誤算~赤穂・祖父母殺害事件~

平成28年2月5日午後1時過ぎ

兵庫県佐用町の土木建設会社。
社長の携帯に、従業員の男性から電話がかかってきた。
電話の主は、1年前に高卒で就職してきた19歳の男性社員。社長はその男性社員のことをとある事情からいつも気にかけていた。

「祖父が透析治療に行ってないと母から連絡が来ました。会社の車で家に戻っていいですか?」

男性社員の家庭の事情を知る社長は快くそれを了承した。若いのに、まじめで家族思いの男性社員。ある時は、夜通し病弱な祖父の背中をさすっていたと聞く。社長はいつも感心して見ていた。

しかしその時、すでにその男性社員の手は、夥しい血で染まっていた。

続きを読む 誤算~赤穂・祖父母殺害事件~

そばにいて~神戸市・小2男児ため池死亡事故~

その日

なんでこんなことになったんやろう。
必死で暗闇を駆け抜ける間、少年はずっと考えていた。
団地に戻って、階段を駆け上がる。

「賢がおらんようになった!」

玄関を開けて大声で叫んで、家の人と一緒にまたあの池へ戻る。
賢、溺れてしもたんやろか?

少年は池に戻っても、身動きできずにいた。 続きを読む そばにいて~神戸市・小2男児ため池死亡事故~

「晴のち嵐」~北海道羽幌・女子中学生殺人事件~

取調室にて

「もしかしたら自分は彼女が好きで、友達でいたいから色々悪口を言われてもそれにこだわって彼女に対する憎しみになったのだと思う。彼女以外の友達であれば、喧嘩しても忘れられた」

狭い取調室の中で、少女はそう、調査官に呟いた。

少女は数週間前、同級生の女子生徒をナイフでめった刺しにして殺害していた。
かつての炭鉱の町で起こった、ふたりの少女の事件。 続きを読む 「晴のち嵐」~北海道羽幌・女子中学生殺人事件~

絶望の淵の先にあるもの~香川・父親撲殺事件~

昭和50627

「主文、本件抗告を棄却する。」

高松高等裁判所の小川豪裁判長は、この日、ある少年事件の抗告を棄却する決定を出した。
加害者は17歳の女子少年。彼女は昭和50514日に、高松家庭裁判所において、中等少年院への送致が決定していたが、それを不服として抗告したものだった。
彼女の罪は、父親を手斧で殺害するという非常に重大なもので、高松家庭裁判所は本来ならば検察官送致も十分考えられるとしたが、その内容を考慮して中等少年院送致を決めた、としていた。

彼女をそこまでさせた事件の背景とは。 続きを読む 絶望の淵の先にあるもの~香川・父親撲殺事件~

私がやらなければ~大阪・実父殺害事件~

大阪家庭裁判所にて

夏の日差しが日に日にその強さを増してきた7月、大阪家庭裁判所では一人の少女に対する保護観察処分の決定がなされた。

少女は16歳、大阪府内の高校に通う高校生だった。

しかし少女が犯した罪は、殺人。しかも被害者は、実の父親だった。
検察官送致もあり得る実父殺害だったが、大阪家庭裁判所の判断は、
「本件の決定的要因は父親にある」
とし、少女を少年院などに送致することはむしろ少女の円滑な社会復帰を妨げるとの観点から、保護観察官による直接的、長期的な指導がなされるべきというものだった。

少女と父と、その家族の辿った道のりとは。 続きを読む 私がやらなければ~大阪・実父殺害事件~