🔓双葉ハイムで死んだ女①~宇都宮拳銃たてこもり心中事件~

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 平成一六年五月二〇日早朝。

電話口で、女は必死で訴えていた。
愛する人が死にそうなこと、先に撃ったのはこの人ではないこと、追い詰めたのは周りだということ。
そのマンション下の国道一一九号には、ずらりと黒塗りの高級車が列をなし、あきらかに堅気ではない人物の姿もあちこちに見えた。その中に、中年の夫婦の姿も見て取れる。
警察車両もマンションを取り囲んでいる。周囲の道路は封鎖され、すぐ向かいにある中学校は臨時休校、周辺のガソリンスタンドや商店も、閉店を余儀なくされていた。

マンション近くの陸橋のそばで構えていた報道のカメラに、突然、女性の絶叫が聞こえた。名前を叫んだように聞こえた。

そして、間髪入れずに銃声。

宇都宮市一条の双葉ハイム二〇六号室で、その日男と女が死んだ。

その四年前、同じマンションの最上階の部屋でも、一人の女が死んでいた。

平成一六年の事件

平成一六年五月一八日午前九時四五分。
神奈川県内で銃刀法違反の容疑がかかっていた住吉会系暴力団員・畠山武人(当時四一歳)が、栃木県宇都宮市内の知人女性宅に立てこもった。
栃木県警と綿密な連携をとっていなかった神奈川県警は、畠山の過去なども把握しておらず、栃木県警に対する報告も事件が起こる三〇分前になって初めて行い、安易に知人女性宅へ突入しようとし銃撃戦に。
その際、畠山は被弾し重傷を負う。栃木県警が必死の説得を試みるも、投降の意思はなかった。警察は畠山がダイナマイトのようなものを見せていたことを懸念し、突入の決断が出来ずにいた。

翌五月一九日。
当初人質と思われていた知人女性が、電話で「一緒にいたい」と言ったことなどから、女性は人質ではなくいわば「協力者」的な立場であると判断。
数々の説得を試みるもことごとく失敗。この時点で、畠山の容体は重篤な状態になっていたと思われる。
そして、五月二〇日午前五時。
閃光弾が室内に投げ入れられた直後、捜査員がドアを破壊して中になだれ込んだ。
その間、銃声が三発、轟いた。

畠山武人と、その愛人の女性は頭部を撃ち抜いており死亡。当初30代とみられていた女性は、まだ二二歳という若さだった。
武器庫と推察されていたその部屋には、自身を撃ち抜いた拳銃以外はモデルガンしかなく、警察がダイナマイトだと思っていたそれは「トイレットペーパーの芯」であった。

【有料部分 目次】
加藤敬子さんのそれまで
畠山武人の人生
ふたりの最期

ここからは有料記事です

「🔓双葉ハイムで死んだ女①~宇都宮拳銃たてこもり心中事件~」への19件のフィードバック

  1. はじめまして。

    別の記事を読んでから、過去の記事を遡っているうちにこちらの記事にたどり着きました。
    私にとって、この事件は衝撃的で一生忘れられない事件です。

    当時お付き合いしていた方が説得のために現場に訪れていた事もありますが、事件後に発覚した事実ですが他県で起きたレストラン強盗の犯人2人のうちの1人でした。そして、その事件の被害者が私の親族でした。
    後ろ手に親指を針金で縛られ、冷凍庫に閉じ込められました。たまたまブレーカーが下りていたことで命は落とさずに済みましたが、酷いPTSDを患いました。
    現在も暗闇や背後に人が立つ事を嫌います。

    殺人や放火に比べたら、大した事がないかもしれません。
    それでも一歩間違えれば命を落としかねなかった。
    例え、どんな状況であれ本人が死亡していたとしても、命を軽んじるような人間を許す気持ちに私はなれそうもありません。

    取り止めもない文章、大変失礼いたしました。

    1. 一読者 さま

      はじめまして、コメントありがとうございます。
      その事件、ココス結城店のことでしょうか。
      被害者の命は助かったとはいえそれは結果論であり、非常に悪質かつ凶暴な犯行です。
      ましてやその被害者のご関係者となれば、お怒りもごもっともに思います。

      話は戻りますが、畠山が2004年に立てこもった際にに当時の交際相手の方が説得に行かれたとのこと。
      ということは、交際相手の方も暴力団関係の方でかつ、畠山をよく知る方だったのですよね
      ココスへの強盗はその一か月前。一読者様自身も、畠山と作田とある意味近いところにいらした方わけで、心中お察しいたします。

      この記事にも書いていますが、そういった事件をのちに起こしてしまったわけで、もっと早い段階で彼らを逮捕しておかなければならなかったし、そのチャンスもあったと思います。
      もちろん、畠山と敬子さんが死ぬこともなかったかもしれない。

      全てにおいて残念で、個人的に心に残る事件です。

      1. 丁寧なご返信ありがとうございます。
        強盗事件についてはお察しのとおりです。

        立てこもり事件発生時は、強盗事件の犯人という事は明らかにされてませんでした。
        関係者だから内密にされていたのかもしれませんが、事件後に知らされたようです。
        知ってしまってから、今ここにある命を大切にしなければと深く感じるようになりました。

        元交際相手は、畠山自身に近かったのかは不明ですが、暴力団と密な方だったので、説得に駆り出されたと言っておりました。本人はカタギでしたが、駆り出される辺り今思えば結構近い関係だったのかもしれません。
        これに関しては親族には一生話さないでおこうと思っております。

        1. 一読者 さま

          こちらこそ、コメントありがとうございます。
          そうですね、立てこもった際には、まだ作田が逮捕されてませんでしたし、畠山氏が死亡したあとで判明したことですよね…
          非常に凶悪な事件であり、もし逮捕されていれば場合によっては死刑も想定されるレベルだと思います。

          お立場上、話せないことがあるのはお辛いことと思いますが、ここで少しでも吐き出して、少しでも一息つけたら嬉しく思います。

  2. 武人の記事を読めて
    良かった。
    最初の立て籠り事件を
    起こした時に問題に
    なった中学生が私。
    本当は表に出ない裏の
    事情があった
    覚醒剤を打たれた中学生も問題はあった
    この人は寂しがり屋で
    照れ屋で小心者。
    でも良い人だった。

    1. 中学生 さま
      コメントありがとうございます!
      あの、これ公開しても良かったんでしょうか?
      もし、もしも可能でしたらお話聞かせていただけないでしょうか?
      他の方からも、彼の人となりは色々と聞いていて、人間畠山武人に大変興味があります。
      この事件こそが、このサイトをやる上で必ず書きたかった事件でもあります。

      コメント心から感謝致します。

  3. 今回の事件は「悪党」の登場ですね。

    「クズ男」や「悪男」と違い自分の行動には自身があったのでしょう。

    暴力団の幹部クラスの実力はなかったのかも知れませんが、暴力団員としてはやっていけたのでしょうね。

    警察はなぜ射殺したのでしょうか?本当にダイナマイトがあると思ったのでしょうか?頭を撃たれたということは即死を狙ったと想像します。結構、警察もバイオレンスなんだなと。ある意味安心しました。

    今回いつもと違ってなんか臨場感溢れる作品と感じました。変な言い方ですがスカッとしました。ドロドロした感じをあまり感じませんでした。資料が豊富にあったのか、それとも強く印象に残っている事件なのかなと感じました。

    1. ひめじの さま
      この事件は、このサイトを作った割と早い時期に挙げた事件ですが、私の思い入れの深い事件でもあります。
      今回、つづきとなる後藤良次の事件をアップしたので、ついでに上の方に持ってきました。
      記事の中にも書きましたが、当時のニュースで二人が死亡した際の「声」を聞いた覚えがあります。
      絶叫でした。
      あ、警察が撃ったのは頭ではなく体のどこかです。敬子さんを撃った畠山が、その後自殺したとみられています。
      二人を結果的に死なせたことや、栃木、神奈川、茨城の県警が縄張り意識で情報を共有しなかったことなど、かなり叩かれましたよ。
      この事件の資料は全くと言っていいほどありませんでしたが、いろんなつてをたどって調べました。
      コメント欄に、畠山のお知り合いの方のコメントがありますので、見てくださいね、

  4. あまり大した資料はないですが、喜んでご協力しますよ!
    ところでタイトルが①になってますが、②はあるのでしょうか?
    「二人の女」となっていますが、もう1人は後藤良次の被害者ですか?

    1. そうなんです。
      ただ、資料があまりなかったのでそのまんま保留になだてました笑

  5. こちらこそお世話になっております。
    そんなに衝撃的な事件だったんですね…
    当時はまだ事件などに興味がなく、知りませんでした。

    後藤良次の事件ですが、当時の記事によると12階とのことです。
    高層階で捜査員が出入りする写真も掲載されています。

    1. あ、12階でしたか!ありがとうございます。
      またいろいろと「この事件の資料ないですか」的なお問い合わせをすることがあるかと思いますが、可能な範囲で構いませんので、よろしくお願いします!

  6. こんにちは!
    こちらには初めてコメントさせていただきます。
    双葉ハイムの名を聞いてもしやと思ったのですが、やはり後藤良次の事件の現場だったのですね。
    行ったことがあります。
    まさかあそこでこんな事件があったなんて驚きました。
    これからも更新楽しみにしております。

    1. 折原さん!!
      いつもお世話になっております(笑)
      あの事件、私がこのサイトでどうしても書きたかった事件でした。
      夕方のニュースで、一緒に立てこもっていた女性の、畠山の名を呼ぶ声、今も忘れられません。絶叫でした。
      その後で後藤良次の事件のマンションだと知り、しかも同じ2階だなんて、と思ったものです。
      今、庄子と章代の事件の半分くらいまでまとめました。
      なんだか、庄子と章代、どちらが主導権を持っていたんだろう、果たして章代は哀れな洗脳主婦だったんだろうかとグダグダ考えております。

      また今後ともよろしくお願いします!

  7. 私わ畠山武人 旧姓渡部武人と少年院で二回一緒でした
    卓球が非常にうまくわたしも良く彼から卓球を教わりました
    気の小さかった男でしたが面倒見も良くいい男でした
    シャバで会う約束でしたがそれもできず残念です

    1. ケイスケさま

      なんと、彼と実際に会ったことがおありなのですね。
      彼の直接の知り合いは一人しか知らないのですが、なんとなく彼の「気の小ささ」はわかる気がしていました。
      ケイスケさんは今お元気になさってますか。彼のしたこと、しまいのつけ方に共感できるものはありませんが、あなたのように直接かかわっていれば、その気持ちももしかしたら違うものなのかもしれませんね。

    2. 先日、こちらのブログに出会いまして、はじめから読ませて頂いてます。
      私も大島てるをたまにのぞきますが、この双葉ハイム、事故物件になってないみたいですね。
      あまり有名でない事件を深掘りされていて、かなりハマっています。
      これからも楽しみにしています!

      1. コメントありがとうございます。
        双葉ハイム、今確認しましたが大島てるに掲載されていますよ、有名なマンションです。
        書きかけですが、このマンションはあの映画「凶悪」の後藤良次が、例の日立ウォッカ事件を起こす前に女性を急性覚せい剤中毒死させた部屋(たしか201か202)があることでも有名です、別名ヤクザマンションとも呼ばれています。
        畠山と後藤良次は関係ありません(おそらく)が、このマンションはなにか因縁みたいなものでもあるんでしょうかね。
        これからも「そんな事件あったっけ?」みたいなものも扱いますので、またよろしくお願いいたします。

  8. 私は畠山武人 旧姓渡部武人と少年院で二回一緒でした
    彼は卓球が非常にうまく良く教えてもらいました
    人間的に気の小さかった男だったと思いますが それでも良く面倒見てくれました

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