🔓悲しみの果て~ある家族の事件~

この記事を転載あるいは参考にしたりリライトして利用された場合の利用料金は無料配信記事一律50,000円、有料配信記事は100,000円~です。あとから削除されても利用料金は発生いたします。
但し、条件によって無料でご利用いただけますのでこちらを参考になさるか、jikencase1112@gmail.comまで連絡ください
**********

 

事故発生

平成17年6月26日午前2時すぎ、男性は会社のワンボックスカーに乗って東関東自動車道上り線を走行していた。
片側二車線のほぼ直線、深夜で周囲に車もいない。佐原香取インターを成田方面に、約1キロほど走っただろうか。
ふと前方の中央分離帯付近に不自然な車のテールランプが見えた。男性は事故車両の可能性が高いと考え、左車線へ移ろうとハンドルを切った。

その瞬間、前方になにか、いた。

避けることは不可能だった。右車線には約100m先に事故車両、それを避けるために左車線に移ろうとハンドルを切った直後、右の中央分離帯から走行車線上に移動してくるなにかが、いた。

段ボールか?自損事故を起こしていた車両から落ちた荷物が風で煽られ転がり出たのだろうか。そんな風に男性は考えていたという。
それにしては、衝撃が強かった。

ふと、後方から別の車が走ってくるのが見えた。後続車のヘッドライトに照らされた高速道路上には、毛布のような、段ボール片のようなものが散乱していた。
後続車は若干速度を落としながら大きな毛布のようなものを避けたが、いくつかの段ボール片らしきものの上を通った。

胸騒ぎがした。
安全な場所に車を止めてまず自分の車の損傷具合を確認すると、右のバンパーから車体上部にかけて血痕と豆粒上の白いものが多数こびりついていた。
先ほど通り過ぎた車も、前方で停車している。自分がはねたのは段ボールではないのか。後方の高速道路上には、毛布にしては厚みのあるものが風ではためくこともなく、そこにあった。

その毛布のようなものは、男性の、ちぎれてしゃげた上半身だった。

後部座席の妻

駆け付けた警察官らはその現場の惨状に言葉を失った。
高速道路上に散乱した遺体。それは成人と子供のふたり分の遺体だった。
路面には引きずられたのか、赤い絨毯のように血糊がついていた。

中央分離帯に衝突した状態で停車していた乗用車は、助手席側のドアが開いていたという。

車検証などから、車の持ち主は川口市在住の内装業・石川政春さん(仮名/当時32歳)と判明。遺体は、政春さんと息子の政宗ちゃん(当時3歳)とわかった。
事故車両の後方にはチャイルドシートが転がっていたことから、事故のはずみでドアが開き、政宗ちゃんが車外に放り出されたのを政春さんが助けに行った際に、通りがかった車にはねられたとみられた。
幼い息子を何とか助けようと危険を顧みずに高速道路上を70mも走って息子の許へ駆け寄った、その瞬間にはねられた…
2人をはねた運転手の車も、前方の下部が大きく損傷しており、また何かが座り込んでいるように見えたとも話していたことから、自損事故が招いた悲劇、と思われていた。

警察は業務上過失致死の疑いで、後続車両の江戸川区在住の男性(当時66歳)を逮捕した。また、そのあとに通りがかった板橋区在住の会社員の男性(当時33歳)にも二人を轢いた可能性があることから事情を聴いていた。

事態があらぬ方向へ向かったのは、自損事故を起こした政春さんの車を調べていた時だった。
後部座席に、毛布でくるまれた荷物のようなものがあった。衝突の衝撃で、座席からずり落ちるような状態になっていたそれを警察官がめくると、そこには女性の遺体があったのだ。

当初はこの自損事故で死亡した、と思われた。が、後方から激しく追突された形跡もなく、なによりその遺体は毛布に「くるまれて」いたのだ。そしてこれは誰なのか。

すぐさま政春さんの家族らに確認を取ったところ、妻の梨美さん(仮名/当時28歳)と連絡がつかないことが分かった。
そしてその後、後部座席の遺体は梨美さんであると断定された。

事情を知っているであろう政春さんが死亡しているため、梨美さんの死の真相は分からなかったが、死亡解剖の結果梨美さんは事故が起こる2~4日前に死亡しており、かつ、その死因は首を絞められたことによる窒息死と判明した。

【有料部分 目次】
読めぬ動機
支払われなかった保険金と賠償金
チャイルドシートと高速券
悲しみの果てに

求刑も判決も重くない~鹿児島・女子短大生殺害事件~

この記事を転載あるいは参考にしたりリライトして利用された場合の利用料金は無料配信記事一律50,000円、有料配信記事は100,000円~です。あとから削除されても利用料金は発生いたします。
但し、条件によって無料でご利用いただけますのでこちらを参考になさるか、jikencase1112@gmail.comまで連絡ください
**********

 

平成14年10月3日。福岡高裁宮崎支部で、一つの殺人事件の控訴審判決公判が開かれた。

被告人席には青のデニムシャツと茶色のパンツ姿の男。終始、視線を足元に落としていた。
傍聴席には、笑顔の若い女性の遺影を抱いた遺族。

「原判決を破棄する。被告人を、懲役18年に処する」

岩垂正起裁判長は、厳しいまなざしのまま被告人に言い渡した。その瞬間、傍聴席からは涙を堪えきれない人の嗚咽も聞こえた。

男の原判決は懲役15年、量刑不当で控訴したのは検察だった。
そして迎えた控訴審判決では、原判決よりも重たい判決が言い渡されたのだった。 続きを読む 求刑も判決も重くない~鹿児島・女子短大生殺害事件~

何見てヨシって言ったんですか?〜あなたの隣の重過失〜

この記事を転載あるいは参考にしたりリライトして利用された場合の利用料金は無料配信記事一律50,000円、有料配信記事は100,000円~です。あとから削除されても利用料金は発生いたします。
但し、条件によって無料でご利用いただけますのでこちらを参考になさるか、jikencase1112@gmail.comまで連絡ください
**********

 

重過失。
些細な注意を払えば防げたはずなのに、その些細な注意を怠ったがために重大な結末、例えば第三者の死亡などを招いた場合につけられる罪状。
平成31年、日本工業大学による屋外イベントにおいて木製のジャングルジムの内部から出火、幼い子供の命が奪われるという痛ましい事故があったことは記憶に新しいが、この事故で起訴された人物の罪名は重過失致死罪である。
木製のジャングルジムに高温になる白熱球を仕込んだだけでなく、その周囲に燃えやすい鉋屑(かんなくず)を詰め込むという発火待ったなしの状態だったことは、白熱球の熱さを知っている昭和生まれの度肝を抜いた。

類似するものとして、重過失失火というものもある。寝たばこや火の不始末などで火災に発展した場合に適用される。

そこに故意、悪意がないということのみならず、加害者のちょっとした気の緩みや無知と、ほんの一手間の注意を怠ったことで人を死なせてしまう事故は実は少なくない。
バックモニターもアラウンドビューもない車をガレージに入れる際、なぜか幼い子供を先におろす親、ガス漏れ警報で点検に来たにも関わらず、暗いからとなぜかライターをつける人、回収したスプレー缶を空にするため大量に噴射したのちになぜか瞬間湯沸かし器をつけて爆発させる人などなど、他人事としてその報に接すれば「なんでそうなった」と唖然とするわけだが、そんな私たちの隣にも「最悪のミステイク」はまるで日常の裂け目のように口を開けているのだ。

あなたはミスを犯さないか。あなたの隣人は、家族はミスを犯さないか。 続きを読む 何見てヨシって言ったんですか?〜あなたの隣の重過失〜

特集:虐待事件①

この記事を転載あるいは参考にしたりリライトして利用された場合の利用料金は無料配信記事一律50,000円、有料配信記事は100,000円~です。あとから削除されても利用料金は発生いたします。
但し、条件によって無料でご利用いただけますのでこちらを参考になさるか、jikencase1112@gmail.comまで連絡ください
**********

 

摂津市で3歳の新村桜利斗(おりと)ちゃんが、母親の交際相手から熱湯シャワーを数分間にわたって浴びせられ、その後死亡するという残虐極まりない事件が起きた。

男は現在殺人で逮捕され取調べを受けているが、遊びの延長だったという趣旨の供述をしていて殺意は否認。
のちに母親も虐待を行なっていたとして逮捕されている。

ぷくぷくのほっぺたに、あどけない瞳。
手も足も何もかもが小さくて、一生懸命に生きている。

そんな子供たちを容赦なく、死ぬほどの暴力を加えて笑える人間が存在している。そこに血の繋がりなどは関係ない。

摂津市の事件に限らず、大きく報道され人々の記憶にも残る虐待、殺人事件というのは多い。目黒の船戸結愛ちゃん、野田市の栗原心愛さん、小山市の小林一斗ちゃん、隼斗ちゃん、大阪の下村桜子ちゃん、楓ちゃん、厚木の斉藤理玖ちゃん、尼崎の勢田恭一くん、秋田の畠山彩香さん、米山豪憲くん……

名前を聞いただけで「あぁ、あの事件の」と思い浮かべられるほど記憶に残る子供達がいる一方で、「そんな事件あったっけ?」と忘れ去られてしまった子供たちもいる。

事件備忘録ではむしろそういった、もう誰の記憶にもないかもしれない、親やその関係者に殺害された子供達の事件を書き続けていきたいと思っている。

あの子たちは生まれてきたし、ちゃんと生きていた。

忘れないで。

【収録事件】
①座間市・3歳児傷害致死事件(平成13年)
②🔒泉崎村・実子4人全員虐待3歳児餓死事件(平成18年)
③八王子・6歳女児熱湯シャワーせっかん死事件(平成7年)
④🔒大阪・2歳男児監禁致死死体遺棄事件(平成19年)
⑤施設収容申立および親権喪失宣告申立事件の背景

書ききれなかったので特集は第二弾もあります。

5歳の目撃者〜〜座間市・三歳児暴行死事件〜

この記事を転載あるいは参考にしたりリライトして利用された場合の利用料金は無料配信記事一律50,000円、有料配信記事は100,000円~です。あとから削除されても利用料金は発生いたします。
但し、条件によって無料でご利用いただけますのでこちらを参考になさるか、jikencase1112@gmail.comまで連絡ください
**********

 

救急車にて

「ごめんね、ごめんね

救急車の狭い車内で、母親と思しき女性は意識のない子供の手を握りしめ、涙を目にためながらそう呟いた。
大学病院に搬送されたのは、まだオムツも取れていない小さな男の子。意識はなく、かなり危険な状態だった。

男児はその後搬送先の病院で救命及ばず、短い一生を終えた。

横浜地方裁判所

平成17年3月1日、横浜地方裁判所は、当時3歳の内縁の夫の連れ子に暴力をふるい死なせたとして、辻岡裕美(仮名/当時28歳)に対し、懲役4年6月の判決を言い渡した。

罪状は、傷害致死。
裕美はこの裁判で一貫して無罪を主張していた。事実、裕美が逮捕されたのは事件が起きた約1年後であり、判決が出たのはさらにその2年半後で、未決拘留日数は800日に及んでいた。

しかし裁判の結果は、有罪。

男児の死は事故か、それともそこに誰かの悪意があったのか。

有罪の決め手は、小さな目撃者の存在だった。 続きを読む 5歳の目撃者〜〜座間市・三歳児暴行死事件〜