🔓更生は、できません~ふたつの再犯重大事件~

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人は誰しも過去があり、それは人によって恥ずかしいものから誰にも言えない洒落にならない秘密など色々である。
それでも実際に他人が聞いてみればなんのことはない、そんなこと隠さなくてもいいじゃないか、と思うほどちっぽけなことであるケースも少なくないし、その過去を人に話せる、共有できるだけでも、本人からしてみれば気持ちが楽になることもあるだろう。

ただそれが犯罪、しかも人を殺していたとなると、穏やかではいられない。

昭和の時代から平成にかけて起きた二つの事件。
いずれも、大変な過去を背負いながらも赦されて、再び社会の中で生きていた男たちの、どうしようもない二つの物語。

【有料部分 目次】

杉並の女子中学生刺傷事件
一家五人殺しの男
行き場のない少年少女たち
押し付けられた「オジン」
この時代の感覚
男の本性
無期懲役+8年
更生の道の途中で
足立区主婦バラバラ殺人
疑わしい男
DNA鑑定
「やりたいんでしょう?」
死人に口なし
過去を知られたくなかった男と、その妻
再びの無期懲役

17歳~カノジョを殺した僕たち~

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交際相手を殺害するという事件は珍しくない。交際しているとは言っても、その実情は周囲からは分からないし、愛しているがゆえに、悲惨な結末を招いてしまうケースもある。

事件備忘録でも愛憎入り乱れる事件を多数取り上げているが、いい年こいた大人たちであっても我を見失ってしまうわけで、それが大人の階段をのぼり始めたばかりの少年少女であれば、些細なことがこの世の終わりに思えることもあるだろう。

最近でも、少年少女による交際相手への殺人(未遂含む)は平成29年の台東区の18歳の少年による交際相手殺人放火事件、平成26年の岡山で起きた年上の交際女性を殺害遺棄した17歳の少年の事件など、あまりに短絡的で幼い動機による事件が起きている。

ただ少年事件ということでその詳細はなかなか判明しづらい。
少年だからこそ、自分の思いを言語化できなかったり、少年だからこそのある種の一途な思いから真相がわかりにくくなっている可能性もあるだろう。

ただ事実としてあるのは、彼らは、カノジョを殺して捨てたということ。 続きを読む 17歳~カノジョを殺した僕たち~

見苦しい人々〜守口・4歳児暴行死事件〜

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平成13年8月5日午後7時45分。
守口市の関西医科大学附属病院にて、小さな命が消えた。
救急搬送されてきたのは、4歳の男の子。目立った外傷は見当たらなかったが、その脳は腫れ、すでに機能を失った状態にあった。
それでも心臓は動きを止めず、男の子は搬送されてから2週間、必死に生きようと頑張っていたが、医師らの尽力も届かず男の子は死亡してしまった。

救命にあたった医師らは、その怪我自体は自分で転倒して頭部を強打したような場合でも起こり得るものとの認識はあったが、念のため警察へも通報していた。
警察が家族から聞き取ったところ、複数の家族が「自分で転んで頭を打った」という証言をしたため、男児は事故死と判断された。 続きを読む 見苦しい人々〜守口・4歳児暴行死事件〜

22週~昭和の少女と、いつくしみ深きまなざし

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子を宿すということは、場合によって悲しい事件に直結する。
経済的な問題、交際相手との離別、その理由はさまざまだろうが、子供を産むことを断念せざるを得ないこともある。
日本では妊娠を継続することで母体に経済的、身体的に著しいダメージを与える場合や、レイプなど女性の意思に反する形で妊娠したケースにおいて22週未満であれば中絶が認められている。

ところが、この週数を過ぎてしまうといかなる理由においても「人工中絶」は認められない。
胎児が母体を離れて生きていける週数が関係しているわけで、それ以降は母体に危険が及んだための緊急手術であっても、子どもの救命を考慮した方法を優先させる必要がある。

今の日本では、中絶手術自体を知らない、あるいは知ってはいるが週数が決められているということを知らない、という人は特に成人女性においては少ないのではないかと思われるが、未成年者となるとその辺りの知識はかなり危うい人もたくさんいるだろう。

さらに、どれだけ知識があっても中絶自体、ハードルが高い。
おそらく初めてであろう産婦人科へ行き、現実を突きつけられ、中絶するにしてもタダではない。未成年者がおいそれと用意できる額でもない。
そうなった時、腹をくくって親兄弟に相談できる子たちは、救われる。
しかし誰にも言えずに時間だけが過ぎてしまったら。

最悪の決断をしてしまった昭和の10代の少女たちと、彼女らに慈しみ深い眼差しを向けた裁判官の話。 続きを読む 22週~昭和の少女と、いつくしみ深きまなざし

「八月の母」と伊予市団地内少女監禁暴行死事件

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先日Twitterで「八月の母」を読んで感想を書いてほしい、という話があった。
この、「八月の母」を書いたのは悲しきデブ猫ちゃんで愛媛新聞購読者にはお馴染みの、早見和真氏である。
早見氏のことは皆さん検索していただくとして、この「八月の母」という本は実に事件備忘録的な本であり、完全なフィクションではあるけれど、実際に起きた事件がベースとなっている。

平成26年八月のあの日、私は夫の実家のある久万高原町にいた。夕食の準備をしながら見ていたニュースに、全員が「これ、ちょっと……」と言ったきり言葉をなくした。
伊予市の市営団地の一室で、若い女性の遺体が発見されたというニュースだったが、その時点でそれが集団によるリンチの末の死であること、女性が監禁状態にあったことなども併せて報じられていたからだ。

年代的に私は綾瀬のコンクリ事件を思い出した。
被害者は松山市内の10代の女性で、逮捕されていたのが現場となった団地の一室の主である女と、その子供たちが含まれていたことも衝撃だった。
団地、家出少女、未成年者のたまり場、シングルマザー、もうこれだけでお腹いっぱい的な話ではあるが、私はこれが「伊予市」で起きたことにも実は重きを置いていた。
事件の全容は、未成年者がかかわることもあってかなり抑えめだったように思う。途中からは主犯とされた母親の名前さえ伏せられることもあった。
報道をつなぎ合わせれば、たまり場と化していたその団地の一室に、いつからか入り浸るようになった被害者が、家族の感情のはけ口にされ日常的に暴行されるようになり、歯止めが利かなくなった末に命を落とした、というもの。
殺人ではなく、傷害致死である。集団心理という言葉も取り上げられた。

その事件をもとに書かれたのが、「八月の母」である。

この本は、フィクションではあるものの作中には実在する町の名前がでてくる。地元の人間ならばどこなのか、どの店なのかまでわかるほど、場所を意識して書かれている。それが、事件備忘録でよく話題になる「場所と事件の関係性」を意識させ非常に興味深く読んだ。
内容的に結構なネタバレになることはあらかじめお断りするとして、実際の事件と私が生まれ育った愛媛を取り混ぜながら本の紹介と読書感想文を書いてみる。

以下、ネタバレOKな方のみお進みください。嫌な人はまず本を読もう。
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