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土砂降りの雨ではあったが、いつもと変わらない朝だった。
JR綾部駅の南西、警察署や銀行などのある大きな通りからさらに南に下がると、神社や寺などが見えてくる。山裾に沿って立ち並ぶ住宅の間を、坂道が何本か通っている場所。
その中の一つの通りを通学路として利用している集団登校の子供たちの姿がその日もあった。上級生にならい、みな、お行儀よく右側を2列に並んで学校へ向かっていたが、これもまたいつもと変わらぬ平和な光景だった。
その対向から走ってきたワゴン車があった。
集団登校の最後尾を歩いていた6年生の男児には、その車がやけにこちらに向かってくるように見えた。
次の瞬間、その車は集団登校の列に正面から突っ込んできた。
平成14年1月21日午前7時40分
静かな住宅街に大きな衝突音が響いた。
近くでアパートを経営していた男性(当時73歳)が急いで外に出たところ、信じがたい光景が広がっていた。
いつもこの道を通って学校へ行っている子供たちが、何人も道路に倒れ込んでいたのだ。しかも複数の児童は出血を伴うケガを負っているようだった。
男性は付近の住民らと協力して子供たちの救護にあたり、救急車の到着を待ったという。
子供たちが倒れている場所から少し離れた場所で、民家のガレージに突っ込むような形で停車している車があった。あの車が突っ込んだのか……?
ふと、運転手を探した。しかし現場にはそれらしき人物が見当たらない。
そこで車の中を覗くと、そこには頭から手ぬぐいのようなものをかぶってうなだれ、微動だにしない運転手の姿があった。
ただ、運転手は生きていて特に大きなケガもしていない様子だったため、男性らは子供たちの救護に全力を注いだ。
しかし、残念な報せが後に届くこととなった。
救急搬送された子どもたちのうち、小学2年生の男の子が死亡したというものだった。
他にも4人の子供たちが重傷を負っていた。
一体何が起きたのか。警察は業務上過失致死傷の疑いでワゴン車を運転していた男性を逮捕する方針、と発表した。
学校関係者、保護者からも死亡した男児への追悼と共に、果たして防ぐことが出来たのか、という戸惑いの声も上がった。
子供たちは規則正しく登校しており、落ち度などない。教師らも、日々安全指導を行っても今回のような事故をどう防げばいいのか、と困惑を隠せずにいた。
が、結果からいうと、この事故は防ぐことはできなかった。正確には、学校や子供たちがどれだけ気を付けていても、防げなかった。
これは事故ではなく、運転していた男の「故意」によるものだったからだ。
【有料部分目次】
その男
事件まで
執着する男
恐るべき動機
反社の人
いつまでも一緒だよ
🔓忘れないで〜生きた証14 鬼の棲む家part4〜
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誰よりも子供を守るべき立場にある大人、しかも実の親によって殺害される子供たち。逃げることも抵抗することも不可能な幼い子供を、文字通り死ぬまで肉体的精神的暴力をふるい続ける親たち。
どんな罪よりも子を殺すというものが最も罪深いと個人的には思うが、世の中には子を殺した親に対して同情や時には共感めいたものを抱く人も少なくない。
それも一つの考えであり、まさにそのような人がいなければ子を殺した親たちの居場所は社会になくなってしまうため、闇雲に否定する気もない。
ただそこにどんな事情があろうとも、殺された子供には一点の落ち度も非もない。なのに、親の罪は他人に対するそれよりも軽く、場合によっては親も被害者なんだ、いや、親こそが被害者なのだ(なにの?)と言わんばかりに声を上げる人たちさえ、現れる。
遠のく意識の中で、その子供たちが最期に見たのはなんだったろう。
楽しかった思い出、兄弟姉妹のこと、保育園のこと、お友達のこと。
お父さんとお母さんの顔は、どんなふうに見えていただろうか。
【目次】
相沢みず希ちゃん(静岡県富士市:当時5歳/平成12年6月29日死亡)
事件発覚
それまで
兆候
両親の苦悩
見過ごされた訴え
懲役10年
安岐海帆(みほ)ちゃん(岡山県玉野市:当時2歳/平成15年11月2日死亡)
その家族
望まれていない子
真実
地獄の8日間
不作為による殺人
ずるい男と勝手な女
忘れないで〜生きた証⑬~
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大竹美咲ちゃん(千葉県松戸市:当時2歳/平成19年1月21日死亡)
平成19年1月12日早朝。千葉県松戸市胡録台を走行していた男は、車内にいた女の子に対してその腹部を激しく殴打した。
理由は、お菓子をこぼしたから。
女の子はわずか2歳。その顔や体にはすでにいくつものあざができていた。
18日、自宅にて片付けをしないなどと言われ再び腹部を強く殴打された女の子は21日になって激しい腹痛を訴え病院に搬送された。女の子の小腸には穴があき、腹膜炎も起こしていた。
そして、女の子は短い一生を終えた。 続きを読む 忘れないで〜生きた証⑬~
週刊事件備忘録~虐待防止月間に寄せて~
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こんにちは。
11月は虐待防止推進月間です。この背景には実際に起きた凄惨な虐待殺人事件があります。
ご存知の方も多いと思いますし、事件備忘録でも取り上げた「小山市・兄弟投げ落とし殺人事件」です。父親と暮らしていた幼い一斗ちゃん、隼人ちゃん兄弟が、父親の知人から激しい暴力を受けた挙句、橋の上から投げ落とされるという信じられない事件が平成16年に置きました。
加害者の男はその後、死刑判決を受けます。しかし、東京高裁へ控訴中、病気で死亡したため公訴棄却となりました。
下山明宏元被告。事件発覚直後、一斗ちゃんと隼人ちゃんの父親が記者会見を行いましたが、それより以前からこの父親と下山元被告との関係などが取りざたされ、取り繕うように行われた会見の内容が想像をはるかに超えるレベルのひどいものだったこともあり、世間は下山元被告のみならずこの父親に対しても怒りを隠せませんでした。
下山元被告にも子供がいました。この事件では、一斗ちゃん隼人ちゃんのほかにも傷ついた子供たちがいたのです。下山元被告の娘は、一斗ちゃん隼人ちゃんが殺害される現場に居合わせていました。幸い、車の中で眠っていたためその現場を見ることはなかったと思われますが、目を覚ました娘は一斗ちゃんと隼人ちゃんがいないことを下山元被告に尋ねています。
その後、事件を取材したジャーナリストの河合香織氏によると、下山元被告の子供たちは姿を消し、それまで通っていた小学校からもその存在すら抹消されたかのような対応だったとのこと。
せめて今、平穏な日々を送っていてほしいと思います。
この事件をきっかけに誕生したのが、オレンジリボン運動です。今も現場に佇む二体のかわいいお地蔵さま。一斗ちゃんと隼人ちゃんを思い、地元の方が寄贈されたものだそうですが、一斗ちゃん隼人ちゃんのみならず、虐待を受けて命を奪われたすべての子供たちをずっと見守っているかのよう。
どんな事情、理由があろうとも子供に暴力をふるったりましてや傷つけ殺害するような人間を私は許しません。どれほど後悔しようともその後の人生が世のため人のために尽くそうとも、子供に死ぬほどの暴力をふるう人間を人間だとは認めません。動物ですらない、人のカタチをしたなにかでしかありません。
しかし、そうやってただただ許さない、責めるだけでは、救える命も救えないのも事実です。虐待をしてしまった人の心、その背景を知ることは、許すこととは違います。知ることと同情、共感は全く違います。
けれど知ろうとしなければ、絶対に「虐待されているのでは?」と思う、気づくことすらできない。だから、様々なケースを知り、その加害者の心を知り、話を聞くことは決して無駄ではないと思っています。
前置きが長くなりました。
今週の週刊事件備忘録は、虐待防止推進月間に寄せて、絶対に救えたはずなのに救えなかった虐待事件を取り上げます。
忘れないで~生きた証⑫~
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小沼愛実(まなみ)ちゃん(神奈川県相模原市:当時3歳/平成13年3月7日死亡)
「(大丈夫か)」
男は布団の中の女児に声をかけた。薄暗い部屋の中、ぼんやりと女児の顔が浮かぶ。
その表情は、心配する我が父親を安心させるかのように、やさしく微笑んでいたという。
女児は翌朝、死亡した。死因は、内臓破裂による出血死だった。
平成13年7日深夜、相模原市淵野辺のアパートから119番通報が入った。通報者は、近所の知り合いから子供の意識がなくなったために救急車を呼んでほしいと頼まれていた。
救急隊が駆け付け、市内の病院へと搬送されたが子供は3月8日午前11時、死亡した。
死亡したのは小沼愛美ちゃん(当時3歳)。愛美ちゃんの死因は内臓破裂。腸の一部が10センチにわたって裂け、他の箇所にも穴が開いていたという。病院は警察に通報、相模原署は両親から事情を聞いたが、父親が暴行を加えたことを認めたため、殺人の疑いで父親の小沼信太朗(仮名/当時32歳)を逮捕した。
小沼家には、実はかなり前から虐待を疑う声が複数あったという。愛美ちゃんが1歳の頃、当時通っていた民間の保育園から「愛美ちゃんが園を休みがちで、体にもあざがある」という通報が福祉事務所に寄せられた。ケースワーカーが両親に面会したところ、「(愛実ちゃんが勝手に)風呂場で転んだ」と話したという。
この件は民生委員、信太朗の姉や母親にも連絡が行き、それぞれが信太朗夫婦に様々な助言やサポートを申し出たというが信太朗夫婦はそれを拒否、その後も愛美ちゃんの生傷が絶えることはなかった。 続きを読む 忘れないで~生きた証⑫~