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平成元年4月20日未明
名古屋市緑区鳴子4丁目。
人々が寝静まった頃、突如ガラスの割れる音に続いて、女性の悲鳴がその静寂を破った。
「助けて!殺される!!」
女性の悲鳴の後で、若い男の叫び声が続いた。
「俺の気持ちが分かるかぁーっ!!」
その騒ぎからほどなくして、近くで新聞販売を営む家のガラス戸が割られた。
驚いて飛び起きた家人らがガラス戸が割れた販売店へ降りてみると、そこには腹部に包丁が突き刺さったままの男性が倒れこんでいた。
急いで救急車を呼び、続けて警察にも通報しようとしたところ、男性は
「警察が来たら女房が連れていかれる・・・」
と口走った。
もうひとりの被害者
新聞店に助けを求めて駆け込んだのは、鳴子4丁目にあるマンション205号に住んでいた城戸潤さん(仮名/当時23歳)。
出血多量の重体に陥ったが、その後なんとか一命をとりとめた。
しかし、城戸さんが刺される直前、実は城戸さんの隣室で家族と共に暮らす佐藤修包(なかかね)さん(当時25歳)も、腹部を刺されすでに死亡していた。
佐藤さんは、妻と二人の幼い子どもたちの4人で就寝しており、凶行はその妻子の目前で行われたとみられる。
冒頭の女性の悲鳴は、佐藤さんの妻(当時27歳)のものである。母の悲鳴に驚いた子供たちも泣き出したが、なぜか犯人は妻子には目もくれず、また、何も取らずにただ佐藤さんだけを刺してベランダ伝いに隣室へと逃げたらしかった。
そして、隣室の城戸さんと鉢合わせし、城戸さんをも殺害しようとしたとみられた。
新聞店からの通報で、名古屋市の緑署は殺人事件として捜査を開始していたが、その直後、「人を殺してきた」と出頭してきた少年がいた。
少年は黒い丸首シャツにジーンズという、どこにでもいる若者の格好をしていたが、非常に興奮しており、「城戸さんを殺してすぐに自首する気だった」などと話したという。
警察では当然、佐藤さんについても追及したが、佐藤さんと少年の間には恨みどころか面識すらなかった。
少年は、205号室の城戸さんを殺害しようとして、うっかり206号室の佐藤さん宅に侵入してしまったのだ。
そして、間違えたことに気が付かずに、暗闇で佐藤さんを刺し、女性と子どもの悲鳴を聞いて、その部屋が城戸さんの部屋でないことに気付いた。
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【有料部分目次】
事件が起こる経緯
女心と秋の空
「あっ!間違えた」
悲しみの葬儀
その時代
おまけ。タケノコご飯殺人事件