片隅の記録〜三面記事を追ってpart13〜

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もうひとつの惨劇の朝

立派な木造の家屋が今、焼け落ちようとしていた。呆然と立ち尽くし、我が家が焼け落ちるのをその家の主人はただただ見守るしかなかった。
一体何が起きたのか。
いつもと変わらぬ、普通の日曜の朝だった。朝餉の匂い、近所の畑で野菜をとる人、休日出勤の人々……
少しぐずついた空模様ではあったが、日中は25℃まで上がる予報だった。

しかし今、その日常は目の前の家屋とともに、崩れ去ろうとしていた。

カマ男

平成3年7月14日午前5時45分、埼玉県神川町の農業・奥原実さん(当時70歳)方に男が押し入り、1階の今で書類整理をしていた実さんの背中を持っていた刃物でいきなり刺した。
実さん方には次男(当時37歳)が同居しており、当時は2階の自室でまだ就寝中だったが、父親の悲鳴を聞いて飛び起き階下へと降りたところ、次男も背中などを切られ怪我を負わされた。

実さんは必死に逃げたが、裏の物置で力つき、倒れ込んでいたという。
救急搬送されたが、残念ながら出血多量で死亡が確認された。

男は次男を切りつけた後、その場から立ち去っていた。

その頃、実さん方から少し離れた場所の伊藤茂十郎さん(当時69歳)は、庭先で農作業の準備を始めていた。梅雨があけ、伸びてきた畑の畔の雑草を刈っておかなければならない。伊藤さんは草刈り用の鎌を2本、畑を持っていくために用意していた。
そこへ、ふらりと男が現れた。誰だったろう?見たことはある気がするが。
そう思っていると、男は無言で庭先へ入り込み、用意してあった鎌を両手にそれぞれ持つと、突然伊藤さんに斬りかかってきた。
伊藤さんは身をかわすも額を斬りつけられたが、大きな怪我には至らなかった。

その近くの畑では、主婦の落合芳江さん(当時61歳)が野菜を収穫していた。今日の分の野菜を採り終え、自宅へ戻ろうとした時。
伊藤さん宅から出てきた男が突如襲いかかってきた。芳江さんは咄嗟に近くの落合作治さん(当時58歳)宅に助けを求めた。玄関先に出て気た妻の晴代さん(当時56歳)が助けようとすると、男は2人に襲いかかってきたという。
「お父さん!!!」
妻の叫びに奥から落合さんが飛び出してきた。男が鎌を持っていることに気づいて、玄関にあった孫の虫取り網を構えたという。
男は無言。何も言葉を発しないまま、1分間ほど睨み合った状態が続いたというが、不意に男は隣の家の方へ歩いて行った。
落合さんの次男(当時25歳)がそれを追い、男が隣家へ侵入しようとした際に持っていたゴルフクラブで男の足を叩いたところ、男は立ち去った。

その後、男の行方は途切れたが、すでに警察に通報がなされており、また男の見た目から人物も特定されていた。
男は近くに暮らす当時56歳の無職だった。近所の人らによるとアルコール依存症で入院していたことがあるというが、それ以外にも失恋したことで精神的に不安定になっていたという話もあった。
その後の警察の調べでは、精神分裂病(当時。現在では統合失調症)で入院歴があったことも分かった。

実さんと次男以外は比較的軽傷だったが、最後に男は隣の地区の小学校教諭宅へやってきた。
すでにパトカーのサイレンなどで騒然となっていたため、その家の主婦・茂木美知子さん(当時50歳)も何事かと玄関先に出てきていた。
そこへ、男が現れた。
手には鎌と角材、足元は裸足。そしてその上半身は返り血に染まっていた。
後退りする美知子さんを鎌で切り付けた男は、屋内へ逃げた美知子さんを追って上がり込んできた。そして、出てきた夫の賢さん(当時53歳)にも角材を振り下ろし、2人に怪我を負わせた。
「火、つける」
男の言葉に、賢さんは美知子さんを連れて家を飛び出した。その直後、二階部分から出火。そしてそのまま、木造モルタル二階建ての家屋は瞬く間に炎に包まれてしまった。

男はどこへ……?

男の出現からわずか30分の凶行だった。
実さんが死亡、合計9人が死傷し、1軒が全焼するというあまりにも結果は重大だった。
しかもこの時点で男の行方はわかっていなかったが、のちにその焼け落ちた家の中から、焼死体が出た。
茂木さん方は全員逃げており、となればこの遺体は男のものか。
司法解剖の結果、遺体は9人を襲って火を放った男と断定された。

男は母親と弟との3人暮らしだったが、薬が合わないと不安定になることがあったという。
昭和53年に本庄市内の精神病院に入院して以降、入退院は6回に及んだ。今回は2月1日まで通院しており、家族によれば不安定な様子はなかったという。ただ前日に1合ほど酒を飲んでいたようだ。

男の中に何が起きていたのか。

事件は被疑者死亡で書類送検となった。

手放せなかった母ふたり

令和7年12月、東京歌舞伎町の風俗店所にあった冷蔵庫の中から、ナイロン袋やタッパーに詰められた 嬰児の切断遺体が発見された。
後に逮捕された20代の母親は、出産後に気を失い、気づいた時には明らかに赤ちゃんが死亡していたため、隠蔽するために遺体を切断したと供述。
しかしどこかに捨てるわけでもなく冷蔵庫内に置いたいたことについては、
「傍においておきたかった」
と話した。

福島・田島町の母親

平成16年12月、福島県田島町 塩江(現・南会津郡南会津町塩江)の町道で、うずくまっている女性を通りすがった男性が発見した。
女性は血の気が失せたような青白い顔をし、気持ちが悪いと訴えたために男性は救急車を呼んだ。
ところがその後女性の首などに切り傷があり、「ここへは母親と来た」「一緒に死ぬつもりだった」などと話したため、警察は女性が保護された周辺の山林を捜索したところ、保護された場所にほどちかい林道の入り口付近に中年の女性が倒れているのが発見された。女性はすでに死亡していた。
しかしそれだけでは終わらなかった。保護された女性が、「男児の遺体を持ってきた」とも話していたのだ。警察はさらに付近の捜索を続け、旅行カバンのような物を発見。中には、 赤ちゃんらしき「ミイラ」が入っていた。

福島県警田島署は、女性を母親殺害の容疑で逮捕した。逮捕されたのは埼玉県草加市在住の無職・名嘉山日向子(仮名/当時27歳)。
殺害されていたのは日向子の実母、名嘉山千代子さん(当時51歳)で、死因は首を絞められたことによる窒息だった。
そして、旅行カバンの中のミイラは、日向子が平成13年11月初旬に自宅で出産した子供と判明した。
この田島町は、母親の千代子さんの実家がある町で、現場から実家まではそう遠くない距離だったという。ただ、しらせを受けた実家の親族らは「千代子さんとは何十年も連絡を取っていなかった」と話し、今回日向子と田島へ来たことも知らなかった。

日向子はそれまで実家で両親らと4人で暮らしていたという。どういう経緯かは不明だが日向子は妊娠。千代子さんが日向子の妊娠を知っていたかどうかは分からないが日向子は費用がかかるからと中絶手術をしなかった。
そして日向子が選んだのは、とりあえず産んで生きていれば即座に殺すというもの。
実際に生まれた赤ちゃんは産声をあげる前に母親である日向子によってその首を絞められた。理由は、同居してある父親に知られたくなかったから、というものだった。
赤ちゃんの遺体はそのまま埋めたり捨てたりせず、自宅の引き出しの中にしまい込んだ

その後、千代子さんと日向子の間でどんな会話が交わされたのか。千代子さんは日向子に「一緒に死のう」と持ちかけてきたという。日向子が赤ちゃんの遺体を持ってきていたことからも二人の心中の意思は固かったろうし、長く帰っていなかった田島町へ来ていたことからも千代子さん主導という印象が強い。千代子さんが心中を持ちかけたのも恐らく、娘のしたこととそれをどうすることもできずに来た自責の念からだと見て間違いはないと思うが、結果、日向子は生き残った。
日向子自身も、首を切っていたが死にきらなかった。

福島地裁会津若松支部は、嘱託殺人などの罪に問われた日向子に対して懲役4年を言い渡した。

足立区の母親

平成10年8月6日。警視庁西新井署は次男の遺体を1ヶ月半にわたり放置したとして足立区の飲食店従業員、藤本恵(仮名/当時27歳)を死体遺棄容疑で逮捕した。
死亡していたのは当時1歳の駿也くん。
6日の夕方、近く住んでいる恵の父親から消防に通報があったという。しかしその通報内容は、「娘が帰宅したら娘の夫が首を吊っていた」というものだった。
しかし駆けつけた警察官らが見つけたのは、夫の遺体だけでなく、布団に寝かされた小さな遺体だった。

恵の供述によると、事件が起きたのは6月17日未明の事だったという。眠れずにグズる駿也くんに対し、イラついた夫が殴った。わずか一歳。駿也くんはそのまま死亡した。
大変なことになった、出頭しなければと思ったものの、夫婦には気がかりがあった。長男である。
長男は当時2歳で、7月17日が3歳のお誕生日だった。

なんとかその日まで、家族全員でいたい……

恵と夫は話し合い、長男の誕生日までは駿也くんの死を隠すことに決めた。そして、駿也くんの身体を維持するために氷で体の周囲を冷やし続けたという。
長男の誕生日が過ぎても、決心がつかなかった。夫婦は相談し、近々恵の父親に相談しに行くことにしていた。

しかし、夫はすでに耐えられなくなっていた。自分の下あまりに愚かな行為にか、それとも今後待ち受ける事態にか、あるいはその両方か。
警察は傷害致死と死体遺棄の疑いで夫を被疑者死亡で書類送検した。
恵についての続報は見つけられなかったが、長男の存在や駿也くんを丁寧に扱っていることについては考慮されたと思われる。

三重の逆恨み殺人

平成14年5月28日午前2時35分ごろ、静岡県沼津市の道路わきの空き地で車が炎上しているという110番通報があった。
しかも、その車の脇には体に火がついた状態の男性が立ち尽くしていたという。
男性は救急隊に助けられたが、意識不明の重体となった。何らかの事故なのか?それとも焼身自殺を図ったのか……?
警察が燃えた車を調べていたところ、これが事故や単なる自殺ではないということがわかった。
燃えた車のトランクの中から女性とみられる焼死体も発見されたのだ。

静岡県警沼津署は身元を調べるなど捜査を進めたが、この事件には三重県警から捜査員が派遣されていた。実は27日夜に三重県四日市市内で女性が行方不明になっており、関連性を調べるためだった。

三重の拉致事件

事件は5月27日の午後8時30分ごろ。三重県四日市市小古曽の病院で看護婦長をしている女性がタイムカードを押して退勤した直後、行方が分からなくなっていたのだ。
しかも婦長の軽四自動車近くの地面に血だまりが、さらに座席には大量の血痕が付着した座布団が置かれていた。
警察はその血の量が多いことから早い段階で犯罪に巻き込まれた可能性が高いと判断し、目撃情報や婦長の同僚、家族らから話を聞いていたが、その夜、駐車場近くで午後7時半と8時ころに同じ車が病院職員駐車場入り口付近にいたことが分かった。
中には60歳前後の男で、髪型はオールバックだった。
その場所は、駐車場に車を停めた職員が病院を出た後必ず通る場所だったことから、婦長は待ち伏せされ連れ去られた可能性が高かったし、犯人は婦長と顔見知りの可能性も高まった。
そして浮上したのが、一人の男の存在だった。

それは、婦長の姉の夫だった。

DV

トランクで焼死していたのはその後の司法解剖でやはり亀山市在住の婦長・今村礼さん(当時53歳)と断定された。
今村さんはまじめで人当たりがよく、患者からも「優しい婦長さん」と評判だった。会社員の夫と義母との3人暮らし。近所の人の評判も良く、加えてとてもきれいな女性だったという。
忙しい日々の合間の休日には近くで暮らす娘さんの家へ出向き、孫を連れて買い物に行くなど私生活も充実していた。

しかし今村さんには実は悩みがあった。それは、姉夫婦のことだった。
今村さんの姉は千葉県鋸南町で夫と暮らしていたが、約10年ほど前から夫に暴力をふるわれるようになったという。
あまりにひどい暴力に耐えかねた姉は身を隠すなどしてはいたものの、夫に見つかって連れ戻されることの繰り返しだった。この時代はまだDVに対する認識は甘く、また本人も決心が鈍ったりすることもあったと思われる。
そんな中で姉が頼りにしていたのが、今村さんだった。ようやく離婚を決意した姉が4月下旬に自宅を出たあと、姉の夫からは今村さん宅に「お前たちのせいだ、殺してやる」と書かれた手紙を送りつけられていた。
正しい判断能力を備えていた今村さんは、途方に暮れる姉に対し自分の身を守ることなどをアドバイスし、時には匿ってくれる場所や団体などを調べて紹介していたのだ。

それが、姉の夫の逆鱗に触れた。

被疑者死亡と共犯者

警察の調べで、炎上する車の近くで全身やけどを負ったあの男性は、以前重体で予断を許さない状態が続いていたが、その過程で今村さんの姉の夫と確認された。
燃えた乗用車は姉の夫が14日から28日までの予定で四日市市内で借りたレンタカーだったことも分かった。そして車内からは包丁も見つかっていた。
警察は、自分の結婚生活を邪魔されたと思い込んだ姉の夫が今村さんを刺してトランクに押し込めて拉致、今村さんもろとも自殺の道連れにしたとみた。
姉の夫は事件から11日後、一度も昏睡から醒めることなく死亡した。

一方の今村さんの死は、遺族にとっては非常に辛いものとなった。
大量の出血痕は今村さんが勤務する病院の医師らが命の危険があると危惧するほどだったため、発見された深夜2時の時点ではすでに死亡していた可能性が高かった。
しかし、司法解剖の結果、今村さんの血液に凝固したあとが認められた。これが意味するのは、火を放たれた際、今村さんはまだ生きていたということだ。意識はなかったと思いたいが、今村さんの死因は一酸化炭素中毒だった。

警察は姉の夫を今村さん殺害容疑で被疑者死亡のまま書類送検とした。

しかし事件には謎が残されていた。
今村さんが拉致されたあの時間、目撃された車には実は男が二人乗っていた、というものがあったのだ。
また、姉の夫が事件より前に別のレンタカーを借りていたことも分かっていたが、それを返却したのは姉の夫とは別の男だったという。
さらに、事件後の5月29日。今村さんの自宅に「次はお前の番だ。仲間がいるから放っておかない」という脅迫文が届いていた。消印は沼津。
これを出したのは、死ぬ前の姉の夫なのか?しかしほかに仲間がいると書いてもある……
警察は7月になって、一人の男を今村さんに対する逮捕監禁容疑で逮捕した。
逮捕されたのは茨城県霞ケ浦町の無職の男。今村さんの姉の夫の、弟だった。

当初否認していた弟だったが、その後の調べで兄に脅され今村さんの拉致に手を貸したことを認めた。
弟の逮捕によって、今村さん拉致から殺害までの詳細が明らかとなったが、弟によれば夫婦仲を裂かれたと邪推した兄から、妻の居場所を探るために妹である今村さんを拉致する計画を聞かされた。当初断っていたものの、何度も脅され共謀。兄に言われるがまま、レンタカーを返却したり手助けしたという。
あの日もふたりで今村さんを待ち伏せ。兄が今村さんをこん棒のようなもので殴りつけトランクに押し込める手伝いをした。

何の落ち度もない被害者を逮捕監禁した罪は重いとしながらも、弟も脅されていたことや、傷害行為は兄が行ったことなどを踏まえ、津地裁四日市支部は弟に懲役1年2月を言い渡した。

しかし弟は兄から金をもらっていた。その額、50万円。脅されたからというのとは違うような気もしないでもない。

事件は後味は悪いが一応、終結した。

ただ個人的にもう一つ疑問がある。
姉の夫は、妹である今村さんを利用して妻の居所を知ろうとしていたのではないのか。だから弟を巻き添えにして待ち伏せまでして拉致したのではないのか。
怒り、怨みで殺してやろうと思ったのなら連れ去る必要はない。連れ去ったのは理由があり、妻の居場所を吐かせたかったからに思えるのだが……。
しかも火を放った時、今村さんは生きていた。妻の居場所を聞き出せたから用なしと判断した、あるいはすでに死亡していると誤認したのかもしれないが、なぜその同じ現場で姉の夫も炎に包まれていたのか。憎い相手と同じ場所で死にたいだろうか。
警察は姉の夫の遺書らしきものを入手しており、自殺しようと思っていたのは間違いないと思うが、それは「この場、この時」だったのだろうか。こういうタイプは死ぬ時まで相手を苦しめなければ気が済まないので、憎き相手の目の前でそれこそ焼身自殺や飛び降りなど衝撃的な方法で自殺したりする(海外だと拳銃自殺が多いらしい)。とすれば自殺するにしても少なくとも妻を探し出してからではないのか。

「被害者も加害者も身内。気の毒でかける言葉もなかった」

四日市南署の幹部は読売新聞社の取材にそう語ったという。妻を守れなかったと夫は自責の念に駆られ、妹が自分のいざこざに巻き込まれて酷い最期を遂げることになってしまい、姉の憔悴も相当なものだった。
姉の夫は家族を破壊し尽くした。

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参考文献

日刊スポーツ新聞社 平成3年7月15日
読売新聞社 平成3年7月15日東京朝刊、平成10年8月7日、平成14年7月9日中部朝刊、平成16年12月7日、平成17年1月18日、4月19日、6月7日東京朝刊、
毎日新聞社 平成3年7月15日東京朝刊、平成14年5月30日(山下洋一郎)7月12日中部朝刊、11月5日、12月16日中部夕刊( 嶋野啓二郎)
中日新聞社 平成10年8月7日、平成14年5月28日夕刊、5月29日朝刊、6月6日夕刊
朝日新聞社 平成14年5月28日名古屋夕刊、5月29日名古屋朝刊、

神の砂〜伊良部島・隣人女性殺害事件〜

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沖縄県宮古島市伊良部島。サトウキビ畑が広がる美しいこの島で、平成19年11月17日、一人の高齢女性が惨殺された。
夫と農業を営んでいたその女性は、頭部に激しい損傷を受け、死亡していた。
女性の親族である宮古島市議は、

「年寄りに対して、どうしてこんな残酷なことが出来るのか」(沖縄タイムス社 平成19年11月21日朝刊)

そう言って怒りと悔しさをあらわにした。 続きを読む 神の砂〜伊良部島・隣人女性殺害事件〜

🔓慟哭~4つの少女による殺人~

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人が罪を犯すには多くは理由がある。他人から見ればバカバカしいようなことでも、本人には大問題、それこそ生きるか死ぬかというレベルに思えることもある。

大人でもそうであるなら、経験も知識も感情の制御も未熟な少年少女はどうだろう。
ただでさえ、思春期から成人するまでの年頃というのは、将来への漠然とした不安や、それまで正しいと信じてきた教師や親、ひいては社会全体への不信感なども芽生えるわけで、その自分でもどうしようもない苛立ちをそれでもどう昇華させるかは、だれしも苦く恥ずかしい思いと共に経験してきたことである。

親とぶつかり、友達とぶつかり、学校と社会とぶつかりながら、利己的な考えを改め、感情を抑え、時に理不尽に耐え、他人と一緒に尊重し合いながら社会で生きていくということを学ぶ。

それが出来なかった、あるいはそれ以前の問題だった少女たちはその時、なにを思ったか。彼女たちが起こした取り返しのつかない結末と慟哭。

広島の18歳

昭和59年12月、広島県三原市の通称白滝山のふもとで不審な男女が目撃された。中年男性と、少女。冬の午後6時といえばもう辺りは真っ暗だった。こんな遅くまで、こんな場所で何をしているんだろう?
まさか、自殺?
気になった通行人が声をかけると、男性は躊躇する様子を見せつつも、事情を話はじめたが、それは驚くべき内容だった。

13歳の遺体

「娘が、友達の女の子を殺したと言っていて……」

通行人は半信半疑ながらことがことだけに、警察へ通報。のちに警察が事情を聞いたところ、父親と一緒にいた高校3年生の娘が、幼馴染の女子中学生の首を絞め殺害したと供述。
警察が付近を捜索したところ、白滝山の砂防堤で倒れている少女を発見、死亡を確認した。

死亡していたのは広島県内在住の中学生、力田実穂さん(当時13歳)。逮捕されたのは実穂さんの家の近所で暮らす江梨子(仮名/当時18歳)だった。

調べによると、この日の午後、江梨子は実穂さんを誘ってこの白滝山へと出かけたという。しかし夕方になっても帰宅しないことから江梨子の父親が白滝山へ迎えに行ったところ、ふもとで動揺している江梨子を発見したということだった。

家が近く、子供のころから姉妹のように仲良く育ってきたという江梨子と実穂さん。ただ最近では、以前のような仲の良さではなくなっていた、という話もあった。

憎うて、たまらんかった

ふたりが小さい頃は本当に仲が良く、おそらく家族ぐるみのような付き合いだったと思われる。
しかし5歳の年の差は、次第に成長のずれとして二人の間に立ちはだかった。
江梨子は大学進学、しかも薬学部を希望していたということからも、平均より勉強ができる少女だったようだが、両親はその進路に反対だったという。
私自身は被害者の実穂さんと同年代だが、確かにその時代、看護師を目指す女子生徒はいても薬学部というのはかなり少なかったように思う。当然ながら薬学部ということなら大学も6年必要で、その分費用もかかる。もしかすると、経済的な事情もあって反対されたのかもしれず、それについてはこの時代おおいに有り得た話である。
彼女らが育った場所は広島県内でも田舎であり、この時代で広島県内の薬学部といえば広島大学か福山大学で、いずれも車で、かつ現在の道路状況なら1時間ほどの距離であるものの、当時の状況、ましてや電車を乗り継いでの通学は片道2~3時間かかり非現実的だった。となると必然的に下宿、寮、一人暮らしとなりそのあたりも女子にとっては家族の理解を得られにくかったかもしれない。

さらに言えば、大学への進学自体を反対されていたのかもしれない。

高校3年の2学期の終わり、もう、時間がなかった。実は事件のあった日の翌日には進路判定作業が始まる予定となっており、この時点で両親との間で話がまとまっていなかった江梨子はかなり焦っていた。
事件の数日前には父親と、そして事件当日の午前中にも母親と激しい口論となっていたという。

その数時間後、江梨子は思いついたように近所の実穂さんを白滝山へ誘った。

被害者の実穂さんも、江梨子同様に成績優秀、性格も朗らかで何の問題もない中学生だった。この昭和の終わり、多くの家には弾ける弾けないは別にしてピアノがあり、実穂さんはそのピアノも非常に上手だったという。
仲良しだったふたりの間に波風が立ったのはその年の春。江梨子が高校3年に上がってからだった。
進路について親と対立した江梨子は、その朗らかな実穂さんの振る舞いが癇に障るようになっていた。実穂さんが何かしたとか、そういった話は出ていない。実穂さんはそれまでと変わらずにいたにもかかわらず、自身の苛立ちの矛先を江梨子に向けられる羽目になった。
それは実穂さんが弾くピアノの音にまで及んだといい、ある時江梨子は実穂さんに直接、「ピアノでイライラする」と告げている。実穂さんはそれ以来、ピアノを弾くのをやめた。

しかしそれ以外に2人の間の問題があったような気配もない。ただひたすら、江梨子は天真爛漫で明るく振舞う実穂さんに勝手にどす黒い感情を募らせていたのか。

報道は江梨子を逮捕したところで終わっている。18歳であるものの、当時の状況を考えれば少年院送致になったと思われるが、江梨子は取り調べで
「実穂ちゃんが憎い。憎うてたまらんかった」
と話している。

白滝山の砂防堤付近には、お菓子の空き箱が残されていたという。実穂さんはあの日、江梨子に誘われておそらく嬉しかったのではないか。姉のように慕っていた江梨子の問題は、おそらくピアノの音が聞こえるほど近いところに住んでいた実穂さん方にも知られていただろうし、実穂さんも江梨子のその苦しみを知っていたから、おとなしくピアノを弾くのをやめたのだろう。
ひさしぶりの幼馴染のおねえちゃんとのおでかけ。ふたりの間にどんな会話があったのかはわからないが、実穂さんのそんな思いとは裏腹に、江梨子の心はもうどうしようもなく黒くなっていた。

【有料部分 目次】

岡山の17歳
吹田市の17歳
大阪市の17歳

片隅の記録・2025新年特大号〜三面記事を追ってpart10〜

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幼い子供や若い女性が理不尽な暴力の犠牲になったり、多くの死傷者が出た事件などは衝撃的で、その報に接した人々の記憶に強烈な爪痕を残す。
白昼、公共の場での無差別殺人などもそうだろう。
その後の報道で、事件の背景、加害者と被害者の関係性に嫉妬、差別、逆恨みなどの「わかりやすいドロドロ」がある場合なども、後々まで語られる。

ただ時にそれらは、憶測や虚偽、誇張などによって事実とは違った姿で歩き出してしまうこともある、奈良月ヶ瀬の女子中学生の事件や、山口のつけびの村などがそうだろう。

一方で同じく人が殺害されても全く話題にもならない事件も山のようにある。同じように、多くの人々の人生が狂い、壊されているにもかかわらず。

事件備忘録のある意味原点とも言える、「小さな扱い」しかされなかった事件の記録。 続きを読む 片隅の記録・2025新年特大号〜三面記事を追ってpart10〜

片隅の記録〜三面記事を追ってpart9・死体損壊編〜

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いわき・スーパー駐車場の遺体

その段ボール箱は、スーパーに隣接した6階建て駐車場の5階部分にあった。
開店直後の午前9時過ぎ、巡回中の警備員が発見したが、段ボール箱をビニールで覆ってあり、見るからに不審だった。
爆発物などの危険性もあり、警察に通報。その後臨場した警察官が中を調べると、そこにあったのは爆弾ではなく、遺体だった。 続きを読む 片隅の記録〜三面記事を追ってpart9・死体損壊編〜