🔓こっちにおいで~奈良・9歳女児殺害事件~

最近すこぶる調子が良い。
以前はこの子の学校行事どころか、普段の世話すらできなかったのに……
この二段ベッドも、この子が小学校へ上がる時に、母親と一緒に寝ることが出来たらいいと思って買ってやったもの。
ようやく、ここで母親と寝かせられる日がやってきた。
父親もおらず、母親は病気でこの子には本当に寂しい思いをさせたもんだ。
そういえば今日も、この子の学校の宿題を確認して、娘は母親らしいことをしていたなぁ。

これからは、よくなる。きっと。

平成23年5月26日

通報を受けた救急隊は、奈良県内の住宅地へと向かった。大和川の北、JR王寺駅に近い、いくつもの町にわたる大きなその住宅街のふもとの一軒家では、家の中から女性の泣き叫ぶ声が響いていた。

「死にたい!死にたい!」
「あの子だけが死んで、自分だけは死ねなかった!」
「一緒に死のうと思ったのに……」

救急隊員が家人の案内で二階に上がると、廊下に座り込んだ女性がこう叫んでいた。
女性の両手は血まみれで、その指8本にはかなり深い切り傷のようなものもあった。

けが人はこの女性……?
いや、通報では子供が刺されたといった情報だったはず。
救急隊員が部屋へはいると、そこには二段ベッド。そこで、小学生くらいの女の子が血まみれで倒れていた。正確には、寝ているところをメッタ刺しにされた、という状況で、その刺し傷は合計33か所に及んでいた。

「これで刺したようです」

不意に、救急隊員に声がかけられた。
振り向くと、包丁を手にした高齢男性。その包丁はステンレス製で、刃渡りは17センチもあるものだった。
とにかく女の子を病院へ救急搬送したものの、女の子は搬送先の病院で死亡が確認された。

【有料部分目次】
死にたかった女
困難な人生
自殺未遂
裁判
鑑定医と選択された司法的処遇
父親
「こっちにおいで……」

いいひと。PART2 ~大牟田市・4歳男児殺害事件~

その父親は、誰が見ても「いいひと」だった。
幼いころから正義感あふれ、仲間外れにされた子を率先して仲間に引き入れた。
姉とは姉弟喧嘩などしたこともないし、周囲に配慮し、いつも笑顔を絶やさない、そんな人物だったという。
友人を大切にし、大学に進んだ後も専門学校へ通いなおし、家族の意見にも耳を傾けた。
社会人になってからも、同僚からは仏様みたいに穏やかな人だと絶賛された。
真面目で温厚、結婚し子供が生まれてからもその息子をかわいがった。

しかし。

父親はその息子を殺害した。たった4歳の、プラレールに夢中だった男の子を。

父親には精神鑑定が行われた。そのうえで、平成25年10月31日、福岡地裁はこの父親に懲役6年の実刑判決を言い渡した。 続きを読む いいひと。PART2 ~大牟田市・4歳男児殺害事件~

🔓快楽のための虐待~泉佐野市・2児虐待死傷事件~

平成16年、大阪地方裁判所堺支部。

「二人での生活を楽しみたい、そのような身勝手な理由から子供を疎ましく思い、幼い被害者二人に対しそれぞれ虐待行為を続けた。」

検察官の読み上げる起訴状には、耳をふさぎたくなるような事実がこれでもかと記されていた。
母親とその愛人による幼子への苛烈な虐待は、母親の、「快楽に耽りたい」という思いから始まっていた。

だらしなく肥えた体を丸めるようにして座る女は、自分の犯した罪の重さをわかっているのかいないのか、感情を見せることはなかった。

9月9日、女は懲役8年の判決を言い渡された。
女は3人の子供母親。そして、うち1人を死なせ、もう1人には全身に及ぶケガをさせていた。
大阪地方裁判所堺支部の細井正弘裁判長は、
「笑いながら暴行を加えるなど、ゲーム感覚で虐待を楽しんでおり、残虐かつ悪質な犯行」
と批難した。

母親であるこの女と愛人の男は、壮絶なリンチに泣き叫ぶ子供をらを見て、笑っていた。

事件

平成16年3月14日、泉佐野署に通報が入ったのは病院からだった。
「男児が心肺停止で運ばれてきたが、状況から虐待の可能性が疑われる」
通報してきたのは、男児を搬送した救急隊員だった。

119番通報で駆け付けた際、母親と思われる人物から、
「昼寝中に痰が詰まって呼吸が止まった」
と説明を受けたものの、痰が詰まっている様子はなかったという。加えて、男児を診察した医師から、顔や背中、両足に殴られたような痣、頭部には古い傷があると言われたことでの通報だった。

泉佐野署は男児の自宅で家族から話を聞いたところ、この男児の母親の愛人の男が男児に暴行したことが判明。翌3月15日、傷害の容疑で逮捕となった。

【有料部分目次】
貧困、アル中、暴力
狭すぎる世界での妊娠
性欲の泥沼
タバコの痕126か所
邪魔されたくなかった

おとうさん、ごめんなさい~取手市・5歳児暴行死事件~

その家

「なんでそんなことしたんや!なんでいうこと聞かんのや!」

取手市内のマンションの一室からは、男の怒声が響き渡っていた。
台所には、引きちぎられたレトルトのカレーの空き袋が落ちている。そして、男を怯えた顔で見上げる、痩せ衰えた男の子の姿。

男の子は5歳。しかし肋骨が浮き出たその体は、とても育ち盛りの5歳児には見えなかった。

「おとうさん、ごめんなさい」

泣きながら謝る男の子の顔面を、男は何度も殴りつけ、そのはずみで男の子が転倒して後頭部を強打しても、さらに腹部を蹴りあげた。
涙でぐしゃぐしゃの男の子を風呂場へと追い立てた男は、おもむろにその体を持ち上げ、湯の入っていない空の浴槽に男の子を投げ落とした。男の子は頭部を浴槽で強打、しかし男は浴槽の中に正座させた後も、男の子の顔面を殴り続けた。

殴り疲れた男は、裸で浴槽に正座させられている男の子めがけ、シャワーで冷水を浴びせかけた。4月と言えばまだまだ寒い。
泣き叫ぶ男の子を無視して、そのまま肩のあたりまで水を張り、そのまま水風呂に放置した。 続きを読む おとうさん、ごめんなさい~取手市・5歳児暴行死事件~

22週~昭和の少女と、いつくしみ深きまなざし

子を宿すということは、場合によって悲しい事件に直結する。
経済的な問題、交際相手との離別、その理由はさまざまだろうが、子供を産むことを断念せざるを得ないこともある。
日本では妊娠を継続することで母体に経済的、身体的に著しいダメージを与える場合や、レイプなど女性の意思に反する形で妊娠したケースにおいて22週未満であれば中絶が認められている。

ところが、この週数を過ぎてしまうといかなる理由においても「人工中絶」は認められない。
胎児が母体を離れて生きていける週数が関係しているわけで、それ以降は母体に危険が及んだための緊急手術であっても、子どもの救命を考慮した方法を優先させる必要がある。

今の日本では、中絶手術自体を知らない、あるいは知ってはいるが週数が決められているということを知らない、という人は特に成人女性においては少ないのではないかと思われるが、未成年者となるとその辺りの知識はかなり危うい人もたくさんいるだろう。

さらに、どれだけ知識があっても中絶自体、ハードルが高い。
おそらく初めてであろう産婦人科へ行き、現実を突きつけられ、中絶するにしてもタダではない。未成年者がおいそれと用意できる額でもない。
そうなった時、腹をくくって親兄弟に相談できる子たちは、救われる。
しかし誰にも言えずに時間だけが過ぎてしまったら。

最悪の決断をしてしまった昭和の10代の少女たちと、彼女らに慈しみ深い眼差しを向けた裁判官の話。 続きを読む 22週~昭和の少女と、いつくしみ深きまなざし