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望まぬ妊娠の末に我が子を殺害してしまう母親がいる一方で、おなかに芽生えた命を守りたい、出産して母になりたいという当たり前の願いを、自己保身のためにぶち壊す父親がいる。
生物学上のその父親たちにとって、大切なのは今すでに手にしている日常であって、新しく生まれ来るその命は邪魔でしかない。
そしてその邪魔なものをこの世に生み出そうとする、自分の日常を侵食させようとする母親もまた、邪魔というよりもはや害悪だった。
下半身の蛇口も満足に締められなかった情けない男たちの、あがきもがいたその顛末。
日野市の事件
平成16年7月。東京都八王子市内の造園会社では、この日警察によってある事件についての捜索が行われていた。
同年6月19日、日野市在住の女性の行方が分からなくなっており、捜索願が出されていた。女性はその日、知人男性と夜会っているところを家族が目撃しており、それ以降の足取りが分からなかったことから、警察はその知人男性に話を聞いていた。
男性は、「その夜たしかに彼女と会ったが、行方については知らない」と話していたが、警察も家族も、その男は絶対に何かを知っていると確信していた。
女性は、その男性の子供を妊娠しており、その男性は既婚者だったのだ。
発見された指
警察は男性が勤務していたのが造園会社で、かつ、女性が失踪した直後にその会社を辞めていることから、家宅捜索を予定していた。
すると7月10日ころ、その造園会社から通報が入った。
「会社所有のショベルカーがいつもと違う場所に動かされている」
警察はすぐに会社の敷地内を捜索したところ、同社の資材置き場に何か掘り返したような跡が見つかった。
捜索の結果、そこから人体の一部が出た。髪の毛と、爪のついた指だった。
そしてDNA鑑定の結果、その指と毛髪は、行方不明の女性のものと判明。同時に、ショベルカーが動かされていた日、現場であの知人男性の姿が目撃されていたことから、警察は知人男性を死体遺棄容疑で逮捕した。
【有料部分 目次】
胎児殺しは罪か
同じ読みの名前
秋田の事件
不審なココア
逮捕から一転
男の主張
裁判所の判断
こじれた要因
憎さ百倍の泥沼