迷い人~西宮・女児連れ去り傷害事件②~

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不可解な行動

全面否認とはいえ、理佐が語る一部始終は正直、どの点においても理解に苦しむ内容だった。
事件前の2度の迷子騒動の際の理佐の証言も同じく不自然さばかりが際立った。

どちらもすぐに店員に事情を話す、店内放送を要請するなどしておらず、迷子を見つけたというその状況自体もよくわからないものだった。

6月26日の迷子のケースでは、ベビーカーに乗っていた子供が落ちかけたのを抱き上げ、そのまま母親を捜すために20~30分広いショッピングモールを歩き回ったというのだ。
しかもベビーカーがあったのはスーパーで、にもかかわらず全く違う場所を理佐は歩き回っていた。

7月30日のケースはさらに理解に苦しむ。
エビスタ西宮内のトイレ付近で「ママ」と言いながら泣いている子を見つけ、抱き上げて警備員に託そうとこれまた店内を歩き回っていた。その際、子供が「おしっこ」と言い出し、理佐はなんと自宅で用を足させたというのだ。
確かに理佐のマンションは近かったが、我慢できないという子供を連れて店内のトイレに向かわずなぜ自宅なのか。
これらに対する理佐の答えは、「それ以外思いつかなかった」だった。

事件を起こした日の理佐の供述は先にも述べたが、実際には母親がすぐ近くにいたにもかかわらず、母親は見当たらなかったといい、普通ならばその場にいる人々に声をかけるところを、なぜか別の場所へ捜しに向かっていた。

そして、女児は尿意を催したためにまた自宅マンションへ連れて行ったと話した。
なぜそばにある公共のトイレを使わせなかったのかについては、
「公共のトイレは汚く狭いし、人の出入りがあると落ち着けない。自宅ならゆったりした気持ちでできるだろうと思った」
と供述。駅やショッピングモールにもきれいで広いトイレがあったわけだが、それについては「思い浮かばなかった」で通した。

その後自宅マンションへ女児を連れ帰り、そろそろママを捜しに戻ろう、と声をかけると突然女児が泣き出し、「眠い」などと言ってベッドに倒れこみ、直後に目が虚ろになってぐったりしてきたのだという。
救急車を呼んでも最低5分はかかると看護学生時代に学んでいたから、それなら自分で勤務先の西宮病院へ連れて行ったほうが早いと判断、自宅から女児を抱えて走った、というのだ。こんな看護師は嫌だ。

そういいながら、丁寧に長靴を履かせ、途中で病院へ行くのと母親に知らせるのとどっちが先かわからなくなったことから、病院へ向かう途中の公園で一旦女児を寝かせ、誰かあの子を助けてくださいと願いながら人を呼びに行ったという。
少し走って振り向くとすでに人だかりができていたこと、「迷子が見つかった、助かったみたい」という声も聞こえたことで安堵し、そのまま帰宅したというのだった。

その後、やはり誰かにこのことは話すべきだと考え、同僚看護師に連絡したと言ったが、実際には甲子園球場で行われるプロ野球観戦へ一緒に行く約束をメールしただけだった。
さらに、同日夜観戦の際にも同僚に対し一切の話をしておらず、その後翌日の勤務を休みたいと上司に連絡した際にも、その日の出来事は一切話していなかった。

とにかく理佐のはなしは一事が万事、

「私なりに最善の方法を考えて行動していた」
「(それが常識では考えつかない行動だったとしても)それ以外に思い浮かばなかった」
だった。
迷子を見つけて親を捜したという割に、周囲の人に一切声もかけず、トイレがしたいと訴えられればなぜか自宅へ連れて行く、さらには体調が悪くなった女児を一刻も早く助けたいと思ったと言いながら、救急車も呼ばず病院へも運ばず、公園のベンチに寝かせた……

何がしたいのか全く分からない、恐怖を感じるレベルの意味不明さだった。

争点

検察は、状況から女児に暴行を加えたのは理佐以外にあり得ないとし、母親らや周囲の状況からも理佐が悪意を持って女児を連れ去ったとして未成年者誘拐で起訴、その後、保護責任者遺棄容疑で追起訴し、さらに11月20日には傷害容疑でも追起訴した。

弁護側は、「母親を捜そうという一心で女児を連れていたもので、自宅へはトイレを使わせる目的で連れて行った。公園に横たえた後戻らなかったけれども、何度も振り返るなどして完全に保護下を離れたとは言えない」として無罪を主張していた。

争点は3つ、
①未成年者誘拐の故意について
②傷害罪の成否について
③保護責任者遺棄について
だった。

①の未成年者誘拐の故意について
理佐は当初、「かわいい子供を見て、自分の暗い気持ちを晴らすために連れ歩いた」という供述をしていた。
これには実は理佐の特殊な「病癖」が関係していた。
理佐はうつ病の治療にあたり、主治医に対し、かわいい子供をみるとつい抱き上げたり、連れ去りたいという衝動に駆られると話していて、カルテにも「理性でsaveできるようになった。子供を見てもそばに母親がいることが分かればかわいいなーという気持ちしかない。」といったことが書かれていた。
弁護人は、saveできるようになったのは万引きのことであり、子供については単に母親がそばにいるとみていて安心する、というだけのことだと反論したが、当の主治医は、「それ(saveできるという意味)は多分、こどもさんのことでしょうね。」と答えた。

これに照らせば、過去に理佐が関与した2回の迷子騒動も、自制が利かなかったが故の行動と考えられた。

次に、②の傷害が理佐によるものかどうかについては、当日の女児の行動や様子、母親や直前に通っていたスイミングスクールの講師らの証言で、エビスタ前公園で遊んでいるときまで女児がそこまで大きなケガを負っていないと検察は主張した。
エビスタ前公園においても、母親は別の母親らとともに子供たちが視界に入る状態で雑談するなどして見守っていたが、込み入った話をしていた時は目を離してしまった時間があったという。
しかし、エビスタ前公園には多くの子供や保護者、買い物客らがおり、もしもその公園内で女児が転倒するなどして頭部に外傷を負ったとすれば、相当な泣き声を上げたと思われるし、もしも声を上げられないほどのケガであったならば、理佐が言うように「所在なげに立っている」というのは不自然で、この時点でも女児はケガを負っていないとみるのが自然だと主張した。

女児を診察した医師らも、女児は硬膜下血腫が生じた状態で搬送されており、その状態から負傷時刻は手術開始の2~6時間前まで、と証言。
その上で、その負傷時刻が6時間前だったとすれば、搬送されるより前に女児は死亡しているとも証言した。
また、スイミングスクールでは異常がなかったことなどを考えると、負傷時刻は2~3時間前までに絞られ、必然的に理佐が連れ去った直後以降の出来事であるとした。
弁護側は、医師の中には女児の急性硬膜下血腫はさほど強い外力が加わらずとも発症する可能性のある架橋静脈破綻とみる医師もいるとし、また、理佐の自宅には女児が頭をぶつけるようなスペースもない、事件直後の捜索でも女児が頭をぶつけたような痕跡は発見されていないとして理佐の保護下でケガが生じたとは言えないと反論した。

③の保護責任者遺棄については、たとえ理佐が言うように理佐とは無関係の時に生じていたケガだったとしても、一刻も早く医療処置を施す必要があることが一目瞭然の状態の女児を、利用者も人通りも少ない公園に寝かせただけでその場を離れ、再び戻ることも自ら説明することもしなかったことを考えると、保護責任者遺棄が成立するのは明白、と検察は主張。
弁護側は、具合が悪くなった女児を見てパニックになり、母親に知らせるのが先か病院へ運ぶのが先かわからなくなり、とにかく女児を抱き上げてエビスタ西宮方面へ行ったが、13キロの女児を抱えることが限界になり、その公園に寝かせたと主張。
その後も気にしながら人を呼びに走ったが、すでに人が集まり始めたために自分が戻ると余計に面倒なことになると考えただけで、保護責任を遺棄したわけではなかったと主張した。

月イチの衝動

平成20年12月24日、神戸地方裁判所の東尾龍一裁判長は、未成年者誘拐、傷害、保護責任者遺棄についてすべてを認定し、懲役10年の求刑に対し懲役7年の判決を下した。
その中で、理佐には幼女をみるとかわいいと思うだけでなく、どうしても抱き上げたいという「病癖」があること、すべての罪状において、公判を通じ理解不能な供述に終始し反省の色がみられないこと、とりわけ、看護師という立場にありながら危機的な女児の状況を見てもなお、自己保身に走っている点は悪質で、犯行は誠に身勝手、かつ自己中心的で酌量の余地が全くない、と断じた。

女児は一命をとりとめたものの、左片麻痺、脳機能障害が残った。リハビリなどを続けていたというが、その後遺症は一生涯にわたるという。
両親らは理佐に対して1億4400万円の損害賠償請求も起こしており、平成22年7月にはそのほぼ全額にあたる額の支払いを命じている。
理佐はその後、最高裁まで上告するも棄却となり、平成23年5月24日付で県立西宮病院を失職した。これは県立病院に勤務していることで地方公務員法にのっとった扱いである。

理佐が悪意を持って女児を誘拐したこと、なんらかの形で女児にけがを負わせたこと、そして、保護すべき女児を遺棄したことは認定された。
が、結局「なにがあって、どうやって女児を傷つけたか」はわからないままだ。
女児のケガは頭がい骨骨折からの硬膜下血腫だが、その骨折は3方向から強い力が加わったものだという。
したがって、転倒したり、女児自ら頭を何かにぶつけたとか、そういうことではない。
しかも女児は見える範囲で出血していなかった。ただ、頭にはこぶができたように歪な形になっていた。

理佐はいったい、女児に何をしたのか。

理佐には暴力的な面は見られず、過去にも暴力的なトラブルは起こしていない。
しかし6月の万引き事件の際、心配して家にいた母親に対し、突如興奮状態となり、
「もうしんどくて、自分はいったい何なんだ。私はいったい何よ?!」
と目を吊り上げて喚き散らしたという。

これについては、薬の副作用の可能性も指摘されたものの、事件が起こるより一か月以上前に処方されなくなっている。
それでも理佐は、月イチで湧き上がるその衝動を抑えることができなかったようだ。

理佐は迷子を見つけたのではなく、自ら迷子に仕立て上げては、攫っていたのだ。自分のおさえきれないその欲求を満たすために。
そもそも、ベビーカーに乗っていた赤ん坊が迷子になるわけあるまい。

あの日、女児と二人でいたマンション内で本当は何があったのか。
彼女はもう、子供を見てもなんともないのだろうか。その手は、もう女児を抱こうとは思わないのだろうか。

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参考文献
朝日新聞社 平成18年9月7日、9月8日、9月26日大阪朝刊、平成20年5月22日大阪地方版/兵庫、12月24日夕刊
NHKニュース 平成18年9月7日
読売新聞社 平成18年9月7日大阪朝刊、夕刊、9月8日大阪夕刊、平成20年7月7日、9月19日大阪朝刊、12月24日大阪夕刊、平成23年6月25日大阪朝刊
毎日新聞社 平成18年9月7日大阪朝刊、9月9日大阪夕刊、平成18年9月13日朝刊/阪神版
産経新聞社 平成18年10月7日【ニュースを斬る】西宮の女児重傷事件 防犯か個人情報保護か 
大阪朝刊 平成19年11月20日大阪朝刊

🔓母の名は、女~山形・村山市6歳男児殺害死体遺棄事件~

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拘置所にて

「私、今でも夢を見るの。男の人と連れ子と4人で仲良く暮らしていて。でも、男の人の顔はないの。」

女は拘置先の刑務所で、面会に来た知人にこう話した。
家族で楽しく幸せに暮らすことが夢だった。自分に子供がいるから、相手にも子供がいればいいな、女はそう思ってまさにその通りの男と巡り会った。

しかし家族になろうとしたひと月後、女は月灯りに照らされながらスギ林の中で我が子の墓穴を掘っていた

加藤翔くん(当時6歳)。母親とその同棲相手の男から凄惨な暴行を受け、死亡。母親の手によって、鬱蒼としたスギ林に埋められた。
最初に発見された遺体は、わずかに髪の毛が残った頭部だった。

事件概要

平成15年9月18日、山形県警村山署の捜査員は茨城県土浦市にいた。
この町に、捜索願が出されている女性がどうやら潜伏しているという情報を得て、勤務先とみられる風俗店に踏み込んだ。
捜査員を見た女性は一瞬怯んだように見えたが、やがて観念したのか捜査員の聴取に応じた。
捜査員らは、女性にどうしても聞かなければならないことがあった。この女性の、6歳になる息子の行方である。
息子には、投薬が必要な先天性の腎臓病があった。その息子の行方が、わからなくなっていたのだ。

「子供はどうしたの?」
捜査員に対し、当初は友達に預けている、と話した女性だったが、嘘をついてはいけないと捜査員に諭されると、
「死んじゃいました、山の中に埋めた。」
と答えた。
山に埋めた、と聞いた捜査員が思わず、「なんで!」と聞き返すと、女性は大声でこう言い返し、その場に泣き崩れた。
「だって!死んじゃったんだもん!!」

この日、山形県警村山署は、秋田県由利町(現・由利本荘市)出身で風俗店従業員の加藤有美(当時25歳)を、保護責任者遺棄容疑で逮捕した。
有美はその年の6月上旬、長男の翔くんを山形県内の山中に置き去りにした容疑が持たれていた。
有美の供述には不確かな部分もあり、翔くんが死んだから遺棄したのか、それとも置き去りにしただけなのかもよくわかっていなかった。
有美の話によれば、衰弱した翔くんを離婚した前夫に託そうと決め秋田県内へ向かっていたが、その途中で翔くんを置き去りにした、と話す一方で、死亡したため山形県内の山林に埋めたとも話していたのだ。

9月19日以降、供述をもとに村山市本飯田にある通称「勝福山」の林道で警察犬も投入して捜索するも、手掛かりになるものさえ発見できなかった。
警察では、有美が前夫に翔くんを預けるつもりだったと言いながら、前夫とは2年間音信不通だったことや、翔くんを埋めたスコップを購入した場所や処分した場所を覚えていない点を不審に思い、慎重に捜査を進めていたところ、10月に入って供述が嘘だったことが判明。
実際には、当時住んでいた村山市内の交際男性のアパートで翔くんが死亡していたことが分かった。
その後、証拠隠滅を図るために有美が翔くんを山に埋めていたのだ。

有美は翔くんを日常的にせっかんしていたといい、その延長上で翔くんは死亡したとみられた。
有美自身も、警察に対し「発育の遅れに苛立ち、せっかんしていた」とも供述していた。
また、当時住んでいたアパートの主で、有美の交際相手だった男性も、「翔くんは友達のところにいると聞いていた」と話し、さらに、腎臓病のため水分を多くとる必要があったと聞いていたのに、有美がおねしょを嫌がって水分を与えていなかったため、その男性が食事や水分を与えていたと話した。

有美は「翔くんの口をふさいで殺害した」とも話していたことから、警察では傷害容疑での再逮捕も視野に入れ、いまだ発見に至らない翔くんを捜していた。

10月8日。逮捕から20日が過ぎたこの日、捜索していた場所から子供のものと思われる頭部が発見された。
遺体は林道から100mほど分け入ったところの地中1mに埋められていた。膝を両手で抱え込むようにし、赤いシャツに黒のズボンで、傍には防臭剤が置かれていたという。

有美と翔くんの様子を知る住民は、こう話していた。
「暴力などは見たことはないが、しつけは厳しかった。きつい調子で叱りつけることはあったし、翔くんがじっと有美さんの顔色を窺っている感じもありました。母子家庭だからと力んでしまったのでしょうか・・・」
しかし一方で、翔くんが通っていた保育園の関係者らは一様に驚きを隠せないでいた。
有美は翔くんの体を思い、塩分を控えめにしなければならない翔くんの食事のメニューを工夫し、翔くんが熱を出したというと飛んで迎えに来るような母親だったという。
勤め先にも翔くんをよく連れてきており、実家との関係も良好で、秋田県内の有美の実家には、翔くんのおもちゃが庭先にも置いてあった。

しかし有美は、秋田で暮らしていたころからせっかんを繰り返していたと供述。一貫して自分が虐待を加え、結果死なせて埋めたと話していた。

ところがこの10月8日になって、事態は急変した。
警察が任意で事情を聞いていた、有美の交際相手の男性が自殺を図ったのだ。幸い、命に別状はなかったが、男性は救急搬送された。
実は有美の供述から、男性の関与が疑われていたのだ。
有美は一貫して自分一人が行ったという趣旨の供述をしていたが、翔くんが死亡した後、1~2日経ってから遺棄したと話していた。
とすれば、その間翔くんの遺体はどこにあったのか?当時有美は村山市内の交際相手の男性が借りていたアパートで暮らしており、男性もその期間その部屋にいたことが分かっていた。
何も知らないと話していた男性の関与について調べ始めた矢先の自殺未遂。

結果から言うと、男はすべて知っていた。というより、この男こそが、翔くんを死亡させた張本人であった。

【有料部分 目次】

母子のそれまで
変わり果てた「かー」
我が子の墓穴
葛藤
男との約束
「なんで減らしたんですか!!」
「母として仇をとってやりたい」
初の懲役10年以上
昨日まで一緒に泥棒してたんでしょう?
最期の言葉

ここからは有料記事です

彼女が死んだ理由~倉敷市・11歳女児餓死事件②~

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排除される女

一審では友里恵には家族がいたことが言及された。いわゆる天涯孤独の身ではなかったこと、また、友里恵自身、高校を卒業して信用金庫に就職するなど、知的な面でも社会的な面でも問題を抱えていたわけではなかったことなども挙げられた。
さらに、陽子さんの父親である人物から、養育費が振り込まれており、その通帳も当初友里恵が保管していたのだ。
残高はなんと340万円。おそらくだが、陽子さんの年齢と照らし合わせると、月々3万円程度がずっと振り込まれ続けていたのではないかと思われる。
にもかかわらず、それらに頼ることをしなかったのはなぜか。 続きを読む 彼女が死んだ理由~倉敷市・11歳女児餓死事件②~

彼女が死んだ理由~倉敷市・11歳女児餓死事件③~

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優先された「自己の感情」

友里恵は裁判で、ことあるごとに「屈辱」「惨めな思い」を口にし、控訴審の最終陳述では、
「私と同じような人はいると思います。役所は本当に困った人を助けてほしいです。私と同じような人間をなくしてほしいです。私のような体になるのは私だけで結構です。」
と述べている。 続きを読む 彼女が死んだ理由~倉敷市・11歳女児餓死事件③~

🔓護られたかった人~小牧市・同居女性殺害事件~

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平成18年8月17日

名古屋高裁でこの日、とある殺人事件の控訴審判決が言い渡された。
被告人は、原田芳文(仮名/当時39歳)。平成16年に小牧市内で同居していた女性を殺害、遺棄した疑いで逮捕起訴されていた。
半年前の28日に下された一審判決は、懲役12年。求刑が15年であったことからも、妥当な線に思えた。
しかし、この日名古屋高裁の前原捷一郎裁判長は、原判決を破棄、懲役10年を言い渡した。
さらに減刑となった理由は、殺人が起こるその過程に注目したうえで、一審判決はそれを十分に考慮していない、というものだった。

男が殺人を犯した理由は、なんだったのか。

事件概要

愛知県小牧市新町2丁目のとあるアパートの駐車場に停めてあったトラックの箱の中から、毛布にくるまれた遺体が発見された。
そのトラックは、思えば長いことそこに放置してあった。運転席や助手席には書類や新聞紙、ゴミなどが山積みの状態で、使用されている形跡もうかがえない。
トラックは愛知県内の食料品加工会社のもののようだったが、その会社はすでに倒産していた。一度、トラックの周辺で異臭騒ぎがあり、アパートを管理している会社が来て調べたことがあったが、その時は運転席をのぞき込んだりする程度で箱を開けてはいなかった。

夏の暑さが本格的になった平成16731日。不審に思った住民女性が、思い切ってそのトラックの観音を開けた。
もともと食品を運んでいたトラックだから、ニオイはした。
しかし箱の中には明らかにそぐわない、布団のような、毛布のようなものが見えた。そして、その布団から、人の手らしきものがはみ出ていたのだ。

通報を受けた小牧署員が確認したところ、そこには白骨化した遺体があった。その後の調べで、遺体は女性、年齢30歳から50歳くらいの成人で、身長約160センチ、髪は茶髪で肩くらいまで、と発表される。
服装は紺色のジーンズに、上半身は下着姿。足元には枕と靴があったという。

すぐさまこのトラックを使用している人物の特定がなされ、そのアパートに住む食品製造会社勤務の男性と判明。
名古屋ナンバーのそのトラックは保冷車で、平成16年の1月頃からそのスペースに停められていたという。
警察が男性に話を聞いたところ、確かにそのトラックを使っていたのはその男性だったが、給料未払いの代わりに会社が男性に譲渡したものだということがわかった。
男性は現在別の食品会社で働いており、通勤にそのトラックを使っていたものの、故障したため3月以降放置していたという。箱を開けたのは、昨年末が最後だった。

警察は当然、この実質の所有者の男性に話を聞くことになる。しかし男性は遺体に関して全く知らないと主張。警察は男性の部屋のほかに、トラックが止められていた場所に一番近い部屋も捜索していたが、そもそも遺体の状況もよくわからなかった。
司法解剖で死因は特定されておらず、遺体もほとんど白骨化しており、いまだ身元も不明だった。
遺体は箱の真ん中より後方にあったが、敷布団と掛布団、それに枕、靴まであった。
箱は外から簡単に開けることができるため、たとえば浮浪者などがこっそり入り込み、それを知らない所有者もしくは第三者が観音を閉めてしまった、そういう可能性もあった。
しかし、箱の中や観音の内側に出ようとした形跡がないことから、やはり女性は殺害されこの場所に遺棄されたと断定、84日には遺体の身元が近くに住んでいた35歳の女性であることも判明した。

女性の交友関係などから、女性が行方不明になった際に同居していた原田が浮上、警察が事情を聞いたところ、5月に女性を殺害してこのトラックの箱の中に遺棄したことを認めた。

しかし、同時に驚愕の事実が判明する。
女性には13歳の息子がおり、事件当時は原田と3人での生活だった。そして、警察がその息子にも事情を聞いたところ、なんと「遺体を運ぶのを手伝った」と話したのだ。

【有料部分 目次】
3人の38日間

母親の「癖」
息子の心
振り回される人々
原田の過去
「私霊感が強いの」
壮絶な母
守れなかった制服
本当は、護られたかった人