難病の息子に手をかけた老母の「限界」~塩釜市・息子殺害事件②~

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その夜

遺書をしたためて以降、なるべく早いうちに決行しなければと思いはしたものの、それでも富久男さんの顔を見るとその決意は揺らいだ。
そして5月22日の夜、様子を見に行った際に富久男さんが寝入っていることを確認したとき、母の心は決まった。

「眠っている時ならば、苦しまずに死ねるのではないか」

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孫に手をかけた姑と許せという実母~茨城・孫二人殺人未遂事件~

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平成16年7月10日


茨城県関城町(現・筑西市)。
この日、いつものように午前中農作業を終えて午前11時半ごろに帰宅したこの家の祖父は、家の中から孫の泣き声が聞こえるのに気付いた。
「やれやれ、ケンカでもしたかな」
そう思った次の瞬間、自宅前の車庫で孫の礼司くん(仮名/当時7歳)が倒れているのが目に飛び込んできた。
急いで抱き起そうとすると、孫の顔は殴られたかのように腫れ上がり、首には絞められた痕、そして、上半身には切り付けたような浅い傷がいくつかあった。
さらに、二階で泣いていた孫の和史くん(仮名/当時4歳)も、顔がうっ血しているような状態だった。 続きを読む 孫に手をかけた姑と許せという実母~茨城・孫二人殺人未遂事件~

🔓孫に手をかけた姑と許せという実母~茨城・孫二人殺人未遂事件②~

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【有料部分目次】
思い通りにならない嫁
懐かない孫
「みんなして悪い」
もう一人の姑

🔓謎の一家失踪と蔓延るうわさ~世羅町・一家失踪事件~

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平成一三年六月四日

「なんで来とらんの。家に行っても誰もおらんってどういうこと?」

その採石会社では、社員旅行で中国の大連に向かうことになっていた。
しかし、集合時間を過ぎても、一人の女性社員が現れなかったのだ。同僚らが自宅を訪れたが、その女性もその家族も、誰一人として家にはいなかった。

「鍵もかかっとるし、どうしたんじゃろ……」

とりあえず連絡をつけられる親類に事情を話すと、なんと女性の夫も無断欠勤をしていることが分かった。さらに、家にいるはずの男性の母親も見当たらない。玄関にはしっかりと鍵がかけられ、呼びかけにも中から返答はない。
「車が一台ないけぇ、どっかに出かけたんじゃろうか」
その家には、乗用車と軽トラがあったが、乗用車がなくなっていた。そのかわりに、一人娘のものと思われる車が止まっていた。

連絡を受けた女性の弟が、はしごをかけて家の二階にあがった。一か所、鍵のかかっていない窓があったため、そこから家の中へ入ると、そこにはごく普通の、ありふれた生活の匂いが残っていた。

忽然と消えた家族

平成一三年六月四日午後五時半。
親族らは甲山署に捜索願を出す。いなくなったのは世羅町戸張在住の山上政弘さん(当時五八歳)、その妻・順子さん(当時五一歳)、政弘さんの母・三枝さん(当時七九歳)。
しかし、いなくなったのはこの三人だけではなかった。

「六月二日の土曜日、娘さんが家におったよ」

実は二日の夕方、牛乳を届けに訪れた隣家の主婦が、山上さんの一人娘で、竹原市内で小学校教諭をしている千枝さん(当時二六歳)が戸張の実家へ帰っていたと話した。
実は両親の行方を捜すために当然娘の千枝さんにも連絡がいったが、連絡が取れていなかった。
それもそのはずで、千枝さんの車は敷地内に停められており、実家の離れの二階の部屋に、千枝さんの私物と思われるバッグ、携帯、財布などが残されていたのだ。

家の中は特に荒らされた形跡もなく、窓やドアがこじ開けられた、あるいは、室内で争ったり物色したような形跡も見当たらなかった。

山上家は昔ながらの大きな家で、母屋と隣接する形で二階建ての離れがあった。母屋と離れの間は屋根付きの駐車スペースとして利用され、庭から出入り出来るようになっている。
食事や入浴などは母屋で行い、政弘さん夫婦と千枝さんの寝室が離れの二階にしつらえてあるという、田舎の農家にはよくある作りだった。
離れの2階には、翌日から旅行に出かける予定だった順子さんのものと思われる旅行かばん、奥の夫婦の寝室には、千枝さんの着替えと思われる洋服が畳まれており、テーブルには食した後のみかんの皮がお皿の上に残っていた。
なにごとも変わったところのない、むしろ整然と片づけられた中に日常の生活の匂いが残る、人が暮らしている普通の家の様子だった。

その部屋には千枝さんの私物も残され、財布や携帯電話もそこにあった。
親族らは一階へと下り、庭に面した扉を開けた。そこも、鍵はかかっていたという。ただ、その鍵は外からボタンを押すことでかけることが出来るタイプのものだったようだ。
離れから出て母屋に通じる勝手口に手をかけると、その扉には鍵がかかっていなかった。まずは政弘さんの母、三枝さんのことが気にかかり、三枝さんが使用している奥の部屋へと向かう。
三枝さんはベッドを使用していたが、そのベッドは、今さっきまで三枝さんがそこにいたかのような、人のかたちに盛り上がった布団があったが、中に三枝さんの姿はなかった。

その後、再び母屋の居間へ戻ると、そこには三枝さんが着用している農作業着が今から着るためだったのか、広げてあり、ふと横を見ると台所の豆球がついていた。
そして、シンクの作業スペースには卵と刻んだネギがお椀に入れられた状態で置いてあったという。テーブルには、翌朝食べる予定だったのか、蠅帳がかけられた状態でいくつかのおかずも置かれていた。

状況から察するに、朝食を食べるより前に山上さん一家はなんらかの理由で家を出なければならなかったと見られた。

「あれ、犬がおらん」

山上さん宅には、「レオ」という名前のシーズー犬がいた。しかし、家族と共にそのレオの姿も見えない。
犬を連れて深夜か早朝にどこへ行くというのか……
ふと、親族の一人が風呂場の脱衣所に洗濯されていない衣服があるのを見つけた。
調べると、政弘さんと順子さん、そして三枝さんのものとみられる衣類が残されていた。千絵さんのものらしき衣類はなかった。
そういえば、離れの寝室には千枝さんの衣類が畳んでおかれていたはず。
推測するに、千枝さん以外の3人は前日夜に入浴を済ませていたと思われた。
しかし、さらにおかしな点が浮かび上がった。
前日に来ていた服がここにあるということは、洗濯は行われていないはず。にもかかわらず、3人が着用していたであろう寝巻が家の中のどこにも見当たらなかったのだ。

ということは。
家族全員が、深夜から早朝の間に寝間着姿で車で出かけたというのか。しかも犬を連れて。

家族はどこへ行ってしまったのか。自発的に出かけたのか、それともなにかよからぬ事件に巻き込まれたのか……
この時点では全くわからずにいた。

前日までの家族の行動

戸張地区は、現在だと尾道から尾道自動車道を経由するが当時は開通しておらず、国道一八四号線をひたすら北上して車で五〇分程度で到着する山間の地区だ。
国道一八四号線沿いではあるものの、山上家周辺の家は戸張川の西側に多く存在しており、東側に位置していた山上家の周囲は、隣家と砕石工場があるだけでほとんどは畑である。
隣に家はあるものの、その家の一家は五年ほど前から住んでいたといい、山上さん一家とは比較的新しい付き合いだったという。

失踪の二日前の六月二日。先述の通り、隣家の主婦が牛乳を届けるために山上家を訪れた際、娘の千枝さんが家にいた。
千枝さんは、竹原市の小学校で教諭をしており、普段は竹原市内のアパートで独り暮らしをしていた。
しかし、週末などの休みの前日には、特別な用事がない限り実家へ戻って過ごすのが常であったという。
千枝さんには交際相手がいたが、当時は県外で資格取得のために勉強中だった。そのため、週末も交際相手に会うより、実家で過ごすことも多かったのだ。

政弘さんも、六月三日の日曜夕方、自宅前の畑で作業をしているのを目撃されていた。母親の三枝さんも、夕方五時ころ近所の人と立ち話をしていた。
妻の順子さんについては、三日の様子は判明していないものの、こちらも四日から行く予定の中国旅行を楽しみにしていたという。二日の土曜日は、勤務先の砕石工場にいつも通り出勤していて、変わった様子はなかった。

千枝さんは、実は三日の日曜、勤務先の小学校で参観日があり出勤していた。
参観日の後、保護者らとの球技大会に参加し、その後の反省会にも出席、午後九時半ごろ、同僚を自分の車で送った後、世羅の実家へ戻っている。
千枝さんは実家への道中、携帯で交際相手に電話をし、その日あった出来事をいつものように話したという。その様子から、たとえばなにか重大な家族の問題や悩みは窺えなかった。
深夜近く、隣家の人が山上家に車が止まり、ドアが閉まる音を聞いている。おそらく、千枝さんが帰宅した際の音と思われた。
家族の足取りは、ここで途絶える。

警察は、捜索願が出された四日の夜から捜索を開始、地元警察のみならず、県警も捜査に加わり、警察犬も投入された。
四日間にわたってヘリも飛び、空と陸、両方からの捜索が行われている。
一家全員プラス犬までが失踪という異様な事態に、警察も通常の家出人捜索とは違う体制で臨んでいた。

山上さん宅から、山上さんの乗用車(白のスプリンター)がなくなっていたことなどから、Nシステムも調べられたが、それらから足取りは判明しなかったという。
田舎には幹線道路のほか、地元民しか知らないような抜け道もたくさんあることから、警察は事件と覚悟の家出の両面から捜査していたが、全くと言っていいほど有力な手掛かりはつかめなかった。
一方で、Nシステムなどに写っていない以上、そう遠くへ行けていない可能性もあり、捜索は山上家近辺のため池やダムなどに誤って転落した可能性、あるいは事件だったとしてそういった場所に沈められている可能性も否定できず、ありとあらゆる場所を捜索した。捜索には、地域の人らも参加していた。

時期は六月、雑草が生い茂るのは早い。しかし、この時期であれば、もしもダムやため池に車で転落したのであれば、絶対にわかる。
そう思って重点的に捜索がなされたが、車が進入した痕跡や、これは、と思うような痕跡は見当たらなかった。

捜査が進展を見せない中、順子さんの職場の人が情報提供を広く求めたいと手作りのチラシなども作成し、千枝さんの交際相手は連日、思いつく限りの場所を捜して回った。
千枝さんから、両親の思い出の場所として聞いていた京都など、車中泊をしながら捜した。
九州から東京、とにかく思いつく場所という場所を、夏中捜しまわったという。

しかし、平成一四年九月。事件は最悪の形で終焉を迎える。

【有料部分 目次】
発見
順子さんのうわさ
金銭トラブルとヒソヒソ
預貯金総額3000万円
一家心中説の謎
発見現場の謎
チラシ作成代金と相続の行方
様々なうわさ
「永久に見つからんと思うとった」

Evil and Flowers ~新居浜・両親殺害事件①~

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平成31年1月9日夜

「誰か2階におるよなぁ・・・」

新居浜市高木町。国道11号線から北に市役所方面へ走った、閑静な住宅街。
その一角にある家の前に、中の様子をうかがう人の姿があった。
その家に住む男性が出勤時刻になっても出勤しておらず、心配した同僚男性が自宅の様子を見に来ていたのだ。

時刻は午後8時40分。近隣の人も出てきていた。
男性らはドアをノックするも、応答はなかった。しかし、その家の中からは明らかに人の気配がしていた。
言い知れぬ不安を覚えた同僚らは、すぐ近くの新居浜警察署に連絡。午後9時過ぎ、警察官が到着して、再びドアをノックするなど接触を試みたが、やはり中から応答はなかった。
警察官らも事件性を確認できないとして引き揚げていったが、同僚男性はどうしても胸騒ぎをおさえられなかった。

9時45分、同僚らがしかたなく引き揚げたその5分後、静かに2階の窓が開いた。

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