🔓守られなかった命~太子町・ストーカー殺人事件~

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平成111026日、埼玉県桶川市のJR桶川駅前で一人の若い女性が殺害された。
殺害されたのは、女子大学生の猪野詩織さん。犯人は元交際相手を中心とする男5人のグループだった。
加害者が元交際相手だったことや、被害者が若い女性でブランド物を複数所有していたことなどを警察が公表したことでワイドショーなどではなぜか詩織さんがあたかも奔放で加害者を弄んでいたかのような取り上げ方をされた挙句、被害者のみならず遺族までも貶めるような報道が相次いだ。

しかしその後、被害者らがなんども警察に相談していたにもかかわらず警察が真摯に向き合っていなかったこと、事件後の警察の隠蔽が発覚、さらには改ざんや隠蔽に加担した警察官らが起訴され有罪となるなど、警察の怠慢が大きくかかわっていると判明した。

遺族らは埼玉県警に対し捜査の怠慢が事件を起こし、詩織さんが死亡したとして国家賠償請求訴訟に踏み切る。
事件後、遺族に対して非を認める発言をしていた埼玉県警だったが、この裁判においては手のひらを返したような態度を取り始めた。
結果、最高裁まで争われたものの、司法の判断は
「怠慢は認定、しかし被害者が殺害される結果との因果関係は否定」
した。

判決は遺族にとって満足できないものではあったが、この事件をきっかけにその後ストーカー規制に関する法律が成立、また、同じ警察の捜査怠慢が問題視された栃木リンチ殺人での国家賠償請求では、その警察の捜査怠慢と被害者の死の因果関係が認定された。
この訴訟は、桶川ストーカー事件の被害者遺族の存在が大きく関係していたといい、桶川ストーカー事件の遺族もこの判決を評価している。

ストーカーに関する認識を大きく変え、警察の姿勢やマスコミの被害者叩きなど多くの問題を露呈させ、変えていった事件としてこの桶川ストーカー事件は広く知られているが、実はこの事件の数か月前、同じようなストーカー殺人事件が兵庫県で起きていた。

その事件は、もしも警察がしっかりと対応し事件化されていれば、同じケースだとして埼玉県警が被害者殺害より前に何らかの対処が出来ていた、せざるを得なかったのではないか、とすら思えるほどのものだった。
【有料部分 目次】
早朝の正面衝突
男の素性
神崎の事件
警察署逃げ込み事件
肋骨骨折事件
誓約書を勧めた警察官
コンビニ事件
「女でも紹介したったらどないや」
苦悩と憤り
由加子さんへの誹謗中傷
一部認容、一部棄却
無理心中か、否か
思い

🔓卑怯者~鈴鹿市他・少女連続殺傷事件~

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平成6年9月1日 

三重県上野署に、この日一人の男性が出頭してきた。
男性は、テレビのニュースでとある事件を見聞きし、2年前の出来事を思い出したのだ。

「犬の死体を池に沈めるのを手伝ったことがある……」

そのニュースとは、8月11日に拓殖町の竹谷池において、浮いていた黒いごみ袋の中から、手足のない女性の遺体が発見された、というものだった。
男性がこのことを警察に話そうと思ったのは、その発見された黒いごみ袋が、金網で巻かれていたという特殊な状態だったことが、自身が手伝って遺棄したものと全く同じ状態だったからだった。
【有料部分 目次】
竹谷池の遺体
被害者
犯人逮捕
連続暴行魔
出生の秘密と「におい」
協力者
妻の苦悩
死刑求刑と無期判決
どうしようもない衝動と人間性のかけら
叫び

隣人を叩き斬った老人の正義~世田谷・日本刀隣人殺害事件~

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平成24年10月10日

東京都世田谷区野沢1丁目。
世田谷区立旭小学校の北に位置する住宅街は騒然としていた。
上空には報道機関のヘリが旋回し、周辺の路地にはパトカーや救急車が待機していた。
周辺では警察官が「犯人は凶器を持っている可能性があります、外に出ないで」と大声を張り上げている。

午後1時40分、警視庁の特殊班が民家に突入、その後家の中から血まみれの男性が運び出された。

男性は搬送先の病院で死亡、しかし、死亡したのは男性だけはなかったし、この男性は被害者ではなかった。
それより2時間前の11時半ころ、その民家の前の路地で、女性が倒れていると通報が相次いでいた。
女性の首は、切断寸前だった。

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🔓ひとりで死ね、は、暴言か~道連れにしたがる人々~

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まえがき

人は人生に行き詰まり、また絶望したとき、ふと、自死に思いを巡らせる瞬間がある。それは、単に想像するだけのものから、実際に計画を立てたり、あるいは衝動的に自傷行為に及ぶもの、そして、計画的か衝動的かにかかわらず、結果として死亡してしまうものまで幅広い。

年間の自殺者は3万人を超え、10歳以下の子どもから80歳を超える年寄りまで自殺者のいない世代はない。
これらは社会問題とされ、その要因を社会に求める人々、家族間や学校に求める人など様々だが、いずれにせよ自死を選択しやり遂げた人からすれば、どれも「なんか違う、けどまぁいいか」程度のものだと思っている。

そういった自死を選択する人々の多くはひとりで旅立っていくわけだが、時に他人とともに旅立とうとする人々がいる。
同じ自殺の意思を持ち行う集団自殺、あるいは夫婦や恋人間に見られる完全合意の心中、さらには、無関係の他人を無差別に巻き込む通り魔的犯行まで、そのかたちも様々だ。

そういった、「誰かと死ぬ」「一人では死なない」という選択をした人々の事件をいくつかとりあげてみたい。

他人とともに死ぬということ

こう聞いて、まず思い浮かべるのはやはり心中事件だろう。個人的に、心中という言葉は使いたくなく、特に親が幼い子を道連れにするようなケースにおいては全部殺人だと思っている。
しかし一方で、完全なる合意のもとで行われる、それこそ「心中」と呼ぶ以外にないケースもあるだろう。病気を苦にした人が家族に殺害を依頼し、それに家族が応じたうえで自らも命を絶つというケースや、そこに全員の「死ぬ意思」がはっきりと見て取れるケースなどは心中に該当するのだろう。

病気を苦に、将来を悲観して、経済的な問題、男女関係の問題、理由は様々あろうが、家族以外の人間と、となるとその判断は特に慎重にしなければならない。

特に、男女関係におけるそれは、片方の身勝手な思い込みが介在していることが少なくない。大昔であれば、身分の違いから結婚を許されない二人が…などという話もあっただろうが、現代においてそんな身分はない。眞子さまだってこの状況でも結婚のお許しはもらえたわけで、一般庶民が許されざる関係に嘆いて心中、などというのはほとんどない。あるとすれば不倫関係か。であっても、数としてはそんなに多くないだろう。

家族間の場合は、よくある「あとに残される人間が不憫」という理由で全員連れていく、というものだが、それとて全員の承諾があったかどうかは本当のところはわからない。全員死んでしまえばそれで終わりだし、こういうケースで生き残るのはたいてい首謀者であり、その首謀者の言葉を鵜呑みにするのは当然危険である。
このサイトでも取り上げた、中津川の一家五人殺しも、首謀した一家の主が家族を殺害後、自らの首を切っていたこと(未遂)などから無理心中を図ったとされ、幼い孫まで殺しておきながら死刑を免れた。
一方、宮崎の一家三人殺害の場合は死刑判決が確定している。心中する「つもり」だったのかそうじゃなかったのかは、殺害した人の数よりも重要なのだ。

しかし道連れにされた(殺害された)家族の心はどうなるだろうか。
しかも、首謀者が道連れを画策したのが初めてではないとしたら。
平成13年と14年に青森で起きた二つの無理心中事件を紹介しよう。

【有料部分 目次】
七戸一家4人無理心中事件
岩崎村の兄殺し
・吐き気がするほどの身勝手
大宮のテレクラ殺人
・虚無の人生
・噴出した感情
永遠に自分のもの
・大胡町の事件
・優柔不断男の豹変
・愛憎の焔
・衝撃の判決
ひとりで死ね論争
道連れにしたがる人々

銃殺の家の女~可児市・廃墟で有名な家の事件とその後~

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平成22年1月27日

名古屋市中村区。
宿跡町のアパートの一室から、「刺された」と119番通報があった。
中村署員が急行したところ、部屋には家主でカラオケスナック経営の五味猛さん(当時61歳)が腹部を血に染めて悶絶していた。
救急搬送された五味さんだったが、搬送先の病院で死亡が確認された。

当時部屋には、五味さんの知人である女がおり、警察は事情を知っているとみて話を聞いていたが、女は
「殺す気もないし、覚えてもいない」
という不可解な話をしていた。
その後警察は、五味さんを殺害したとして名古屋市中川区のパート従業員、佳山久仁子(仮名/当時59歳)を逮捕した。

久仁子は事件を起こす15年ほど前まで、岐阜で家族とともに生活をしていた過去があった。夫と子供らの5人家族。しかしその生活は長く続かなかった。
数年の時を経て、この名古屋の事件とはまったく関係のない話から、久仁子が暮らしたその岐阜の家がネット上で晒されることになる。

「銃殺の家」として。

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