おとうさん、ごめんなさい~取手市・5歳児暴行死事件~

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その家

「なんでそんなことしたんや!なんでいうこと聞かんのや!」

取手市内のマンションの一室からは、男の怒声が響き渡っていた。
台所には、引きちぎられたレトルトのカレーの空き袋が落ちている。そして、男を怯えた顔で見上げる、痩せ衰えた男の子の姿。

男の子は5歳。しかし肋骨が浮き出たその体は、とても育ち盛りの5歳児には見えなかった。

「おとうさん、ごめんなさい」

泣きながら謝る男の子の顔面を、男は何度も殴りつけ、そのはずみで男の子が転倒して後頭部を強打しても、さらに腹部を蹴りあげた。
涙でぐしゃぐしゃの男の子を風呂場へと追い立てた男は、おもむろにその体を持ち上げ、湯の入っていない空の浴槽に男の子を投げ落とした。男の子は頭部を浴槽で強打、しかし男は浴槽の中に正座させた後も、男の子の顔面を殴り続けた。

殴り疲れた男は、裸で浴槽に正座させられている男の子めがけ、シャワーで冷水を浴びせかけた。4月と言えばまだまだ寒い。
泣き叫ぶ男の子を無視して、そのまま肩のあたりまで水を張り、そのまま水風呂に放置した。 続きを読む おとうさん、ごめんなさい~取手市・5歳児暴行死事件~

22週~昭和の少女と、いつくしみ深きまなざし

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子を宿すということは、場合によって悲しい事件に直結する。
経済的な問題、交際相手との離別、その理由はさまざまだろうが、子供を産むことを断念せざるを得ないこともある。
日本では妊娠を継続することで母体に経済的、身体的に著しいダメージを与える場合や、レイプなど女性の意思に反する形で妊娠したケースにおいて22週未満であれば中絶が認められている。

ところが、この週数を過ぎてしまうといかなる理由においても「人工中絶」は認められない。
胎児が母体を離れて生きていける週数が関係しているわけで、それ以降は母体に危険が及んだための緊急手術であっても、子どもの救命を考慮した方法を優先させる必要がある。

今の日本では、中絶手術自体を知らない、あるいは知ってはいるが週数が決められているということを知らない、という人は特に成人女性においては少ないのではないかと思われるが、未成年者となるとその辺りの知識はかなり危うい人もたくさんいるだろう。

さらに、どれだけ知識があっても中絶自体、ハードルが高い。
おそらく初めてであろう産婦人科へ行き、現実を突きつけられ、中絶するにしてもタダではない。未成年者がおいそれと用意できる額でもない。
そうなった時、腹をくくって親兄弟に相談できる子たちは、救われる。
しかし誰にも言えずに時間だけが過ぎてしまったら。

最悪の決断をしてしまった昭和の10代の少女たちと、彼女らに慈しみ深い眼差しを向けた裁判官の話。 続きを読む 22週~昭和の少女と、いつくしみ深きまなざし

死なばもろとも~静岡・歯科医長男殺害死体遺棄事件~

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「なんで今頃になって……」
千葉県内で暮らしていた女が、殺人と死体遺棄を告白した。しかしそれは、4年も前の出来事で、女の自供がなければ全く事件として浮かんでいなかった話だった。

被害者は女の実の息子。当時高校生だった長男を、女は当時の夫と共謀して殺害し、埋めたと話した。
長男と夫に血縁はなく、日ごろから折り合いも悪かったという。

警察の調べに対し、今になって自首してきたいきさつを、女は「良心の呵責に耐えきれなかった」と話しうなだれた。

捜査員らも、母親の気持ちを捨てることは出来なかったのかと、複雑な思いで女を見ていた。 続きを読む 死なばもろとも~静岡・歯科医長男殺害死体遺棄事件~

花嫁は嬰児遺体を連れて〜横浜・YCATゴミ箱嬰児遺体遺棄事件〜

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昭和562月、横浜の伊勢山皇大神宮の結婚式場では若々しいカップルの結婚披露宴が執り行われていた。
花嫁は色打掛から爽やかなブルーの振袖へとお色直しをし、恰幅の良い新郎も紋付袴がよく似合っている。
招待客は80名ほど。新郎新婦の父親が勤務するのはいずれも東京電力、新郎自身も川崎の電動機器メーカーの営業、新婦も大手銀行に勤務していたことで、招待された人々も皆、社会的立場のしっかりした人々だった。

専修大学を卒業した花嫁は、長身で目元の涼し気な、今で言うと女優の木村多江似の美人。二人は披露宴の後横浜のホテルに宿泊し、アメリカへ新婚旅行へ行く予定だという。

式場スタッフもそんな晴れやかなカップルを目を細めて見守っていたが、気になることがあった。

着付けを手伝う女性スタッフの間で、妙な噂が流れていたのだ。
1月に行われた結納の着付の際、確かに花嫁様は妊娠してらっしゃいました。お腹の膨らみがわかるほどになっていましたから。ところが、2月の披露宴の時はそのお腹がぺっちゃんこになっていた。なのに、二人の間に赤ちゃんが生まれたという話もない。事情を知るスタッフの間では、どういうこと??と噂になっていました。」

新郎新婦に変わった様子もなく、披露宴で花嫁はとにかく明るかったという。

しかしその2ヶ月後、式場のスタッフは警察の聞き込みを受けることになる。 続きを読む 花嫁は嬰児遺体を連れて〜横浜・YCATゴミ箱嬰児遺体遺棄事件〜

🔓あの池のほとりで~袖ヶ浦・3歳男児虐待死事件~

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庭先にて

千葉県袖ケ浦市。
フラワーラインを西に走ると、途中で市道代宿神納線(平成通り)と交わる。それを北上し、神納交差点を東へ折れると、その灌漑用ため池がある。
通称、「井戸谷堰」。緑色に濁ったその池は、時折釣り人の姿があるというが鬱蒼としていて少々薄気味悪い。
その井戸谷堰を右手に狭い道を進むと、一つの集落が出迎える。神納地区である。

平成13年4月7日。土曜日のこの日、その神納地区にある民家の庭先では、家族がバドミントンに興じていた。
家の中から孫らが戯れているのをにこやかに見つめる祖父母。子供たちと遊ぶ両親。家庭菜園で野菜の手入れをする曽祖父の姿もある。
平成の時代、4世代同居の7人家族は大家族といってもいい。何気ない、土曜の朝の家族の光景がそこにあった。

しかしこの家族は、つい2ヶ月前までは8人家族だった。

千葉県警捜査一課と木更津署の捜査員は、この日の午後、この家に住む子供以外の大人5人全員を逮捕した。内訳は、子供たちから見て両親、祖父母、そして曽祖父である。

容疑は、この家で暮らしていた3歳の男の子への傷害致死と保護責任者遺棄だった。

【有料部分 目次】
事件
絶句した葬祭業者
虐待に至る経緯
保健師と児童相談所
家族ぐるみの隠蔽
憤る弁護人、怒鳴る裁判長
それぞれの鬱憤
最後のクリスマス
ふたたび、あの池のほとりで