとして受け止める。もちろんどんなに重い刑に処せられようと、被害者の受けた傷が癒やされるわけではないし、奪われた命は戻らない。
それでも続く人生を歩むために、人々は自分を納得させ、受け入れるしかない。

その罰が、さまざまな事情で最低ラインにすら届かなかったとしたら。

群馬の殺人

群馬県太田市小舞木町。
清々しい秋の日、その公園では地域の運動会が開かれていた。東武伊勢崎線と東武小泉線の太田駅から南東へ車で約10分ほどのところにある、比較的大きなその公園だ。
運動会に参加している家族のところへ、1人の女児が駆け寄ってきた。
「おじいちゃんが死んじゃう」
泣きながら訴える女児に連れられ向かったのは公園のトイレ。この女児はついさっき、祖父に連れられてトイレへ行っていた。駆けつけた人らがそこで見たのは、トイレで横向きに倒れている祖父の姿だった。

祖父は女児をトイレに連れていく際、「少し気分が悪い」という話をしていたといい、体調が悪化したのかと思われたが、祖父は大量に出血していた。

事件

平成13年10月14日、群馬県太田市小舞木町の市営九合六号公園の公衆トイレで、近くに住むシルバー人材センター作業員の木村唯雄さん(当時69歳)が血を流して倒れているのが発見された。
木村さんは背中など複数箇所を鋭利な刃物のようなもので刺されており、死亡が確認された。

木村さんはこの日、孫娘2人を連れて地区の運動会に参加しており、下の孫娘がトイレに行くのに付き添った際に何者かに刺されたとみられた。一緒にいた孫娘に怪我はなかったが、孫娘は4歳で、祖父の身に何が起きたのかをうまく伝えることは難しく、ただただおじいちゃんが死んじゃう、と泣いていたという。
事件が起きたであろう時間帯、トイレの外には1人の主婦がいた。この主婦によると、トイレの中から声などは聞こえなかったものの、ガタガタという音が聞こえたという。その後、トイレから30代くらいの男性が出てきたといい、その手にはハサミのようなものが握られていたのを見ていた。
男性は黒っぽい服を着て髪の毛が寝起きのようにボサボサだったというが、顔まではよく見ていなかった。

木村さんを発見した男性によると、トイレの壁や床などにかなりの血痕があったという。

警察は殺人事件と断定したが、木村さんにはトラブルなど一切なく、またその年の2月頃には女子学生がハサミを持った男に襲われ前髪を切られるという事件が未解決のままだったこともあり、通り魔的な犯行の可能性も考えられた。
木村さんは長年地元の富士重工業群馬製作所に勤務、退職したのちもシルバー人材センターに登録して植木の選定などを担当していたという。地域の役員なども積極的に担い、住民からの信頼も厚かった。友人も多く、小旅行やカラオケなどを楽しみにしていた。
家庭では、妻と死別してからは娘夫婦と孫らと生活しており、事件当時、娘婿は単身赴任中だった。

堅実な人生を送り、娘夫婦や孫たち、友人との穏やかで幸せな老後がこの先も続くはずだった。
一体、木村さんの身にあの日あの時何が起きたのか。

難航する捜査

警察は主婦の目撃情報をもとに75人の捜査員を投入。主婦の協力で作成された犯人らしき人物の後ろ姿のイラストを公開、付近の不審者などを洗い出したが、犯人の足取りはなかなか掴めなかった。
現場からは血のついた足跡が発見されていたが、停められた車の合間を縫って道路へ出たところで途絶えていたという。目撃情報も、その主婦のもの以外なかなか具体的なものもなかった。

太田市内の小学校では犯人が捕まっていなことから登下校の警戒を徹底させるなど対策はとったものの、その不安は相当なものだった。
通り魔の犯行が排除できない以上、どこの誰もが被害者になり得た。子供達は外で遊べなくなり、共働きで家を空けざるを得ない親たちの不安は高まる一方だった。

しかし事件から1年、捜査は進展する気配を見せなかった。

血のついた足跡から割り出された靴の種類はアディダスのスニーカー。当時若い人の間で人気だったという。色は黒だったことがわかっていて、サイズも少なくとも27センチ以上だった。

一方で木村さんがなぜ狙われたのか、殺害されたのかという動機の点でも様々な見方がなされた。
木村さんは当時、現金を持っていたかどうかが不明だったという。となると強盗目的とも言い切れないし、初めから怨恨の線はかなり薄かった。通り魔的犯行ならばそれこそトイレでなくともよく、その動機は全く読めていなかった。
そのため、運動会という行事そのものに関係があるのでは、という見方も一部の捜査員からは出ていたという。公園での子供の声や学校の部活動、そういった「音」が原因となった事件は他にもあったし、もしかするとそういった行事から排除されているような人の逆恨みのようなことかもしれない。

しかし捜査の進展がないまま、事件からすでに4年が過ぎていた。

【有料部分 目次】

容疑者
そして
鹿児島の事件
時効直前の自白
その男
両親

🔓小児性愛者~羽島市・小学2年女児殺害事件~

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父親は娘に必死の人工呼吸を続けた。生きて、何とか生きて帰って来てくれ。
両親の思いもむなしく、幼い娘は息を吹き返すことはなかった。

娘がいなくなってから36時間。

「なんでこんな……もっと早く返してよ!!!」

気丈にも娘の捜索に携わった人々へのお礼を伝えた父親だったが、その絶望と怒りと悲しみは絶叫となって響いた。

行方不明の女児

平成6年4月7日午後。岐阜県羽島市の福地海ちゃん(当時7歳)が、下校途中に忽然と姿を消した。
その日は4時からピアノのお稽古があり、いつもは学校から自宅に戻り、ランドセルを置いてお稽古へと出かけるはずが、この日は帰宅した様子も、お稽古へ出かけた様子もなかった。
両親は同級生や学校に問い合わせをしたが、海ちゃんの行方は分からず7日の夜7時過ぎに父親が小学校を通じて捜索願を出した。
しかし目撃情報はあやふやなものが多く、警察は誘拐などの可能性も視野に入れていたものの、海ちゃんの自宅に身代金の要求などの電話もないことから事故の可能性が高いとし、市の防災無線で呼びかける公開捜査を開始した。
報道各社に捜査協力の依頼があったのは、事件の翌日だった。

ところが4月9日、事件は突如動いた。
羽島市内の公園で、変わり果てた姿の海ちゃんが発見されたのだ。その後の司法解剖の結果、海ちゃんの胃の中にはその日の給食がほとんど消化されずに残存していたことから、行方不明になった日の夜もしくは翌日の未明に殺害されたと断定。
そうなると犯人は海ちゃんを拉致した後、さほど時間を置かずに殺害したことになる。この時点で、海ちゃんの自宅には誘拐をにおわせるような身代金要求の電話などはなく、なぜ海ちゃんが狙われたのか、そして何のために殺害されたのか全く分からなかった。
最近では未成年者、特に児童が被害者になる事件の場合はわいせつ目的がまず頭に浮かぶが、この時代は甲府信金の女性職員誘拐事件や北海道石狩の女子高生誘拐事件など、身代金目的の誘拐事件が起こっていたこともあり、捜査の手法なども現在とは違っていたと思われる。

ただ、この発見に至る経緯には不可解な一本の電話の存在があった。

気味の悪い電話

「なんですか?どこの公園ですか。知ってみえるんですか?」

遺体発見の約4時間前。海ちゃんの自宅に一本の電話がかかってきた。時刻は午前4時半ということで、明らかに電話をかけるには不自然な時間であり、自宅で両親らを支えていた友人が応対。すると、電話の相手は不可解な言葉を発した。

「公園。」

男はその声から、20代くらいの若者に思えた。小さな囁くような声で、「公園」「近く」と告げた。友人が「新生公園?」と問いかけると、それに対しても「そう」とだけ答えて電話は切れた。約30秒の通話だった。
その電話をもとに、警察が新生公園(正式には足近新田公園)を調べたところ、公園内のトイレから海ちゃんの遺体が発見されたのだった。
警察は、事件後に海ちゃんの自宅に録音設備を配置し、録音していた。電話の主が犯人もしくは何らかの関与をしているとしてその録音の公開、広く一般からの情報を求めた。
愛知県警科学捜査研究所によると、声の主は30代以下の男性で、背景に音がなかったことから公衆電話からかけられたものと断定。
また発見された当時の海ちゃんは衣服を身に着けていたが、それに土汚れなどがなく、また当日は雨が降っていたにもかかわらず雨水もついていなかった。そのことから、犯人は海ちゃんを拉致した後、車などに連れ込み殺害し、遺体を別の場所に移したりすることなく時間をおいて遺棄したとみた。
警察は不審車両などの割り出しを行ったが、犯人に結び付くような情報はなかなか得られないでいた。

さらに、当初寄せられていた目撃情報のほとんどにおいて、その信頼性が揺らぐという事態も起きていた。

錯綜

海ちゃんは7日の午後2時50分ころ、黄色の傘をさして学校の東門を出て行くところを同級生の男児に目撃されていた。
その後は通常ならピアノのお稽古のためにいったん帰宅してから再度出かける予定が、当初、学校を出た後の海ちゃんと、自宅の逆方向にあるコンビニの前で会った、という同級生女児の証言があったという。しかも、その後午後4時前にはそこから200m離れた稲荷神社まで一緒に行ってそこで別れたという具体的なものだった。
捜査本部はその情報をもとに午後4時以降の海ちゃんの足取りを追ったが、コンビニ周辺、稲荷神社周辺で海ちゃんを見かけたという目撃情報は皆無で、事件発生から5日目の12日にはその目撃情報自体を再度検証することとなった。

多くの目撃情報は、学校が土日だったこともあって学校側が聞き取りをしてまとめたものだったという。さらに、警察が重視していた稲荷神社まで一緒に歩いたという女児の証言は、間に女児の母親が介在しており、警察からの質問を母親から聞いてそれに対して返答しただけというものだった。
非日常な出来事が身近で起きると、子供は大人たちが求める答えを話そうとすることがある。ましてやそれが親や警察といった相手だと、力になることで褒められたいという気持ちもあろうし、事の重大さがわからなかったとしても不思議ではない。

しかし結果として、捜査は振出しに戻るどころか、1週間も経過してしまったことで人々の記憶がさらにあいまいになってしまった。
市民の間でも、「昨日聞いてきた場所と今日聞いてきた場所が反対方向だったりする。警察は何をしているのか」といった不信感を持つ人も増えていた。

犯人の目星がつかない中、報道でも警察の初動に対する批判もあった。
警察は、通常子供が行方不明になった際にはわいせつ目的の連れ去りや身代金目的の誘拐も視野に入れてしかるべきのはずが、海ちゃんの場合、警察は自宅に逆探知の装置を置いていなかったという。当初より、事故の可能性に重きを置いていたことの表れでもあり、結果として犯人とおぼしき男からの電話がかかってきた際にも、録音するにとどまり逆探知はできなかった。

そんな捜査を嘲笑うかのように、4月20日には岐阜市の路上で小学二年の女児が若い男にランドセルを掴まれるという事件が起きた。
幸い、女児が大声を出したのを近くにいた人が聞きつけ飛び出したことで男は逃走したという。
現場は海ちゃんの事件からは10キロほど離れた場所で、事件の関連性は分からなかったものの、同じ時間帯、同じ下校中の低学年女児が被害に遭っていることなどから警察は関連性も排除せずに捜査を続けた。

そして4月30日、捜査本部は同じ羽島市内に暮らす20歳の無職の男を発表した。

【有料部分 目次】
錯綜
それまで
雨の日の午後
快楽殺人者
判決
家族という地獄絵図

片隅の記録・2025新年特大号〜三面記事を追ってpart10〜

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幼い子供や若い女性が理不尽な暴力の犠牲になったり、多くの死傷者が出た事件などは衝撃的で、その報に接した人々の記憶に強烈な爪痕を残す。
白昼、公共の場での無差別殺人などもそうだろう。
その後の報道で、事件の背景、加害者と被害者の関係性に嫉妬、差別、逆恨みなどの「わかりやすいドロドロ」がある場合なども、後々まで語られる。

ただ時にそれらは、憶測や虚偽、誇張などによって事実とは違った姿で歩き出してしまうこともある、奈良月ヶ瀬の女子中学生の事件や、山口のつけびの村などがそうだろう。

一方で同じく人が殺害されても全く話題にもならない事件も山のようにある。同じように、多くの人々の人生が狂い、壊されているにもかかわらず。

事件備忘録のある意味原点とも言える、「小さな扱い」しかされなかった事件の記録。 続きを読む 片隅の記録・2025新年特大号〜三面記事を追ってpart10〜

片隅の記録〜三面記事を追ってpart9・死体損壊編〜

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いわき・スーパー駐車場の遺体

その段ボール箱は、スーパーに隣接した6階建て駐車場の5階部分にあった。
開店直後の午前9時過ぎ、巡回中の警備員が発見したが、段ボール箱をビニールで覆ってあり、見るからに不審だった。
爆発物などの危険性もあり、警察に通報。その後臨場した警察官が中を調べると、そこにあったのは爆弾ではなく、遺体だった。 続きを読む 片隅の記録〜三面記事を追ってpart9・死体損壊編〜

🔓子供を産んだらダメですかpart2~あがく男たち~

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望まぬ妊娠の末に我が子を殺害してしまう母親がいる一方で、おなかに芽生えた命を守りたい、出産して母になりたいという当たり前の願いを、自己保身のためにぶち壊す父親がいる。

生物学上のその父親たちにとって、大切なのは今すでに手にしている日常であって、新しく生まれ来るその命は邪魔でしかない。

そしてその邪魔なものをこの世に生み出そうとする、自分の日常を侵食させようとする母親もまた、邪魔というよりもはや害悪だった。

下半身の蛇口も満足に締められなかった情けない男たちの、あがきもがいたその顛末。

日野市の事件

平成16年7月。東京都八王子市内の造園会社では、この日警察によってある事件についての捜索が行われていた。
同年6月19日、日野市在住の女性の行方が分からなくなっており、捜索願が出されていた。女性はその日、知人男性と夜会っているところを家族が目撃しており、それ以降の足取りが分からなかったことから、警察はその知人男性に話を聞いていた。

男性は、「その夜たしかに彼女と会ったが、行方については知らない」と話していたが、警察も家族も、その男は絶対に何かを知っていると確信していた。

女性は、その男性の子供を妊娠しており、その男性は既婚者だったのだ。

発見された指

警察は男性が勤務していたのが造園会社で、かつ、女性が失踪した直後にその会社を辞めていることから、家宅捜索を予定していた。
すると7月10日ころ、その造園会社から通報が入った。

「会社所有のショベルカーがいつもと違う場所に動かされている」

警察はすぐに会社の敷地内を捜索したところ、同社の資材置き場に何か掘り返したような跡が見つかった。
捜索の結果、そこから人体の一部が出た。髪の毛と、爪のついた指だった。

そしてDNA鑑定の結果、その指と毛髪は、行方不明の女性のものと判明。同時に、ショベルカーが動かされていた日、現場であの知人男性の姿が目撃されていたことから、警察は知人男性を死体遺棄容疑で逮捕した。

【有料部分 目次】
胎児殺しは罪か
同じ読みの名前

秋田の事件
 不審なココア
 逮捕から一転
 男の主張
 裁判所の判断
 こじれた要因
 憎さ百倍の泥沼