男を無期懲役囚に変えた妄想と悪意~日立・仲人一家殺害放火事件②~

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被害妄想

憲司にはA子さんとのこと以外にも悩みがあった。
近頃、どうも電話をしている最中に「雑音」が入るのだ。最初は気にしていなかったものの、気になり始めると頭から離れなくなった。
思いかえすとおかしなことはかなり前からあった。結婚してすぐの頃、防錆管理士や危険物取扱者の資格者証が家からなくなったことがあった。板金工場を営んでいた時も、スプレーガンがなぜかいつも無くなっていた。
また、送風装置を作った際にも、その装置がうまく働かず仕事が中断されることが何度もあった。
それだけではない、町内会の旅行の幹事を請け負ったとき、不参加になった人に旅行代金を返金したにもかかわらず、返してもらっていないと言われたこともあった。憲司はこの時、不本意ながらも自腹で穴埋めをした。
それ以外にも、いつも行くプールの駐車場で駐車をめぐってトラブルになったこと、警備会社の食堂で食事をすると腹痛を起こしたこと、あぁそういえば、板金の仕事に使用していた「つなぎ」の同じ個所にいつも穴が開いていた。

憲司はこれらの事象のすべてを、「何者かによる悪意ある仕業」であると思うようになっていた。
そしてそれは、すべてA子さんと結婚した後で起こっていること、しかも、今橋さんから入会を誘われたあの宗教団体に入るのを拒否した後で起こっていることから、憲司の頭の中には宗教団体による組織的な「嫌がらせ」という構図が出来上がっていた。
そうだ、なにもかも、今橋さん夫婦が「仕組んだ」ことに違いない。言いなりにならなかった自分への嫌がらせを組織的にあの宗教団体がやらせているのだ、そう考えればすべてつじつまが合うではないか…
憲司の頭の中ではそれは抗いようのない事実となっていた。

決行の夜

憲司は自分の人生にすでに見切りをつけていた。
貯蓄もほとんど使い果たし、仕事もなく、体も思うようにならない。大切な子供たちに事由に会うことすらできない。
実は平成10年の秋、ヒッチハイクで茨城県内へ出向いた憲司は、そこで自動車を盗み逮捕されてしまう。
憲司は自殺する意思を固め、母や元妻であるA子さんらに宛てた遺書のようなものも準備していた。
そこには、自分が死ぬのは子供たちをあの宗教団体から遠ざけるためなのだから、それだけはしないでくれ、という趣旨のことを記した。
それと同時に、今橋さんにさえ関わらなければ、A子さんと結婚しなければ、憲司は今の自分の境遇もすべて含めて今橋さん夫婦の責任であると思い込むことで、なんとか自分を保っていた。

そして、自分一人が死んでも何も変わらない、A子さんを道連れにしてしまうと子供たちが不憫であるから、いっそ諸悪の根源である今橋さん方を巻き込んで騒ぎを大きくすれば、世間の目があの宗教団体に向くのではないか、とも考えるようになった。

遺書を用意して一か月ほどが経過した平成12年2月29日の深夜。
A子さん方の様子をうかがいに行った帰り、大型トラックにクラクションを鳴らされた上パッシングされた。
憲司はそれもあの宗教団体の仕業だと思い込んだ。

先の述べた通り、ガソリン入りのペットボトルをおよそ15リットル分持ち出し、そのまま今橋さん宅に向かった。
勝手口をバールでこじ開けて室内に入り、今橋さん夫婦の寝室を探していると、二組の布団が敷かれた部屋を見つけた。
そこが夫妻の寝室だと思った憲司は、人の形に盛り上がった布団を確認して布団にガソリンをかけた。
躊躇することなくライターで火を放つと、それに気づいた二人が起きだしてきた。
その部屋で寝ていたのは今橋さんの妻・とし子さんと13歳の孫で、憲司はとし子さんの背後からさらにガソリンをかけた。
既に火の手が回っていた部屋の焔がそのままとし子さんの体に引火、瞬く間にとし子さんは火に包まれてしまった。

さらに、茶の間へ移動した憲司のもとに、騒ぎに気付いて起きだしてきた娘婿のCさんがやってきた。そこでも憲司は、パニックのCさんの体にガソリンをかけ、室内の火を引火させた。
続いて勝手口で鉢合わせた今橋さんの娘・Bさんに対して、真正面からガソリンをかけた。
このようにして憲司はとし子さんを焼死させ、BさんとCさん、そして孫の一人に大やけどを負わせたうえ、今橋さん方を全焼させた。

裁判

裁判では憲司の精神状態についても審理された。
憲司は裁判が始まっても一貫して「宗教団体による嫌がらせ」を主張、さらにはとし子さんが病院で死亡したことまでも、「宗教団体の指示で医師が殺害した」という荒唐無稽な主張をした。
そういった言動もあり、憲司は「パラノイア(妄想性障害)」であり、それによって犯行前後は心神耗弱の状態にあったと弁護側は主張した。

第11回公判調書においては、医師の鑑定書が提出された。
それによれば、憲司は幼いころから父親の影響でA子さんが信仰する宗教に対して拒否感を持っていたところ、A子さんとの結婚によって自らその宗教にかかわらざるを得ないような状態が作り出され、加えて自身の境遇や、人生においての不愉快な出来事がすべてその宗教と関係しているという考えに支配されているものであって、程度としては中程度の重さであると考えられるものの、離婚を子供らのために思いとどまったり、元来の憲司の性格(物事を機械的にとらえる、被害感情を持続しがちな性格)によるところも大きく、本人の全生活を支配するほどの重症とはいえない、とした。

また、通常妄想障害が重くなって事理の弁識すら困難になると、きっかけの出来事があると爆発してしまい、唐突な行動に出るケースが多いにもかかわらず、憲司の場合はいわゆる「ため」の期間があること、子供達のことを考えて手続きなどを踏んでいることなどが見られ、その点でも心神耗弱に値するような妄想障害であったとは言えない、とされた。

裁判所はこれを採用し、憲司の心神耗弱を退けた。

憲司が一番訴えたかった「宗教団体による嫌がらせ」についても、そもそも今橋さんが繰り返し勧誘したのは結婚後の1年程度であり、その後は特に入会を促すような話はしていなかった。
A子さんの行動には、確かに宗教に起因するものがありはしたが、かといってそれを憲司にも強要するようなことはなかった。
むしろ、自宅の洋服ダンスに曼荼羅をかけても良いかとわざわざ憲司の許可を得ようとしたり、憲司があまりにも怒るためにA子さん自身も信仰しないと一旦は口にするなど、決して憲司に入会させるために今橋さんやA子さんが動いたという印象もない。
憲司は宗教団体から命を狙われているとまで思い込んでいたと供述したが、当時勤務していた警備会社の社員食堂で腹痛を起こしたことや、夜中に治療中の歯が痛むといったことをその理由としており、到底理解できるものではなかった。

なにより、恨みがあったのは今橋さん本人であるはずで、妻のとし子さんにいたっては憲司に勧誘すらしていない。ましてや、娘夫婦やその子供たちは全くと言っていいほど憲司とはかかわりがなかった。
にもかかわらず、家人が寝静まった頃を見計らって、大きな損害が確実に出る放火という手段を用いて殺害しようとするなど、どう考えても微塵の同情も出来るはずがなかった。
しかし憲司は、そうすることが世間の注目を集め、結果として自分には同情が集まると考えていたのだ。

実際には、A子さんとの結婚生活の破綻は、自らの疑り深い性格によるもので、正直宗教全く関係ないやんと言わざるを得ない。
さらにはその疑いから暴力行為にまで及んでいる以上、A子さんが離れていったのは憲司の行動によるものでしかなかった。

判決は死刑。
自殺を図り憲司自身も重症のやけどを負ったことや、全てを売り払って1500万円を今橋さんに提供したことが情状酌量に値するかも慎重に審議されたが、そもそも慰謝料として支払った1500万円も、憲司が自ら行ったのではなく、憲司の兄がしたことであること、結果として4人は助かったとはいえ、子供達も含めて目でわかる傷が残っていること、恨まれるいわれもないとし子さんが殺害されたこと、そしていまだに憲司が妄想の中で生きていることなどを踏まえると、矯正可能とは言えないとされた。
その後の控訴審で、死刑相当であるとしながらも心神耗弱が認められ無期懲役。そのまま確定した。

信仰の自由

この事件は、被害妄想に陥った男が逆恨みのはてに仲人一家を惨殺しようと企て、結果一人が死亡、4人が生涯に残る傷を負わされ、一家は住む家と家族の思い出を失った事件だ。

しかし、憲司にしてみればそうではない。
真面目に、こつこつと生きてきたのが、あの見合いをしたことでじわりじわりと得体のしれないものに侵食され、きがつくと足元だけを残してすべてが崩れ去っていたわけだ。
もちろんこれは憲司の被害妄想でしかないし、憲司自身もそれらのことに宗教団体がかかわっているという証拠はないと話している。

私自身は特に強く信仰心を抱いているわけでもなく、結婚式は神前だったしクリスマスは一年で一番好きだし、初詣にもいくし短大はカトリック系だったので食前のお祈りも出来る。たまにやってくるエホバのおばさんとも友達だし、選挙のたびに誰だよみたいな同級生からも連絡があったりする。
けれど実家は曹洞宗だし葬式はお寺でするし、お墓も仏式だ。
この混沌とした宗教観が当たり前であるにもかかわらず、特定の宗教や新興宗教に対しては嫌悪の感情を抱くこともある。
憲司はとりわけその意識が強かった。そこへ、結婚した後でその忌み嫌う宗教を妻が信仰していたことを知ったら。
今橋さんは確かに無理強いもしていないし、自分たちが信仰する宗教の内容を教えたりするにとどまっている。

しかしおそらく憲司が許せなかったのはそこではない。断言するが、今橋さんは勧誘目的で妻の姪であるA子との見合いを持ってきた、これは間違いない。
その宗教団体では、お題目を唱えることよりも新しい会員を捕まえることの方に重きが置かれていたのも事実で、となれば同じ宗教に入っている人同士をくっつけるより、会員でない人間とA子さんを引き合わせた方が、新規会員の獲得につながる。
しかも、結婚となれば宗教は切っても切れない話であり、それを言わなかったというのは私からしてみれば「悪意」と思えてしまう。
憲司と同じ立場に立った時、絶対に同じような妄想を抱かないと言えるだろうか。
歯が痛むことまで関連付けるとは思えないにしても、不可思議なことが起きてしまうと、ふと、なにかに理由を求めてしまうかもしれない。
さすがに殺そうとは思わんにしても、「騙されて結婚させられた」という部分だけは拭いきれないかもしれない。

憲司は真面目で礼儀正しい男だった。決して、最初から向こう側の人間ではなかった。昭和の時代、誰もが思い描く「中流の普通の家庭」を作り、人生をより良いものにしようと仕事も計画的にやってきた人間だった。
それがどうしてこうなったのか。
裁判ではもともとの性格にも問題があったというが、言い方の問題で、被害感情を持続させがちというのは、言い換えれば何かあっても強く出られず自分の中に溜め込んでしまうともいえるし、機械的に物事をとらえるというのも、曖昧なことが嫌いで白黒はっきりさせたいという性格ともいえる。
そんな人は世の中に山ほどいるし、はたして特筆すべき稀有な性格と言えるんだろうか。しかし、もしも結婚の際にA子さんの宗教の話を憲司が知り得ていたら、もしかしたら違う人生のレールに乗っていたかもしれないと考えてしまう。
少なくとも先に知っていれば、たとえ結婚したとしても「騙された」とは思わないだろうから。

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参考文献
判決文

何もかもを間違えた一家にとどめを刺した8000万円~豊田市・家族3人殺害放火事件~

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平成27年5月26日未明

愛知県豊田市太田町の民家に、男が駆け込んできた。
家主を起こした男は、「家が燃えている、自分は用事があるから119番通報を頼む」とだけ告げて、どこかへと去っていった。
慌てた家主が外に出ると、先ほど訪ねてきた男の家が確かに燃えていた。

その頃、男は岡崎市岩津町へと車を走らせていた。
岩津天満宮の駐車場に車を停めると、そこから300メートルほど離れた場所にある「はんこ屋」を訪ねていた。

「お前のせいで家族がめちゃくちゃだ、妻が病気になったのはお前のせいだ!殺してやる」

喚き散らして逆上する男に、はんこ屋の主人とその妻はただただなだめるのに必死であった。
男は通報で駆け付けた豊田署の警察官に逮捕された。

男の名は松井芳治(当時65歳)。芳治は、はんこ屋に怒鳴り込む前、妻とその母、そして長女の3人を殺害し、自宅に火を放っていた。

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恋人の頭を踏みつけた男の心の闇~岐阜・同級生男女殺傷事件~

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2007年4月28日

白々と夜が明け始めた午前5時20分。
通行人の男性が、路上に倒れている女性を発見して通報した。女性は頭部をひどく損傷しており、車にひかれたのかとも思われたが、そうではなかった。
当初、女性の身元は分からなかったが、のちの調べで近くのアパートに住む衣料品店店員A子さん(当時23歳)と判明。
捜査員が彼女の自宅を訪れると、そこには会社員の武井亮さん(当時23歳)があおむけに倒れ、すでに絶命していた。
A子さんは頭部を鈍器のようなもので殴られており、意識不明の重体。
警察は、A子さんの部屋に亡くなった男性とA子さん以外の人物がいたとみて、その後、部屋にあった持ち物から一人の男を特定、同日夜にはその男の身柄を各務原市で確保した。

男は小野正人(当時23歳)といい、亡くなった男性とA子さんとは中学の同級生であった。

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恋人の頭を踏みつけた男の心の闇~岐阜・同級生男女殺傷事件②~

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過去の事件

小野は、15歳であった平成11年3月に、障害や恐喝など複数の罪で少年院へ送致されていた。
このころ、小野は自分の体臭が過度に気になる「自己臭恐怖症」という症状に悩まされていたという。この症状自体はとりわけ珍しいということではなく、普通に社会生活を送っていた人でも、ある出来事をきっかけに自己臭恐怖症に陥ることはある。
周囲の人が何気なく口や鼻に手をやっただけで、自分が臭いからではないか、と思い込んでしまい、その思いから逃れられなくなるというものだ。
思春期には少なからず気にしてしまうこともあるし、根気よく面接療法、認知療法を行うことで症状の改善を図る。

小野の場合、仮退院の時期が近付いたことで社会に対応できるかどうか不安が募り、自己臭恐怖症のほかに不眠状態にも陥っていた。
そのため、平成12年の4月には医療少年院へ移された。その後も症状は改善されず、さらには「死ね」といった自分を批判するような幻聴まで聞こえるようになってしまい、医療措置がとられた。
8月になって、小野は別の病院を受診してそこの開放病棟に任意入院したが、1か月もしないうちに職員の説明に応じず暴れるなどしたため閉鎖病棟へ移された。
そして事件は起こった。
9月21日、清掃していた別の入院患者が、ふざけて小野の尻をほうきの柄で軽く叩いた。それに小野は激怒、その入院患者を殴り、倒れこんだ入院患者の顔を足で数回踏みつけた。入院患者は頭部に怪我をしたことに絡んで肺炎を併発し、そのまま死亡した。

さらに、翌13年の6月、看護助手から持ち物についての注意を受けたことに激高し、前回同様その看護助手の頭部を10回にわたって踏みつけ、全治6か月の重傷を負わせた。

結局、小野は看護助手への暴行で逮捕され、6月2日には緊急措置入院がとられた。そこから半年にわたって観護措置を経、その後平成16年1月まで、医療少年院で過ごした。
この時小野は二十歳で、医療少年院を出た直後に成人式に出席し、武井さんと再会していたのだ。
医療少年院を出た翌日から平成18年11月27日まで、複数の病院に通院していた。

小野はこの時点でなんらかの病名がついていたのかもしれないが、裁判記録では明らかになっていない。しかし、薬の服用はあったとみられる。
A子さんと交際を始めた18年の末には、病院への通院はしていなかった。




非社会性パーソナリティ障害

事件後、当然小野には精神鑑定がなされた。
武井さんとA子さんへの常軌を逸した行為は、言葉を選ばずに言えば常人の行動とは思えないからだ。
裁判所は、平成20年4月、第一回公判時に鑑定を行った医師に鑑定人尋問を行った。
鑑定の目的は、①犯行時、および現在の小野の精神状態 ②犯行時、小野が自身の行動について善悪の判断ができていたか、その判断に基づいた行動が出来る能力を有していたか否か、有していた場合はその程度 についてであった。

鑑定結果としては、
①小野は統合失調症ではない
②自己臭恐怖症ではあるものの、それほど強固なものではない
③小野は非社会性パーソナリティ障害の判断基準を満たす
④犯行後は、親しい友人らを殺害したという非日常的な行為に対する著しい精神的興奮に起因する心因性もうろう状態を一時呈したと考えられる
ということが記されている。
総合すると、小野は心神耗弱状態ではなかったし、犯行当時に小野を錯乱させるような幻聴や幻覚、妄想はなかった、とした。
その一方で、小野は非社会性パーソナリティ障害であり、その障害は小野の責任能力に影響はしない、と鑑定した。

鑑定を行った医師は、鑑定医として20年以上のキャリアを持ち、精神鑑定については30件以上の経験を持つベテランの鑑定医であり、専門知識に文句のつけようがなかった。
過去に統合失調症と判断された点についても、そのことを念頭に置いたうえで鑑定をしており、その上で「統合失調症ではなかった」と判断している。
むしろ、小野本人の生来の人格が関係しているとした。したがって、責任能力には問題はない、と結んでいる。




この、非社会性パーソナリティ障害とはどういったものなのだろうか。
特徴としては、社会規範を遵守する意識に欠け、他人を傷つけたり他人の権利や財産を侵害したり奪ったりしても罪悪感を持つことがないとされる。
少なくとも15歳より前にそういった症状が出ることが要件であり、幼いころから癇癪を起こしたり、他人を過度に傷つけて欲求を通すといったこともある。
わかりやすい具体例で言うと、社会のルールを守る気がそもそもないため、交通違反を平気で繰り返す(暴走族などとは違う)、仕事が全く続かない、それによって経済的に困窮すれば、窃盗を繰り返す、家族や恋人の財布から盗むといった行動を平気でやる。
また、過度に攻撃的な面を持ち合わせているため、単なる言い争いで止まらず、突然殴りかかったり、自分より弱い相手が対象だと致命傷を与えるまでおさまらないということもある。
彼らの辞書に責任という文字はなく、嘘をついているという意識すらない。とにかく、自分の欲求を満たすことが最優先である。
鑑定では、診断基準:ICD-10が用いられ、以下の基準に該当しているかどうかで判断された。
a:他人の感情への冷淡な無関心。
b:社会的規範、規則、責務への著しい持続的な無責任と無視の態度。
c:人間関係を築くことに困難はないにもかかわらず、持続的な人間関係を維持できないこと。
d:フラストレーションに対する耐性が非常に低いこと。および暴力を含む攻撃性の発散に対する閾値が低いこと。
e:罪悪感を感じることができないこと、あるいは経験、特に刑罰から学ぶことができないこと。
f:他人を非難する傾向、あるいは社会と衝突を引き起こす行動をもっともらしく合理化したりする傾向が著しいこと。持続的な易刺激性も随伴症状として存在することがある。小児期および思春期に後遺障害が存在すれば、いつも存在するわけではないが、この診断をよりいっそう確実にする。(出典 医療法人社団ハートクリニック)

小野はこの診断基準に合致していると診断された。




「俺が守ってやる」

小野はそもそもなぜ、武井さんとA子さんを殺害しようとしたのだろうか。
自身が三重に引っ越すことで、A子さんと物理的に会えなくなる可能性が高いことを悲観し、当初は無理心中を図るつもりだったかのような供述もしているが、実際にはA子さんよりも武井さんに対する攻撃の方が執拗である。もちろん、武井さんがA子さん宅へやってきたのは想定外であったはずで、やはり狙いはA子さんだったのだろう。

武井さんを殺害した動機としては、A子さんからのSOSを受けて駆け付けた武井さんが、A子さんに対し、「俺が守ってやる」と口走ったことがきっかけだと供述しているが、確かにこの発言は引っかかるものがある。
A子さんと交際していたのは小野であり、武井さんではない。A子さんがけがをさせられて小野が家を追い出された後も、決して小野の一方的で強引な誘いのもとにA子さんが会っていたわけでもない。
ましてや、武井さんとA子さんの間に男女の関係があったということもない。
にもかかわらず、武井さんはA子さんに対し、「俺が守ってやる」と言ったのだ。(注:ただしこの公判供述はのちに信用性がないとされた)
推測でしかないが、武井さんが言ったことが事実ならば、おそらく以前からA子さんは武井さんに相談していたのではないか。それをうけて、武井さんは「わざと」三重県のパチンコ店を斡旋したのではないか。そうすれば、A子さんと小野の接点は物理的に遠くなり、小野の執着心も薄れるのでは、と考えたのではないだろうか。
「俺が守ってやる」その言葉に深い意味などなかったのかもしれない。面倒見の良かった武井さんの事だから、解決してやる、今後小野がまた近づいてきたら俺が何とかしてやる、そういった意味合いであったと思われる。
しかし、A子さんに並々ならぬ執着心を抱いていた小野にしてみれば、激高するに値する言葉であったのもわかる。
そこでもう一つ疑問がある。武井さんとA子さんは、小野の過去を知らなかったのだろうか。



なぜ、小野と関わったか

武井さんと再会したのは平成16年の成人式である。先にも述べたが、この直前まで小野は医療少年院にいた。直接的な理由は看護助手への暴行であるが、その前にも同じやり方で入院患者を暴行し、結果死なせている。
これを武井さんらは知らなかったのだろうか。
小学校からの同級生と言えば、岐阜クラスの地方都市ならある程度の情報は耳に入るのではないか。ましてや、少年院送致などの事態ともなれば、余計だ。
また、A子さんにしてみても、なぜ小野と交際することになったのか。2度の暴行については少年院や病院内での話であるため、また、当初小野は統合失調症と診断されていたため、その点で情報が全くなかったとも考えられる。
それでも、非社会性パーソナリティ障害である小野の言動は、周囲の人間には耐えがたいものであったとも思うのだが、若い武井さんらにその判断は出来なかったのだろう。
武井さんが小野にことさら目をかけた本心は、本当のところはわからない。しかし、自宅に住まわすということを見ると、やはり純粋な「人助け」であったようにも思える。
小野は、幼いころ父親の暴力を受けて育ったという。そのご両親が離婚すると、母親が女手一つで小野を育てた。小学校の同級生だった武井さんにしてみれば、小野の不遇な幼少時代を知っていたから、余計に捨て置けなかったのかもしれない。
それを、小野はこれ以上ないというほどの「恩を仇で返す」という手段に出た。
A子さんは搬送時意識不明で、その後の治療は受けたものの、植物状態に陥る可能性もあった。奇跡的に意識が回復し、A子さんの懸命のリハビリによって回復はしてきたが、それでも右半身の運動機能障害、言語障害、高次脳機能障害という後遺症が残っている。
それ以外にも、顔面を含め激しく踏みつけられたことでの怪我の痕や、武井さんに助けを求めたことで結果、武井さんが殺害されてしまったという精神的なダメージは計り知れない。

武井さんの遺族は、裁判も傍聴し、小野に対し極刑を強く望んだ。

平成21年7月15日。岐阜地方裁判所は、小野に無期懲役を言い渡した。




人ではない、なにか

小野は非社会性パーソナリティ障害であるため、反省したり、経験から学んだりということが全くできない。人の気持ちを考えるなど、出来るはずもなかった。
小野は遺族に対し謝罪文すら書かず、反省の弁も裁判の終盤でようやく促されるままに述べた程度で、おそらく本人の中では「仕方がなかった」のであろう。
また、小野は裁判の途中であった平成19年に、弁護士との面会中に法務事務官を殴った。バカという言葉では言い足りないほど、いや、あえて言いたい、もはや人ではない。
裁判長も判決文の中で、過去に2度も少年院送致があり、矯正、更生の機会が与えられていたにもかかわらず、まったくその機会を生かそうとしていない、と断罪した。さらに、自身の事を気にかけ、なにかと世話を焼いてくれた武井さんを殺害し、交際相手であったA子さんの頭を踏みつけるという野蛮極まりない暴力を振るった。
人は、特に日本人は、なにか暴力的な衝動が起こっても、手が出るのが通常だ。足で蹴る、ましてや踏みつけるという行為はなかなかやろうと思っても出来るものではないのだ。
しかし、小野は過去の犯罪も含めすべて、「足で踏みつける」という行動に出ている。
テレフォン人生相談でおなじみの幼児教育研究家・大原敬子先生によれば、「足蹴にする」というのはその人を見下している事の表れだという。
小野は、他人に対する尊厳などは持ち合わせていないから、気に入らないと踏みつけるという癖があったのだろう。
まるで、子どもが思い通りにならずに地団駄を踏むように、どうしてわかってくれないの、どうして言う通りにしないの、どうしてどうして・・・

最近ではこのような障害を持つ人を温かく見守ろう、理解しようという動きが盛んである。もちろん、出来ることならそれが一番良い。
しかし、うまく機能しなかった時の代償がこれでは、「そうでない」人々はどうすればよいのか。
もしも過去の事件での対応が違っていたら、武井さんもA子さんも被害に遭わずに済んだのではないか。
人権、尊厳、大切なことだ。しかしその観念を持ち合わせない相手にも、それは保証しなければならないのだろうか?
人の命が紙きれのように吹き飛んだとしても。

 


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参考文献 判決文

🔓親から手渡された地獄への片道切符~小山市・兄弟投げ落とし殺害事件~

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2004年9月11日 深夜

栃木県小山市を流れる「思川」にかかる橋の上に、一台の車が停車した。
男は助手席で眠りこける男児の腕と足をおもむろに引っ張ると、そのまま車外へ引きずり出した。
寝ぼけ眼の男児は、抵抗するもうまくいかない。
男はそのまま、橋の転落防止用のワイヤーの隙間から、躊躇することなく男児を5メートル下の川へ投げ落とした。
「バチャーン」
すぐに助手席に回り込み、同じく助手席で眠っていたもう一人の男児を、先ほどと同様に引きずり出したうえ、同じように川へと投げ棄てた。

後部座席にいた少女は、男児らの泣き声で目を覚ましていた。
言い知れぬ不安から、少女は男児の行方を男に聞いた。
「お父さん、あの子たちは?」
ハッとしたように娘を見た男は、「置いてきちゃった」と呟いた。

事件発覚

そのころ、小山市神鳥谷在住の男性の子どもが行方不明になったと騒ぎになっていた。
男性は、知人宅に子供二人を連れて居候しており、その知人男性がどうやら連れ出したようであったが、家に戻っていないとのことだった。
知人の名は、下山明宏(当時39歳)。小学6年生の娘と、小学1年生の息子がいる男だった。
男性は、2004年の6月ころから下山のアパートに転がり込むような形で居候していたという。子どもは、4歳の兄・一斗ちゃんと、2歳の弟・隼人ちゃんであった。
その日、男性は下山宅のアパートで昼寝をしており、子どもたちは下山の子供らとともに近所の教会の流しそうめんの催しに参加していたはずだった。
何度も下山に電話をしたが、下山は「一緒にいない」というばかりで、ようとして子供らの行方はつかめなかった。

9月12日夜、警察は未成年者誘拐の容疑で下山を逮捕したが、下山は「兄弟は公園に置いてきた」などと嘯くばかりで、幼い兄弟の行方は全く分からなかった。

13日になって、ようやく「思川の真ん中あたりの流れが速い場所で、投げ落とした」と自供。
翌14日、思川の中州付近でうつぶせになっている隼人ちゃんが、さらに16日の午前には、松原大橋から下流に6キロの葦が茂る場所で、兄の一斗ちゃんが発見された。
発見が遅れた一斗ちゃんは、両目と親指がすでになかった。

下山は殺人の罪に切り替えられ、さらに覚せい剤反応も出ていた。
幼い子供を二人、生きたまま橋の上から投げ棄てて殺害するという残虐極まりない事件は、世間の注目をいやでも集めた。

しかし、事件が注目されたのは、事件そのものだけではなかった。
世間が注目したのは、幼い兄弟を育てていたその父親の言動であった。
隼人ちゃんが発見された直後、父親は突如記者会見を開いた。顔も隠さず、テレビカメラの前でいまだ発見されていない兄・一斗ちゃんが既に死亡しているかのような言い方をし、さらには、生放送で下山の12歳の娘の実名を出した。

3LDKの決して広くはないアパートでの奇妙な6人暮らしは、当初から「何かあるのでは?」という憶測を呼んでいた。
そしてそれは、憶測のはるか上をいく展開を見せた。

下山のそれまで

下山は、栃木県小山市の裕福な家に生まれた。
小山市内でいくつも不動産を持っていた下山家は、財産を管理する会社まであった。
建設業、不動産業などバブル期にかけては相当な業績であったといい、下山は何不自由なく育てられた。
恵まれすぎた環境がもたらすのは、時に非行への道であるのは珍しくなく、下山も中学のころからやりたい放題であった。
たばこやシンナーは当たり前、無免許でバイクを乗り回し、高校へ進学したもののその態度が改まることはなかった。

高校を卒業後は、父が経営する建設会社へ就職し、1990年ころにはその会社の取締役となっている。
同時期、結婚もし子供も生まれたが、およそ1年で離婚。その後すぐに別の女性と交際を始め、1995年にその女性と再婚した。
女性も再婚で、連れ子もおり、下山との間にも1男1女が誕生してにぎやかな一家となった。夫婦仲は良いともっぱらの評判で、下山も子煩悩な面を見せていたという。
幸せな下山家であったが、2002年、下山が行っていた産業廃棄物関連の仕事で過ちを犯し、下山は懲役3年、執行猶予5年の判決を受ける。
いろいろとあったようで、下山はこれを境に転落の一途をたどることとなる。
生活が荒れ、夫婦仲は冷え切った。そして2003年には離婚するのだが、その際子どもをめぐって夫婦の間にはさらに深い溝ができたという。

下山との間の子供も含めてすべての子供を引き取っていた元妻の実家へ押しかけては、子どもを返せと怒鳴る下山の姿が何度も目撃された。
結果、下山に懐いていた下山の実子である娘Aちゃんと、その弟のBくんを下山は引き取った。

被害者の父のそれまで

一方、被害者となった幼い兄弟と父親は、どのような人生であったか。
父親の妹と下山が同級生ということもあって、ふたりは学生のころからの知り合い、悪友であった。下山はその父親のことを「あんちゃん」と呼び、慕っていたという。
私よりも10歳ほど世代が上のこの二人は、いわゆる先輩後輩の間柄であったが、その関係は今とは違って「絶対的に」先輩が立場が上、という時代だった。当然、この二人もまるで暴力団かのような上下関係に縛られ、年が上というだけで下山はその「あんちゃん」に頭が上がらなかった。

高校卒業後、父親は塗装工として比較的まじめな仕事ぶりだった。1度結婚に失敗はしたものの、その後再婚した妻は当時18歳と若く、その妻との間に被害者の兄弟を含め3人の男児をもうけている。
兄弟の兄にあたる長男には、わずかではあるが知的障害があった。そのため、続いて生まれた次男には、兄弟を引っ張っていけるようにという願いを込めて「一斗」と名付けた。
2年後に生まれた三男にも、「ハヤブサのように力強く生きてほしい」という思いで、「隼人」と名付けた。
一斗ちゃんと隼人ちゃんは、報道で顔を知っている人も多いと思うが、確かに目を引くほど愛らしい。二人とも父親によく似ていると私は感じたのだが、夫婦にとっても出かける先々で「かわいい!」と振り向かれるその兄弟が自慢であったようだ。

順風満帆に見えた一家の暮らしだったが、隼人ちゃんが生まれたころは次第に父親の仕事ぶりがそれまでと変わってきていた。
気分によって仕事を休んだりするため、一家の経済状況は思わしくなかった。ある日、若い妻は子供らを残したまま、突如家出する。

家では、幼い弟をベビーカーに乗せて「ママー!ママー!」と泣きながら母の姿を探す一斗ちゃんの姿が目撃された。弟思いであった一斗ちゃんは、母親を失った悲しみの中でも、弟の面倒をみていたのだ。いかん、もう泣ける。

2002年に離婚した父親は、小学2年生になっていた長男も含め、一斗ちゃん、隼人ちゃんら自身の子供をすべて引き取った。
手のかかる長男については実家で、一斗ちゃんと隼人ちゃんはその父親が育てることになっていたという。
しかし実際には、仕事で家を空ける父親ひとりで兄弟の面倒が見られるはずもなく、また、実家の母親も仕事をしながらであるため、一斗ちゃんと隼人ちゃんは父親、母親双方の親せきを「たらいまわし」にされた。

そして、2003年7月には、兄弟は児童養護施設へ入所せざるを得なくなった。

父親は、なんとか子どもたちを自分で育てたいという思いはあったようで、環境を変えてでも子供たちを早く施設から引き取りたかった。
ほどなくして元妻の兄のつてで、東京で仕事をすると決めた父親は、子どもたちを連れて行けるようにするため元妻に協力を仰いだ。二人が復縁するといえば、施設側も子供を引き渡すのではないか、と考えたのだ。
元妻にその意思はなかったが、父親は必死に説得して、二人で児童相談所に報告し、子どもたちを引き取ることに成功した。上京する際には、長男も同行させた。

しかし、「スカウトマン」だったというその仕事は簡単ではなく、また、あてがわれた寮は、一つ屋根の下に独身男性がほかに二人住んでおり、家族5人が狭い部屋で肩を寄せ合い暮らすのは無理があった。再び、元妻は子供を置いて地元の宇都宮市へ帰ってしまったのだ。
頼れる人もいない土地で、子供3人を男で一つで育てられるはずもなく、父親は早々に行き詰った。元妻家出をする直前、管轄の品川児童相談所に面談の約束をしてたが、夫婦の間で確認しあえていなかったのか親権者である父親はその面談に姿を見せなかった。

子どもたちを小山市の実家へ戻して世話を頼んだのち、2004年の6月までは東京で仕事をした父親だったが、うまくいくことはなく、経済的に逼迫したこともあり、小山市へ舞い戻ることになった。
実家では体調を崩した母親とその夫(母親の再婚相手)がおり、もともとその再婚相手と折り合いが良くなかった父親は、長男だけを実家に預け、一斗ちゃんと隼人ちゃんを連れてある場所を訪ねた。

一斗ちゃん兄弟が施設に入所している時期、ひょんなことから再会し、連絡を取っていた下山の実家だった。

【有料部分 目次】
息詰まる同居生活
暴力の連鎖
下山姉弟の逃げ場所と、うわさ
使いものにならない大人
壊れていた心
なぜ、その日だったか
その後

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