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平成20年2月1日、福岡拘置所において死刑が執行された。
男は平成14年に鹿児島県で実兄の妻、その娘と息子を襲って死傷させた罪で、平成16年に鹿児島地裁で死刑判決を受けていた。
その後いったんは控訴したが、その二か月後に控訴を取り下げ、刑が確定していた。
取り下げの理由は、記されていなかったという。
確定から4年、人間失格と言われた男は、犯行の動機や詳細について多くを語らないまま、永遠の贖罪の旅に出た。
事件
平成14年8月16日、夏休みのこの日、サトウキビ畑の広がる鹿児島県徳之島のとある民家に、突然少年が駆け込んできた。
「電話して!電話!」
そう叫んだ少年は血まみれで、その場に倒れ込んだ。
驚いた家人が少年を介抱しつつ、まずその少年の父親に連絡した。少年はこの家の近所で暮らしていて、両親らとも顔なじみだった。
その頃、職場にいた少年の父親は電話で息子のケガを知らされた。何事かと、要領を得ない父親に対し、電話をかけてきた近所の人がこう告げた。
「弟さんにやられたと言ってる……家族みんなが刺されたみたい」
事情が呑み込めないまま、父親は110番通報、駆け付けた警察官らが見たのは、自宅で血まみれで倒れている母と娘の姿だった。
病院へ救急搬送されたが、母親も10代の娘も、すでに死亡。同時に、助けを求めた少年はこの家の次男(当時13歳)で、こちらも重体であった。
死亡したのは、鹿児島県大島郡伊仙町の保険外交員・名古和美さん(当時40歳)、その娘で徳之島高校3年の千尋さん(当時17歳)。
和美さんは左胸を刃物で刺されており、その場でほぼ即死状態だった。千尋さんも、刃物による複数の傷があり、その数は10数か所にのぼった。二人の死因は失血死。
重体の次男の傷も、生きているのが不思議なほど深かった。
傷は左胸一ヶ所だったが、大動脈切創、膵断裂、肝・胃切創、外傷性仮性大動脈瘤、外傷性仮性膵嚢胞、そして出血性ショックと重篤な状態だった。
ここまでの深手を負いながらも、次男は必死で100m走り、近所の家に助けを求めたのだ。
次男の証言で、家族を殺傷した人物は特定されていた。
そして、同じ日の11時40分ころ、一人の男が凶器の刺身包丁をたずさえ警察署に出頭してきた。
「自分がやりました」
鹿児島県警徳之島署は、男を殺人未遂の容疑で緊急逮捕。その後、殺人と銃刀法違反で再逮捕となった。
男は、名古圭志(当時32歳)。
殺害された和美さんの夫の、実弟だった。
【有料部分目次】
動機
生い立ち
憤怒
お前の父さんを恨め
最後通牒
報復
死刑判決
回避性人格障害
人間失格