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兄妹
平成17年3月29日午前9時50分、京都府福知山市。
その日、男性は仕事でダンプカーを運転し、曲がりくねった府道530号線を走行していた。
春の山里の景色が広がるその道は、普段あまり車の往来も地元民や工事関係者のみでさほど多くない。春先とはいえ、朝晩は気温が5度以下になるほど冷え込み、運転席の窓をすかすと気持ちの良い冷たい風が吹き込んできた。
ふと、道路沿いを流れる上三岳川が目に入った。
道路との高低差は5mほどあり、普段ならば気にも留めない小さな川だが、運転手は思わずダンプを停めた。
上三岳川の川岸に、なにか、いた。
運転手がガードレール越しにのぞき込むと、そこにはうつぶせで両足を川の水につけた状態の幼児が倒れていたのだ。
仰天した運転手は急いで川へと駆け降りると、その幼児の生死の確認をした。生きている。運転手は幼児を抱きかかえると急いで最寄りの民家へ駆け込み、119番通報した。
幼児は女の子で、救急隊員らの保温によって一命をとりとめたものの、上室性期外収縮、徐脈を伴う体温32.5度、直腸温度は34度の低体温となっており、凍死の一歩手前という重篤な状態にあった。
ただこの時点で、付近の住民はこの女の子を全く知らないといい、この年頃の女児の迷子、捜索願も出ていなかった。女の子も名前を話せなかったことから、その身元は分からなかった。
女児の保護から4日後の4月1日午後3時。
高知県吾川郡いの町長沢の国道で、幼い男の子がとぼとぼと歩いているのを住民が見つけ、110番通報した。
男児は4歳で、名前を話すことができた。そこで、署員らは驚愕する。
この男児は、3月31日に京都府警に捜索願が出されていた男の子だった。京都の男の子がなぜ、高知のしかも山奥に?
しかも、行方不明になっていたのはこの男の子だけではなかった。
男の子には2歳の妹がおり、さらには母親の所在も31日夜以降、わからなくなっていた。
その後、京都府警との連絡により、4日前に福知山市内で保護された女の子の兄と判明した。
母親の所在は依然わからずにいたが、警察では、もう一人所在のわかっていない男の存在を把握していた。
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【有料部分目次】
事件発覚
男のそれまで
女のそれまで
破滅へのロト6
傷害事件
限界
目撃者
殺意の形成
こんなに尽くしているのに