善き人の、誰も知らないためらい傷~桑名市・家族2人放火殺人事件~

平成18年2月13日

子どもたちが集団登校し始めた月曜日の午前8時。
畑が広がるのどかな桑名市長島のこの一帯では、冬の寒さの中、早朝から畑仕事に勤しむ人々の姿も見られた。
天気予報は、日中の気温が15度近くまで上がると告げており、冬独特の乾燥した一日になると予想された。

その日、男性はいつものように自身が栽培した野菜を市場へと出荷し、自宅に戻ってきた。
家には先週末から体調を崩している次男坊が寝ているはずだ。
家につくと、ふと、なにかにおう気がした。誰か朝から野焼きでもしているのだろうか。

男性は違和感を覚えながらも玄関の戸を開けた。

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自己中男がしがみついた家族のカタチ~大阪・妻子3人殺害事件~

平成22年1月24日

大阪市内の飲食店の厨房で、男は仕込みの真っ最中だった。
誰もいない店内で、男は黙々と下ごしらえをこなす。いつもは店に来るような時間ではなかったが、男はどうしてもこの時間に引継ぎをしておく必要があった。

全ての下ごしらえが終わると、男は仕事の手順などをメモに書き置いて、店を出た。
正月気分がようやく抜けようとしている1月下旬。行きかう人々の波にのまれながら、男は買い物を済ませネットカフェに入る。
個室に入ってひとりきりの空間を確保すると、男の脳裏に今朝方の自宅の様子がありありと浮かんできた。
コンビニで購入したカッターナイフを見つめると、その手が覚えている「あの感触」までもが甦った。

1月25日午後4時、男は北区の曽根崎警察署に出頭。
男は24日の未明、妻と子供二人をその手にかけていた。 続きを読む 自己中男がしがみついた家族のカタチ~大阪・妻子3人殺害事件~

本当に辛かったのは、誰か~深谷市・利根川心中未遂事件~

平成27年11月21日

埼玉県熊谷市と深谷市を流れる利根川。
そこに一台の軽乗用車が浅瀬で立ち往生していた。
川岸には、ずぶ濡れで膝を抱えてうずくまる女性。

好きな歌を口ずさみ、空を見上げていると、夜が白々と明けてきた。体は冷え切り、それでも睡魔が襲ってくる。

午前八時。
その頃警察には110番通報が相次いでいた。
「川に不自然な形で車が突っ込んでいる」
「利根川に人のようなものが浮いている」
警察が駆け付けたところ、高齢女性の遺体が川に浮いていた。さらに、上流で高齢男性の遺体も発見された。
川岸でうずくまっていた女性も保護され、調べで3人は親子であることが判明。
軽自動車は女性の所有で、女性の供述から親子で心中を図ったことが分かった。

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本当に辛かったのは、誰か~深谷市・利根川心中未遂事件②~

批判の矛先と雨宮処凛

生活保護を申請しながら、しかもほぼ生活保護受給が決定するであろう状態で一家心中の道を選んだこの事件は、それまでの心中事件とは異なっていた。
このサイトでも取り上げている京都伏見の母子心中未遂事件では、生活保護の受給が出来なかったことも大きな要因と認定されているし、それ以外の介護や貧困が根底にある心中や自殺などでも、役所の怠慢や故意に受理しないと言った現状も問題視されてきた。 続きを読む 本当に辛かったのは、誰か~深谷市・利根川心中未遂事件②~

何もかもを間違えた一家にとどめを刺した8000万円~豊田市・家族3人殺害放火事件~

平成27年5月26日未明

愛知県豊田市太田町の民家に、男が駆け込んできた。
家主を起こした男は、「家が燃えている、自分は用事があるから119番通報を頼む」とだけ告げて、どこかへと去っていった。
慌てた家主が外に出ると、先ほど訪ねてきた男の家が確かに燃えていた。

その頃、男は岡崎市岩津町へと車を走らせていた。
岩津天満宮の駐車場に車を停めると、そこから300メートルほど離れた場所にある「はんこ屋」を訪ねていた。

「お前のせいで家族がめちゃくちゃだ、妻が病気になったのはお前のせいだ!殺してやる」

喚き散らして逆上する男に、はんこ屋の主人とその妻はただただなだめるのに必死であった。
男は通報で駆け付けた豊田署の警察官に逮捕された。

男の名は松井芳治(当時65歳)。芳治は、はんこ屋に怒鳴り込む前、妻とその母、そして長女の3人を殺害し、自宅に火を放っていた。

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