被害を強調する妻と、佇むだけの夫の戯言~富士見町義妹殺害事件その①~

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夫は法廷で、被告人席に座る妻に対し溢れんばかりの愛情を示した。
これからもずっと支えていくし、もっと早く自分が何とかしていればよかった、まさかこんなことになるとは思わず、妻の心に気づいてやれなかった、妻のためにも娘をしっかりと育てていきたい……
殺害された妹よりも、殺害した妻を自分は選ぶ。夫はそう言い切った。
被告人席でうなだれる妻は、多くの報道から察すればこの夫の言葉に救われているというような論調であった。そして、誰もがこの夫の言動を称え、この夫婦に同情すら覚えていた。それが7000名を超える嘆願書にも表れている。

しかし、妹を妻に殺害されたこの夫は、突如悲劇に巻き込まれた善良な「夫」であっただろうか。
そして義妹を殺害した妻は、本当にか弱く虐げられた人であっただろうか。

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被害を強調する妻と、佇むだけの夫の戯言~富士見町義妹殺害事件その②~

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7月16日の修羅場

2007年7月16日。再三にわたって絵里子さんから実家を出ろと言われていた咲は、職場で絵里子さんに「どうしてそんなことをいうの」と涙ながらに問い詰めた。
そこで絵里子さんから出た言葉は、「お前はなんで結婚式教えてくれねぇんだ?」というものであった。

実は咲夫婦は結婚式を挙げておらず、後に子連れの結婚式を計画していた。詳細は不明だが、その結婚式の話をどうやら咲夫婦は絵里子さんにしていなかったようだ。
義母を通じてか、絵里子さんがそれを知り、自分がのけ者にされたと感じたのかもしれない。
結婚式の話を皮切りに、絵里子さんはこうも続けた。

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🔓被害を強調する妻と、佇むだけの夫の戯言~富士見町義妹殺害事件その③~

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咲の夫、そして被害者の兄

夫であるH氏は、五味家の次男である。先述の通り、長男は不慮の事故で亡くなっている。
H氏は介護の道を志し、夜勤などもしっかりとこなす真面目な人柄であることは間違いない。

その夫が、咲の裁判で驚くべき証言をした。
絵里子さんとはそりが合わず、また、高校生の頃タバコのにおいをめぐって口論となり、あげく絵里子さんの交際相手に怒鳴りこまれ、それ以来絵里子さんには関わらないようにしてきたという。
妹であるにもかかわらず、家を出ていた期間は絵里子さんの居場所も知らなかった。
咲とは専門学校時代に知り合い、同棲を経て結婚、娘が生まれたのち富士見町の実家へ家族で同居している。
絵里子さんが同居する以前から、妻である咲に対しては絵里子さんに良い感情を持っていないことを告げている。
H氏にとって、咲が殺害した絵里子さんは実の妹である。にもかかわらず、裁判ではっきりと、「妹より妻」と断言した。
さらに、これからも妻を支えていくともきっぱり述べている。
妻の犯罪は自分にも責任がある、だからこそ私は被害者の兄としてではなく、加害者の夫として生きると決めた、これらを聞けば、なんとできた夫であろうかと、咲の親族でなくとも誰もが目頭を熱くするのではなかろうか。

しかし私は感じてしまう、この夫の、その朴訥な皮の下にある本心が、咲をただひたすら思い自身の過ちを悔いているのではないということを。

【有料部分目次】
「娘の生活費」
頼れなかった夫
懲役10年。金づち1本没収。

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