当サイトの内容に関する扱いについて~Youtuberパクリ事件①~

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YouTuerの皆さま、動画編集のみなさまへ

更新情報にも取り急ぎ書いたのですが、改めてこちらにお願いと、今回の詳細についてまとめておきます。
私なりの個人的なそれこそ備忘録としても、残しておこうと思います。
重要な点から申し上げると、当サイトの文章をYouTubeなどの動画に使用する場合は、必ず事前に連絡をお願いします。

事件概要

事件を扱うYoutuber2名(それぞれは無関係)が、当サイトの複数の記事を盗用、丸パクリして動画を作成、公開していたもの。
発見したのは私本人。これにより、かなりの精神的ダメージを受け、さらには深刻な睡眠不足に悩まされた。
YoutuberAは、登録者数が1万人未満で動画の数こそあったものの、さほど再生されていないようだった。
YoutuberBは、登録者数およそ6万人、動画は50ほど公開されていて、1年前から事件系の動画を作成していた模様。再生回数も、1動画につき少ないものでも5万回、多いものだと30万回を超える動画もあった。

いずれも当サイトからパクったのが一目瞭然の状態(詳細は後述)であったため、すぐさま動画のコメント欄、Twitterアカウントから本人へ連絡。
数時間後には双方から連絡が来、全面的に非を認めたうえで謝罪、解決案の提案がなされ、早期解決が図られたもの。

Youtuber A氏のケース

721日、エゴサーチをしていた際、あるTwitterアカウントが、私のサイトを、自分がフォローしているとあるYoutuberに知らせているのを見つけた。
その書き方、やり取りになんとなく嫌な感じを覚え、さかのぼって調べてみると、そのYoutuberの方がアップしている動画に、見覚えのあるタイトル、キーワードが並んでいた。目玉ポーン。
確認できたのは、東京駅構内で起きたコンビニ店長殺害事件、苫小牧ネグレクト、久慈市男性殺害、出雲市長女殺害、山形一家3人殺傷。もしかしたら他にもあったかもしれないが、公開されてすでに何日も経過していた。
内容は、事件系動画に多く見られる、文字と朗読を組み合わせたもので、とりあえず全部聞きくことに。
時間がもったいないので倍速で確認したところ、すべてにおいてパクリの確信を持った。
理由として、
①私が書いた文章の言い回し、表現まで同じだったこと
A氏本人が、フォロワーとのやり取りにおいて「以前から(事件備忘録を)知っている」と話していたこと
③なにより、ほとんどネットに載ってない事件(久慈市のとか)を取り扱っていたこと
以上の3点から、パクリ認定した私は、毅然とした態度で本人に連絡……出来るはずもなく、あわあわしながらスクショを撮りまくった。
この時点でビビりな私は心臓が口から出そうなほど焦っており、たまたまDMでやり取りしていた折原臨也氏に泣きついた。

折原氏も仰天し、すぐに当該動画を確認してくれ、最初の数分でこれは間違いなくパクっていると断言してくれた。
ちなみに、これらの記事は折原氏の協力で書き上げたものも含まれ、私としては大変申し訳ない気持ちだった。
ビビりな私はとにかく味方をつけたくてtweetし、何人かのフォロワーさんが動画を確認したうえで「これはやっとるで!」とお墨付きもいただけたことで、あわあわが怒りへと変わった。

しかし、折原氏に「落ち着け」と諭され、とりあえずTwitterのアカウントに連絡、本人からの連絡を待つことにした。

すると、1時間もしないうちに本人からDMが届いた。
逆ギレされたら、開き直られたらどうしよう、そんな思いでDMを開くと、そこには平謝りのA氏の言葉が並んでいた。
内容は控えるが、全面的に非を認め、自分がしたことは間違っていた、と謝罪された。
根が単純な私は、謝られると怒れないので、まずはどうして事前に連絡してくれなかったのか、いかにこのサイト、記事を私が大切にしているかを伝えた。
A氏は以前から事件備忘録を知っていたとTwitter上で発言されており、さらにそこには、「このサイト(事件備忘録)に迷惑をかけないようにしなければ」といった言葉も並んでいた。
だからこそ私は理解できなかったのだ。ひとこと、「参考にした動画を作ってもいいか、文章を使ってもいいか」と聞いてくれなかったのか、と。

それに対する具体的な返答はなかったものの、A氏は深く反省し、解決案としてYouTubeのアカウントを削除することを約束してくれた。
約束は守られ、現在そのアカウントは存在していない。

Youtuber・B氏のケース

A氏の件が早期円満解決に至ったことで安心していたが、やはり思うことがあった。

「ほかにもあるんじゃね?」

ゴキブリを一匹見たら100匹はいると思えというではないか。
当然ながら、私のサイトには普通にアクセス解析がついている。また、訪問者がどこからきたのか、というのもわかる。
記事一つ一つも、何回読まれたのかとか、わかるようになっている。
通常、記事を公開した数日から数週間は、その記事が閲覧数トップ、あるいは上位にある。
過去に書いた記事は、たとえば犯人が死刑確定し、その死刑が執行されたとか、何かニュースになるようなことがあればまた閲覧数は増えるが、何事もないのに古い記事の閲覧数が上がるというのは、誰かがSNSで当該記事へのリンクを貼ったか、5ちゃんに晒されたかのどっちかだ。

過去にも、秋田男児殺害(進藤美香のやつ)がどんと伸びたことがあったが、たまたまフライデーデジタルに小野一光さんがこの事件の記事を書いており、それを読んだ人々がキーワード検索でたどり着いたようだった。めちゃめちゃ伸びたのでフライデーすげぇと感心した。
また、青木峠のバラバラ死体遺棄も突然読まれだしたことがあったが、これはYouTubeで「物騒なニュース速報」という動画がたまたまこの事件の被害者の身元判明を伝える速報(ちょうどドラゴンボールをやっており、絵面はかなりシュール)を取り扱っていて、さらに、コメント欄で当サイトの記事へのリンクを貼ってくれた人がいたためだった

話がそれたが、この視点で見た時、気になることがあった。
恵庭OL殺人事件と、広島の一家失踪事件の記事も、こういった不可解な増え方をした形跡があったのだ。
しかし、リンク元をみてもはっきりしない。ということは、検索でたどり着いたということか。
見てみると、717日ころから恵庭OLに関するワードが突然増えていた。
そこで、YouTubeで検索してみると、A氏と同じような事件系YouTuerB氏のアカウントを見つけた。
そこにアップされている動画はほとんど私のサイトでは取り扱っていない事件ばかりだったが、2つ、被っているものがあった。
それはまさしく、恵庭OLと、広島一家失踪事件だった。

コンタクトを外し、さぁ寝よう、と思っていた矢先で、私はとっても気分を害した。これは寝られない。すやすやと寝られようものか。しかも2度目なのであわあわよりも怒りが来た。
このB氏は、事件系Youtuberの中では結構人気のある人物のようで、コメントも1動画につき300500もついていた。その理由は、B氏が「視聴者参加型」と銘打ち、視聴者にも謎を考えてもらおうというような動画に仕立てており、事件好きな視聴者は我先にとこのえん罪の可能性がつきまとう恵庭OLと、謎過ぎる一家失踪事件について考察を書いていた。私がイラついたのは、そこだった。

動画はどちらも30分近くあるもので、B氏と思われる人物が事件の概要、疑問点などを朗読するといったスタイルだったのだが、その内容がA氏同様、丸パクリだった。
こちらも倍速で聞いてみたところ、私の文章を100%引っ張ったとしか言えないほど、パクっていた。
たとえば、恵庭OLの場合、不可解な偶然、としていくつか書いている部分があるのだが、その項目だけでなく順番まで同じ、内容も同じ、語尾を変えているだけのものもあった。
また、私が考察したものまでパクられていた。それは広島一家失踪でも同じで、というかこっちのほうがひどかった。
一言一句、まったく同じ文章まであった。信じれーん。手抜きにもほどがある。

被害者宅の家のつくりについてや、小見出しの言葉まで一緒だった。
怒髪天を衝くとはこのことだとわなわなしながら、こちらも前日同様tweetしまくったところではたと気が付いた。

フォロワーさんめちゃめちゃ被ってる……

当サイトの内容に関する扱いについて~Youtuberパクリ事件②~

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B氏との会話

事件系Youtuberであれだけ人気なんだもの、被ってる可能性は高かったのわかってたのに、頭に血がのぼっていたため見落としていた。
しかし後には引けぬ、ていうか私悪ないし、イチャもんと違うのは見てもらえればわかるはず。

Twitterへの書き込みと並行して、公開されている当該動画のコメント欄に抗議の文章を載せた。
と、そうこうしていると、B氏本人のTwitterアカウントからDMがきた。
人気の高いYoutuberであることで少々怯んでいたが、B氏もA氏同様、謝罪の文章を送ってきた。
ただ、A氏の釈明と違っていたのが、シナリオを制作する人間が別にいるという点だった。
Youtuberの世界、常識みたいなのに疎い私は、ちょっと興味も出てきて、可能であれば直接話がしたいとB氏に申し出た。
B氏も快く応じてくれ、直接話すことができた。
ある程度質の高い動画を制作し、それをYouTubeの規則に従って動画を増やすには、やはりチームで取り組む人が多いのだとか。
なにをやるか、の原案を作る人(これがアカウント本人)がいて、依頼されて動画を作る人、音楽をつける人など、役割分担をしている人が多いと教えてもらった。
B氏も同じで、テーマや何の事件を扱うか、どういった構成にするかはB氏が決めるにしても、シナリオ作成は依頼をかけていたという。

要は、その受けた人間がやらかしたということだ。

しかし、責任はB氏にあると認めていて、丁寧な謝罪と動画へのクレジット表記、さらにはOFUSEを通じて謝礼を支払っていただいた。
当初よりB氏からは謝罪と、動画を削除しない代わりにクレジット表記、ならびに「報酬として」金銭を受け取ってほしいとの申し出があった。
もちろん、私はお金の問題ではないし、そもそもこのサイト自体金儲けには程遠いものであり、もっというと、記事を引用したことへの報酬をもらってしまうと、その価格で記事を売り飛ばした気分になってしまうのでお断りした。
が、お気持ちということでOFUSEはありがたく頂戴した。

B氏の動画の対応については、
①2つの当該動画は完全にパクリだったが、それ以外の多くの動画は問題がない
②クレジット表記の申し出があったこと
③直接話をし、今後も当サイトを参考にしたいと改めて申し出があったこと
以上の点から、クレジット表記を当該動画につけてもらう、ということで和解となった。

私の思い

私自身、このサイトは、過去に誰かが取材し、発表したものを読み、それをもとにまとめているものがほとんどであるから、自分がしていることも「パクリ」になってはいけないと常日頃から気を付けてはいる。

事件という扱うコンテンツの性質上、時系列や概要などはそれでも似通ったものになってしまうため、表現を変え、それができない場合は引用元の明記をしている。

ただ私はパクリにならない自信みたいなのがあるのも事実だ。
それは、自分自身が自分の言葉を選び方、表現の仕方が独特で、良い悪いは別にして特徴的だと思っているからだ。
使いたい言葉、熟語、言い回しなど、選びに選んで書いている。漢字を使うか、あえてひらがなにするか、カタカナにするか、法律用語を使うか、句読点の場所、改行の場所などなど、結構考えている。
以前フォントが小さくて見え辛い、和暦じゃなく西暦にして、といった要望もあったが、これも私のこだわりなので今後も変えない。

そして、こう思っているのはきっと私だけではなく、多くの文章を書く仕事をしている人、文章を書くのが好きな人は同じ思いなんじゃないかな、と思う。

そこらへんを、今回の二人にも気付いてほしいと思うのだ。

人が紡ぐ言葉は思い入れがあり、その人だけにしかできない表現や言い回しがある。
そして、それを好きだと言ってくれる人たちもいる。
コメントを書いてくれる人、資料集めに協力してくれる人、多くの人のおかげで私は好きなことをやれている。
それらすべてを今回、二人は踏みにじったのだ。だから私は怒ったのだ。
眠れなかったこともちょっと腹立ったけど。

今後はどうか、そういったことを考えて、良い動画をたくさん作ってほしいなと思う。

今後について

どこかに書いたと思うけれど、このサイトは私のライフワークというか、100%趣味、世のため人のためとか一切考えてなくて、お小遣いの中で資料を集め、それが無理な時は夫のカードを切りまくり、怒られながらも日々楽しんで書いている。
無料というのはやり過ぎじゃないか、という声もあるが、やはりこのスタンスでいたいと思っている。

今回、B氏からは仕事として、このサイトで扱っている記事をB氏が動画にし、その報酬を支払うという形はどうか、という提案も受けた。
それはB氏が今回のことを早く収束させたいがための適当な提案ではなくて、一つの考え方としてのまじめな提案だったのだが、今後も私はそれはしないと思う。

記事1本の相場もわからないし、正直「じゃあ〇〇円で」と相手に提案されて、それが自分の想像より安かった日には泣くと思うし、こっちが提案した額を「それはちょっと高杉」と言われたらそれはそれで気分悪いし、なんかやだ。

でも、きれいごと言うようだけど、やっぱり「文字」で読んでほしいと思ってるというのが一番大きい。
さっきも書いたけれど、このフォント、文字の大きさ、ストリートビューの角度、それらにも思い入れがあって、すべてをひっくるめてこのスタイルが一番いいのだ。
なので、動画になるのはなんか違う。もうそれは私の作ったものじゃない。
これからも文章で伝えていきたい。

最後に、A、B両氏にすればすでに和解済みのことを持ち出して記事にするのはちょっと、と思われるかもしれないが、これで私の気が済むんやから、かまんかろう、このくらいは我慢せぇ笑。

今回の出来事は確かに不愉快だったし、ちょっぴり傷ついた。

でも、すぐに解決し、双方気持ちよく落としどころを見つけられたのはよかったと思うし、B氏に話を聞けたのも勉強になった。
A氏もB氏も、一切言い訳はしなかった。

また同じようなことは起こるかもしれないけど、今後はあわあわしないで筋を通すだけにしたいと思う。

おわり。


最後までお読みいただきありがとうございます。こちらから1文字2円のコメントが送れます。
いただいたお気持ちは資料集めに使わせていただきます。

🔓流浪の運命共同体~長野・山梨・静岡・男女殺害遺棄事件~

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無念の記者会見

「なぜ母が殺されなければならなかったのか。そしてなぜ、姉がそれに加担したと言われるのか、まったく理解できません。
ふたりは仲の良い母娘でした……」

黒磯市役所で記者会見に応じた男性は、悔し涙をにじませた。
傍らには、妻の姿もあったが、この二人は一歩間違えれば今頃生きていなかったかもしれなかったのである。
ふたりは生き延びたが、入れ替わりに行方不明になった男性の母と姉は、壮絶な人生を送る羽目になってしまった。

平成一五年二月二六日

この日、とある傷害事件で男が逮捕された。
男は昨年に静岡県伊東市内の貸別荘で、当時行動を共にしていた男性とその妻、そして一歳の子供に暴力を振るい怪我をさせたとして、静岡県警から指名手配となっていたのだ。
男の名は、上原聖鶴(当時三五歳)。

ところが調べを進めるうちに、
「長野県内で仲間らとともに二人殺している。遺体は甲府市内のアパートにある」
と供述したため事件は違う展開を見せ始める。
甲府市飯田のウィークリーマンションを捜索したところ、供述通り、室内から男女と思われる遺体を発見した。
上原の供述では、自分以外の仲間もここへ遺体を運んだ行為にかかわっているとしていて、警察は、上原と行動を共にしていた女と、若い男二人も死体遺棄の容疑で逮捕した。

当然警察では二人の殺害にもかかわっている可能性が高いとして調べを進めたところ、男二人は殺害にかかわっていないことが判明。警察は、三月にはいって、上原と女を二人に対する殺人の疑いで再逮捕した。
上原と一緒に逮捕されたのは、高須賀美緒(仮名/当時二七歳)。美緒は、昨年の六月から上原と行動を共にするようになったというが、上原には妻子があった。しかも、その妻子もずっと行動を共にしていたようなのだ。
わかっているだけでも、上原と妻子、美緒、若い男二人、この六人が逮捕当時共同生活を送っていたとみられた。
さらに、上原は美緒と生活を共にし始める前、美緒の弟夫婦とその子供と一緒に生活をしていた。
そして、弟家族と離れた直後、今度は美緒とその母親を呼び出し、まるで入れ替わるかのようにその母娘と生活し始めていたのだ。

では、亡くなった二人はいったい誰で、どんな関係の人間なのか。
遺体はそれぞれ男女一名ずつで、男性は二〇代、女性は五〇代~六〇代とみられた。
遺体の状況は、女性のほうが腐敗が進んでいたことから死亡時期が違うこともわかっていた。
その後の司法解剖の結果、男性は神奈川県厚木市の大学生、中里善蔵さん(当時二一歳)、女性は栃木県黒磯市(現・那須塩原市)在住の高須賀悦子さん(仮名/当時五三歳)と判明。

悦子さんは、美緒の母親だった。上原と美緒は、中里さんと悦子さんを殺害した容疑で再逮捕されたのだった。

発端

事件の始まりをたどっていくと、平成一三年に遡る。
当時、とび職関連の仕事をしていた美緒の弟・英治さん(仮名/当時一九~二〇歳)は、仕事関係で上原と知り合った。
五月ごろ、英治さんは上原からこう聞かされたという。
「俺とお前の名前が暴力団のリストに載ってる。俺が何とかしてやるから、一緒に逃げよう、お前も俺の言うことを聞け」

若い英治さんは、暴力団という言葉と、上原の入れ墨に恐怖を感じ、その言葉を信じてしまう。また、それ以前に上原から借金を申し込まれていた経緯などもあり、上原と行動を共にすることを決意した。
すでに妻子がある身だった英治さんは、驚く妻を説得して妻子とともに上原と合流、そこから一年もの間、車で各地を転々とする生活を余儀なくされていた。
生活は、主に貸別荘などを借りていたが、その費用は英治さんが消費者金融から借金をするなどして都合していたという。

逃亡生活は次第に英治さん一家にとって「何のために逃げているのか」わからないものへと変わっていく。
先に述べたとおり、金銭は英治さんに借金をさせ、足りなくなると英治さんの妻にも借りさせた。
食事は一日に一度となり、幼子を抱えた妻は自分の食事をわが子に与え、一〇キロ近く痩せていたという。
そこまでして英治さん一家を縛っていたのは、暴力団に追われているという嘘と、上原からの暴力だった。

上原は体重が一二〇キロ近くある巨漢で、英治さんは日ごろから暴力を振るわれていた。
ある時からそれは特殊警棒のようなものになり、時には妻にもその暴力は向けられたという。
さらに、英治さんの一歳の子供にも、上原は自分の子供に命令し、叩く、けるなどの暴力を振るわせていた。

また、英治さん一家は常に上原の妻に監視されていた。伊東市内の貸別荘では、窓のすべてに鍵がかけられ、外から粘着テープで目張りされて開けられないように細工されていた。
用事で家族に連絡を取る際も、常にだれかがそばにいて、余計なことを言わないよう見張られていたという。
英治さん夫婦に対しては、それぞれを別の部屋で過ごさせ、お互いに「相手は子供を愛してない」などと吹き込んで疑心暗鬼にさせていた。

平成一四年六月一五日、たまたま上原とともに外出していた英治さんは、今しかないと思い隙を見て逃走する。
妻子のことは気になったが、それでも助けを求めるには逃げるしかなかった。そしてこの判断は正しかった。
伊東市内から妻の実家がある栃木県黒磯市までヒッチハイクをしながら三日かけて英治さんは戻り、そのまま黒磯署に助けを求めた。
事情を知った妻の父と警察署員らとともに、英治さんの案内で伊東市内の貸別荘へ戻り、ようやく英治さんの妻子は救出されたのだった。
発見時の妻は、殴られたような痕が多数あり、全治三週間のけがを負わされていた。

妻子を奪還した英治さんは一八日、心配をかけた母親・悦子さんと姉・美緒にも連絡した。実は英治さん家族が上原と行動を共にし始めた直後、「お前の家族も危ない」と吹き込まれていたことから、黒磯市に暮らす悦子さんと美緒に連絡して、福島の親類宅へ身を寄せるよう伝えていたからだ。
しかし、一度は電話に出た美緒だったが、その日のうちに連絡が取れなくなってしまう。

そして、伊東の貸別荘からは、上原たちの姿も消えていた。

(残り文字数:7,783文字)

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小心者~三島市・短大生暴行焼殺事件①~

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平成七年四月八日午後一〇時半

静岡県三島市長泉町土狩の路上を、町内在住の公務員男性(当時22歳)は自転車で家路を走っていた。
そこへ、走ってきた車が男性の進路をふさぐように前方に回り込み停車、車から人の若い男たちが下りてきた。
「金、持ってるだろ、出せよ」
唐突に絵にかいたようなカツアゲをされた男性は、当然断った。
直後、頭に激しい痛みが走る。男たちは木刀を持っていた。
殴られた。男性が必死に体をかばっている隙に、男たちは男性の財布を奪って走り去った。

二三日。
三島市若松町の駐車場内で、車上荒らしが発生。
会社員の所有する乗用車の中から、書類入りのバッグが盗まれた。
この事件で警察は、周辺の防犯カメラ映像や聞き込みから、若松町在住の男(当時二三歳)を割り出し、窃盗の容疑で逮捕した。
二二日、男は日に発生した路上強盗でも逮捕される。共犯の男(当時二一歳)も逮捕となった。

男らは罪を認め、二三歳の男は執行猶予中であったことから前科も併せての実刑となり、それから年間服役した。
男の名前は、服部純也。彼は一七年後の夏、死刑執行によりその人生を終えた。 続きを読む 小心者~三島市・短大生暴行焼殺事件①~

🔓小心者~三島市・短大生暴行焼殺事件②~

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逮捕

警察では犯行現場から、「土地勘のある人間の犯行」とみて聞き込みに力を入れていた。
そんな中、不審者、夜間徘徊者リストに名前があった服部の、当夜の目撃情報に目を付けた。
事件後には三月と六月の二度、大規模な検問なども実施されていたが、この時に服部の事件関与は全く浮かんでいなかった。
というのも、服部は事件の直後にひき逃げ事件を起こしており、二月末に出頭して逮捕されていたのだ。

警察では住民らの協力の下、不審者リストを作り上げ、現場の地理に詳しいもの、住民目線で見て不審者、あるいは犯罪の臭いがする人物などを調べていった。
その一人一人のアリバイ、素行調査、証拠資料との照合などを地道に行う日々が続く中、不審者リストにある服部のDNAと、現場に残されたDNAが一致したのだ。
もし、住民らの協力がなかったら、おそらく服部は重要人物とみなされなかった。しかも本人は別の事件ではあるものの、自ら出頭して罪を認め、実刑判決を受けていたのだから。

DNAというゆるぎない証拠があったものの、当初服部は全面否認だった。
「コンビニでナンパしたが、家に帰した」
服部の当初の供述はこうだった。
警察も、DNAが現場にあったということから、佐知子さんと最後に接触した人物の可能性が強い、ということは言えても、殺人を犯した張本人とは言い切れなかった。
とりあえず逮捕監禁と強盗の罪で逮捕したものの、本人の口から供述を得られたのは逮捕から一週間後、佐知子さんの自転車を遺棄した場所を自白し、その後殺害を認めることとなった。

【有料部分 目次】
無期は嫌
死刑になると思ってなかった弁護人
ふてぶてしさの反面
小心者