病める女~愛知・藤岡町・男児せっかん死事件④~




臨床心理士

この記事を公開した直後、読んでくださった方より情報をいただいた。
虐待や人格障害、心理療法の分野が専門の臨床心理士・長谷川博一氏の著書、「殺人者はいかに誕生したか」に、この亮子と美幸の事件が掲載されているということだった。
事件後、亮子に面談し心理鑑定を行った長谷川氏が、亮子が解離性同一性障害を発症した原因などを記しているとのことだったが、気になる言葉があった。

どうやら、亮子は過去に父親との間でなにかあったのではないか、というものだった。

早速取り寄せて読んでみたところ、判決文では言及されていないものの、亮子がなぜ美幸にそこまで操られてしまったのかについて重要なことがいくつも書かれていた。 続きを読む 病める女~愛知・藤岡町・男児せっかん死事件④~

絶対私は悪くない~福井県あわら市・義母逆恨み殺害事件①~




平成14年8月21日

福井県芦原町(現・あわら市)。
この日、いつもは早起きの祖母が起きてこないことを気にかけた孫は、祖母が生活する離れに向かった。
納屋に隣接する離れの入り口は施錠されておらず、孫は祖母を起こしに部屋へ入った。

「ばあちゃん…」

最初は単に布団がはがれているだけかと思った。しかし、あおむけの祖母の顔に、すでに生気はなかった。 続きを読む 絶対私は悪くない~福井県あわら市・義母逆恨み殺害事件①~

絶対私は悪くない~福井県あわら市・義母逆恨み殺害事件②~




救いようのない女

夫や子供たちが暮らす家に戻ることができた満智子だったが、気に入らないことがあればそれはすべて周りに問題があるからだと決めつけ、あからさまに不満を嫌がらせという形でぶつけていた。

たとえば、食事の際に長女と久栄さんが仲良く話していれば、「娘を取られる!」と憤慨し、夫が高齢の母を気遣えば、自分をのけ者にしているとして機嫌を悪くしていた。
満智子は15年で何も学んでおらず、久栄さんに対して目の前で強くドアを閉めたり、久栄さんの食器をわざと荒々しく扱うなど、それは誰の目から見てもひどいものだったという。

それを見た賢さんと長男は、すぐさま満智子に強い態度で臨んだ。特に、長男は母親である満智子に対し、厳しい態度を崩さなかった。
久栄さんは満智子の機嫌を損ねないように、なるべく母屋へは顔を出さず、離れの自室で一人過ごすようになる。それを気にして、長男が離れへ行って久栄さんを気遣うことも、満智子は我慢ならなかった。
久栄さんは自分用の小型冷蔵庫を買い、さらには母屋の電話を使わないでいいように携帯電話まで購入した。とにかく、満智子の気に障らないようにするには、自分だけが顔を見せなければいい、そんな思いで心を痛めていた。

また、長男が久栄さんを庇って満智子に強い口調で迫った際には、
「母親になんてことを言うんだ、そんなことを言ってはいけない」
と、長男をたしなめ、満智子の肩を持つなどしていた。

しかし、そんなことで変わるほど満智子はやわではなかったのだ。

このころすでに夫の賢さんは満智子にほとほと嫌気がさしており、ほとんどかかわらない、口も利かないような状況になっていた。代わりに長男が満智子を諫め、時には激しくなじり、そのたびに久栄さんはハラハラしながら成り行きを見守るしかなかった。

せっかく帰ってきたのに、夫も息子たちも誰も私をいたわろうとしない。どうしてこんなに薄情な子供たちなんだろう。

自分を省みることを一切しない満智子には、子供や夫の態度の原因がどこにあるのか、全くわかっていなかった。
そのため、自分以外の家族が久栄さんを気遣うことに勝手に嫉妬心を燃やし、何度も何度も久栄さんに嫌がらせを繰り返した。
そればかりか、「すべて自分以外の誰かが悪い」と思うたちの満智子は、母親代わりだった久栄さんの教育が悪かったから、こんな風になったのだと結論付けてしまう。

満智子の久栄さんへの嫉妬心は、すでに憎悪の焔に変わっていた。



名案

平成14年8月19日、満智子は庭先で長男に叱りつけられた。
近藤家では犬を飼っていたが、家族内でドッグフード以外の食べ物を与えない、というルールがあった。
にもかかわらず、満智子は勝手に人間の食べ物を与えていたため、長男はことあるごとにそれをやめるよう言ってきていた。
この日、満智子は禁止されているのにまた犬に人間の食べ物を与えようとしたところを長男に見つかってしまい、素直に謝ることもできないため、
「私が食べようとしただけや!」
とわけのわからない言い訳をかましてしまう。これに激怒した長男は、思わず満智子の腰や足を蹴った。そして、満智子を旧姓の「南さん」と呼び、満智子は近藤家にいらないのだと明確に告げられた。

他罰的な人ほど、自分がされたことをことさら強調するのはよくある話だが、満智子の場合もそうだった。
長男に絶縁ともとれる発言を受けたとショックを受け、深く深く傷ついたという。しかしこれもすべて、久栄さんの育て方が悪いせいであり、久栄さんが満智子のあることないことを子供たちに聞かせて育てたのだと思い込むことで、悪いのは自分じゃないと考えた。

翌日にも再度、長男から出て行けと言われた満智子は、賢さんと久栄さんとで夕食をとっているとき、久栄さんに嫌がらせをすることで自分の気持ちを伝えようという、ちょっと理解できない行動に出る。
賢さんが席を立った隙に、満智子は久栄さんにふきんを叩きつけ、さらには足元に落ちていた豆の皮を見つけて久栄さんがこぼした、汚いなどと難癖をつけ非難し始めた。
黙って耐えるしかなかった久栄さんの様子がおかしいことに気付いた長男が久栄さんに問いただし、夕食時の出来事を知るところとなり、我慢の限界を超えていた長男は満智子に対し、
「おめーはうちにはいらん。出て行ってしまえ。死んでしまえ。」
と怒鳴った。

満智子は被害者ぶって賢さんに愚痴をこぼしたというが、賢さんも全く相手にしなかった。
いつにも増して激しかった長男の怒りに、満智子はその夜眠れなかった。それまでのように、久栄さんの育て方が悪いんだと思いながら、あれこれと考えるうちに、久栄さんの存在自体が自分を苦しめているのだという答えを導き出す。
これは満智子にとって一筋の光のような、完璧な「答え」だった。

「ばあさんさえいなくなれば。そうしたら家族は私を大事にしてくれる!」

気が付けば、東の空が白み始めていた。




反省したら死ぬ人

警察の捜査では、事件後有力な情報は得られていないとされている。しかし、おそらくだが、家族はもとより周辺の住民らも、もしかしたら満智子が、という思いは抱いていたのではないだろうか。
もともと、いつ離婚となってもおかしくない状況だったうえに、満智子を一番気にかけていた久栄さんが死亡したことで、近藤家において満智子と家族でい続ける必要性がなくなってしまったため、その年の暮れには満智子は近藤家と完全に離縁となった。

春江町(現・坂井市)の実家へと戻された満智子は、逮捕されてもなお、全面否認だった。
2月5日に送検され、その後の検察での取り調べにおいて、しぶしぶ、久栄さん殺害を認めた。というよりも、久栄さんへの憎しみをぶちまけたというほうが正しいのだろう。
いかに自分がかわいそうで、いかに久栄さんが自分を虐げていたか、満智子は取り調べにおいても周りが、久栄さんが、ひいては夫の過去の仕事上のパートナーが悪いのだと、ただそれだけを訴えていた。
実際の犯行も、ひと思いに久栄さんを殺すのではなく、わざと苦しめるために胸を足で踏みつけ、肋骨を折り、そのうえで首を絞めて殺害した。

世の中には、絶対に自分の非を認めない、そういう人が存在する。どんなにわかりやすい加害行為であっても、何かしら言い訳や正当性を見出しては、まるで自分は被害者であるかのようなふるまいをする。
信号待ちで停車中の車に追突したにもかかわらず、その前方の車に対して「バックしてきただろう!」と言いがかりをつける人がたまにいるが、その絶対的な自信はどこから出てくるのか。
裁判で弁護側が申請した精神鑑定は却下されているが、じっくりと満智子のような他罰的思考の持ち主とはどういったものなのかを専門家に鑑定してほしかったなという思いは残る。




生まれついての性格、とも一概には言えないように思うが、ならばどのような出来事や要因がこのような思考を育てるのだろうか。

確かに、他人に対する妬みや嫉妬は、誰でもとらわれる感情であり、それ自体には問題はない。が、満智子のような思い込み、決めつけ、自分が信じる筋書きしか信じない、たとえそれが荒唐無稽で、自分にとってもつらい筋書きであったとしても、それ以外信じようとしないという頑なさは、結局、自分が絶対的に正しいという、究極の自己中心的思考なのだろうか。

こういった人が、もしも他人に対して「愛情」を持ったとしても、それは他者への愛ではなく、自分へのものなのだろう。

久栄さんは満智子を悪しざまに言うこともなく、むしろ満智子を嫌う家族を諫め、15年間心を痛めながらも満智子の子供たちを立派に育てた。それだけでなく、誰よりも満智子を気にかけ、また一緒に暮らそうとまで働きかけ、それを実現させた、普通で考えれば満智子にとっては唯一の味方であった。
なのに、よりにもよって満智子はその久栄さんを憎み、諸悪の根源だとして殺害してしまった。
今後久栄さんの冥福を祈っていきたいと話はしたものの、満智子は最後まで「私が間違っていた」とは認めなかった。
当然、元夫や実の子供らからの嘆願もなかった。

判決は懲役14年。すでに出所した満智子をふたたび家族は許しただろうか。

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だってあの子が悪いのに~鹿嶋市・女性リンチ生き埋め事件①~




平成13年6月9日

茨城県鹿嶋市。
北浦に面した県道18号線から東に1キロほど離れた場所で野良犬が数頭、群がっていた。

「なんであんなに犬がいるんだろう」

田んぼのわきのあぜ道で農作業をしていた男性(63歳)は、野良犬らの動きが気になった。なにか、動物の死骸でもあるのだろうか。
犬たちを追いやった男性が、犬たちが群がっていた地面を探ってみると、そこにはなにやら白いものが見えていた。
男性は知人を呼びに行き、その知人とともにもう一度その白いものを確認して驚愕する。
それは、人の頭蓋骨だった。 続きを読む だってあの子が悪いのに~鹿嶋市・女性リンチ生き埋め事件①~

だってあの子が悪いのに~鹿嶋市・女性リンチ生き埋め事件②~




狂乱

由香里さんの両親に門前払いを食らった雅美らは、その怒りを由香里さんに向けることになる。
弘子の自宅へ由香里さんを連れて行き、男らも含めて由香里さんを問い詰めた。問い詰めるだけでは飽き足らず、熱湯をかけたり、ゴキブリを食べさせたり、それは常軌を逸していく一方だった。
この日から由香里さんは雅美らによって監禁状態に置かれる。
10月26日、雅美らは車2台に分乗して由香里さんを波崎町の日川浜へ連れていく。
そこで、伊藤や清水が中心となって、由香里さんに殴る蹴るの暴行を働いた。
砂浜に穴を掘って由香里さんの首から下を地中に埋め、その頭部を棒で殴ったり、足で蹴るなどし、由香里さんの顔や頭から出血すると、海水で洗ってさらに痛みを与えた。 続きを読む だってあの子が悪いのに~鹿嶋市・女性リンチ生き埋め事件②~