かしの樹の下で~中国人妻と残留孤児の事件~

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平成時代、農業や漁業に従事する独身男性が多い地域に、そこでの生活と結婚を希望する女性らを引き合わせるお見合い番組がいくつかあった。
都会の生活に疲れた女性は、時に自然豊かなのんびりとした地方都市での生活に憧れを抱くこともあるのだろう。
しかし実際に来てみると、確かに食べ物は美味しいし自然は豊かだが、その生活を維持するためには想像を絶する労力と、地域との密接な関係の中で立ち回っていかなければならず、都会での人間関係など足元にも及ばない濃い人間関係や地域の風習はストレス以外にもなにものでもないと気づき、帰りのバスに乗ってしまう女性が多かった。

同じ日本人であっても、おいそれとうまく行かないお見合い。恋愛でも同じだ。

それが、言葉も通じないような相手だったら?相手の求めていた理想と現実が激しく乖離していたら?
帰る場所もない人たちだったら?

素晴らしい国、日本に憧れ日本の地にやって来た人々と、祖国日本へ帰ってきた人そして、殺された人、殺した人たち。 続きを読む かしの樹の下で~中国人妻と残留孤児の事件~

🔓お父さんは悪くない~続・ある家族の崩壊への軌跡/八尾市・長男バラバラ殺人事件~

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店先には、いつもその父親の姿があった。
缶ビール片手に、父親は客を待ちながらテレビの野球中継を見るのが常だったという。

「精神病院行ってんねん」

息子はそう言ってにこっと笑う。お気に入りのTシャツやスニーカーを「おっちゃん!見て!」と人懐っこく話しかける息子のことを、近所の人たちの中には親しみを持って接する人らもいた。

そんな息子の通院費を稼ぐために、父親は家業の自転車店のほかに、トラックの運転手や市場の鮮魚部門で早朝の仕事を掛け持ちしていた。
母親と次男はすでに家を出ていた。

小さな家に、父親と息子。

「仕方なかった」

そう呟いた父親は、同時に

「後悔していない」

とも話した。

鳴門の砂浜の胴体

平成17年5月11日、徳島県鳴門市の砂浜に、男性とみられる遺体が打ち上げられた。
遺体は、頭部と四肢が欠損した状態。明らかに、切断されて遺棄されたものだった。

指紋も顔も分からない場合、身元特定には時間がかかるかと思われたが、2日後身元はあっさり割れた。
警察のDNAデータベースに、遺体と合致するDNAが登録されていたのだ。

胴体は、大阪府八尾市在住の藤見一(はじめ)さん(当時33歳)と断定。一さんは当時八尾市内の実家で父親と二人で生活していたという。

警察がDNAが一致したことを踏まえて父親に話を聞きに行ったところ、なんとその父親が一さん殺害、切断、遺棄を認めた。

逮捕されたのは一さんの父親・秀雄(仮名/当時62歳)。
秀雄は一さんが自室で寝ているときに工具を用いて頭部を殴り、殺害したと自供。その後、遺体を解体して仕事で使用していた2トンの保冷車に積み込むと、大鳴門橋の上からその遺体を遺棄したと自供した。

秀雄は自転車店を経営しており、事件当時も店の入り口には「パンク直します。1台500円」といった張り紙もあった。
住宅街にある小さな自転車店。自宅も兼ねていたというその2階で、一さんは父親によって殺害され、バラバラにされて鳴門海峡に捨てられた。

取り調べに対し、秀雄は冒頭のように、仕方なかったと、後悔していないと話した。

秀雄は自転車業界でも知る人も多い人物だったという。事件を知った知人や同業者らはその人柄などに触れ、信じられないといった様子だった。

しかし、妻と息子二人との家族4人幸せな日々は、とうの昔に崩壊していた。

【有料部分 目次】
幸せな4人家族
変わり果てた両親
他害行為と絶望
「もう、悩まなくて済む」
「お父さんは悪くない」
医療観察法
当事者と他人の距離

 

🔓それぞれの死~いくつかの被疑者、被告人の死~

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容疑者、被告人の死。

理由は様々あれど、関係者の多くにとってそれは残念な出来事だと思われる。
中には口封じとしか思えないような不可解な拘置所内での自死、事故死もないとは言わないが、いつの時代にも容疑者や被告人がその事件の犯人としての罪のあるなし、その量刑が確定しないまま何もかもが終わってしまうのはやはり、残念なことである。

有名な事件で言うと、尼崎の連続不審死で主犯格として逮捕された角田美代子氏だろう。彼女は事件が発覚し逮捕されたわずか2ヶ月後に、身柄が置かれていた兵庫県警本部の留置場の布団の中で、長袖のTシャツを首に巻き付け、自死していた。
事件詳細は関連書籍など山ほどあるので読んでいただくとして、北九州のあの事件と双璧をなすと言ってもいい事件の首謀者があっけなく自殺するものだろうかという疑問はあった。
結果的には、角田氏は逮捕直後からかなり弱気になっていたようで、状況的にも自殺と考えられ、その後、角田氏と行動を共にした人物らも刑が確定し、事件は終わった。

事件備忘録でもいくつか、逮捕されることを嫌い、また裁判を待たずに自ら命を絶った容疑者の事件を報告している(確定後の服役中の死亡は除く)。これとか、これとか、これとか、これとか、これとか、これとか、これとか、これとか。
刑が確定する前に、起訴された被告人が死亡すれば公訴棄却となり、事件は残っても死亡した人間には前科はつかない。
たとえ、現行犯で一旦逮捕されていたとしても、100%犯人でも、死亡した以上は被疑者死亡で書類送検となり、その後検察も被疑者死亡で不起訴の判断をするため、前科はつかないのだ。

先日公開した事件の中で、一審判決が下された直後に被告人が死亡したというケースがあったが、それについても控訴手続きが取られないままだったためにこのまま放置すれば判決は確定してしまう。
検察は、死亡した人間に前科をつけることはせず、あえて控訴し、その後高裁で公訴棄却となった。

判決はまだでも、現行犯などで犯人確定しているケースはある意味、自分の命で償ったとも考えることは可能だが、中には最初っから容疑を否認しているケースもある。
広島の警部補の自殺も、本人は容疑を否認していた中での自殺だった。

事件の大小にかかわらず、被疑者、被告人の死によって幕が降りた事件をいくつか紹介したい。 続きを読む 🔓それぞれの死~いくつかの被疑者、被告人の死~

片隅の記録〜三面記事を追ってpart3〜

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蒲田のラブホテルの腐乱死体

「部屋が臭くてたまらない。部屋を変えてくれ」

昭和63年1月1日、宿泊していたカップルからフロントに苦情が入った。年末年始のラブホテルは、クリスマスからの流れもあって満員御礼が続いていた。少々、清掃に手ぬかりがあったか?
ただ、その部屋のにおいは、この手のホテルにありがちな漂白剤の匂いでも、下水が詰まって湧き上がるようなものでもなかった。

…何かが腐っている?

苦情があった翌朝、ホテルは従業員二人にその部屋の点検を命じた。
ホテルの中央にある大きなベッドは、下に土台があってその上にマットレスが乗っかっているというもので、部屋を一通り点検して異常がなかったことから、最後にマットレスをあげてみることにした。

マットレスを起こした時、従業員らが見たのは、すでに腐敗が始まっていた遺体だった。

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忘れないで〜生きた証⑥〜

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長阪 優奈ちゃん(滋賀県高島市:平成18年7月5日死亡/当時2歳)

「勤務態度は真面目。口数は多くないが、しっかりしている」

母親が再婚した相手は、航空自衛官。饗庭野駐屯地で電気関係の任務についていた24歳で、上官からの評価も良かった。

滋賀県中央子ども家庭相談センターの職員も、当初は子育てに不安を抱えていた母親の様子が再婚を機に成長が見られたこともあって、それまで入所措置が取られていた2歳になる女の子を母親の元へ返すことにした。
すでに女児と母親の再婚相手は養子縁組も済んでいる。一つ上の姉(当時3歳)とともに新しい家族として再スタートを切ったその女児は、入所措置停止から2ヶ月後、無惨な姿となって命を落とした。