🔓Motherly Love~今市市・主婦協力殺人事件~

平成9年夏

栃木県今市市(現・日光市)。
雨が降りしきるその夜、家のガレージ前で佇む女がいた。
通りがかった近所の人が不審に思い、声をかける。
「どうしたの?こんな雨の夜に…」
「夫がまた暴れてるの。落ち着くまでここにいようと思って」
ああ、またか。この家の夫は家族、特に妻に対して暴力を振るうと聞く。かわいそうに。
お大事にね、そう言うしかない近所の人に女も力なく笑った。

過剰防衛~ふたつのDV反撃事件~

まえがき

DV、それは夫婦間、恋人間で起こる精神的、肉体的、経済的なあらゆる分野における暴力の全てを指す。
1970年代にアメリカでDVの概念が作られ、その後平成13年にようやく日本でDV防止法が施行されたが、当時その認知件数は配偶者暴力相談支援センターに寄せられたものが約36,000件、警察が把握したものが約14,000件。
それは年々増加の一途をたどり、令和元年には警察への相談件数だけでも11万件を超えた。

これは、単にDVが増えた、ということではなく、DVの概念が広まり、それまではDVだと思われていなかったものがきちんとDVであると言われるようになったこともあるだろう。
たとえば、いまだにDV=暴力、だと思っている人は男女問わずいる。しかし、DVは「外出を制限する」「無計画な買い物をする」「無視する」「他人の前で恥をかかせる」「常識的な性交渉に応じない、または強要する」といったことまで多岐にわたる(分類詳細)。

そのDVから逃れるために、もし、相手を殺してしまったら。命の危険を感じて咄嗟にとった行動で相手が死亡してしまったら。

昭和と平成に起きたふたつの事件と、その結末である。

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間違いだらけの家族~岩沼市・保険金殺人事件~

平成15年7月15日

宮城県警ではこの日の深夜、慌ただしく緊急の記者会見が開かれた。
内容は、この日から一ヶ月半ほど前に起きた、男性殺害事件の犯人逮捕、というものだったが、その内容に会場はどよめいた。
一方で、「やっぱりな」そういう空気も感じられる、異様な雰囲気の中、会見は進んだ。

実は捜査本部では、その日のもっと早い時間に犯人が誰であるか把握していたが、ある事情によって容疑者の逮捕を深夜まで遅らせていたのだった。
その事情とは、「被害者男性の法要」だった。 続きを読む 間違いだらけの家族~岩沼市・保険金殺人事件~

僕は何も知らなかった~仙台市・女子大生死亡事件~

平成191114

仙台市青葉区、午前410分ころのこと。
とある単身者向けアパートから110番通報が入った。
「彼女とケンカしたら、彼女が飛び出したまま帰ってこない」
寒さが厳しくなりつつあった11月の夜更けに、部屋着のままで飛び出していった彼女のことが心配になったという。

すぐに彼女の所在は判明した。
若林区の救急救命センターで、彼女はすでに死亡していた。

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17歳の”漢気”~大牟田・男性殺害事件①~

平成13年4月13日

福岡県大牟田市。
そのとある住宅で、一人黙々と身支度を整える少年の姿があった。
真新しい作業着に身を包み、足元は地下足袋。その腹には、さらし替わりの白いシーツが巻き付けられていた。
実家から持ち出したのは、叔父の形見の切り出しナイフ。

じっと見守る女に、少年はこう語りかけた。
「待っとかんや」
頷く女に微笑んで、少年は討つべき相手の元へ駆け出した。 続きを読む 17歳の”漢気”~大牟田・男性殺害事件①~