🔓親であり兄であり、恋人だったあなたへ~畠山武人・外伝~

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まえがき

「連絡が来ると思ってました。いいですよ、書いてもらって。事実が捻じ曲げられなければ、いいです。」

秋の終わり、私が公開しているとある記事にコメントがついた。
その記事とは、平成16年に栃木県宇都宮市で起きた拳銃立てこもり事件だ。
その詳細は該当記事を読んでもらうとして個人的にはこの事件備忘録を始めるきっかけともいえる思い入れのある事件だった。

コメントしてくれたのは女性で、彼女はこの立てこもり事件で死亡した畠山武人氏と、それ以前に人生の一時期をともに生きた人物である。

宇都宮の立てこもり事件を書いた後、畠山氏と刑務所で一緒だったという人や暴力団関係で知り合いだったという数人から話を聞くことは出来ていたが、いずれも男性であり、さほど深い関係の人はいなかったことから、私はすぐさま彼女に連絡を取った。
そこで彼女が語ってくれた内容は、凄まじい迫力に加え、本人でなくては絶対に出せない生々しさに満ち溢れていて、私は圧倒されてしまった。

重大な罪を重ねたあげく、若き愛人と手をつなぎ頭を拳銃で撃ちぬいて心中した男。その荒ぶる魂に隠された「人間・畠山武人」を、私はなぜかどうしても残しておきたくなった。

平成3年の夏の終わりに宇都宮市内で起きた、覚せい剤と立てこもりと、彼と女子中学生の物語である。

【有料部分 目次】
事件概要
あの夏の少女
出会い
軋み
後輩の女
厳しい現実
逮捕、そして別れ
けじめ
永遠の別れ

隣人を叩き斬った老人の正義~世田谷・日本刀隣人殺害事件~

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平成24年10月10日

東京都世田谷区野沢1丁目。
世田谷区立旭小学校の北に位置する住宅街は騒然としていた。
上空には報道機関のヘリが旋回し、周辺の路地にはパトカーや救急車が待機していた。
周辺では警察官が「犯人は凶器を持っている可能性があります、外に出ないで」と大声を張り上げている。

午後1時40分、警視庁の特殊班が民家に突入、その後家の中から血まみれの男性が運び出された。

男性は搬送先の病院で死亡、しかし、死亡したのは男性だけはなかったし、この男性は被害者ではなかった。
それより2時間前の11時半ころ、その民家の前の路地で、女性が倒れていると通報が相次いでいた。
女性の首は、切断寸前だった。

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姪の命と引き換えで目が覚めた妻の覚悟~福岡・二丈町たてこもり殺害事件~

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2002年9月16日

その日の朝、A子さん(当時41歳)は普段通りに朝刊を読もうとして、思わず息が止まりそうになった。
新聞の紙面に、A子さんの二丈町にある実家の写真が大きく掲載されていたからだ。
震える手を抑えながら紙面を読むと、15日の午後、男がA子さんの実家へ押し入り、A子さんの実母・B子さんと、その孫・志歩ちゃん(当時9歳)を人質にたてこもったと書いてあった。
そして、男は説得に一切応じておらず、現在に至るまで事態はこう着状態で、人質の安否が気遣われる、そういった内容であった。
A子さんはすぐさま警察に電話し、現地に向かう旨を伝えた。
A子さんは事情があって、その日までのおよそ20日間ほど、家族に所在を知らせていなかった。その事情とは、夫から身を隠し、離婚するためだった。

そして、その夫こそが、A子さんの実家に籠城している男であった。

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🔓姪の命と引き換えで目が覚めた妻の覚悟~福岡・二丈町たてこもり殺害事件②~

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迷走する一家

川村を捨てきれなかったA子さんは、自分たちの家がないということに気づく。
市営住宅を解約してしまっていたため、家族3人はとりあえず自動車に生活用品を積み込むと、各地を転々とした。川村には多額の借金まであり、手持ちの金だけが頼りだったが、行き先のあてなど全くなかった。
離婚を後押ししてくれた周りの人には顔向けできなかったし、川村の手前、A子さんがひとりで動き回ることもできなかった。

少なくても金があるうちはそれでもまだ良かった。
ラブホテルで寝泊まりし、それがダメなときは車内や公園にテントを張ったりもした。
だんだんと残金が乏しくなると、川村は窃盗をはたらいた。時にそれはひったくりにかわり、A子さんも手伝った。
川村がひとり歩きの女性や高齢者からバッグなどをひったり、逃げる。車で待機しているA子さんと落ち合って、逃走。
覚えているだけでも20回以上は行ったという。

この頃にはまた以前のような不安定な状態になっていた川村は、なにかにつけA子さんにきつく当たった。
パトカーや警察署の近くを通るたび、「お前は一回俺を警察に売ったから信用できない」などと因縁をつけ、A子さんに暴力を振るった。
経済的な困窮と、肉体、精神的な暴力を受け続けたA子さんは、これはもう川村ともども死ぬしかないと思い詰めるまでになっていた。
相変わらず覚せい剤をやめていなかった川村は、A子さんのその決意を知って落ち込んだという。
しかし、「一緒に死んでくれるなら死のう」と川村も同意した。

A子さんは地元の福岡では死にたくなかったので、誰にも知られない場所でひっそり死にたいと言うと、川村は唐突に「なら北海道」と言った。
北海道なら広いし、知り合いもいないから当分気づかれないというのがその理由だった。
そして一家は本当に室蘭行のフェリーに乗った。
現金は20万円ほどもっていたが、それらもどんどん減っていく。北海道に着いても、すぐに死ぬことはどちらともなく言いだしていなかった。
死ぬ決意は出来ていたはずなのに、数日間あてもなく北海道を彷徨った。
残金が数万円になったころ、川村は死ぬ予定であるにもかかわらず金が残り少ないことを心配し始めた。
「最期にカニでも食べてから死のう」
そうA子さんが言うと、途端に川村は逆上し、「死ぬ気もないくせに!!」とA子さんを殴りつけた。

結局、一家は生き延びた。

※この記事は令和4年8月30日まで無料で公開されていたものです。条件に合致する方は無料でお楽しみいただけます。
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