病院で男は眠る妻の前にいた。
医者からはもう意識が回復する見込みはないと告げられていた。
明るく、優しく、面倒見の良い素晴らしい妻。その妻が、左手をベッドにくくりつけられ、時に下半身をあらわにして寝かされている。
妻はもう、変わり果てていた。
男は妻がすべてだった。この妻なくして、自分は何一つできない、それを実感していた。
娘たちも母親がいなくてはおそらくどうにもなるまい。特に、下の娘は母親がこうなって以降、精神的に大きなダメージを受けてもはや男の手には負えなかった。
上の娘も他人とのかかわりが持てない性格。それも、自分の血を引いているせいだ。
なにもかも、妻がいたからこそ、こんな出来損ないの自分とその血を引いた娘たちも生きてこられたのだ。
もう、それも無理だ。
孫たちがいなくなればお義父さんもお義母さんも悲しみに暮れて生きていけないだろう。
みんな、連れて行こう。 続きを読む 男として、父として、主として~山形・一家4人殺傷事件~