私がやらなければ~大阪・実父殺害事件~

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大阪家庭裁判所にて

夏の日差しが日に日にその強さを増してきた7月、大阪家庭裁判所では一人の少女に対する保護観察処分の決定がなされた。

少女は16歳、大阪府内の高校に通う高校生だった。

しかし少女が犯した罪は、殺人。しかも被害者は、実の父親だった。
検察官送致もあり得る実父殺害だったが、大阪家庭裁判所の判断は、
「本件の決定的要因は父親にある」
とし、少女を少年院などに送致することはむしろ少女の円滑な社会復帰を妨げるとの観点から、保護観察官による直接的、長期的な指導がなされるべきというものだった。

少女と父と、その家族の辿った道のりとは。 続きを読む 私がやらなければ~大阪・実父殺害事件~

それでも気になるダイヤルQ2~苫小牧・主婦殺害事件~

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平成8年2月27日

北海道苫小牧市の店舗兼住宅。
その日、女性はいつものように午後8時ころ、夫と2階の寝室で床に就いていた。
日付が変わったころ、ふと目を覚ました女性はなにやら階下の店舗のあたりで物音を聞いたような気がした。
実は10日ほど前にも、夜中に何者かが侵入し、雑誌などを荒らして持ち去るという事件が起きていた。

女性はそっと1階へ降り、茶の間の灯りをつけた。

茶の間の隣の店舗で、何か人影のようなものが動くのが見えた。それは隣接する車庫の方向へ逃げたようだが、そこに出口はない。

「こら待て!泥棒!」

女性は箒を手に、車庫へ向かった。

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🔓愛を乞う人~北海道八雲町・酪農家女性殺害事件~

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平成18年3月23日

北海道函館地方裁判所。
「主文。被告人を懲役5年以上10年以下に処する。」
園原敏彦裁判長は、被告人席にたたずむ少女に判決を言い渡した。
少女は17歳、東京八王子の家庭裁判所において検察官送致の決定を受け、事件を起こした北海道の地で刑事裁判を受けた。

「言いたくない。自分でもわからない。」

少女は公判の間もずっと、心を閉ざし続けていた。

少女が犯した罪は殺人。それも、親身に世話を焼いてくれた母のような存在の人を殺した。

17歳のそれまでとこれから。

事件

平成17年4月27日、北海道二海郡八雲町の病院で一人の女性が死亡した。
女性は5日前に、腹部を刺されるという事件に巻き込まれて搬送され入院していたのだが、治療もむなしくこの日亡くなってしまった。
死亡したのは、酪農業を営んでいた河原千鶴子さん(当時50歳)。

事件は4月22日の早朝に起きた。
いつものように5時過ぎに牧場の仕事のため牛舎へ向かおうとしていた千鶴子さんは、突然刃物で腹部を刺された。
犯人は階段下の物陰に身を潜めていたとみられ、千鶴子さんは身を庇う隙もなかった。
思わず階段に座り込んだ千鶴子さんに対して、犯人は前方に回り込むと、持っていた刃物を逆手に持ち替えて千鶴子さんの太ももを刺した。
さらに、這いつくばって逃げようとする千鶴子さんの右肩を掴んで頭も切り付け、立ち上がろうとした千鶴子さんの左腹部も刺した。

傷はいずれも深く、一撃目の傷は深さ11センチ、腹腔内から肝臓に達しており、太ももは深さ7.5センチと4センチの創傷、頭部は5か所の弁状切創、左腹部の傷も腹壁を貫通して腸間膜まで貫通していた。

千鶴子さんはその場で倒れたが、その後様子を見に来た長男(当時23歳)によって発見され、119番通報。
直ちに病院へ運ばれたが、この時点では命に別状はないという報道だった。

しかしその後容体が悪化、千鶴子さんは5日後に腹部刺創に起因する腹膜炎で死亡した。

千鶴子さんを襲ったのは誰か。

千鶴子さん夫婦が経営する牧場には、「事情のある少年少女」らが住み込みで働いていた。
千鶴子さんを刺したのは、その中の少女で、当時17歳だった。

現行犯逮捕されたのは、山科有希子(仮名/当時17歳)で、調べに対し「なんで殺そうとしたのかわからない」と、あいまいな話に終始していた。
そして、そのあいまいな態度は、その後の裁判の間も一貫して変わらなかった。

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【有料部分目次】
ある事情
渇望する愛
義母との「三角関係」
制御不能の攻撃衝動

もうひとつの「MOTHER マザー」~桐生市・高齢女性殺害事件~

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川口の事件

平成27年年94日、東京高等裁判所の秋葉康弘裁判長は、強盗殺人などの罪に問われた事件当時17歳の少年に対し、控訴棄却、懲役15年の一審判決を支持する判決を言い渡した。
少年は、平成26年に川口市で起きた高齢夫婦強盗殺人の実行犯であり、その高齢夫婦の孫だった。
裁判では、被害者夫婦の娘であり、少年の母親でもある女も強盗と窃盗の罪で起訴されていたが、そもそもこの母親による「殺してでも借りてこい」という指示があったことが明らかとなり(母親は現在も否定)、また、少年の信じられない不遇な生い立ちにも注目が集まった。

母親の判決は懲役46月、その後この事件は令和2年に長澤まさみ主演で映画化された。

その、ずっと前。
平成16年にも、同じく母と息子が共謀して祖母を殺害、その金を奪うという事件があった。

もうひとつの「MOTHER マザー」。 続きを読む もうひとつの「MOTHER マザー」~桐生市・高齢女性殺害事件~

🔓死刑と無期のはざまで~石垣市・小学生殺害事件/鹿沼市・幼児女子高生殺害事件~

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まえがき

死刑、その是非は日本国内のみならず、世界中で議論され続けていること。
死刑そのものがない国もあれば、日本同様、死刑を行う国もある。
死刑を執行するたびに、日本は世界中の死刑反対団体などから抗議を受け、国内でも人権団体や法律家による講義が行われるが、正直、それが何か影響しているかというような印象はない。

確かに国家による殺人と言われる死刑について、本当にそこまでしなければならないのかは、死刑囚と近い人間(個人的な繫がりのみならず、刑務官や弁護士など職務上つながりのある人を含む)であればあるほど、複雑な思いも抱くだろう。遺族の中にも、死刑に否定的な方すらいる。

しかし一方で、被害者遺族のみならず、家族からも「殺してくれ」と言われてしまうような、正直救いがたい罪を犯してしまった人もいる。
さらに、一度死刑判決を受けたものの、控訴審、上告審において無期懲役となって死刑を免れる人もいる。もちろん、その逆も。

昭和の終わりに起きた、二つの許し難い犯罪について、その後の裁判の結末を含め残しておく。

彼らは死刑を免れた。

【有料部分 目次】
鹿沼市の事件
 まさかの犯人
 もう一つの事件
 それまで
 出来のいい隣の子
 踏みつけられた部品
 第2の事件まで
 凶行
 裁判
石垣市の事件
 その日
 男の異常な性癖
 鬼畜の所業
 死亡ひとりでの死刑判決
それぞれの控訴審
 「死刑にしてくれ」といった母
 破棄自判
 解釈
死刑基準