佐賀のコンクリ殺人
平成3年3月4日、鳥栖署は殺人死体遺棄事件の容疑者として佐賀県内の建設業の男ら4人を逮捕した。
そして、男らの供述通りの場所から遺体が発見された。
遺体があったのは大野城市内の稼働中の鉄鋼製作工場敷地内。
深さ約1mの土中から発見されたが、その遺体はコンクリートで固められていた。 続きを読む 🔓止められない、止まらない〜4つのリンチ殺人後編〜
平成3年3月4日、鳥栖署は殺人死体遺棄事件の容疑者として佐賀県内の建設業の男ら4人を逮捕した。
そして、男らの供述通りの場所から遺体が発見された。
遺体があったのは大野城市内の稼働中の鉄鋼製作工場敷地内。
深さ約1mの土中から発見されたが、その遺体はコンクリートで固められていた。 続きを読む 🔓止められない、止まらない〜4つのリンチ殺人後編〜
その日の目覚めはいつになく爽快だった。
これまでの二日間、ほぼ寝たきりだったのが嘘のようで、久しぶりに一人で外出してみる気になった。
財布を覗くと、2000円程度しかなかった。郵便局と銀行でお金を下ろし、いつもならバスに乗るところを歩いてみようと思った。
姪浜駅北口を出て400m、国道に出たところを左折。自宅までは約1,5キロ。交通事故でひざを痛めて以降、歩く速度は遅いものの、この日はいつもよりも力が漲っていた。
途中、ふとファミレスに寄ってみようと思った。ちょうど昼時、いくつかのメニューを頼み、ビールも注文した。合計は1296円。
いつもならこんなことはしないが、とにかく、いつもよりも動けることが嬉しかった。
午後3時、小学校から息子が帰宅。ドーナツが食べたいとぐずったが、作ってやろうにも卵を切らしていた。
「じゃあ卵を買いに行こうか。」
母と息子は手をつないでスーパーへと向かった。
途中、大きな公園があった。息子はどうやら、小学校の遠足で来たことがある公園らしい。そういえば夏休みの間、あまり遊んでやれなかった。スーパーは後回しにして、遊んでいこう。
「トイレに行くけん、ここでおってね」
息子に声をかけ、トイレに向かう。
しかし出てきた時、息子の姿は見えなくなっていた。
「男の子を見ませんでしたか!?」
平成20年9月18日午後4時ころ、福岡市西区の小戸公園にて、母親と遊びに来ていた同市立内浜小一年の富石弘輝くん(当時6歳)の姿が見えなくなったと母親から通報があった。
警察と共に、公園内にいた一般の人々も加わって弘輝くんを捜索していたところ、同公園内にあるトイレと外壁の隙間に膝を折り曲げた状態でもたれかかるようにしてぐったりしている弘輝くんを発見。
意識がなかったため救急搬送されたが、病院で死亡が確認された。
弘輝くんの首にはひものようなもので絞められた痕が残されており、福岡県警では殺人事件として捜査本部を設置して捜査にあたった。
弘輝くんの衣類に乱れはなく、首のあと以外に目立つ外傷もなかった。
通報した母親によると、弘輝くんにはGPS機能付きの携帯電話を持たせており、いなくなった直後から母親がそのGPS反応を捜していたという。
捜索している中、一般の男性が弘輝くんを発見し警察に知らせたところ母親も近づこうとしたが、最悪の事態を想定して男性が母親を押しとどめた。母親は不安そうに、しかしそれ以上は近寄らなかった。
男性はなんとなく、違和感を覚えたという。母親はトイレに行くと告げて子供から目を離したと話しているのに、なぜか、最初からそのトイレ付近は捜索しようとしていなかったし、みんなが捜しているのに、ベンチに座ったままだったという。発見した際、弘輝くんの足元は裸足で、その靴が足元にきちんとそろえられて置かれていたのも気になった。
搬送される弘輝くんに、母親は寄り添いずっと声をかけ続けていた。
事件翌日、福岡市内で弘輝くんの通夜が営まれた。車いすの母親は参列者に対し、「子どもから目を離さないでね、こんな悲しいことはわたしだけでいいけん」と気丈にふるまっていたというが、柩の周りで親族が「犯人を殺してやりたい」というのを聞くと、ひざに顔をうずめるようにして号泣していた。
翌日の葬儀では、笑顔の弘輝くんの遺影を胸に霊柩車に乗り込み、参列した人々はその悲しみの中で残された家族の心中を思い、いまだ逮捕されていない犯人に対しての怒りを新たにした。
9月22日。警察は事情を聴いていた母親を、弘輝くん殺害の容疑で逮捕した。
【有料部分 目次】
発達障害
難病
夫
序列
苦しいほどの生真面目
ママなんか死ねばいい
不可解
絶叫
人は誰しも過去があり、それは人によって恥ずかしいものから誰にも言えない洒落にならない秘密など色々である。
それでも実際に他人が聞いてみればなんのことはない、そんなこと隠さなくてもいいじゃないか、と思うほどちっぽけなことであるケースも少なくないし、その過去を人に話せる、共有できるだけでも、本人からしてみれば気持ちが楽になることもあるだろう。
ただそれが犯罪、しかも人を殺していたとなると、穏やかではいられない。
昭和の時代から平成にかけて起きた二つの事件。
いずれも、大変な過去を背負いながらも赦されて、再び社会の中で生きていた男たちの、どうしようもない二つの物語。
【有料部分 目次】
杉並の女子中学生刺傷事件
一家五人殺しの男
行き場のない少年少女たち
押し付けられた「オジン」
この時代の感覚
男の本性
無期懲役+8年
更生の道の途中で
足立区主婦バラバラ殺人
疑わしい男
DNA鑑定
「やりたいんでしょう?」
死人に口なし
過去を知られたくなかった男と、その妻
再びの無期懲役
小田急玉川学園駅から北西に広がる巨大な団地群。
鶴川街道と鎌倉街道に挟まれるようにしてその団地はある。
町田市金井町、都市再生機構「藤の台団地」がそれだ。
その日、多くの人々が夕食を囲んでいた午後8時前、3階のとある部屋から出火した。
火災に気づいたのは隣室の住人。異様な臭いにベランダへ出てみると、まさに隣のベランダが燃えていたのだ。
火はさほど強くはなかった。ベランダのゴミのようなものが燃えている、そう思った住人は火元の部屋のドアを叩いた。
「ベランダが燃えているよ。なんとかしなさい。」
住人が声をかけると、室内からは特に慌てるような気配もなく、「はーい」と男性の返事が返ってきた。
しかし一向に火は消えず、さらには爆発音のような音も聞こえたことから住民らは避難を開始した。
避難しようと階段を下りていた住人の大学生が、ふと前を降りていく男性を見た。両手をポケットに突っ込んで、火事だというのに急ぐ素振りもない。
しばらく男性の後をついて降りていた大学生は、こんなのんびりしていたら危険なのではないかと思い、男性を追い越した。
外からベランダを見上げると、ベランダの火は上階にまで届くほどの勢いになっていた。
消防隊が駆け付け、消火活動が開始された。幸い、隣室への延焼は食い止められたようだったが、室内から男性の遺体が発見された。
一方で、警察は現場付近の墓地で墓石にしがみついている男を発見。男はパトカーを見て歩き出したが、足を引きずり、どこか様子がおかしかった。
「足をどうかしたんですか?」
警察官の問いかけに、男は要領を得ない返答をし、立ち去ろうとした。男の手には包帯がまかれていた。
さらにその手の傷について質問されると、男は「わからない、わからない」とうろたえた様子だったが、自分の名前を名乗り、生年月日を伝えてきた。
男はあの火が出た部屋の住人だった。
【有料部分 目次】
事件と、当初の報道
男の半生
違法薬物、酒、リタリン
主からのメッセージ
口腔内にドリル
来なかった大天使ミカエル
憎悪か、幻想か
卵が先か、鶏が先か
責任能力
忘れ去られるのみ
「家の中にまだ3人いるんだ!!!」
夜も明けきらぬ午前3時、住宅密集地にある一軒の家から火の手が上がっていた。木造2階建て、火の回りが早くおよそ80㎡がすでに焼け落ちようとしていた。
男性は近所の人らに羽交い絞めにされながらも、家族の名を叫び続けていた。
火災が起きたのは北九州市小倉南区の住宅。
この家には夫婦と10代の長女、長男の4人が暮らしていたが、父親以外の母子3人の行方が分からなくなっていた。
救助された父親によれば、火が出た時間帯には妻と長男は就寝中で、長女は起きていたという。
後に焼け跡から3人の遺体が発見され、母子と断定された。
警察と消防の調べでは、現場に灯油をまいた痕跡があったことから、早い段階で放火の可能性が高いとみていた。
加えて、一人逃げ延びた父親の話が放火を裏付けることにもなった。
父親によれば、午前2時過ぎころから1階のリビングで転寝をしていたところ、突然後頭部を殴られその後しばし気を失っていたという。
そこへ、「助けて!」という妻の悲鳴が聞こえたことで目を覚まし、急いで妻と長男がいる2階の和室へ向かったところ、すでに和室が火に包まれていたというのだ。
父親は隣の部屋にいるはずの長女が心配になって部屋を覗くと、灯油のにおいがして、長女の部屋にも火の手が上がっていた。
そして長女もそこにいた。手に金属バットを持って。
父親に気づいた長女は、金属バットを振りかざして父親に殴りかかってきたため、もみ合いになったという。そうこうしている間に、父親の衣服にも火が燃え移ったために父親はそのまま家の外に逃げ出した。
長女はそのまま、炎の中に消えた。
家の外では、すでに火事に気付いた近隣の人が消火活動を始めており、逃げ出してきた父親も救助された。
父親は冒頭の通り、取り乱して家族を救うために再び家の中へ戻ろうとしたという。近所の人々は胸を痛めながらも、父親を必死で取り押さえた。
この火事で死亡したのは、この家の主婦・小副川(こそえがわ)美代子さん(当時43歳)、長男の剛くん(当時10歳)、そして長女(当時17歳)と断定された。
救助された父親も、後頭部に殴られたような痕があり、警察は父親の証言と現場の状況、そしてそれまでの家族の状況などから、長女が火を放ち、自身も死亡した可能性が高いとして捜査を始めた。
長女は素行に問題があり、両親は以前から心を痛めていたという。前年の3月には高校を中退しており、専門学校へ通ってはいたものの、帰宅が遅いことなどから家庭内では口論が絶えなかった。
父親も、前日の夕方の食事中に些細なことから長女と口論になったと話していた。その後、遅くまで長女の部屋に電気がついていることから、早く寝るよう注意した直後の火災だった。
長女は心に病を抱えていたのか。それとも、家族間で殺したいと思うほどの憎しみがあったのか。
【有料部分 目次】
家族の軌跡
夫婦の問題
その夜の真実
壊れゆく家族
快楽の沼
その女
バレンタインデー前夜
「もう、遅い」
死刑求刑
本来の人間性と、子供の障害
立ちはだかるあの事件
死刑と無期のはざまで