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その日の目覚めはいつになく爽快だった。
これまでの二日間、ほぼ寝たきりだったのが嘘のようで、久しぶりに一人で外出してみる気になった。
財布を覗くと、2000円程度しかなかった。郵便局と銀行でお金を下ろし、いつもならバスに乗るところを歩いてみようと思った。
姪浜駅北口を出て400m、国道に出たところを左折。自宅までは約1,5キロ。交通事故でひざを痛めて以降、歩く速度は遅いものの、この日はいつもよりも力が漲っていた。
途中、ふとファミレスに寄ってみようと思った。ちょうど昼時、いくつかのメニューを頼み、ビールも注文した。合計は1296円。
いつもならこんなことはしないが、とにかく、いつもよりも動けることが嬉しかった。
午後3時、小学校から息子が帰宅。ドーナツが食べたいとぐずったが、作ってやろうにも卵を切らしていた。
「じゃあ卵を買いに行こうか。」
母と息子は手をつないでスーパーへと向かった。
途中、大きな公園があった。息子はどうやら、小学校の遠足で来たことがある公園らしい。そういえば夏休みの間、あまり遊んでやれなかった。スーパーは後回しにして、遊んでいこう。
「トイレに行くけん、ここでおってね」
息子に声をかけ、トイレに向かう。
しかし出てきた時、息子の姿は見えなくなっていた。
事件
「男の子を見ませんでしたか!?」
平成20年9月18日午後4時ころ、福岡市西区の小戸公園にて、母親と遊びに来ていた同市立内浜小一年の富石弘輝くん(当時6歳)の姿が見えなくなったと母親から通報があった。
警察と共に、公園内にいた一般の人々も加わって弘輝くんを捜索していたところ、同公園内にあるトイレと外壁の隙間に膝を折り曲げた状態でもたれかかるようにしてぐったりしている弘輝くんを発見。
意識がなかったため救急搬送されたが、病院で死亡が確認された。
弘輝くんの首にはひものようなもので絞められた痕が残されており、福岡県警では殺人事件として捜査本部を設置して捜査にあたった。
弘輝くんの衣類に乱れはなく、首のあと以外に目立つ外傷もなかった。
通報した母親によると、弘輝くんにはGPS機能付きの携帯電話を持たせており、いなくなった直後から母親がそのGPS反応を捜していたという。
捜索している中、一般の男性が弘輝くんを発見し警察に知らせたところ母親も近づこうとしたが、最悪の事態を想定して男性が母親を押しとどめた。母親は不安そうに、しかしそれ以上は近寄らなかった。
男性はなんとなく、違和感を覚えたという。母親はトイレに行くと告げて子供から目を離したと話しているのに、なぜか、最初からそのトイレ付近は捜索しようとしていなかったし、みんなが捜しているのに、ベンチに座ったままだったという。発見した際、弘輝くんの足元は裸足で、その靴が足元にきちんとそろえられて置かれていたのも気になった。
搬送される弘輝くんに、母親は寄り添いずっと声をかけ続けていた。
事件翌日、福岡市内で弘輝くんの通夜が営まれた。車いすの母親は参列者に対し、「子どもから目を離さないでね、こんな悲しいことはわたしだけでいいけん」と気丈にふるまっていたというが、柩の周りで親族が「犯人を殺してやりたい」というのを聞くと、ひざに顔をうずめるようにして号泣していた。
翌日の葬儀では、笑顔の弘輝くんの遺影を胸に霊柩車に乗り込み、参列した人々はその悲しみの中で残された家族の心中を思い、いまだ逮捕されていない犯人に対しての怒りを新たにした。
9月22日。警察は事情を聴いていた母親を、弘輝くん殺害の容疑で逮捕した。
【有料部分 目次】
発達障害
難病
夫
序列
苦しいほどの生真面目
ママなんか死ねばいい
不可解
絶叫