🔓止められない、止まらない〜4つのリンチ殺人後編〜

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佐賀のコンクリ殺人

平成3年3月4日、鳥栖署は殺人死体遺棄事件の容疑者として佐賀県内の建設業の男ら4人を逮捕した。

そして、男らの供述通りの場所から遺体が発見された。

遺体があったのは大野城市内の稼働中の鉄鋼製作工場敷地内。
深さ約1mの土中から発見されたが、その遺体はコンクリートで固められていた。 続きを読む 🔓止められない、止まらない〜4つのリンチ殺人後編〜

🔓更生は、できません~ふたつの再犯重大事件~

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人は誰しも過去があり、それは人によって恥ずかしいものから誰にも言えない洒落にならない秘密など色々である。
それでも実際に他人が聞いてみればなんのことはない、そんなこと隠さなくてもいいじゃないか、と思うほどちっぽけなことであるケースも少なくないし、その過去を人に話せる、共有できるだけでも、本人からしてみれば気持ちが楽になることもあるだろう。

ただそれが犯罪、しかも人を殺していたとなると、穏やかではいられない。

昭和の時代から平成にかけて起きた二つの事件。
いずれも、大変な過去を背負いながらも赦されて、再び社会の中で生きていた男たちの、どうしようもない二つの物語。

【有料部分 目次】

杉並の女子中学生刺傷事件
一家五人殺しの男
行き場のない少年少女たち
押し付けられた「オジン」
この時代の感覚
男の本性
無期懲役+8年
更生の道の途中で
足立区主婦バラバラ殺人
疑わしい男
DNA鑑定
「やりたいんでしょう?」
死人に口なし
過去を知られたくなかった男と、その妻
再びの無期懲役

🔓ケモノ~町田市・同居男性殺害事件~

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小田急玉川学園駅から北西に広がる巨大な団地群。
鶴川街道と鎌倉街道に挟まれるようにしてその団地はある。
町田市金井町、都市再生機構「藤の台団地」がそれだ。

その日、多くの人々が夕食を囲んでいた午後8時前、3階のとある部屋から出火した。
火災に気づいたのは隣室の住人。異様な臭いにベランダへ出てみると、まさに隣のベランダが燃えていたのだ。
火はさほど強くはなかった。ベランダのゴミのようなものが燃えている、そう思った住人は火元の部屋のドアを叩いた。
「ベランダが燃えているよ。なんとかしなさい。」
住人が声をかけると、室内からは特に慌てるような気配もなく、「はーい」と男性の返事が返ってきた。

しかし一向に火は消えず、さらには爆発音のような音も聞こえたことから住民らは避難を開始した。

避難しようと階段を下りていた住人の大学生が、ふと前を降りていく男性を見た。両手をポケットに突っ込んで、火事だというのに急ぐ素振りもない。
しばらく男性の後をついて降りていた大学生は、こんなのんびりしていたら危険なのではないかと思い、男性を追い越した。

外からベランダを見上げると、ベランダの火は上階にまで届くほどの勢いになっていた。

消防隊が駆け付け、消火活動が開始された。幸い、隣室への延焼は食い止められたようだったが、室内から男性の遺体が発見された。

一方で、警察は現場付近の墓地で墓石にしがみついている男を発見。男はパトカーを見て歩き出したが、足を引きずり、どこか様子がおかしかった。

「足をどうかしたんですか?」

警察官の問いかけに、男は要領を得ない返答をし、立ち去ろうとした。男の手には包帯がまかれていた。
さらにその手の傷について質問されると、男は「わからない、わからない」とうろたえた様子だったが、自分の名前を名乗り、生年月日を伝えてきた。

男はあの火が出た部屋の住人だった。

【有料部分 目次】
事件と、当初の報道
男の半生
違法薬物、酒、リタリン
主からのメッセージ
口腔内にドリル
来なかった大天使ミカエル
憎悪か、幻想か
卵が先か、鶏が先か
責任能力
忘れ去られるのみ

🔓洗脳と恋慕、そして怒れる裁判員~宮崎・同居女性バラバラ殺人事件~

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これで何度目だろうか。
ここのところ、娘と会う約束をしても直前でキャンセルになることが続いていた。
『大丈夫?』
メールを送ると、返事はあった。心配かけてごめん、大丈夫だよ……
けれど6月以降、顔を見ていないし声も聞いていない。

気になることはほかにもあった。9月中旬、突然「メールアドレスを変えた」という連絡が入っていた。メールアドレスを変えるというのはトラブルがあったからではないのだろうか。

女友達の家で一緒に暮らしていると言っていたあの彼氏とはうまくいっているのだろうか。あの彼氏と交際し始めてから、消費者金融で借金もしているようだし、とにかく会って顔を見ない事には心配でたまらない……

平成25年9月30日、この女性は警察に娘の捜索願を出した。

変わり果てた娘

宮崎北署は母親からの捜索願を受け、連絡が取れなくなっている女性と同居している女友達と、交際相手の行方を追った。
平成23年10月1日、宮崎市内でその女友達と交際相手を発見。
同居していたとされる女友達名義のマンションを捜索すると複数の血痕が検出された。
それを受けて女友達を追及したところ、翌2日になって、
「彼女の遺体を切断して知人の家に置いている」
という驚愕の事実が判明。
別の女友達が暮らすマンションの一室を捜索したところ、部屋の中のクローゼットの衣装ケースの中から、圧縮袋に詰め込まれた「体の一部」が発見されたのだ。

県警は死体遺棄の容疑で宮崎市在住の無職・金丸真菜実(当時23歳)と、行方不明の女性の交際相手だった元飲食店従業員で無職の東竜二(当時28歳)を逮捕、後に遺体が置かれていた部屋に住んでいた無職の阿部麻里絵(仮名/当時22歳)も逮捕した。
遺体はこの時点で身元の断定はできなかったが、3人の話から連絡が取れなくなっているあの女性で間違いないとみられた。

女性は、宮崎市の澤木友美さん(当時27歳)。
その後の司法解剖などで本人であると断定された。警察は友美さんが殺害された可能性が高いとみて捜査を続けたが、3人とも遺棄容疑は認めていたものの、殺害については否認していたという。
「気づいたら冷たくなっていた」
これが、3人の主張だった。
友美さんの死因は、切断され腐敗が激しかったものの、複数の内出血の痕跡があり、当初外傷性ショック死とみられていた。

友美さんの死に、この3人は関与しているのか。そもそも、友美さんとこの3人はどういった関係なのか。
捜査が進むにつれ、そのおぞましい「四角関係」と「共同生活」があらわとなっていった。

【有料部分目次】
体脂肪率6パーセントの男
東ルール
3号と別格の4号
監禁と暴力
操る男
畑の出来事と、カレールゥ
女たち
量刑の差
往生際が悪いのか、頭がおかしいのか
恥知らず
怒れる裁判員
行為責任の枠

🔓誰と越えたい、天城越え〜静岡・コープ茶畑殺人事件〜

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「判決を聞きに行くつもりは、ありません」

静岡県内で女性は毎日新聞の取材に応じた。
女性は、不倫関係にあった男が犯した罪に強い責任を感じていた。
その上で、男に対してキッパリと決別の意思を示していた。

最初の事件を聞いた時、男は大袈裟に驚いて見せていた。
その日は仕事の都合でようやく会うことができた日で、女性は男と夕方まで一緒にいた。

しかしその時、女性が乗っていた男所有の乗用車のトランクには、この女性もよく知る人物の遺体が載せられていたのだった。

茶畑の白い塊

平成16年10月24日午前8時。
静岡市水見色地区の長閑な茶畑で、女性(当時64歳)は自身の畑で草取りをしていた。
静岡市の中心から北西に10キロ、この山間の美しい集落は茶畑が広がる合間に、住宅が点在する地域である。
茶畑は収穫や作業のシーズンがほぼ終わり、あとは冬越えの支度と草取りなどをする人々が時折やってくる程度で、この時期人の姿はあまりないという。

女性も、台風23号が近づいたことから、数日前に一度畑に来ていた。
そして3日後の今日、再び畑に来たところ、ふと、不自然な砂利の部分が目についた。こんなもの、前からあったろうか?見れば盛り上がっているような場所もある。
不審に思ってよく見てみると、掘り返されたような土の隙間から、白い脂の塊のような、石鹸のようなものがのぞいていたという。

とてもそれ以上触る気になれなかった女性は、近くの人を呼びに行き、その人らとともに白い塊の周辺を少し掘ってみた。異様な臭いが鼻をつく。
そこから出たのは、人間の手と思われるものと、かかとだった。

おそらく状況が飲み込めなかったのだろう、畑の持ち主の女性と近所の人らはその日の午後になって警察へ通報。
警察が現場を掘り返すと、成人男性と見られる屍蝋化した遺体が出てきた。着衣は身に付けていたが、靴は履いていなかったという。
遺体は身長約170センチ、痩せ型で茶色の半袖に紺色のズボンを着用、灰色の靴下も履いていた。
さらに、この遺体は損傷が激しかったものの、左胸と左腹部に刃物による明らかな刺し傷が認められた。

静岡県警捜査一課と静岡中央署は25日、捜査本部を設置、殺人と死体遺棄容疑で捜査を始めた。

靴を履いていなかったことから、男性は別の場所で殺害された後、この茶畑に遺棄されたとみられたが、この茶畑のある水見色地区はそもそも土地勘のない人が簡単に来るような場所ではないといい、住民らはまさか隣人の中に何か事情を知っている人がいるかもしれないと、不安な日々を過ごす羽目になった。

26日、浜松医大で司法解剖が行われた結果、死因は左胸を刺されたことによる肺部損傷による失血死で死後1ヶ月程度、と断定された。

捜査本部は聞き込みを続ける一方、家出人や行方不明者、捜索願が出ている人らに該当者はいないかの調べも進めていたところ、藤枝市在住の37歳の男性が9月16日から行方不明となっていて捜索願いが出されていることが判明。
10月27日、茶畑の遺体はこの男性であると断定した。

難航する捜査

殺害されていたのは藤枝市在住の団体職員、蒔田晃さん(当時37歳)。蒔田さんは9月16日いつも通り出勤し、その日の夕方職場を出た後行方不明となっていた。
通勤の車は焼津市内の勤務先の駐車場に置いたままとなっており、鍵もかかっていた。その車の鍵は、遺体とともに茶畑の土中から発見されている。

捜査本部では、蒔田さんの妻が捜索願を出した当初「夫は仕事上のことで悩んでいたようだ」と話していたことから、仕事上のトラブルを視野に勤務先などを聞き込みしたが、勤務先の上司らは「勤務態度も真面目で、他の職員やパートの労務管理を任されていた。トラブルなど聞いたことがない」と困惑していたという。

家族間にも一切トラブルはなかった。
蒔田さんは妻と二人の男の子、義母と藤枝市内の一戸建てで生活していたが、近所の人らは「子煩悩を絵に描いたような人」と口を揃え、義母や妻との関係もうまくいっており、家族が関係するトラブルはあり得ないと話していた。
夫の帰りを心待ちにしていた妻と幼い子供らは、遺体で発見されたという知らせに泣き崩れた。蒔田さんがいなくなった後、近所の人らに詳細は話していなかったというが、義母の落ち込んだ姿を気にしていた人らもいた。

警察でも、蒔田さんの所持品の中で現金がそのまま見つかっていたことなどから強盗などの可能性は低く、やはり蒔田さんには家族も知らないトラブルがあったのでは、という見方をしていた。
というのも、上司らが仕事上のトラブルなどあり得ないと話す一方で、蒔田さんの子供が所属する野球チームの父兄らには、蒔田さん自身が「会社辞めたい」と話していたからだ。
もちろんこれは冗談めかして言ったこと、と思われたが、それ以外にも蒔田さんが事件直前、「自分がいなくなっても部署は回るかなぁ」と話していたり、切迫した状況になっている、という話をしていたと言うものもあった。

ただ蒔田さんが自殺した、というのであれば辻褄も合うが、蒔田さんは明らかに他殺だった。
身の危険を感じるほどのトラブルがあったのだろうか?
警察は有力な手掛かり持つかめていなかった。
捜査関係者らは、
「蒔田さんは交友関係もさほど広くなく、ましてや女性関係などのトラブルも出てこない。周囲からも真面目で温厚という印象でしかみられていない生活ぶりと、殺人・死体遺棄という現実のギャップが大き過ぎて…」
と困惑したまま時間は過ぎていった。

バラバラにされた女

蒔田さん殺害の有力な情報が掴めないまま1年が過ぎた平成17年9月16日、静岡県由比町の由比川岸沿いの道路から5mほど下で、布に包まれた人間の手足が発見された。

管轄の蒲原署の調べでは、見つかったのは人間の右腕と両足で、いずれも鋭い刃物で切断されていた。
右腕は肘先から指先まで、両足は膝下から爪先までの部分だったというが、腐敗が激しくこの時点で性別は判明していなかったが、死後少なくとも2週間以上と見られていた。

浜松医大で遺体の状況を詳しく調べてみたものの、遺体は女性で血液型はO型、身長約155センチから165センチ、年齢は骨密度などから比較的若い15歳から30歳、足の大きさが21センチと、こんなの当てはまるのは一体何人いるんだよという、まったく絞り込めない情報しか得られなかった。
残る遺体の部位も、事件発覚から1週間過ぎても見つかっておらず、捜査員500名のほか、地元猟友会の協力を得て残りの部位の発見に全力を注いでいた。

そして、9月27日。
捜索願いが出されていたうち、9月18日に捜索願いの出ていた主婦の血液型と一致、その後提供された指紋と遺体の指紋が一致したことから、遺体は焼津市在住の主婦、滝しのぶさん(当時36歳)と判明。
警察がしのぶさんの夫に事情を聞いたところ、この夫がしのぶさんの遺体を捨てたと供述したことから、死体遺棄の疑いで逮捕した。

逮捕されたのはしのぶさんの夫で団体職員の滝修(当時36歳)。
調べによれば修は9月18日にしのぶさんの捜索願いを出していたという。
しかし、実際にはしのぶさんを殺害しバラバラにして捨てていたのである。

修は取調べに対して殺害も大筋で認めており、捜査本部では遺体の残りの部位の発見に全力を挙げた。
そして、修の供述により由比町の現場から2キロ北の富士川町南松野の山中で頭部を、島田市神尾の雑木林で胴体と左腕を、焼津漁港の海中から遺体切断に使用したとみられる電動ノコギリとともに、しのぶさんの携帯電話も発見された。

しのぶさんの遺体が包まれていた新聞紙の日付から、8月16日以降に殺害されたとみられたが、9月2日にしのぶさんが自宅ベランダにいるのを見た人がいたこと、そしてその後の修の供述から、しのぶさんは9月9日に殺害されたことがわかった。
修はしのぶさん殺害後、自宅の浴室で電動ノコギリを用いてしのぶさんを解体し、それぞれの場所に捨てたのだ。

動機は、しのぶさんに自身の不倫が発覚し、離婚を迫られたことで絶望したと話していたが、実際にはこの動機は非常に不可解なものだった。

というのも、この不倫相手の女性は修にとって、悪くいう奴は殺してでも守りたいというほどの、異常なほどの愛情を示していた相手だったからだ。

【有料部分 目次】

囁かれる「茶畑の遺体」
コープしずおか
一転、自白
やつあたり
他人より、自分
絶対、嘘。
死刑判決
みっともない執着する男