🔓哀しき嘘つき女の涙~米子市・新生児誘拐事件~

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市役所にて

とある私立保育園からの問い合わせを受け、境港市役所の健康推進課は騒然としていた。
「母子手帳?そんなの交付してないよ。申請すらない……
問い合わせの内容は、その私立保育園に子供を預けてけている母親が赤ちゃんを産んだという話だった。しかし、まったくその気配も体形の変化もなかったことから、私立保育園側が不審に思っての問い合わせだった。

世の中には妊娠しても出産するまで母子手帳交付を受けない妊婦もいるし、とんでもないプライバシーの問題でもある。
しかし、境港市役所はそんなことを言ってはいられなかった。

つい先日、米子市内の病院から、生まれたばかりの赤ちゃんが連れ去られていていまだ行方不明になっていたのだ。

事件概要

平成1318日、米子市の博愛病院から、生後間もない女の赤ちゃんがいなくなった。
いなくなったのは、米子市在住の国家公務員、松岡祐一さん(仮名/当時37歳)と、浩子さん(仮名/当時31歳)の間にその日生まれたばかりの長女だった。

午後420分ころには新生児が全員そろっていることが確認されていて、事件発覚が午後620分ということから、この2時間の間に連れ去られたとみられた。
しかしその後の調べで、別の母親が午後6時に全員を確認していたことが判明、実質的に20分の間の犯行だった。

警察では未成年者略取誘拐事件と断定し、すぐさま捜査にあたったが、事件から3日経っても何の動きもなかった。
事件から5日が経過した時点で、県警捜査本部は異例の対応をとる。県警のHP上で、連れ去った犯人に向けて「新生児の世話」に関する事柄を掲載したのだ。
加えて、一刻も早く両親の元へ帰すよう訴えた。

身代金要求がない時点で、警察では金目当てではなく、子供そのものが狙いだったとみていた。過去には出生届を偽造して受理までされていた事件もあり、県内に限らず近隣の県や市町村に対し、不自然な出生届を見逃さないよう協力を要請も行った。

その裏で、実は冒頭のように、市民レベルの通報が行われていた。

県警捜査本部は、114日、境港市内に住む29歳の女の家の家宅捜索令状を取り、女が暮らす県営住宅へ踏み込んだ。
そこには、すやすやと眠る女児の姿があった。

女は当初、自分が米子駅前の病院で産んだ子で、まだ出生届は出していないなどと誘拐を否定していた。女児が着せられていた産着も、病院で来ていたものとは違っていたが、その後の捜索でもともと来ていた産着が発見され、さらには病院へ運ばれた女児の血液型が女からは生まれない血液型だったことを捜査員から告げられると、女は正座して涙を流しながら、「自分がやった」と告白した。

女の自宅には、60代くらいの両親のほか、弟と妹、甥っ子、さらには女の実子である6歳の男児がいた。

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【有料部分目次】
女の素性
イタイ女のお手本
中年男性への執着
重ねられる嘘
巻き添えの女
幸せの結末
哀しき女

🔓親であり兄であり、恋人だったあなたへ~畠山武人・外伝~

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まえがき

「連絡が来ると思ってました。いいですよ、書いてもらって。事実が捻じ曲げられなければ、いいです。」

秋の終わり、私が公開しているとある記事にコメントがついた。
その記事とは、平成16年に栃木県宇都宮市で起きた拳銃立てこもり事件だ。
その詳細は該当記事を読んでもらうとして個人的にはこの事件備忘録を始めるきっかけともいえる思い入れのある事件だった。

コメントしてくれたのは女性で、彼女はこの立てこもり事件で死亡した畠山武人氏と、それ以前に人生の一時期をともに生きた人物である。

宇都宮の立てこもり事件を書いた後、畠山氏と刑務所で一緒だったという人や暴力団関係で知り合いだったという数人から話を聞くことは出来ていたが、いずれも男性であり、さほど深い関係の人はいなかったことから、私はすぐさま彼女に連絡を取った。
そこで彼女が語ってくれた内容は、凄まじい迫力に加え、本人でなくては絶対に出せない生々しさに満ち溢れていて、私は圧倒されてしまった。

重大な罪を重ねたあげく、若き愛人と手をつなぎ頭を拳銃で撃ちぬいて心中した男。その荒ぶる魂に隠された「人間・畠山武人」を、私はなぜかどうしても残しておきたくなった。

平成3年の夏の終わりに宇都宮市内で起きた、覚せい剤と立てこもりと、彼と女子中学生の物語である。

【有料部分 目次】
事件概要
あの夏の少女
出会い
軋み
後輩の女
厳しい現実
逮捕、そして別れ
けじめ
永遠の別れ

🔓蠢く隣人~高崎市・女児殺害事件~

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法廷にて

前橋地裁高崎支部。この日、とある裁判の第5回公判が開かれていた。
幼い児童を殺害したとして殺人の罪などで裁かれている被告に、検察官よりある要望が投げかけられた。
その瞬間、それまでうなだれていた被告の男は、弾かれたように態度を豹変、感情を爆発させた。

「あの子たちを処分することは!私の子供を殺すかのようなものだ」

被告の男は号泣、その後も「くそっ!」などと感情を吐露し続けるそんな男の態度を、傍聴席の遺族は一瞥し、法廷を後にした。

事件概要

平成16年3月11日、群馬県高崎市北久保町の豊岡小1年、浜名愛さん(当時7歳)が、下校後に行方が分からなくなっていた。
愛さんは4年生の兄と両親の4人で県営団地で生活していたが、その日、同じ団地に住む同級生とともにエレベーターに乗った後、自宅に戻らなかったのだ。
防犯カメラには6階でまず同級生が降り、その後自宅のある10階で降りる愛さんの姿が映っており、以降、愛さんが団地から出る様子は映っていなかった。時刻は午後2時35分。
その一時間後に母親からの通報で、捜査員らが状況から団地内を捜索を開始、同時に学校関係者や保護者には電話連絡網で愛さんの行方不明が伝えられていた。

その日、愛さんは水色のフリースに紺色のキュロット、靴はピンク。
その姿を、外出先から車で戻る途中の母親が目撃していた。友達と元気に下校する娘の姿を、母親が見間違えるはずもなかった。
先に帰宅し家事をしながら、母親は玄関ドアが開き、「ただいま」といつものような愛さんの声が聞こえると思っていたが、気が付けばやけに時間が経っていた。
ひとりではなかったし、この年頃の子は遊びながら帰ってくるもので、階段を上がるだけでも遊びに変えてしまうこともよくある。

それにしても、遅かった。

母親は一緒にいた6階に暮らす同級生宅に電話を入れた。愛さんが遊びに行っているかもしれない。しかし、その同級生はとっくに帰宅しており、愛さんとはエレベーターで別れた、と話したため、すぐさま警察へ通報したのだった。

警察では状況から、愛さんは団地内にいる可能性が強いとして、片っ端から団地の住人宅を捜索。
そして、午後5時半。捜査員が愛さん宅の隣の部屋の住人に話を聞いていた時だった。
応対した母親(当時48歳)が、仕事に出かけている息子に連絡し、何か知らないかと尋ねた際、「事情を知っている」と息子が話したのだ。

そして、午後7時すぎ、勤務先から帰宅した息子とともに部屋を捜索したところ、息子の部屋の押し入れから、愛さんを発見したのだった。
愛さんはゴミ袋に入れられており、すでに死亡していた。

【有料部分 目次】
隣家の男
報じられない犯行内容
地域の衝撃
張本人からのアドバイス
心のよりどころと応報
母の思い

隣人を叩き斬った老人の正義~世田谷・日本刀隣人殺害事件~

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平成24年10月10日

東京都世田谷区野沢1丁目。
世田谷区立旭小学校の北に位置する住宅街は騒然としていた。
上空には報道機関のヘリが旋回し、周辺の路地にはパトカーや救急車が待機していた。
周辺では警察官が「犯人は凶器を持っている可能性があります、外に出ないで」と大声を張り上げている。

午後1時40分、警視庁の特殊班が民家に突入、その後家の中から血まみれの男性が運び出された。

男性は搬送先の病院で死亡、しかし、死亡したのは男性だけはなかったし、この男性は被害者ではなかった。
それより2時間前の11時半ころ、その民家の前の路地で、女性が倒れていると通報が相次いでいた。
女性の首は、切断寸前だった。

続きを読む 隣人を叩き斬った老人の正義~世田谷・日本刀隣人殺害事件~

間違いだらけの家族~岩沼市・保険金殺人事件~

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平成15年7月15日

宮城県警ではこの日の深夜、慌ただしく緊急の記者会見が開かれた。
内容は、この日から一ヶ月半ほど前に起きた、男性殺害事件の犯人逮捕、というものだったが、その内容に会場はどよめいた。
一方で、「やっぱりな」そういう空気も感じられる、異様な雰囲気の中、会見は進んだ。

実は捜査本部では、その日のもっと早い時間に犯人が誰であるか把握していたが、ある事情によって容疑者の逮捕を深夜まで遅らせていたのだった。
その事情とは、「被害者男性の法要」だった。 続きを読む 間違いだらけの家族~岩沼市・保険金殺人事件~