🔓子供を産んだらダメですかpart2~あがく男たち~

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望まぬ妊娠の末に我が子を殺害してしまう母親がいる一方で、おなかに芽生えた命を守りたい、出産して母になりたいという当たり前の願いを、自己保身のためにぶち壊す父親がいる。

生物学上のその父親たちにとって、大切なのは今すでに手にしている日常であって、新しく生まれ来るその命は邪魔でしかない。

そしてその邪魔なものをこの世に生み出そうとする、自分の日常を侵食させようとする母親もまた、邪魔というよりもはや害悪だった。

下半身の蛇口も満足に締められなかった情けない男たちの、あがきもがいたその顛末。

日野市の事件

平成16年7月。東京都八王子市内の造園会社では、この日警察によってある事件についての捜索が行われていた。
同年6月19日、日野市在住の女性の行方が分からなくなっており、捜索願が出されていた。女性はその日、知人男性と夜会っているところを家族が目撃しており、それ以降の足取りが分からなかったことから、警察はその知人男性に話を聞いていた。

男性は、「その夜たしかに彼女と会ったが、行方については知らない」と話していたが、警察も家族も、その男は絶対に何かを知っていると確信していた。

女性は、その男性の子供を妊娠しており、その男性は既婚者だったのだ。

発見された指

警察は男性が勤務していたのが造園会社で、かつ、女性が失踪した直後にその会社を辞めていることから、家宅捜索を予定していた。
すると7月10日ころ、その造園会社から通報が入った。

「会社所有のショベルカーがいつもと違う場所に動かされている」

警察はすぐに会社の敷地内を捜索したところ、同社の資材置き場に何か掘り返したような跡が見つかった。
捜索の結果、そこから人体の一部が出た。髪の毛と、爪のついた指だった。

そしてDNA鑑定の結果、その指と毛髪は、行方不明の女性のものと判明。同時に、ショベルカーが動かされていた日、現場であの知人男性の姿が目撃されていたことから、警察は知人男性を死体遺棄容疑で逮捕した。

【有料部分 目次】
胎児殺しは罪か
同じ読みの名前

秋田の事件
 不審なココア
 逮捕から一転
 男の主張
 裁判所の判断
 こじれた要因
 憎さ百倍の泥沼

私は何をしたんでしょう?~目黒・5歳児ゴミ袋窒息死事件~

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目黒区の閑静な住宅街。
碑文谷八幡宮の広大な敷地の道路を挟んだ北側の住宅街にその家はある。
敷地こそ狭いものの、その敷地いっぱいに建てられた3階建ての洋風の邸宅。重厚なつくりに見え、半地下にはガレージも。
周辺には同じように高級住宅が立ち並び、どの家にも自家用車が見える。国産、外国産の違いはあれど、どれも高級車である。

その家には、白のイタリア製の車が停められていたという。

飲食業界で長く事業を展開する夫と、その夫を支え、家族をまとめ上げていた妻。
妻は4児の母でもあった。

経済的に恵まれ、家庭にも恵まれた「ように見えていた」その家で、事件は起きた。 続きを読む 私は何をしたんでしょう?~目黒・5歳児ゴミ袋窒息死事件~

🔓狂気の世界~浦和市・実子3人殺害事件~

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令和6年6月11日、愛知県一宮市で幼い我が娘3人を殺害したとして母親が逮捕された事件で母親に判決が言い渡された。

母親は令和4年2月10日、一宮市の自宅で当時5歳、3歳、生後9か月の娘らの首を絞めて殺害、母親も手首などに軽傷を負っていたが、後に娘らの殺害を認めたため逮捕、起訴されていた。
当初から争点は責任能力にあった。初公判で母親が起訴事実を間違いないと認めた際には、弁護人が心神喪失状態だったと付け加えた。

検察が懲役25年を求刑したのに対し、弁護側は犯行当時心神喪失だったとして無罪を主張。被告人である母親も、自分をもう一人の自分が眺めている感覚、頭の中で声が聞こえていたといった証言もありその判断が注目されたが、判決は懲役23年。
裁判所は母親の完全責任能力を認めた(※令和6年6月15日現在判決は確定していない)。

正直、どんな事情があろうとも幼い我が子を3人も殺害した時点で感情としては死刑でいいやろ、というか、死刑にしたった方が本人も楽になるんちゃうかという乱暴な思いもある。が、基本的に家族間、特に親(母親)が幼い子供を殺害した「だけ」の場合は、この懲役20~23年あたりがどうやら「相場」になっているようだ。

一方でそもそも子供を殺すような精神状態になっている時点で異常とも言えるわけで、それが人格に由来するものなのか、それとも精神を病んでいる状態なのかの判断は非常に難しい。この一宮の母親は、検察もかなりその完璧主義の性格を強調していたように思う。
証言台に立った元夫も、被告人がスマホで得た情報を信じ込む性格、という話をしていた。

結局、地裁は完全責任能力を認めたため、過去の同種の事件の判決などを参考に量刑が決められたと思うが、産後うつで通院歴と投薬治療をしていたのに途中でやめていて、家事も育児も回っていない状態で希死念慮があり、かつ離人の症状があったり、頭の中で声が聞こえていると言った状態でも心神耗弱ですらないというのは正直驚きもあった。

昭和の終わり、この母親と同じように、わが子3人を殺害したこちらも完璧主義の母親がいた。そして同じように、ほぼワンオペ状態で子育てをしながらうつを患い、希死念慮を抱き通院もしていたが、ある出来事でタガがはずれそのまま子供3人を殺害し自身も自殺を図ったものの、死ねなかった。

その母親に対し、検察は懲役13年を求刑。しかし、浦和地裁はその母親に対して心神喪失無罪の判決を言い渡した。

その判決が、というのではなく、その判決文にある裁判長のいわゆる傍論に、私は度肝を抜かれた。

それは正義か。それとも、偏重か。

【有料部分 目次】

浦和の我が子殺し
優秀な母親と理想の家族
翳りゆく家
死にたいから、殺してよ
狂気の世界
裁判長
最も決定的な被害を受けたのは誰か
ふたたび、一宮の事件

悪魔~阪南市・19歳男性虐待餓死事件~

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幼い子供が一人で生きていくことも周囲に助けを求めるすべも知らずに家庭内で虐待された挙句、死亡するという事件は後を絶たない。

その事件は当初、すぐに事件化しなかった。
それは死亡した人物が19歳の男性だったということも関係していた。

19歳、普通で考えれば、自分で考えて行動できるはず。
男性は高校を卒業までは何ら変わった様子もなく、当然、持病などもなかったが、警察はその遺体の状況から司法解剖を実施。結果、男性は餓死していたことが分かった。

この男性に何が起きていたのか。 続きを読む 悪魔~阪南市・19歳男性虐待餓死事件~

🔒愛しているから、苦しんで~浜松市・小3女児殺害事件~

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「おはよう。子どもは起きた?待っています」

その日の朝、女性は離婚した元夫にメールを打った。ちゃんと娘を学校に遅れないよう行かせたかしら?
それにしてもあの人は昨夜なにをあんなに感情的になっていたのだろう。
勝手に娘を連れ出すなんて……
まぁ、子どものことは可愛がる人だから、娘と一晩過ごせたら頭も冷えるでしょう。

なんら、変わりのない朝だった。

ただ、彼女の娘は、生きて帰って来なかった。

事件

平成23年6月9日午後2時ころ、静岡県浜松市内のアパートから「娘を殺した」という110番通報が入った。電話の声は男性。すぐに警察がアパートに駆け付けると、部屋は鍵がかかっていた。
警察官が窓を割って室内に入ると、そこには意識を失った状態の成人男性と、小学生とみられる女の子が倒れていた。

男性は病院へと搬送されたものの、女の子はその場で死亡が確認された。
女の子は首を絞められ、さらには左手首にかなり深い切り傷もあった。

警察が室内を捜索したところ、遺書とおぼしきメモが見つかった。その後、搬送された男性は女の子の父親であると確認、状況から娘を道連れに無理心中を図ったとみられた。

15日、意識不明だった父親が回復したことから、警察は殺人の容疑で逮捕した。